最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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文字数がミカの場面で多くなりすぎたのと、地の文が色々調べたせいで逆に滅茶苦茶なので、本当に申し訳ないです...。


今作品。あらすじにも追加予定ですが、ピクシブと一部、相違点を持たせるため、物語の設定や展開が途中、少しピクシブ投稿版と違う場合があります。


お姫様()と、王子様()

~三人称視点~ブラックマーケット~入口~

 

バシュシュシュシュン!!!

 

アビドス廃校対策委員会とその顧問が、アビドス高等学校...その校庭から砂が舞うと共に消える。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~同時刻~

 

ブラックマーケット。

 

キヴォトスに存在する、あらゆる闇が凝縮された場所。

 

学園の垣根を越え、生徒も外部の者も入り混じるこの領域は、表向きには決して表沙汰にできない商取引が日常のように行われていた、正に無法地帯。

 

その規模はもはや"市場"の域を超え、巨大な"街"と呼ぶにふさわしい広さにまで成長していた。混沌の象徴ともいえるこの場所でさえ、連邦生徒会の手すら届かぬ___それが、このブラックマーケット。

 

そんな場所に、アビドス廃校対策委員会と先生が足を踏み入れた。

 

通りには、怪しい弾薬を手にした商人や、名前も知らぬ薬品を掲げて小声で呼び込む者たちが溢れている。

 

シュタタタタタッ...

 

次の瞬間、空間を割くようにして彼らはブラックマーケットの入口に降り立った。到着まで2秒弱、時間を超越するかのような移動速度。

 

「あ、着きましたね~!」

 

「...認めたくないけど悠二さんの能力ってホントに便利よね...一度行ったことがある場所なら大体数秒で到着するって、もうチートじゃん!」

 

セリカは呆れたように言いながらも、その声には皮肉だけでなく僅かな感謝の色が滲んでいた。

 

”私もそう思う...でも「もし出力が高い状態でミスって障害物に衝突したら、全身が弾け飛んで即死だ」って言ってたね。しかも、なにより風圧とかがキツイ...”

 

先生はやや青ざめた顔で息を切らしていた。高速転移の出力による圧力には悠二の補助ありで耐えたものの、平衡感覚が多少、揺らいでいた。

 

「...ん、私達は圧力(G)に耐性があるけど.........つ、次から市街地は徒歩で行こう。」

 

「そ、そうですね...」

 

アヤネの声にも、少しだけ疲労が混じっていた。

そして、ノノミは着地地点から色々な方向を見渡し、呟いた。

 

「...ここがブラックマーケット、ですか...」

 

「うーん...こういう方向性じゃないんだったら、アビドスにもなんか名所欲しいよねー」

 

"お、例えば?"

 

ホシノもノノミト同じく、視線を水平に巡らせながら言うと、先生が興味を示す。

 

「ん~、アビドスは...水が少なくて、カラカラしてるから~...逆に水いっぱい使ったのとか?」

 

「水族館とかですかね!」

 

「そうそれ~!なんて言ったっけ?アクアリウム?とかいうのも付けてさ~!うへぇ...行ってみたいんだよねーお魚ー...お刺身ー...」

 

夢見るような表情で、だがいつもののんびりした雰囲気で語るホシノの横顔を、先生は静かに見つめていた。

その眼差しには、ただの夢想ではなく【現実にしたい】という真剣さがあった。

 

"いつか...皆で一緒に、行こうね。”

 

「...うへ。」

 

そう呟くと、先生は少しだけ空を見上げた。彼の漆黒の瞳が、どこか遠くの、たった一つの未来を見据えていた。

 

「まぁ魚料理を出すレストラン付き水族館はありますよ、サメバーガーとか」

 

「”鯨はー?”」

 

「鯨は貴重ですからねぇ。キヴォトスの海がどうなってるか知りませんけど、水族館までの運搬が大変そうです」

 

「鯨って食べれるんだ...」

 

ツッコミを行いながらも、和やかな雑談が続いていた、その時__

 

 

ダダダダダダダ‼︎

 

