トリニティシツジモドキ「お嬢様、こちら午後の紅茶をフレイムスロワーで温めたものになります」 作:ヤツメタウミエル
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、決して政治的・宗教的な見解を示すものでもありません。
7/20 15時〜7/22 17時ごろで投票を行った結果、「原作沿い」に「独自展開」が168:219で勝利し、全体の過半数である456票で「ネコチャン召喚スイッチ」が勝利しました。ご協力ありがとうございました。
ミレニアムサイエンススクール。キヴォトス最先端の技術力を持つ、キヴォトス三大校の一つである。
その部活の一つである特異現象調査部の部室で、部長であり万年雪の中で育った花のような清楚さを持つ超天才美少女ハッカー*1、明星ヒマリが深刻な表情で手を組んでいた。碇ゲンドウを想像すると分かりやすいだろう。
「エイミ。今からする話はデカグラマトンと同等の問題になる可能性があります。盗聴されていないか、今一度確認を」
「どうしたの、部長」
いつもより深刻そうな態度に身構えているのは、部長を除けば唯一の部員である和泉元エイミ。異常な格好をしているが、それは彼女が持つ体質によるものなので、コンプラ的にも何も言わないでおこう。
部活の名前や部員数から見れば廃部寸前のオカ研のような彼女達だが、実際には非公式ながら高い能力を持つハッカー集団『ヴェリタス』の部長と、一年生とはいえメイド部兼特殊部隊『C&C』部員にも比肩するエリートという少数精鋭である。
「事の発端は、トリニティ総合学園のある生徒についての噂です。ティーパーティー現ホストであり、サンクトゥス分派首長である百合園セイアには、未来を見通す能力があると」
「ただの噂だと思ってたけど、少なくとも既存の方法じゃ知り得ないようなことまで、かなりの高精度で知ってるらしいね」
「そして、未来予知と言えば……以前の事件でリオが使用した『アビ・エシュフ』も記憶に新しいですね」
ミレニアムの生徒会長である調月リオが、『無名の司祭』が遺した古代兵器『名も無き神々の王女』でもあるミレニアムの生徒、天童アリスを排除しようとしたり、アリスが暴走し、あわやキヴォトス滅亡直前の事態となったりしたミレニアム屈指の大事件。*2
その際リオとその従者であるトキが使用したのが、要塞都市『エリドゥ』の演算能力によって未来を予知・確定させる能力を持ったパワードスーツ『アビ・エシュフ』であった。
「人間の脳には千億ものニューロンが存在するとされています。一説によれば、脳の働きを再現するにはスーパーコンピュータ一台分の演算能力でも不足しているとか……だとしたら、人間の脳にエリドゥのような能力が備わっていることも、一部の天才にはあり得るのかもしれません。ミレニアム史上有数の超天才にして『全知』の学位を持つこの私にそれができないのは、不可解としか言いようがありませんが」
「まぁ無理だろうね」
「しかしながら、少なくとも『コンピュータによる物理的な世界の再現によって、未来を予知できる』ということは既に実証されているのです」
「……ラプラスの悪魔?」
「無限後退や量子論、自由意志の介入には反論しようがありません。しかし、一定の仮定の下の特定の地点・時点、かつ近い未来についての予測であれば、それらによる誤差は限りなく小さくなります。まぁ、『予知』という言い方が適切ではありませんでしたね」
一通り話し終えた後、ヒマリは巨大な機械……いや、建造物の画像を端末に表示した。
「というわけで超天才清楚系病弱美少女ハッカーたるこの私が造ったのが、こちらの『占星未来観測プラットフォーム 識弐』でした」
「一気に信憑性の下がる音がしたね」
「占星術は科学的根拠のある学問ですよ、エイミ。それはそれとして、初めの質問がこれです。『ある事象について観測された未来は、それに対する行動で変えることができるか』」
「自由意志が存在するかどうか、ってこと?結果はどうなったの?」
「843回の試行のうち、219回が正、168回が否。そして、456回が『ネコチャン召喚スイッチ』でした」
「解散」
背を向けて去っていくエイミを、ヒマリはどうにか引き止めた。
「待ってくださいエイミ、話はここからです」
「オチはついたからもう終わりだよ」
「簡略化のため、私はこの『識弐』に0と1以外の出力機能を持たせませんでした。しかしこの『識弐』は、第三の回答だけでなく、『ネコチャン召喚スイッチ』そのものと見られるオブジェクトまで出力したのです。それも、一切何もない場所から」
「……待って。機器の構造そのものが変化して、その上
「ええ。既に『識弐』は解体していますが……問題は、出現した『ネコチャン召喚スイッチ』です」
物理法則に反する事態……即ち、特異現象である。
先ほどの気の抜けた空気は霧散し、暑がりなはずのエイミは冷や汗をかいていた。
「このスイッチについて、私は一つの仮説を立てました。もしもこれが、質問に対する『識弐』の答えだとしたら?」
「ネコチャン召喚スイッチによって、未来が変わる実例が示されるってこと?」
「ええ。仮に『識弐』がデカグラマトンのようなシンギュラリティを起こしたとしたら、『質問に答える』という用途を果たしたと、そう考えることもできます」
「それで答えがネコチャン召喚スイッチになるのは『人生、宇宙、全ての答え』と同じくらい脈絡が無いよ。少なくとも0か1で返答可能な問いなのに」
