トリニティシツジモドキ「お嬢様、こちら午後の紅茶をフレイムスロワーで温めたものになります」   作:ヤツメタウミエル

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 忙しくてオラトリオ読めません……辛いですね……苦しいですね……


「おい待て実際にやってみるんじゃないわよ!」

「サオリ?!」

「おやアズサ様、知り合いでしたか」

「知り合いも何も……彼女はアリウスの精鋭部隊『アリウススクワッド』のリーダー、錠前サオリだ。私の任務における連絡役でもある」

「なんかよく分かりませんが、恐らくすごい方なのですね。下剋上大成功です、ピースピース」

 

 トキからパクったポーズを我が物顔で披露するリタ。ふざけてはいるものの、相手はゲリラ戦のプロ……実際問題、かなりの快挙である。

 

「尾けられてる感じはなかったし、サオリは私と会った後すぐにアリウスの方へ帰ったはずだ……どうやって捕捉したんだ?」

「以前のティーパーティー襲撃から、色々と分かったことがありまして。総当たりで待ち伏せ致しました」

 

 リタは以前、ミカと共にアリウスへ行こうとした際遭難し、アリウスの生徒であるヒヨリと接触したことがある。

 そのため、ティーパーティー襲撃の犯人もアリウス関連であることを前提としよう、というかそうでなかったら難しすぎて何も分からないと考えていた。

 

 その点でアズサは明らかに怪しかったのだが、それ以前に友人である。その上自分より賢い人物であるナギサに疑われているため、自分が浅知恵を働かせる必要は無いと結論づけ、まずは一から考えてみた。

 補習授業部の人選には、何か変な所がある。ヒフミは犯罪組織との繋がり。アズサは外部からの編入。ハナコは成績と素行の異常。コハル……を入れた目的であるハスミはゲヘナへの憎悪。そして自分はトリニティ関連の過去とゲヘナやブラックマーケットとの繋がり。

 

 ナギサが補習授業部の創設に踏み切ったのは、セイアがヘイローを壊されたからだ。しかし、その事件とメンバーとの関係は全くもって不明である。そのうち三人はアリウスとも全く関係無い。

 つまり、セイアを襲撃したのが誰であれ、犯人は正体はおろか、手掛かりの一つさえ残さなかったことになる。そんなことが可能なのだろうか?

 というわけで、実際にやってみた。

 

「おい待て実際にやってみるんじゃないわよ!」

 

 あらゆる手を尽くしたが、無理だった。死角を徹底的に排除した警備を、攻撃せず、捕捉もされず通り抜けることは、事前に調べ尽くしていたとしても物理的に不可能だ。

 ティーパーティーホストが暗殺された事件当日のことなら、どれほど小さな異常でも報告され、手掛かりとなっていただろう。

 ヒヨリ達と戦ってみた感じ、アリウスの生徒は強かったが……ミカやヒナのように、次元が違うという程ではない。普通の道理を当てはめられる相手だ。

 それなら、誰かが手引きをし、ティーパーティーの警備に何らかの影響を与える必要がある。しかし、それができるティーパーティー上層部となると、戦闘能力と隠密技術両方に長けた生徒はほとんど居ない。

 

 つまりセイア暗殺には、手引きをするティーパーティー上層部の生徒と、実行犯となる隠密行動能力に長けた生徒。最低でもこの二名が必要になるのだ。

 そこには当然何らかの意思疎通が必要になるし、二人だけで全て完結させられるものでもない。何かしら痕跡も残るだろうと考えたリタは、知り合いであるミレニアム生まれのK*1さんとK*2さんに頼み、襲撃の際にバックドアを仕掛けてもらった。K*3さんはキレるだろう。

 

「あの、いとも容易くえげつないことを自白してませんか……?」

「不正アクセスはダメ!三年以下の懲役又は百万円以下の罰金!!」

 

 そして、地中貫通爆弾の投下をブラックマーケットの業者に依頼し、どうにか成功した*4ことによって、アリウス関連の地下空間とそこでの軍事行動の存在を正義実現委員会に捕捉させた。

 エデン条約直前の時期に不明な地下組織の存在が判明すれば、カタコンベの出入り口周りは厳重に警戒されるだろう。アリウス側は格上の学園に挑む分頻繁な情報交換を必要とするから、トリニティ側の裏切り者は、何らかの行動を起こしてそのための場所を用意する必要がある。

 そう予想したリタは、ハッキングで得た情報から、カタコンベ付近の警備態勢に関わった人物を調べて区画ごとに分け、抜け道の作られた可能性がある地点に張り込んだ。

 

 そして、試験前の最終日にリタが潜んでおり、サオリと出逢った場所は……ティーパーティーパテル派首長、聖園ミカが影響力を行使した地点だった。

 

「というわけでお嬢様がクソ怪しいかと」

「その……リタちゃんも色々考えてたんですね……?」

「もしかして今の補習授業部、劇場版だったりするの?映画ジャイアン?」

 

 最近真面目な話をするわ、論理的に考えて裏切り者を炙り出そうとするわで様子のおかしいリタに、ヒフミとコハルは困惑した。

 