 

鋭い連続銃声がブラックマーケットの空気を切り裂くように響いた。

ここでは珍しくないのか、周囲の人々は【知らん知らん...】と言わんばかりに無関心な態度でスルーしていく。

 

そんな空気の中、奥から純白を基調とした高貴な制服を着た生徒が慌ただしく走ってきた。

その後ろからは、武装した不良たちが大挙して押し寄せている。

 

「こ、ここ、来ないでくださーい!わわわ、まずいです...内緒で此処に来たのであまり騒ぎを起こしたく無いのにー!」

 

"あの制服は、トリニティの...?"

 

「ん、先生行こう。」

 

"合点承知!"

 

生徒はパニック状態で、逃げながら何度も後ろを確認していた。リュックサックが跳ね、全力で駆けてくるその正面には、先生とシロコの姿があった。

 

「うぅ...全然引き剥がせない...アイタッ!」

 

少女は前方不注意で勢いよくボーっとしている先生にぶつかってしまうが、よろめきながらも先生が支える。

 

"だ、大丈夫?"

 

「ん、先生ボーっとしすぎ。」

 

"ごめん..."

 

少女が自分を支えている先生と目を合わせると、怯えた瞳に一瞬だけ安堵の色が浮かぶ。

だが、不良たちはすぐそこまで迫っていた。

 

「あ......ありがとうございます。...いえ、ごめんなさい!私今追われてまして!」

 

「ん、確かに見えるね。」

 

既に周りをチンピラ集団が囲み、ギラついた目を向けてくる。

 

「なんだぁ?おまえらは!どけよ!あたしらはそのトリニティの生徒に用があんだよ!」

 

その中の1人が吐き捨てるように声を上げた。

 

「わ、私の方には用は無いんですけど...」

 

「だろうなぁ!あたしらはおまえ拉致って、トリニティから身代金たーんまり貰ってやろうと思ってるだけだしな?良い財テクだろ?」

 

と、対策委員会を見るチンピラ達。その時は全員ドヤ顔を向けていたが、その中の一人が先生の存在に気づいた瞬間、空気が一変した。

 

「しゃ...シャーレの先生!?」

 

”あ、やあ。”

 

名前を口にしたその瞬間、チンピラ達全員の顔が青ざめる。不良たちの身体が一斉に硬直し、背筋をピンと伸ばす。

 

「あわわわわわどどどしよう!!」

 

「お、おおおちおちつけ!」

 

「え?...え?」

 

ヒフミが混乱しながら視点を左往右往させる中、不良たちの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。

そして先生は胸の近くで蹲っていた女子生徒をシロコに預けると、ゆっくりとチンピラ達に近づく。

 

"ねぇ、君達。"

 

『ひぃ!?』

 

先生は何も威圧するような言葉を発していない。

ただ、静かに、優しく話しかけただけだった。

 

"人を誘拐して、身代金なんてとったらダメだよ。"

 

『は、はい!』

 

"銃で脅したりするのもダメだよ。"

 

『はいぃ!』

 

”もうしない?”

 

『しませんしませんもうしません!!』

 

それなのに、不良たちは死神に睨まれたかのような勢いで頭を下げ、命乞いのように叫ぶ。

 

”分かった、じゃあまたね。”

 

先生が満面の笑みで手を振ると、不良たちは命からがら逃げていった。

まるで開放されたばかりの囚人のように。

 

「先生、威圧感増えたの......?どゆこと?」

 

セリカは目を丸くしながら呟いた。

 

「多分悠二さんと共通点が多いから起きたんでしょうかね~...」

 

「うへ、ホントにそうなのかなぁ...?」

 

"大丈夫、よほどのことがない限りこんなキツく言わないよ"

 

『(よほどのことがあると言うんだ...)』

 

アビドスの面々が一斉に心の中でツッコミを入れた時、場の緊張はようやく解けていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後、先生たちはヒフミを連れて少し人気の少ない場所まで移動した。

 

