【WR】ハイキュー!! 『烏の三冠』獲得RTA 烏野(二年目)チャート 作:いる科
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ネンレイ :16
ショゾク :烏野高等学校二年二組
シンチョウ:182
ポジション:S
セバンゴウ:6
総合評価 :【S】
◆◇◆--選手説明--◆◇◆
春高にて日向との『変人コンビ』で全国に名を轟かせた、烏野高校排球部の天才セッター。
その類まれなる実力からユースにまで呼ばれており、”コート上の王様”の異名を持つ。
後輩にどう接するのが正解か分からず考えこむ姿が、「睨みつけられて怖い」とあんまりな評判。
◆◇◆--パラメータ--◆◇◆
スタミナ:【S】:90/100
メンタル:【S】:93/100
パワー :【A】:81/100
バネ :【B】:76/100
ハンノウ:【S】:91/100
イチドリ:【S】:95/100
◆◇◆--スキル(抜粋)--◆◇◆
・パススキル
【トス】 :【S】:98/100
【ジャンピングトス】:【S】:97/100
・サーブスキル
【ジャンプサーブ】:【A】:83/100
・スパイクスキル
【フェイント】:【S】:92/100
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GW合宿が明け、IH予選の組み合わせが発表される頃──。
体育館に漂う空気は、練習の終わりとともに少しずつ緩みはじめる時間帯だ。
「よっ、みんな。元気そうじゃん」
息遣いも、足音も、どこか静寂を帯びたその隙間を縫うように──差し入れの袋を下げた菅原が、ふらりと入口に立っていた。
「スガさぁん!! 来てくれたんスか!!」
真っ先に声を上げたのは田中。いつもより一段声が大きい。
菅原の顔を見るなり、メンバーの空気が一瞬で和やかに変わるのは、彼が放つ独特の空気感ゆえだろう。
「え、スガさん来たんですか!?」
次いで日向、影山ら二年生が前のめりに駆け寄ってくる。
座っていた一年生たちも、急に体育館が沸き立つ雰囲気に呑まれ、きょろきょろと様子をうかがいながら立ち上がった。
菅原が来るのは今回で二回目だが、前回来たのは土曜日。
土曜の練習は任意の参加である故、初見の者も多い。
彼らが「誰?」「OBの人だよ、前も来てた」「イケメンが来おった……」などと小声で囁き合う中で──。
菅原は笑いながら、スポーツバッグをごそごそとあさりはじめた。
そうして取り出したのはスポドリと、ぎっしり詰まった菓子パンの袋だ。
「まぁ、ちょっと様子が気になってさ。ほれ、練習頑張ってる後輩たちに、スガさんからの差し入れだ〜! 受け取れ受け取れ!」
「アザーーッス!!」
声を割って飛びついたのは田中と西谷。
その勢いに押されるように、日向も影山も我先に袋へ手を伸ばす。
「あー……この人は菅原 孝支さん。俺たちの二年上の先輩だよ。優しい人だから怖がらなくていいからね!!」
山口が初見の一年生に対して菅原を紹介する横で、当の本人は軽く片手を挙げる。
「おう、よろしく〜。そんなおっかなびっくりせんでも、毒なんて入ってねーべ」
一年生たちの顔が、山口の気遣いと菅原の冗談に誘われるようにほころんでいく。
影山や月島に、こういう場をうまく回す器用さを期待するのはまだ難しい。
日向も面倒見は良い方だが、彼自身に落ち着きがない以上、裏方の役回りにはなり得ない。
(来年の主将は、もしかしたら山口かもなぁ……)
縁下、成田、そして山口──。
彼らが一年生たちを気遣いながら菅原を紹介するその傍らで、日向は差し入れのパンを高々と掲げた。
「すっげー! オレこのパン好きなんだよ!!」
満面の笑みでパンを握りしめる日向の隣で、影山はすでにパンを無言で頬張っていた。
その様子を視界の端で捉えた日向は、負けじとパンにかぶりつく。
「……見てるだけで疲れる……」
無駄なところで張り合う二人に、月島は肩を落とし、視線をそらす。
自身が居た頃と何一つ変わらない彼らの姿に、菅原は思わず吹き出した。