「確かに、ミカなら可能ではある……でも、どうしてエデン条約を?ミカとリタは、仲が悪いように見えなかった……なのに本当は、ゲヘナのことを嫌っていたのか……?」

「まぁ全然分かりません」

 

 アズサの疑問に対して、リタの答えは雑なものであった。

 

「人が何を考えているのか、確実に知る方法はございません。私達は、どこまで行っても他人なのですから」

"……ナギサも、同じことを言ってたね"

「……だから、知りたくありませんでした。知ってしまったら、その次にはこういう疑問が出てくるでしょうから」

 

 なんとなく、察してはいた。ミカの様子がおかしいことには気づいていたし、『トリニティの裏切り者』の話が出てからは、そういう可能性にも思い至っていた。

 もし、そうなのだとしたら……『実は聖園ミカは、ゲヘナも、自分のことも嫌っていた』という理由があり得る。だから、決心がつかないでいた。

 

"リタは……ミカを信じることが、怖かったんだね"

「はい、お恥ずかしながら」

"だけど、こうして知ることにしたのは……"

「別に、知っていても知らなくても、私は変わらないかと思いまして」

「絶対に騙されたり、誤解したりすることなく、心の内のほとんど全てを知ることができる方が、誰にでも一人は居ます。それが、自分自身です」

 

("自分の心に従うのは、そんなに悪いことじゃないと思うよ")

 

「自分の意志を決めるのは、その人にどうして欲しいかではなく、どうしたいかです。それに……知らないことを恐れていたら、知っていることさえ分からなくなってしまいますので」

 

 彼女を動かしたのは、ゲヘナらしいといえばゲヘナらしい、どこまでも自分本位な思考。しかし、揺らぐことのない考え方であった。

 

 その後、ハナコの提案によって、今回は補習授業部の側から行動を起こすことになった。

 

「敵もその行動も分かっているのなら、やはりここは……『ナギサさんをミカさんとアリウスから守る』、『試験を受けて合格する』。『両方』やらなくてはならないのが、『補習授業部』の辛いところですね♡」

「それは……可能なのか?」

「ええ。何せ今ここには、正義実現委員会のメンバーと、ゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な人と、元ブラッk「きのこ検定2級でございます、ドヤ」……きのこ検定2級の人と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます」

「……?」

「へ、偏愛……?!」

 

「それに、ちょっとしたマスターキーみたいな、シャーレの先生も居ることですし……この組み合わせなら、トリニティくらい半日で転覆させられますよ♡」

「みなぎってまいりましたね」

「何する気よ?!」

「何が始まるんですか?!」

「第三次試験だ」

 

 最後の特別学力試験が目前に迫る中、補習授業部最初の反撃が始まったのであった。

 


 

 作戦会議からしばらくして。とあるトリニティのセーフハウスに、二つの怪しい影が迫っていた。

 

「この段ボール……本当に必要なの?警備は全員倒したはずだけど」

「まぁ、折角持たせてくれたんですから、一応使っておきましょう……服の代わりにもなりますし」

「それは無理だと思うけど……まあいい、突入しよう」

 

 エデン条約や補習授業部妨害のため、正義実現委員会の多くが出払っており、高い戦力を持ったメイド兼警備であるトキと何故か連絡が取れない現状。脆弱な警備に不安を感じ、ナギサはセーフハウスの屋根裏部屋に隠れていた。

 そこに現れたのは、段ボールを被った謎の二人組。片方にはマジックで雑に『GUND〇M』と書かれている。

 

「夜分遅くに失礼します、ナギサさん」

「動くな。警備は既に制圧した」

「?!……ええと、ハナコさんに、アズサさん……?!なぜここに、いや、その段ボールは……?!」

 

 トリニティが行った調査によると、ヒフミが関わっていた可能性のある犯罪組織の首魁は頭に紙袋を被っていたらしい。

 段ボールを被った生徒は確認されなかったものの、組織規模が不明なのだからそのようなメンバーが居る可能性もある。そして、彼女達がこうして現れたということは……

 

「あなた達が、『トリニティの裏切り者』……!」

「ふふ、単純ですね……私たちはただの駒に過ぎません。指揮官は別にいますよ」

「それは……?!」

「その前に……ナギサさん、どうしてここまでやったんですか?ナギサさんの心労は分かりますが、こうして『シャーレ』まで動員して……私達やリタちゃんはもともと怪しかったですが、ヒフミちゃんとコハルちゃんに対してはあんまりです」

「それは……」

「特に、ヒフミちゃんはナギサさんと仲が良かったじゃないですか。どれだけ傷つくか、考えなかったのですか……?」

「……そうですね。確かに、ヒフミさんには悪いことをしたかもしれません。ですが、後悔はしていません。全ては大義のため。確かに彼女との間柄だけは、 守れればと思っていましたが……私は……」

「その上、最後にリタちゃんを狙い撃ちにしたのも……」

「あ、そちらは適切な判断だったと思っています。リタさんの経歴を詳しく調べてみたところ……爆破テロ、違法武器所持、脱獄、密漁、決闘、未成年喫煙、甲冑での万魔殿議事堂侵入など……大量の逮捕歴が確認されたうえ、採用時には執行猶予が付いていたんですよ?!なぜあのような方が採用されたんですか?!」