「さっきはありがとうございました。私、トリニティ総合学園の【阿慈谷ヒフミ】って言います!」

 

「シャーレの先生だよ。よろしくね、ヒフミ。」

 

「え、しゃ、シャーレ!?」

 

ヒフミの紹介を受けた先生は、柔らかく微笑みながら名前を返す。だがその名を聞いたヒフミは、まるで雷に打たれたかのような表情で固まった。

 

「ヒフミちゃんはなんでここに?この場所普通に危ないよ?」

 

ホシノが苦笑しながら言う。

 

「えっと、探しものがありまして。ペロロ様はみなさんご存知ですか?」

 

「へ...?ペロロ...?」

 

その言葉に、ヒフミは懐から奇妙な人形を取り出す。

ニワトリのような頭部にアイスを突っ込まれた、不思議なビジュアルの縫いぐるみだった。

 

一部の界隈で異様な人気を誇る【モモフレンズ】グッツの一つである【ペペロ】。セリカは初見だったらしく、「なにそれ?」と素直に疑問をぶつけた。

 

「あー!知ってますよ♪モモフレンズ!ペロロちゃん可愛いですよねぇ!私、ミスター・ニコライが好きなんです!」

 

ノノミの目がキラキラと輝き始めた。同志を見つけた喜びが爆発する。

 

「そう!そうなんです!モモフレンズ...私大好きで!ニコライさんも良いですよね!私、最近出たニコライさんの本!『善悪の彼方』!買えたんですよ! それも初版で!」

 

「テンションたっか...」

 

セリカの冷静なツッコミもむなしく、二人はもう止まらなかった。

まるでミニガンのような勢いでトークを繰り広げていた。

 

「それで今回はペロロ様の限定グッズが此処に出回ってるって情報が手に入ったので来たんです!それがこれです!」

 

「これ限定生産100個分しかなくって!当時コラボしたアイスメーカーさんが事業縮小しちゃってて再販も望めなくって諦めてたんですが...ようやっと手に入れました!ね?可愛いでしょう?」

 

"ウン、カワイイネ"

 

「でしょ!?流石先生わかってます!」

 

先生はどこが可愛いのか分からず、戸惑いながらも何とか笑顔を浮かべて頷いた。だが__

 

「ん、その顔は嘘だよ。」

 

「えっ?先生?」

 

"シロコ!?"

 

シロコの冷静なツッコミが、それを暴いた。

先生の表情が一瞬だけ曇り、ばつの悪い顔を浮かべる。

 

「あはは...。まぁ、そんな感じでグッズを集めに来たんですけど、先程みたいに絡まれてしまってて。みなさんがいなかったら今頃どうなっていたことか...。」

 

「...ヒフミは実際どうなってたと思う?あの時逃げなかったら。」

 

「へ?えっと...、そうですね...。」

 

シロコの問いかけに、ヒフミは少し考え込みながらも話し始めた。

 

「...まず、ブラックマーケットに集まる生徒は大きな団体を形成します。そうしないと身を守れませんから。」

 

「ですのであの場にいた生徒だけが敵戦力の全てである筈がありません。必ず次から次へと増援が来る筈。」

 

「そうなってくると戦闘が長引いて、騒ぎが大きくなり、騒ぎが大きくなれば、ブラックマーケットの治安機関がやってきます。」

 

「マーケットガードは違法武装で身を固めているので、普通勝てません。きっとそこで捕まってしまい...と、いう感じですかね。質問の答えになりましたか...?」

 

ヒフミの説明は、予想以上に整理されていた。

まるで何回も足を踏みれた経験があるかのように。

 

「ん、参考になった...でも、この場所を随分危険な場所と認識してるんだね。」

 

シロコは半分納得、半分困惑している様子。

 

「へ?それは、まあ。連邦生徒会も簡単には手出し出来ない場所のひとつですし...ブラックマーケットだけでも、学園数個分の規模がありますから、その危険性は無視出来ません。」

 

「企業も色々利権争いしてるらしいですし...専用の金融機関や治安機関まである、一種の自治区ですからね。全部非認可ですけど......あ、先生!この説明で分かりましたか?」

 

"な、何となくね..."

