最強孤高の青い春   作:兵器スキー

11 / 35
対策委員会編
想いは繋がれ、編まれる。


アビドス砂漠、その中核。

かつてそこに広がっていたのは、さまざまな家が並び、視界を埋め尽くすほどの大きな市街地だった。

しかし、幾度となくこの土地を襲った砂嵐によって、今見えるのは砂に埋もれた元住宅の残骸と、その上にわずかに舗装された道路だけだ。

 

(...ここ、以外にも来たこと無かったんだよなぁ)

 

そう内心呟く俺と先生は原作通り、アビドス砂漠で遭難していた。

来たことがないのは事実だ。

だけど、"遭難"には原作に沿わせるための建前で、行こうと思えば数秒で向かうことが出来る。

 

"英一、水持ってない,..?”

 

「...すまん、持ってない」

 

俺こと反転術式を使える術師は、回復と同時に無理矢理水分も限度はあるが回復できる。

だが先生は反転術式どころか、呪力すら"まだ"扱えていない。

 

(だが素質があるし...術式持ちと来た。ポテンシャルは計り知れない。)

 

そう思う俺には確かな確信と、覚悟が折り重なっていた。

...閑話休題。

 

(...ゆっくり進んではいるけど、シロコまだかな)

 

流石に大量の物資と先生を持って飛行することは出来ない。

座標圧縮も便利ではあるが、万能では無いし、視界が届く範囲で行使しないと、物質内に挟まったり圧死してしまう為危険だ。

 

(...流石に、何でも上手くいくようなチート能力じゃないんだよなぁ)

 

そんな他愛もないことを心の中で呟く。

直後、ドサッと言う鈍い音とともに先生が倒れた。

 

「もう無理...」

 

(...まさか、シロコイベ無いのか?)

 

溜息と共に言う俺も、この環境で厚着をするのは辛い。

だが六眼が後方に"既視感"のある神秘が検知した。

 

「えっと...大丈夫?」

 

カラカラと、ペダルにつながるギアが空回りする音を耳が拾う。

ふと後ろを見やると、眩しい太陽をバックに立つ一人の少女がいた。

砂狼シロコ、アビドス高等学校、その二年生に位置する生徒だ。

 

「あ、始めまして。」

 

「...ん。でもなんで、こんな所に?」

 

俺は心の中でガッツポーズをしながら手をひらひらと振り、挨拶をする。

シロコは質問を返すが、別に内容も、状況としてもおかしいことでもなかった。

まあ、普段アビドス砂漠にわざわざ来ようとする人は少ないだろうし、準備もしっかり行うはずだからだ。

 

「...実は、アビドス高等学校に俺と先生は用があったんだけど...遭難しちゃって」

 

「...そっか。じゃあ、久しぶりのお客様だ。あ、名前は?」

 

シロコは思い出したかのように言った。

 

「シャーレに所属している五条悠二だ、よろしく」

 

「!」

 

何かを思い出したかのように耳をピンと立てるシロコを横目に、俺は物資を呪力で強化した腕で持とうとする。

 

「...あれ」

 

持てない。

というより、凄い重たい。

 

(反転術式の使いすぎで、呪力が枯渇した...?)

 

やらかしちまった。

そんな気持ちを押し留めて、シロコに頭を下げる。

 

「...ごめんシロコ、これ持てるか?」

 

「? 分かった。」

 

「あと...これとこれとこれとこれと──」

 

「...」

 

「あでっ、なんで叩く、いででででっ...やめて、それなりに痛いから...」

 

叩かれはしたが、結局は持ってくれたことにはとても感謝している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、私の名前...言ったっけ?」

 

「...ゆ、有名人だよ、アビドス砂漠の強者ってさ」

 

「ん...悪くない、気分」

 

「そっかぁ...」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「...シロコ、あんだけ荷物あったのに速かったな」

 

アビドス高等学校、その校門を俺は視界に捉える。

 

「到着したな、懐かしい...」

 

校舎自体、砂埃自体はあるが整備されていたり、俺がいたときに剥がれていた塗装も、一部は塗り直されていた。

その事実が、この校舎が今もなお使われているということを感じさせてくれる。

 

「...ホシノは、元気...いや、そんな訳無いよな」

 

ふと、思わず出た言葉に、咄嗟に口を塞ぐ。

元気な訳ないのに、俺が元気を無くした原因そのものだと──分かっているのに。

 

「っ...ごめん──なんて、聞こえてないか」

 

誰も見ていないし、聞いていない呟きを零す。

気を引き締める俺は、変装に不備がないかを確認した上で、敷地内に足を踏み入れた。

砂地は、たった一人の怪物を迎え入れるように、足踏みと同時に舞い上がった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。