「あっははっ!! お前ら、二年になってもほんと変わんねーのな。月刊バリボーじゃ特集組まれてるってのに」
ぽつりと菅原が言うと、日向が驚きで身を乗り出した。
月刊バリボーの特集と聞いて日向が真っ先に思い出すのは、牛島若利だ。
昨年、白鳥沢に烏野は勝利したが──”ウシワカ”に自身が単体で勝つことが出来たとは、微塵も思っていない。
同じ舞台で、同じ高さで並び立ちたい──その渇望こそが、日向の強烈な原動力だ。
「っ……!!!? 俺がですか!?」
日向はパンを喉につまらせ、慌ててスポドリを一気にあおった。
しかし──菅原の返答は、肯定ではなかった。
「いや、日向じゃなくて影山が。でも日向も写真は載ってたぞ、ほら」
菅原はカバンから雑誌を引っ張り出した。
──最新号の『月刊バリボー』。通称「月バリ」。
影山が険しい表情でボールを上げる写真。
その隣には、日向が空を裂くように飛ぶ姿。
見出しにはこうあった。
──”古豪を復活させた変人コンビ”。
「ほら。影山の相棒って感じで、“変人コンビ”って書かれてるだろ?」
「うおおおおお!! やった!! 影山のついでってのが気に入らねえけど、雑誌デビューだ!!」
かつて初心者同然だった彼を知る菅原には、この成長がたまらなく誇らしい。
思わず、胸が熱くなる。
「良かったなあ日向。……てか影山、お前は驚かねーのな?」
「……まぁ、冬の間に取材は来てたんで。こいつが載ってるのも、別に驚きはないです」
相変わらずの淡々とした口調に──菅原は胸の奥をぎゅっと締め付けられる思いがした。
(……相変わらず、見据えてる景色がデカいんだよなあ。それに、日向のことを一番認めてるのは──やっぱりこいつなんだよな)
日向が雑誌に載ることに驚かないというその反応。
それは何よりも深い、揺るぎない信頼の証だった。
そして──。
「うわホントだっ!! センパイかっけーっ!!」
影山とは対照的に、ぱっと笑顔を咲かせて飛び跳ねる、小柄な影が一つ。
──氷見 冷だ。
(何回見ても慣れないなあ……)
氷見には、体育館のどの景色とも馴染まない、不思議な華やかさがある。
清水もそうなのだが、マネージャーと選手ではその意味が違う。
氷見はこの虫も殺さぬ顔で、見る者全てを黙らせるようなスーパープレーを淡々とするのだ。
初対面の際には、思わず、男なの!? ──と、叫びそうになったものだ。
あまりに失礼な物言いであるため、何とか寸前で堪えたのだが。
■ ■ ■
「んでさ──」
初対面の一年生たちとの会話を終えた菅原が、雑誌をぱらりとめくりながら、続ける。
「今年の“エース五本指”も、ちゃんと載ってたぞ」
「おお、見たい!!」
日向が目を輝かせ、食い入るように紙面を覗き込む。
ページをめくると、そこには高校バレー界を沸かせるスターたちの名前と写真がずらりと並んでいた。
一人目は──佐久早 聖臣(3年)。
”絶対王者”、井闥山学園のエース。
手首のしなやかさでスパイクに強烈な“嫌な回転”をかける技術は超一級。
そのブロックアウトの精度も群を抜き、「攻撃力国内No.1」の呼び声は伊達ではない。
「佐久早さんは去年からずっと入ってるから当然だな」
唯一、佐久早との面識のある影山が納得するように呟く。
その後ろから田中が雑誌を覗き込み、ページの文字を読み上げた。
「うわ、”エースとしての力は国内No.1と断言できる”〜とか書いてあんぞ……!!」
「それだけ別格ってことだろ、龍! あのスパイク取ってみてぇな……!!」
三大エースのスパイクを受けてみたいなどと言えるのは、西谷の他にはいないだろう。
その上で、きっと実際に取ってみせるのだろうとさえ思えてしまうのだから、このスーパーリベロもたいしたものだ。
「次は……っと」
二人目は──星海 光来(3年)。
鴎台高校の“小さき巨人”だ。
身長は小柄ながら、跳躍力と到達点は圧倒的。
ブロックアウトの巧さも突出しており、さらにサーブ、トス、ディグのどれを取っても穴がなく、“総合力国内No.1”と評されている。
「星海さんだ!! そりゃ入るよなー!! ……でも、なんか記事少なくね?」