 

先生の頭は、情報量の多さに若干パンク寸前だった。

 

「えぇ...」

 

"あ、あはは..."

 

ヒフミがやや不安げに見上げるが、先生は曖昧に笑うしかなかった。

 

「ん~、それじゃあ、急だけど助けてあげたお礼に...【ブラマ・マスター】のヒフミちゃんにおじさん達を手伝ってもらお~!」

 

「はい!ヒフミちゃん!それじゃあよろしくお願いします!」

 

そんな中、ホシノが唐突に提案を放つ。

ノノミも突然の提案に賛成し、ヒフミの肩を押す。

 

「ええ!?」

 

「じゃあしゅっぱーつ」

 

「ええぇぇぇ!!?」

 

ヒフミの抗議の声もむなしく、流れるようなテンポで同行が決定。彼女はほぼ強制的にアビドスに連行され、案内役を引き受ける羽目になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~数時間後~

 

何時間も歩き続けたアビドス廃校対策委員会とヒフミ、そして先生。さすがに疲れが限界を迎えたのか、先生はセリカにおんぶされていた。

 

「はぁ...しんど」

 

セリカは心底嫌そうな...もしくは、頼られて嬉しそうな声を上げていた。

 

「おかしいですね...でも、ここまで何も情報が出ないなんて...」

 

"ん?そんなにおかしいの?"

 

「はい......普通、ここに商品を卸すような企業は逆に開き直っているので、変に隠したりしないんです」

 

ヒフミはとある黒いビルを指差しながら説明を始めた。

 

「例えばあのビル、あそこは闇銀行です。キヴォトスの犯罪の15%の盗品はあそこに流れているそうで、それを財貨に、武器を仕入れ、その武器で強盗や誘拐をし、またここに流す。この悪循環が、彼処では繰り広げられているそうです」

 

「ひえー...世も末だねぇ」

 

「...銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか...」

 

「はい。ブラックマーケットにおける銀行、というのは、まさに犯罪組織。その上、先程説明した治安組織もこの闇銀行を支援しているので...。下手な戦力では返り討ちになってしまうため、生徒会も安易に手が出せない領域になっています...」

 

ブラックマーケット...既に闇の深い業界ですら表と裏が混在しており、利権と暴力が交差する。ヒフミの語る現実に、皆が無言になる。

 

"...アビドスの外では、こんな事になってたんだね。"

 

「......まって、何かくるよ、隠れて。」

 

ホシノが静かに身を低くするよう促す。そっと覗くと、武装したマーケットガードのオートマタが現金輸送車を護送していた。

 

そこには異様な程の武器、武装を装着した巨大なオートマタが車を護送している光景。

 

「...あれは、マーケットガードですね...アレが護送.........一体何を...?しかもあれは、現金輸送車ですね...。」

 

対策委員会にとって、見覚えのある車だった...そう、朝にやってきた現金輸送車だ。

 

「...あの車って」

 

"...闇銀行に入ってったね"

 

「...ドライバーはいつもの奴だった」

 

「...つまり、私たちが返済した利息は......犯罪組織に使われていた、と」

 

「ま、まだそうハッキリと決まったわけでは...証拠もありませんし、あの輸送車の動きを把握するまでは...」

 

皆が悩んでいたその時、シロコがある案を提案する。

 

「ねえ、ホシノ先輩、ここは例の方法しか。」

 

「ん?例の方法...?あぁ!あれかぁ!」

 

「そうですね!確かにあの方法なら!」

 

「...!あれって...!まさか...」

 

"...そ、それって、あの方法じゃ...無いよね...?"

 

「あ...あの...! 話が全然...」

 

「...残された方法はたった一つ。」

 

「銀行を襲う」

 

【デーン!】とサウンドエフェクトが鳴ったかのような、ツッコミが間に合わないほどのテンポで、ブラックマーケットの調査計画が狂い始める。

 

「はぁぃぃぃぃぃいいいい?!?!」

 

”シロコ?!?!ちょっとm「大丈夫、犯罪の証拠を明らかにするだけ。」...えぇ...”