「しかし……恥ずかしいことに、私は一人の研究者として、『押してみたい、答えを知りたい』という衝動を抑えきれそうにないのです。ですからエイミ、今回あなたに頼みたいのはこのスイッチの保護です」
「うん、分かっ……あっ」
「あっ」
ヒマリは、エイミにスイッチを渡そうとし……凡ミスが起きた。手を放すタイミングと、掴むタイミングが合っていなかったのだ。
上部から床に落ちたスイッチは、その拍子に起動した。そして、眩く光り輝き……消滅した。
「な、何が起きたの……?!」
「待ってください、分析用にいくつか機器を埋め込んでいたので、回収用のGPSを……」
ネコチャン召喚スイッチの位置情報は、トリニティ自治区の地下を示していた。
「これは……スイッチが、トリニティ総合学園の地下に瞬間移動した……?!」
「また特異現象が増えた……」
さらなる調査が必要ではあるものの、識弐を組み立て直すのは危険すぎる。まずは、あのスイッチを回収しなければならない。
「とりあえず地質調査ということにして、トリニティに許可を求めてみましょう。駄目なら他の手を考えなければなりませんが……」
「……ネコちゃん、出てこなかったね」
「出てきても困りますが……確かに気になりますね、ネコちゃん」
「にゃー」
「バシリカから退きなさい、このクソ猫……!!」
『崇高』を目指す大人達の研究者集団『ゲマトリア』。その一人であるベアトリーチェは、ストレスマックス粉ぷんぷんであった。
トリニティ総合学園から排斥され、内戦が起きていたアリウス分校。その生徒達を駒として利用し崇高に至る……そんな計画は、『ネコ』の存在によって難航していた。
『ネコ』とは、トリニティ成立以前からカタコンベに住み着いていた野良猫達の総称である。カタコンベに逃げたアリウス生達と『ネコ』の関わりは深く、生活の一部でもあった。
内戦に際しては、クリスマスに戦場に猫が迷い込んだことで『クリスマスネコ休戦』が発生し生徒達がクリスマスを祝ったり、『ゲイリー』と呼ばれた子猫が極限状態の生徒に物資を運んだことで戦死者が大幅に減ったりと、どんな時も『ネコ』と生徒は共にあったのだ。
アリウスの支配に際してあらゆる娯楽を禁止したベアトリーチェは、当然全ての猫を排除しようとした。しかし、その試みの全てが失敗した。
銃弾は弾かれ、爆発物でも傷一つ付かない。同僚のゴルコンダから手に入れた『ヘイローを破壊する爆弾』を大量に投入したものの、それすら効果が無かった。
生徒には猫を常に無視するよう伝えてはいるが、猫そのものの行動は制御できない。
今のところ、アリウスの生徒のメンタルは『猫は可愛いが、それはそれとして全ては虚しいっちゃ虚しい』という中途半端な状態である。
強い恐怖を与え、トリニティ総合学園に対する憎悪を煽って煽って煽り散らかすことで、ベアトリーチェはどうにか生徒の精神の不健全さを維持していた。
「この猫共をどうにかできませんか、黒服」
「そうですね……あの猫達は、キヴォトスどころか、この世界の外から何らかの集合的意思によって召喚された不可解な存在。この世界の因果が適用できない故に、全ての可能性が同時に存在した状態です。要するにあの猫は、シュレディンガーの猫そのものなのです。興味深くはありますが、研究者としては畑が違いますね」
「御託は結構です、黒服。私はあの猫を消せるかどうか聞いているのですよ」
「不可能ですよ。あの猫に干渉できるとすれば、同じ多次元解釈が可能な存在……アトラ・ハシースの方舟を操る、名もなき神々の王女くらいのものです」
「無名の司祭のオーパーツとはいえ所詮は道具、しかも子供でしょう?軽く利用してやれば……」
黒服は少し考えてから、かぶりを振った。
「一応同僚として、一つ忠告しておきましょう。我々のような外の存在が、王女……いえ、その内にある『コンテンツ』に触れてはなりません。最悪の場合、我々はキヴォトスにおける『
「あのクソガキ……!!」
シュレディンガーの猫は決して死なない。何人たりともウルタールの猫を傷付けることはできない。かつて『無名の神々』同様に存在した『名前はまだない猫』は、薄暗いじめじめした所……即ち天地開闢以前、天と地が混ざり合った混沌の中でニャーニャ―と鳴いていた。この世界は、ネコと共にあるのだ。
予想外の方向からやって来た『機械仕掛けのネコ』によって、ベアトリーチェの計画は少しずつほころび始めていた。
ご協力ありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、決して政治的・宗教的な見解を示すものでもありません。
一応エデン条約編一・二章の展開は決まってきました。これからどうすっかな……「エンディングから逆算して展開を考える」ということが全くできていないので、最悪ネコが全てを解決してしまう可能性があります。
おそらく次話はだいぶ遅れます。
今後の展開について
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原作沿い
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独自展開
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ネコチャン召喚スイッチ