「あの人、取材嫌いだからな。むしろ載ってることにビックリした」
「勿体ないなー、それ!!」
日向の指摘するとおり──ページには、星海のインタビュー記事はほとんどない。
ただ、春高で披露された鮮烈なスーパープレーを切り取った写真の数々だけが載っている。
「ん……これはどっちだ……?」
「”オサム”の方だろ? エースってことはスパイカーだし」
三人目は──宮 治(3年)。
稲荷崎高校所属。
最強ツインズと恐れられる宮兄弟の片割れ。
ジャンプサーブ、スパイクの威力に加え、セッターとしての技量も侑に勝るとも劣らない。
双子速攻を自在に操り、兄・侑と並んだときの攻撃力は群を抜いている。
「ここまでが“三本指”か……。てかこれで宮兄弟って、三大エースとNo.1セッターかよ。とんでもねーな……」
「……今年も仮にやるとして、勝てっかなぁ……」
「全国行くの、楽しみですね!!」
縁下の弱気の発言に、被せるようにしてそう言ったのは日向だ。
「──そうだな」
いつでも彼の根底には、試合そのものを楽しむことがある。
当たり前のようで、しかし難しいことだ。
強敵と戦うとき、これ程純粋な気持ちで臨める人間がどれほどいるだろうか。
──そして、次。
ページの先に現れたのは。
「──あっ!! 五色だ!! 五本指か……すげーなー……!!」
日向が声を上げる。
──五色 工(2年)。白鳥沢学園所属。
威力抜群のストレートを武器とする、“ウシワカ”の後継者。
ムラがあるため上位三人には一歩及ばないと言われるが、火がつくと誰も止められない破壊力を持つ。
「ああ、キレキレストレートの……合宿で一緒だったんだよね? ツッキーと日向は」
「まぁ……」
「あぁ! 凄かった!」
言葉を濁す月島とは対照的に、日向はそう言い切る。
五色は、日向の代では影山の次に天才と言える選手だろう。
互いにライバルとして意識する、日向としては因縁浅からぬ相手である。
月島も、対抗意識があるのだろう。
それ故に言葉を濁し、素直に褒めることが出来なかったのだ。
最後は──潜 尚保(2年)。
戸美学園所属。
フォームが崩れず、打つコースを一切読ませない安定派。
決定力は高いものの、威力面で他の四人には一歩及ばないと評されるが──その精密さは折り紙つきだ。
「戸美ってことは……東京か?」
「知らない名前だな……最近調子が出てきた、とかかもな」
出揃った五大エースの中に、烏野の名前はない。
だが、それでも──日向は自信に満ちていた。
彼らと同じ場所で戦うことの出来る実力が烏野にあるのだと、確信している。
「楽しみだな……!!」
日向の目は、雑誌に映る五人の顔を追いながら、既に全国のコートを見ているようだった。
だが──。
「あー、全国を楽しみにするのもいいがな、お前ら」
不意に、少し低い声が体育館に落ちた。
烏養 繋心が、いつの間にか傍らに立っていたのだ。
烏養は目の奥に鋭さを宿したまま、ゆっくり言葉を継ぐ。
「目の前の相手のことを忘れんなよ。IH予選はすぐそこだ。全国の切符を手に入れられなきゃ──どんな夢も絵に描いた餅だ」
その声は、熱を押し殺すようでいて、確かな鼓動を孕んでいた。
五大エースの眩しさに浸りきっていた空気が、瞬間、張り詰める。
「……はいッ!!」
いち早く返事をしたのは縁下だった。
その声に、皆が続く。
「うっす!!」
「はい」
「……わかってます」
「はいっ!!」
日向の声は、雑誌を抱えたまま少し震えていた。
だが、それは恐れではない。
挑戦を前にした、獣のような昂ぶりだ。
それを見た烏養の口元が、かすかに上がる。
彼らのどこにも──慢心はない。
「……よし。ならまずは初戦でしっかり証明しろ。お前ら全員、全国を語る資格があるって事をな」
烏養の視線が一人ひとりを鋭く射抜いていく。
祖父譲りの悪い目つきだが──そこには、確かな理知と、選手たちを想う温度がある。
「一年。お前らも、夢見てるなら立ち止まんなよ。二軍と一軍、入れ替える勢いで食らいつけ」
一年生たちは目を見張ると、すぐに頬を引き締めて力強く頷いた。
「はいッ!!」
──チームの雰囲気は、悪くない。