 

絶叫するヒフミに構う間もなく、先生の抑制にシロコの冷静な声がカウンターをかます。

 

「えぇっ...と...その...「ごめんヒフミ、私の想定が甘かったせいで、ヒフミの覆面がない。」ヒイィ!わ、私もぉ?!」

 

「そうですよ!仲間外れなんて、それは可哀想過ぎます!」

 

善意なのか、もはや暴走なのか、ノノミは全力で背中を押してくる。この場には、拒否権など存在しなかった。

 

「そそそそんな...私は全然気にしませんからぁ...」

 

なんとか逃げ切ろうとするヒフミに__

 

「ヒフミちゃん!...こちらをどうぞ?」

 

__ノノミの手には、視界の穴に「5」とだけ書かれた謎の紙袋。

 

「いやっ、、ちょ...ちょっと待ってくださ..nono!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

バサッ

 

情け容赦なく紙袋がヒフミの頭に被される。瞬間、視界は数字と暗闇に包まれた。

ノノミはヒフミに「5」と書かれた視界穴だけがある紙袋を被せる

 

「うん!とってもお似合いです!」

 

「ぅぅぅぅぅううう....これは...やっぱり...私もご一緒するんですかぁ...?」

 

「なぁに言ってるのさヒフミちゃん!数時間前に約束したじゃん?おじさん達を手伝うって!」

 

弱々しい声で問いかけるヒフミに、ホシノが笑顔で追い打ち。

 

「うぅぅぅ...私ぃ...もう生徒会の方々に会わせる顔がありません...」

 

既にヒフミの手は紙袋越しで顔を覆っていた。

 

「大丈夫よ!私達は悪くないし!」

 

慰めのようで、まったく安心できないセリカの言葉がヒフミにとどめを刺した。

 

「うぅ...」

 

「そういえば、先生はどうするの?」

 

アビドスの面子が正に暴走する中、一番冷静で一番冷静じゃないシロコが問う。

 

"悠二がなかなか来ないから、連絡して来たら私も一緒に参戦しようかな。"

 

"何故なら...君たちのお金が犯罪に使われてるとしたら、それは由々しき問題だしね。"

 

そして先生が悠二にメールで【位置情報】を送って手伝ってほしいと話し、悠二の既読が付き。

「ごめん、遅れてたけど今から行くわ。」

の返信を受け取った直後__

 

”悠二が今から来るって言っtシュタン...「オッハー!!、呼ばれたから来たよー......って、どしたの、君たち。」...?!?!”

 

『いや呼ばれてから来るのはっや!?』

 

唐突に現れた悠二に、全員がツッコミを揃える。

 

「あんた何してたのよ...!「俺も後で瞬間移動で直ぐ向かう」って言ってたじゃない!!」

 

「いやぁごめんごめん、呼ばれなかったから大丈夫かと思ってさぁ、ゲヘナ行ってたんだよね。」

 

「えっ?!ゲヘナですか?!ここからだとかなり距離がありますよ?!」

 

「ん?あぁトんだの」

 

『(説明する気無いなこいつ...)』

 

悠二以外の全員の意見が一致する。

 

「一応聞きますが、悠二さんはゲヘナで何をなさってたんですか?」

 

ヒフミが質問を悠二に飛ばす。

 

「聖園ミカ...だっけ...と、会ってたんだ。」

 

「はいぃっ!?」

 

ヒフミの何回目かも分からない絶叫で、時が止まる。

 

その【聖園ミカ】...その名が持つ意味を、ヒフミは知っていたからだった。

 

だが、その意味を知らなくとも、先生は問う。

 

"悠二...本当に、会っただけなんだね?"

