【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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集会

 この椚ヶ丘中学校の3年E組は、基本的に本校舎へ立ち寄る機会がない。そもそも立ち寄れない。それなのに唯一許可されている月に一度の全校集会では、どのクラスよりも早く体育館へ来て整列しなければならない。そしてそれを破ればペナルティが課される。そんな理不尽なルールが適用されている。

 E組の教室はご存知の通り山奥にある別校舎。その為、早い時間から山を降り始めなければ間に合わない。

 棗はこの学校の仕組み自体には疑問はある。差別や侮蔑などが許されている状況に一番の疑問を感じる。しかしまぁ、校内行事への不参加だとか、集会へ遅れることへのペナルティだとかは対処可能な不便なので、疑問点はあってもそこまで気にはしていない。校舎が山奥なのは大変だが、日頃運動をしない棗にとっては丁度いい運動になるしいいかと思っている。虫は苦手だから勘弁して欲しいが。

 

「ひ、酷い目に遭った……」

 

 何故か大半のトラブルを請け負った岡島が、蛇に巻き付かれながらそう言った。

 

「お疲れ虎男(とらお)ー…」

 

 虎男とは、棗だけが呼んでいる岡島の愛称である。大河→タイガー→虎という連想と、そこから更に某少年漫画の外科医を連想したことにより生まれた愛称である。

 

「間に合ったな…」

「何とかな」

「ほら皆、急いで整列しようぜ」

 

 磯貝の一声に、皆立ち上がって体育館へと移動する。E組が先に整列したあとから、続々と本校舎の生徒たちも集まって来た。

 本校舎の生徒たちは揃いも揃ってE組の方を見て指を差し、ヒソヒソと何かを言っている。まぁ、そんなものはどうでもいいことだ。

 

「えー、要するに、君達は全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します。…が、慢心は大敵です。油断してると…どうしようもない誰かさん達みたいになっちゃいますよ」

 

 (ブーメランで草)

 

 本当にどうしようもないのは、自分よりも格下だと思う相手を蔑み自分を上げようとする者。そんな救いようもない人間なんかよりも、自分の方がよっぽど人間性はマシである。自分たちはまだまだ中学生の身。未来はどうなるか分からない。下に見ていた者がいつの間にかのし上がっているなんてこと、社会に出ればざらにあるだろう。

 

「…誰だあの先生?」

「シュッとしててカッコいい〜」

 

 烏間がやって来て、本校舎の生徒たちが少しざわついた。完全に隔離され普段関わることもないので、見たこともない教師に興味津々の様子だ。

 そして烏間が来たことに気づいた中村と倉橋が、あろうことかデコレーションしたナイフケースを取り出して見せようとしてお叱りを受けていた。

 

「なんだアイツ。E組の担任?」

「…なんか仲良さそー」

「いいなぁー、うちのクラス先生も男子もブサメンしかいないのに」

 

 多分性格が顔に現れているのだと思われる。性格がよければ多少マシに見えるというもの。そしてここからイリーナが登場したことにより、更に流れが変わっていった。

 

「ちょっ…なんだあの物凄い身体の外国人は!?」

 

 ナイスプロポーションなイリーナは、体育館にいる者たち全員の注目の的となっていた。

 

「ビッチ先生、さっきまであんなにへばってたのに」

「見栄っ張りだなぁ…」

 

 E組の生徒たちは、先生たちの登場により先程とは打って変わって和やかな雰囲気になっている。

 

「何しに来た」

「何じゃないわよ、私もここの先生よ」

「その自覚はあるんだな」

「他の生徒の様子も見てみたかったしね」

 

 イリーナは本校舎の生徒を見るが、「ふーん…パッとしないわね」とつまらなそうな表情をする。そして、何故か渚の方へ近づいた。

 

「渚。あのタコがいないから丁度いいわ」

「?」

「あんた、あのタコの弱点全部手帳に記してたらしいじゃない?今その手帳おねーさんに渡しなさいよ」

「えっ…いや、役立つ弱点はもう全部話したよ…」

「そんなこ事言って、肝心なこと誤魔化す気でしょ」

「いや、だから…」

「いーから出せってばこのガキ!窒息させるわよ!!」

 

 渚は顔面をイリーナの胸に押し付けられ窒息させられかけていた。D組の2人を含む本校舎生徒たちは羨ましげな顔でその光景を見つめていた。気持ちはよくわかる。つい先日棗も窒息させられかけたが。

 その後の生徒会行事の詳細の話では、E組にだけプリントが配られていなかった。全く悪質な嫌がらせである。お里が知れるというものだ。

 

「すいません、E組の分まだなんですが」

「え、無い?おかしーな…ごめんなさーい。3-Eの分忘れたみたい。すいませんけど、全部記憶して帰ってくださーい。ホラ、E組の人は記憶力も鍛えた方がいいと思うし」

「わーお、あからさま過ぎて草」

「呑気か??」

 

 棗にとってこの学校の雰囲気は現実味がなく、最早フィクションのような場所だ。何だか漫画の登場人物のようで面白いなとさえ思っていた。おもしれー奴らの集まり。それが棗の中の椚ヶ丘学園全体への認識である。

 

「…何よこれ。陰湿ね」

 

 イリーナがあまりにも異様な光景に顔を歪めてそう言った時である。何かがマッハで目の前を駆け抜けた。…否、この場でマッハで動く者などただの一人しか存在しない。殺せんせーである。

 違和感ありまくりの変装をした殺せんせーが、自身手書きのプリントをクラス全員分配ったのだ。

 

「磯貝君。問題無いようですねぇ。()()()()コピーが全員分あるようですし」

「……はい。あ、プリントあるんで続けてくださーい」

「え、あ…嘘、何で!?誰だよ笑い所潰した奴!あ…いや、ゴホンッ…では、続けます。生徒会の今後のスケジュールの説明です」

「完全にボロ出てて草」

「歌川が歌川してんな…」

「歌川さん……」

 

 相も変わらずのほほんとした棗に、思わずツッコむ岡島と、ツッコむ気すら起きない磯貝。

 一方のE組教師陣はというと、くねくね動く殺せんせー、その殺せんせーに暗殺をしかけるイリーナ、それを抑えて連行する烏間という渾沌とした状況になっていた。E組生徒たちはその光景に思わず笑う。

 それを見ていた本校舎生徒たちは、不満気な表情を浮かべていた。




あの校長、ふたつの意味で頭が終わってますね。
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