「____の発見により、我々は戦略兵器を開発したのである。最初に搭載したのは_____」
只今、我々オクタリアンは開発している兵器についての座学を受けている。この講堂にいるのは多くがタコゾネスであるが、中にはバイタコトルーパーやデラタコゾネス、タコスナイパーなども、ちらほらいる。何度話されたかわからない兵器云々の知識は耳にタコができるくらい染み付いてしまって、誰もメモに残そうにもできなかった。
「zzz......打倒イカぁ......zzz」
隣で眠りこけているタコゾネス──名前はカノンという──が、寝言を言っている。教官にチョークを投げられては起こされているのだが、たまに流れ弾が飛んでくるのでせめて起きているふりだけでもしてほしい。
「ほら、起きて。課題出されてるよ。」
「んぅぅ......もうちょっとだけ。」
規則正しい生活を送っているはずなのに、カノンは居眠りすることが多い。確かに同じ話を何度もされたら眠くはなるが、そんなに熟睡するほどでもないだろう。私はさり気なく鉛筆でつついて起こしてあげた。
「ぁれ。今授業中......また寝てた?」
「うん。バッチリ寝てた。もう私は流れ弾はゴメンだからね。」
「ごめんごめん。ウズラ、後でノート写させて。」
写させろと言っても、写したところで昨日と変わらないページが増えるだけであり、そこには無駄が生まれるだけである。ちょっと前に座ってる先輩は、書いてるふりをして別のページの勉強をしていた。
チャイムが鳴り、授業終了とともに放課後へ突入する。各々が所属している部署の作業に取り掛かるのがオクタリアンの日常なのだが、イレギュラーも存在している。
「ねぇねぇ、ウズラ、ゲーセン行こうよ。」
「え〜?ブキ工房に納品しなきゃいけないパーツが沢山あるのに?課題終わってから遊びにいこうよ。」
「そんなん後でもいいじゃん。納期明後日でしょ?」
「苦労しないために今やっておくのに......コイツときたら。」
「愛嬌ということで許しちゃって。ほら、行くよ!」
カノンが私の手を引いてゲーセンへ向かっていく。私達はパーツ製造部署に所属している。ボムのキャップ部分から兵器の骨格まで色々造っているのがこの部署であり、タコツボ基地における生命線みたいなところでもある。所属人数は多いので、私達がサボってもあんまり作業に支障はでないのだが、作業もせずにフラフラと外に遊びに行っているのはいい印象ではなかった。
到着したのは、学校からだいぶ離れたショッピングモール、その中にあるゲームセンターだった。この店は私たちの行きつけの場所である。地上にあるものと比べるとだいぶ規模は小さいのだが、私たちにとっては十分すぎるくらいである。学校終わりで来るタコゾネスは私たちだけだから、結構目立つ。カノンは入るなりリズムゲームの方に行った。
私はといえば、シューティングゲームのところでスコアアタックをするのが恒例になっている。週一で訪れては塗り替えられている記録を更に塗り替えて練習していた。
「そろそろ7時か...ここらへんでやめとこ。」
週間ランキングと歴代ランキング1位に自分の名前を書き入れ、その場を後にした。カノンと合流し、店を出る。カノンの方も理論値がどうのこうのとよくわからない話をするので、程々に相槌を打った。
帰り道、学校の近くでワイワイと賑やかにしているのが目に入った。
「あ、見てあれ!屋台が出てる!」
「へ〜、珍し。教官長も並んでね?」
「あっはは!おもしろーい!何売ってんだろーね〜。いいにおいするけど。」
ヒトが多すぎて屋台の名前が中々見えない。学校の中に戻っていくヒトがぶら下げているのを見れば、『タコヤキ』?と書かれた箱が見える。
タコヤキ......タコ焼き......タコ......焼き?
「帰ろう。カノン。見てはいけない何かを見ている気分だ。」
「えぇ?私あれ気になるんだけど。」
「いいから。共食いなんて縁起でもない。さっさと課題終わらせるよ。」
パーツ製造部署の終業時刻までまだまだ時間はある。出された課題は今日中に終わらせられそうだ。作業服に着替え、設計図を作ったり、出来上がったものを試験運用したりして着々と納品ノルマをこなす。途中でカノンがつまらなさそうにして自分のオリジナル武器を作ろうとしていたが、そんなことしたら管理長に激怒されてしまうのでやめさせた。
途中色が反転して印刷されてしまったり、サイズが小さかったりすることもあったが、とりあえず課題終了となった。出来上がったものは、箱に入れて倉庫に収めておくと勝手に回収に来てくれるようだ。依頼書のとおり、120本分のパーツをまとめて倉庫の指定場所に置いておく。
「ウズラぁ、これどこに運ばれてんの?」
「私は知らない。管理長に聴いてみれば良いんじゃない?」
「えぇ〜?じゃあやめとこ。あのヒト怖いもん。あ、そうだ。先輩ならなんか知ってるかも。」
「邪魔にならんように聞いてきなよ?先輩たちは別の作業してるんだから。」
私たちが普段作るのはオクタシューターの部品なのだが、今日の注文はかなり大雑把というかなんというか......私たちで考えろって投げやりな注文だった。依頼書にブキのイメージ図だけやんわり書いてデザインとかそういうのを丸投げしていた。サンプルのモデルすらなかったので、一番時間を使ったのは設計だった。
休憩室で帰り支度をしていると、カノンが戻ってきた。
「先輩たちも分かんなかったって。変なの。」
基本的に依頼主が誰なのかは明かされるのだが、今回に限っては誰が依頼書を送ってきたのかすら手がかりがなかった。不気味である。
「じゃ、私もう部屋に戻っておくから。先風呂入っとくね。」
「お疲れ様〜」
カノンはまだ残るらしい。大方自分のブキでも作るつもりなんだろうが、バレたとしても私はかばいきれない。どうかバレませんように。連帯責任は嫌だが、それでカノンに不機嫌にされても困る。
私は寮の自室で貰ったアイスを口にする。先輩が派遣先でお土産として買ってきたアイス。乳成分とかいう、初めて見る項目が気になって仕方がなくなり、図書館で調べようとしてみるのだが、何も手がかりのなかったよくわからない成分。イカ語でもタコ語でもないのに先輩が『ニュウセイブン』と読めていた理由が不明なのだが、ひとまずありがたくいただいた。
食べてみると、体を包み込んでくれるような甘さに、やんわりと舌触りの良い食感が癖になる!
......とパッケージには書かれているが、馴染みのない味に体が困惑してそれどころではなかった。明日の訓練に向けて予習とブキの手入れを行い、9時ぐらいには寝た。カノンは11時ぐらいには帰ってくるらしい。
とまあ、これが、私たちの日常生活である。