 

「...あぁ、本当さ。」

 

先生が問いかける声は静かだったが、その目は冷たく、しかし深い悲しみで埋め尽くされていて。

悠二の笑顔は、心の痛みを抱えたままのものだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~数分前~悠二視点~ゲヘナ市街地~路地裏~

 

 

「...結構しぶとかったなぁ。」

 

賞金首を仕留めた俺は、ゲヘナ市街地の鬱蒼とした路地裏を抜けようとしていた。

周囲に誰の気配もないのを確認し、蒼での移動に入ろうとした時__

 

「...誰だ。」

 

六眼が未確認の神秘を背後に捉えていた。

ゆっくり振り返ると、そこに立っていたのは、どこか浮かれたような笑顔の少女。

 

「あはっ!よく気づいたね...じゃなくて! 私は【聖園ミカ】だよ! 知ってるよね?」

 

 

 

「___は?」

 

 

 

____私は________

 

 

 

聞こえた、確かに。

 

 

____聖園、ミカ_____

 

 

巻き込まれたくもない政治の渦に飲まれ。

 

大好きな親友を、殺してしまったと思い。

 

最初、和解だったものは、憎悪に変換され。

 

暴走し、学園で羽ばたく翼を失って、殺しに手を染めかけた。

 

 

そんな彼女を、ミカを、元の、世界で、1人だっ、た...に重ね合わせでじま゙ッ゙

 

駄目だ考えるな思い出すな下らない記憶を。

 

俺は、マモレナカッ____

 

「お゙ッッ゙エ゙っ...!! ん゙ぅ゙ッ...!」

 

ビチャチャチャッ...

 

「まっ、ぇ...?」

 

最悪だ、吐いてしまった。

俺は、塞いでも、塞いでも溢れ出てくる胃の内容物を飲み干し、すぐに出来る限りの返事を返そうとする。

 

「知ら゙な゙っ...ゔっ゙...い...な。」

 

でも、腹の底から出てきた返事は、余りにも情けなかった。

 

「だっ...だい、じょうぶ...?」

 

ミカは俺に困惑しながらも心配の声を掛けてくれ、ミカの懐に入っていたと思われるハンカチを恐る恐る渡そうとしてくる。

 

「はっ、はッ...よゔや゙、ぐっ...会え゙...たっ゙、のに゙...」

 

「っ...」

 

乾いた笑いと、潤っている涙しか出てこない。

臓器を内側からヤスリで削られたような痛み。

 

痛い。

 

痛い。

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 

 

 

...今の俺は、まるで___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___既に死んだ親の帰りを死ぬまで鳴く、小鳥のように...惨め、だっただろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜ミカ回想〜ティーパーティーテラス〜

 

 

 

__連邦調査部シャーレに、ゲヘナを起点とし賞金狩りを行う【五条悠二】が加入、要警戒人物。

 

以前、ティーパーティの皆と報告書に目を通している時に見た一文。

 

「(...多分、いつも賞金狩りをしているゲヘナ自治区の連中とは仲が良いのかな...?)」

 

...と、考えた私は__

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「最近、シャーレの先生の補佐?って人居るじゃん?」

 

同じ報告書を片手に紅茶を飲んでいるセイアちゃんに声を掛ける。

 

「あぁ、確かにいるな...それがどうかしたのかい?」

 

セイアちゃんは多少の興味を持った顔で、問い返してきた。

 

「ヘイローが無いのにさ、単独でD.U.地区の不良アジトを蹂躙したりと、何かとトリニティも立場ヤバくない?」

 

私はそれっぽい理由を並べ、セイアちゃんが持っている興味を更に惹きつける。

 

「ですが...敵対意思はまだ彼にはないとか思われますが...」

 

ナギちゃんも話に入ってきた、狙い通り。

 

「ナギサの言うことも尤もだ。だが、このまま放っておくと、ゲヘナと手を組んで襲いかかってくるかもしれない。と言うことかい?」

 

「うん、報告書の文が本当なら...相当厄介だと思うんだよね、目に追えないほどの瞬間移動、浮遊能力、そして謎の赤い閃光を発せられるのと、銃弾を止めるバリア?まで展開できるらしいじゃん...?」

 

私は、らしくもなく力説した。

 

