最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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ワカモがどっか消えてった後の話ですねぇ

追記2025/06/22:感想欄にて、ミス報告を頂き修正をしました!「優狐」さん、ありがとうございました!!


思わぬ邂逅

「先生!」

 

俺と先生がシャーレの地下室を歩んでいると、背後から鋭い声が聞こえる。

 

"ん?"

 

「あ、リンちゃんだ。」

 

俺と先生がふと振り向く。

すると、そこにはブルーアーカイブの先生なら誰もが最初に名前を知るであろう生徒、七神リンがこちらに駆け寄っていた。

 

「悠二さん...でしたか。それより先生、ご無事ですか?」

 

(名前覚えられたな、俺)

 

リンは一瞬、リンちゃん呼びをした俺に睨むような目を向けた後、先生に問いかける。

 

“え? 大丈夫だけど、どうかしたの?”

 

先生は自身の身を案じるリンに首を傾げ、問い返した。

恐らくワカモの本来の危険性に気付いていないのだろう。

 

「お二人がご無事で良かったです...」

 

"...?"

 

「もしかして、さっきワカモの事?」

 

「はい...悠二さん程には危険なので...」

 

「は?」

 

リンの皮肉の籠もった一言に、俺はリンを睨み返す。

だが、言い返そうと開いた口を閉ざすように言葉を遮り、リンは続けた。

 

「まあそれは良いのですが...」

 

(落ち着け、落ち着け俺...)

 

なんとか強張る表情を深呼吸で落ち着ける。

そんな俺を横目に、リンは現在俺達がいる地下室の中央であり、大きな円形の机の上に置かれている白いタブレット端末のようなものを手に取った。

 

「...良かった、無事ですね。」

 

(...)

 

そういうリンを見て、複雑な心持ちになった。

連邦生徒会長は一人だ。

 

"それは...?”

 

「はい、連邦生徒会長の遺した、キーと成る可能性があるもの...シッテムの箱です。」

 

"シッテムの箱......"

 

シッテムの箱。

連邦生徒会長が残したオーパーツであり、OSも製造会社も"生徒達にとっては"不明、中には...詳しい内容を省けば"彼女自身"の意思が宿っていると、そう俺は推測している。

 

(...一度ぐらい、会っておけば良かったかな。)

 

こう言いはしているものの、何度か会おうとしたこと自体はあった。

ただ、俺は転生者だ。

先生が転生者のような存在であり、同時に姿を消したということは、転生者が連邦生徒会長に干渉してしまうと何かしらの問題が発生するかもしれない。

結局は、原作知識と言うなの道標が機能しなくなることを恐れ、逆に俺から接触を避けていた。

つまり逃げたんだ、俺は。

彼女が、何よりも“世界”を失ってきた彼女そのものが、一番救われるべきなのに。

 

...閑話休題。

 

「私たちでは起動すら出来ませんでした。」

 

リンはそう言い、先生に端末を手渡しして、続けた。

 

「ですが、先生なら可能かと。」

 

“分かった、やってみるよ。”

 

「では、起動の邪魔になるかもしれません。私たちは離れておきましょう。」

 

リンは、俺の肩に手を当て、後ろへ引く。

 

「え、俺も?」

 

「当たり前です、行きますよ。」

 

俺はジト目のリンに引きずられる形でシャーレの地下室から退室した。

 

(アロナであってくれよ...?)

 

そんな祈りを、瞳が青く光る先生が持つシッテムの箱に向けながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

連邦調査部シャーレの中、その最上階のフロアに位置する執務室。

まだ朝方なのも相まって、暖かい日の光がガラス越しで部屋を照らす。

だが、俺と隣の先生の目の前に佇む"書類 of the tower"には大きな影ができていた。

 

「...仕事、結構多いんだね。」

 

オブラートに包みそう俺は言うが、元々先生が捌いている仕事の出所である連邦生徒会長は正気ではないだろう。

彼女も、1日で今日の先生が終えなければいけないノルマを捌いていた。

 

“おかしくなるよ、これ...”

 

(いやそれは...そうだなぁ)

 

そう小声でぼやいている先生は知らないが、連邦生徒会長が失踪したことによる各学園の問題を何故か先生が受け持っているのだ。

それはきっと、連邦生徒会長も同じだったろう。

 

 

その後も他愛もない会話を交わし、書類を捌く手を合間合間止める。

何故そんな事をするか。

理由は明確で、本当にそうしていないとおかしくなりそうだったからだ。

 

"...そういえば、連邦生徒会長って──なんで居なくなっちゃったの?”