「……」

「ええ、それはリタさんが悪いですね。では、私たちの指揮官から連絡を入れますね……」

 

「『あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ、ナギサ様とのお友達ごっこ』……」

「っ?!まさか……」

「……」

(『ハナコ様も、もう少しはっちゃけてみてもよろしいかと』)

 

 そこまで言ったところで、ハナコはリタに言われたことを思い出していた。

 ナギサの心労は理解できるが、それでも補習授業部に対する仕打ちは許せないものがある。……しかしリタは、ナギサのことを色々と心配していた。それを台無しにしてしまうのも、何か違う気がする。

 ……というわけで、ハナコはフォロー兼追撃の言葉を続けることにした。

 

「……『うどんであなたを驚かせたい』」

「……〇亀製麺が?!」

「『補習授業部は結果として、いい隠れ蓑になりましたし……』」

「やはり、ヒフミさんが……?!」

「『三大校にクーデターを仕掛けるのは、全国チェーンでは私達だけです』」

「じゃあ〇亀製麺じゃないですか?!」

「『実は『裏切り者』という単語、裏から切るというのは当て字で、下着という意味の『裏着』から派生した単語でして』」

「カスの嘘まで?!」

 

 少しでも情報を引き出そうとするナギサに対して、ゴミのような情報を流し込んでいくハナコ。そこにどうにか関連性を求めようと、必要以上に深読みしつつ頭脳をフルに働かせるナギサ。

 最終的に、ヒフミが裏切り者ということにはならなかったものの……ここには、簡易的な無量空処が完成した。宇宙を背負いフリーズした後、ナギサはブッ倒れた。

 

「うぅ……うどん……うどん……カブト虫……ドロローサへの道……?」

「あら、眠ってしまいましたね」

「これは……どうやったんだ?静音性に優れ、弾丸も消費しない制圧術……時間がかかる以外に難点が無い」

「まぁ、偶然こうなっただけですから気にしないでください」

「そうか。とにかく、目標を確っ……?!」

 

 ナギサを回収しようとしたところで、一帯にガトリングガンによる掃射が行われた。アズサは咄嗟にテーブルを盾にしたが、大量の弾丸によってあっという間に破壊されてしまった。

 

「そこの某スパイゲーム風不審者二人組。ナギサ様から離れなさい」

 

 ミレニアムの任務で地下空間を調査しており、若干遅れて登場したC&Cのエージェント……コールサイン04、飛鳥馬トキである。遅れたかわりに、完全に武装している。

 

「彼女は……C&Cの……?!」

「私が相手をする。ハナコはナギサの回収を」

「……分かりました!」

「させません……っ?!」

 

 ナギサを背負い、逃げようとするハナコを追うトキ。しかし、巨大なパワードスーツが多くのトラップに引っ掛かることになり、うまく進めない。

 

「行かせない。私が相手だ」

「槍や弓矢の次は、ゲリラですか……早めに片づけるため手加減が出来かねますので、ご注意を」

 

 ガトリングによってセーフハウスの壁は根こそぎ吹き飛び、爆発物によって天井が崩れる。アリウスの本隊が接敵するより一足早く、この付近では激しい戦闘が始まることになった。

 


 

『チームIV、奇襲を受けました!』

『小型のゴリアテのような兵器と接敵……何だあれは?!うわああぁ!』

『『スパイ』が裏切りを……!』

「そっか、アズサちゃんが……あれ?どうしたの、みんな」

 

 一方その頃、アリウスの部隊を率いてナギサのもとへ向かっていたミカ。周りの生徒が小銃を上向きに構え、高射砲を撃ち始めたので、上を見てみると……

 ティーテーブルが、空を飛んでいた。滑空し、一直線にこちらへ向かってくる。

 

「何だあれは……」

「近接航空支援か?!」

 

 テーブルはミカの前の方に着弾し、一瞬の後に椅子とティーセット、ついでにリタまで落下してきた。

 ミレニアムサイエンススクールエンジニア部謹製、『空中投下に耐える強度のティーセット』をコンセプトに作られた『どこでもティータイム君』である。

 

「おはようございます。随分と早起きですね、お嬢様」

「……わーお」

 

 周囲の生徒達は少しの間唖然としていたが、その後すぐリタに銃口を向けた。

 

「その様子だと、私のことは知ってるみたいだけど……何しに来たのかな?確かに、リタちゃんはそこそこ強いけど……単独でこの数に勝てると思ってるの?」

「銃は持っておりませんよ。手が塞がりますので」

「え?じゃあ、ほんとに何しに来たの?」

 

 リタは平然として、自分のすべきことを答えた。

 

「三時ですので、紅茶を淹れに」

 

「……今、午前三時だよ」

*1
Kurosaki Koyuki

*2
Konuri Maki

*3
Kagami Chihiro

*4
飛行船は撃墜されたため、保険を差し引いてもえげつない額の報酬を請求された




 あともうちょっとで用事も終わるのですが、その後大学が始まるので以前ほどの更新ペースは無理そうです……
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