「...つまり、そんな彼と同盟を組みたいと?」

 

「いや、どちらかと言うと...不可侵条約、かな?」

 

「なるほど...?」

 

ナギちゃんは私の一言を放った瞬間、一瞬肩が揺れる。

恐らく、【ナギちゃんが計画しているゲヘナとの平和条約とも関係している】からだろう。

 

「つまりは、このティーパーティの席に彼を呼ぶ、と?」

 

「いや、私から彼に会いに行くの!」

 

胸を張って言い放つ。が__

 

「...ミカ、それは止めたほうが良い...あまりにも危険だ。」

 

__セイアちゃんの口から出てきたのは反対の声。

 

「え~!セイアちゃんも気になる癖に~?」

 

「私は決して、ミカ程は懐きやすい訳じゃないからな。」

 

私の挑発は全く効いている様子はなく、逆に、逆鱗に触れる遠回しな侮辱で返される。

 

「え?なになに? 私が小動物って言いたいの~?」

 

「さて、どうだろうか。」

 

セイアちゃんの侮辱にまんまとハマってしまった上に、惚けられる。正直、今直ぐにでもキレてしまいそうだ。

 

「...その生意気な口、今すぐに__「二人共、落ち着いて下さい...。」__はぁ...」

 

「...すまない。」

 

ナギちゃんの仲裁に、私は頬杖をつきながら深い溜息を零し、セイアちゃんは軽く謝っているが、全く表情の変化が見られない。

 

「(もう...セイアちゃん、ムカつく~...)」

 

「...だが、ミカがそこまで言うならやってみれば良いと思う。」

 

「え、良いの!?やった~!」

 

さっきまで反対していた一応、現ホスト__セイアちゃんの許諾に、私は両手を上げて喜んだ。

 

「...ですが、条件があります。」

 

「む?」

 

「警備と称して、私とセイアさんの派閥から監視役を付けさせていただきます。」

 

「え?」

 

「...それだけは、譲れません。」

 

「わ、わかった...。」

 

「おや、まさか【二人きり】で話したかったのかい?」

 

「そ、そそそそんな、違うって...///」

 

「...ミ、ミカさん?愛であふれるのは結構で__

 

「なっ!?もう良いもんっ!!!セイアちゃんとナギちゃんのバ~~~カッ!!!!!

 

そう言い放った後、席から飛び立ち入口を粉砕して自室へと戻った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「...せめて、扉は開閉して欲しいものですね...。」

 

「無理な相談だろうね、多分。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

最初は、ただ、唯の、興味だった。

 

 

 

報告書やニュースを探っても、彼の動画どころか、写真の一枚すら無かった。

 

 

 

ただ、彼は実際に会ってみると__

 

 

 

__はっ、はッ...よゔや゙、ぐっ...会っだっ゙、のに゙...

 

 

 

彼は弱りきった小鳥のように、私を見た瞬間、何かに苦しんでいた。

 

 

 

息を切らし、目からは涙が溢れ、嗚咽を漏らしていた。

 

 

 

何故だろうか、そんな彼を見ていると。

 

 

 

救いたいと、思ってしまう。

 

 

 

昔から私はそうだった。

 

 

 

面倒くさがりなのに、自己中心的なのに。

 

 

 

理由もなく、誰でも構わず、困っていたら助けたくなってしまう。

 

 

 

きっと、きっと...これは私を縛る【呪い】なのだろう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~公園~悠二視点~

 

吐き気や涙がひとまず落ち着いた頃、ミカに手を引かれ、俺はゲヘナの中でも凄く静かで自然豊かな公園のベンチに座っていた。

...ミカ、こんな場所知ってたんだな、ここゲヘナなのに。

鳥のさえずる声が聞こえ、風で靡く葉っぱ同士の擦れた音が聞こえる。

隣には、未だに心配するように俯いている俺の顔を覗き込む、ミカの姿があった。

肩はほぼくっついていて、正直...恥ずかしい。

 

「...ごめんな、初対面なのに、みっともない姿だった、よな。」

 