 

「──あーと...」

 

思わず書類の上を滑るペン先が止まり、隣をゆっくりと見やる。

そこには、手を頭の上で組み、唸りながら背筋を伸ばす先生の姿があった。

 

「...分からないんだよな、誰にも言わず消えたらしいし。」

 

嘘はついていないつもりだ。

まぁ、この世界ではそうなったかは分からないが"詳しくは知らないし、噂だから悪しからず"と、そう付け加えた。

記憶だと、手紙は残していたらしい。

 

"...そう、なんだね。でも、書類の量...明らかにおかしいよね。"

 

「手伝いとかいないのかよ...?」

 

正に、"猫の手も借りたい状態"だった。

処理しても処理しても追加の依頼が来る...そんな状態が続いている。

着実に減ってはいるが、まるで終わりが少しずつ伸びるマラソンゲームをしている気分だ。

 

“あ、でも確か...連邦生徒会所属の子が一人来てくれるみたいだよ。”

 

「えっ名前は?」

 

思わぬ援軍に勢いよく顔を上げ、先生の方を再び見る。

生徒名簿の一部を表示した通常のタブレット。

それを視線でなぞる...水色の長髪、太陽のように明るい笑顔──まさか。

 

“名前もここに書いててあるよ。”

 

先生は指で、顔写真の右側面に書いてある項目を指す。

 

「マ...ジ、かよ」

 

“梔子ユメ...本物の、ユメせんぱ──

 

突然ドアがノックされた。

 

"あ、来てくれたかな?"

 

「!?」

 

取り急ぎ仮面をつけて素顔が隠れた直後──

 

「こんにちわっ!連邦生徒会の、統括室から手伝いに来ました!」

 

元気な挨拶が、かつての懐かしきたった一人の先輩の声が、執務室で木霊した。

 

(......ちょっとこれは不味いねぇ!?)

 

「シャーレ所属補佐官に配属になりました!ユメって言いま──

 

──直後、ユメ先輩の翡翠眼のハイライトが、うっすらと消えた。

 

「あ、え...」

 

ユメ先輩の手は、気づけば先生の背後に隠れようとした俺の背中に手を回されていた。

予想外の反応に俺は、腑抜けた声を発してしまう。

 

「...バカ」

 

「──っ」

 

「バカだよッ、ばかばかばかぁっ!何で!?何で、ここに...!?」

 

突然の罵倒。

これ以上に感傷的な気持ちになる罵詈雑言は、存在しないと思う。

でも、それ以上に俺の胸を締め付けるのは──

留めなく溢れ出す、涙だった。

全身が強張って上手く息ができない。

本来、再開した時に掛けてあげるべき言葉が、一言も出なかった。

 

"ユメ? 一体、どうし..."

 

先生の言葉も意に返さず、抱きしめる力が強まった。

骨が軋んでいるような音までしたが、ただひたすらに受け止めることしか出来なかった。

こんなの、俺に下されるべき罰の一欠片にも満たないだろう。

 

「うぅっ、ひぐっ...!!」

 

心の中で醜い舌打ちを零した。

抱きしめ返したいという本音、揺らぐ意思をなんとか抑える。

 

せめて、アビドス編が終わるまでは正体を隠さなくてはいけない。

 

今、もし"ただいま"って、言ってしまった時点で、計画が崩壊するのは目に見えていた。

 

でも、余りの精神的衝撃に消えていく聴覚とは対象的に、聞こえていない本音であり、幻聴。

それらが、僕の覚悟を嘲笑うようにハッキリと語りかけ始めた。

 

──もし、今嘘を伝えたらどうなると思う?

 

うるさい。

 

───君の唯一の先輩の心が、壊れちゃうかもよ?

 

うるせぇんだよ。

 

────もう、正体ぐらいバラしちゃっても良いんじゃない?

 

頼むから、黙ってくれ。

 

─────そもそも、俺がユメ先輩にかけた呪いなんだよ?

 

本当に何も言ってくるな。

 

 

 

 

 

「......ごめん、一応聞かせて欲しいんだけど。」

 

"五条英一君じゃない...よね。"

 

たったの二択。

合理性を鑑みれば、すぐに答え、られたのに。

 

「...人違い、だ」

 

ゆっくりと、躊躇いながら紡がれたその言葉によって泣き崩れるユメ先輩の背中をさすることも、手を差し伸べる事も、慰めることも出来ず。

俺はひたすらに後悔を仮面の下で咀嚼していた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ただ、止まったように感じられた時間は着々と進んでいたようで。

 

たった、ついさっき届いた一通の手紙によって。

 

俺と先生はアビドス高校に出張することになった。

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