俺は、ミカに謝罪した。

実際、謝罪しても許されるとは思っていなかったが、ミカは以外にも否定の言葉を述べた。

 

「...ううん。」

 

「いや、でも__「大丈夫だよ」

 

ミカは、俺の言葉を遮るように声を上げた。

その姿は、心無きものを救う天使そのものだった。

一時の沈黙が訪れた。

 

「...護衛とか、いないのか?」

 

そう言えば、ミカの周り...どころか、この公園では少なくとも神秘と呪力は検知されなかった。

 

「...あっ...置いてきちゃった!」

 

「は!?...それ、大丈夫なのか?」

 

だがミカの爆弾発言に、俺は少し引腰になる。

...もう、今更かもしれないけど、俺との関わりで物語が反れるのは避けたい。

 

「いや、多分...ね?」

 

だがミカは、あっさりとした態度で返す。

もう駄目だな、これ。

 

「...そうか。」

 

俺は気を持ち直しつつ、ある決断をする。

 

「少し、聞いてもらえないか?」

 

「ん?なぁに?」

 

ミカは疑問符を浮かべ、首を傾げた。

 

__やっぱり、似てる。

 

ぽつり、ぽつりと語りだす。

 

「...詳しくは言えないけど、昔...妹が、俺のせいでっ...死んだ。」

 

「っ...!?」

 

ミカは、俺が放った【死】という単語に、その黄眼のハイライトを失った。

 

「そんな家族の姿を、ミカと重ね合わせてしまったんだ...ごめん。」

 

「ぇ、ぁっ...」

 

ミカは酷く動揺し、上手く言葉を出せていなかった。

何も脈略もなく言ってしまったから、まあ当然の反応だろう。

 

「...ただ、それだけなんだ、気にしなくて良い。」

 

「...」

 

俺はベンチからゆっくりと、その木製のベンチから立ち上がる。

 

「...」

 

ミカは無言で、俺を案ずるような目で見つめてくる。

 

「......じゃあな、あっこれ、俺のモモトークのQRコードな。」

 

「っ......う、うん!」

 

俺が別れの言葉を言い、スマホの画面を見せると、ミカは笑顔で手を振ってくれた。

【またね】と返したかった......でも、多分、アビドス編とパヴァーヌ編が終わるまでは無理だろうからなぁ......

 

そうして、今までで一番抵抗のある蒼を使い、ゲヘナの公園を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

11:51 悠二『今日、ミカと話せてよかった。用事に関しては、大丈夫だ。俺はゲヘナともトリニティとも手を組む予定は一切無い。』

 

既読 11:53 あなた『私も話せてよかった!』

 

 

既読 11:53 あなた『それに私の用事、気づいてたの!?』

 

 

既読 13:54 あなた『あ、ごめん、お昼ごはん食べてくるね!』

 

 

11:56 悠二『返事遅れてすまん。』

 

 

11:56 悠二『うん、大体予想はついてたよ。あとこれから暫く忙しいから既読はつけられたとしても返事が不安定になるかもしれないから、マジな用事があったら電話で頼む。』

 

12:29 ミカ『分かった!』

 




※ミカを見て吐きかけた理由は、かなり後に全容が明らかになりますが、簡単に言えば転生前のトラウマです。

あと、ミカが本文で言った悠二との不可侵条約は、後のエデン条約にも繋がってきます。

↓トリニティ視点で簡単に説明すると↓


ゲヘナ「やばい!なんか強い人現れた!戦力にほしい!」

↑(英一は一応ゲヘナの勧誘を全て断っている。)

トリニティ「なにぃ!?戦力とまでは言わないけど、自分の学園守らないと!」


となったので、トリニティは今回、どちらかの選択肢を取らざるを得なくなります。


1ゲヘナ学園自体との不可侵条約or同盟。(後にエデン条約になる。長い目で見ればこっちの方が関係が向上するかも?)

2英一個人での不可侵条約or同盟。(エデン条約は無しになるが、こっちの方がトリニティ的には都合が良い!)


ていう感じです。
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