最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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《前回のあらすじ!!》

"悠二...本当に、会っただけなんだね?"

「...あぁ、本当さ。」

「話は後でよぉぉぉくおじさんに聞かせてもらうね?」

「...俺、終わったわ。」

"ど、どんまい...。”

「とりあえず!覆面水着団!...出発です!!」


未知の引力

~三人称視点~闇銀行内部~

 

 

 

 

闇銀行。

 

口座が凍結した際にどうしてもお金を必要とする生徒が最終的に辿り着く場所である。

 

そんな場所に便利屋はいた。

 

「お待たせしました、お客様。」

 

「何が【お待たせしました】よ!本当に待ったわよ!6時間も!ここで!融資の審査になんで半日もかかるの!?別に他に客いないのに!」

 

アルの叫びは、我慢の限界を越えていた。

何時間も狭い空間でただ待ち続け、苛立ちはピークに達している。

その精神的疲弊は、明らかに表情や声色に現れていた。

なお、他の便利屋のメンバーたちは、長時間の待機に完全にやられていたのか、ソファに倒れ込んで熟睡中だった。

 

「私共の内々の事情でして......ご了承ください。ところで、お客様は先程ような発言、態度を取れる立場なのですか?当社の助けが必要だから来たのでは?辛抱強くお待ちいただくことも大事かと...それとお客様。」

 

パチンッと銀行員が指を弾く。

 

すると、闇銀行に雇われたヘルメット団が寝ている便利屋達を起こそうとする。

 

「おら、起きろ。こっちも仕事なんだよ」

 

「うはっ!?えっ、なになに!?」

 

「...んん、なに...?」

 

「あ、ああっ!?居眠りしてすみませんすみません!?」

 

ヘルメット団により、寝ていた便利屋たちは次々と無理やり起こされた。

不意の衝撃に飛び起きる面々。ソファからずり落ちそうになる者もいれば、完全に寝ぼけている者もいる。

 

「...割と直ぐに起きたな、普段結構手こずるんだが。」

 

銀行員の目__電子ディスプレイに浮かんだ目が、ニコリと笑う。

だがその笑顔は、どこか人を苛立たせる無機質な皮肉を含んでいた。

 

「そちらでお休みになられると困ります。起きて、お話を聞いていただかないと」

 

「「「.........」」」

 

「さて、では一緒にご確認を。お名前は陸八魔アル様、ゲヘナ学園の2年生、便利屋68の社長、と書類には記載されていましたが...。申し訳ありませんがペーパーカンパニーでは?財政状況は破綻しているようですが。」

 

書類を手にした銀行員は、冷淡な態度で融資申請の審査結果を読み上げる。

その言葉は一つひとつがアルの胸に突き刺さるようだった。

 

「ちゃ、ちゃんと普段は稼いでるわよ!今回は依頼料を回収出来てないだけで...!」

 

「それと社員数は4名との事ですが、無駄に肩書きを増やしてどうするのですか?ごっこ遊びにしかなりませんよ。

それに、必要以上に事務所代がかかりすぎです、身の丈に合った物件を見つけていただかないと。

それと陸八魔アル様、あなた以前にブラックマーケットで騒ぎを起こしましたね。マーケットガードの記録に残っていました......それらの事柄から統合して、融資は難しいと判断しました。お帰りください。」

 

丁寧な口調とは反対に、最期には完全に突き放すような言い方だった。

 

「はっ、ちょ、えっ!?ま、待ちなさい!闇銀行ってどんな生徒でも金を貸すんじゃないの!?」

 

「違います。金を貸し、その分の利益を回収出来る見込みがあるからこそ、金融は成り立つのです。通常の銀行より回収手段が多いからこそ、門戸が広いだけで、そこは変わりません。

この6時間で便利屋68の事を調べ尽くしましたが...そうですね。まずはより堅実な仕事から着手したほうが良いのでは?日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますが。」

 

「............ッ!」

 

心の中で、理性が警告音を鳴らしていた。

この場で暴れたら終わりだ。

マーケットガードが即座に対応するし、便利屋としての信用も失墜する。

 

「(やっぱり私は、アウトローになれないのかしら......ここで暴れた所でマーケットガードが直ぐに対応する。ただ私たち4人ならどうにかなるかもしれない。)」

 

アウトローになりきれない自分。

それを痛感する瞬間だった。

 

「(闇銀行で事件を起こしたと知られたら、二度と依頼が来なくなるかもしれない。...情けないわね...陸八魔アル。なにも自由に動けていない...)」

 

ふと、社員__大事な仲間たちの方を見る。

彼女らは【社長の判断に従う】という目をしていた。

 

「(...私が...目指すアウトロー...恐れ知らずで、何にも縛られず、仲間を見捨てない、ハードボイルドなアウトロー......そう...なりたかったのに)」

 

何もできない自分が、惨めだった。

気づけば、理想と現実の狭間で、心が沈んでいた。

 

「(......あの時の、悠二さんみたいに、どんな相手にも立ち向かえる......そんな人に、なれないわね...私は...)」

 

仲間に背中を預けられる自分なのに、今の自分は、そんな仲間達の期待に応えられていない。

【アウトロー】という理想に手が届かない。

アルの胸に悔しさがこみ上げてくる。

 

 

 

 

そんな時__

 

 

 

 

バガァァァァァァァッッッン!!!

 

 

 

 

衝撃音と共に、銀行の壁が吹き飛び、室内に居た全ての視点がその方向を一斉に向いた。

 

『業務お疲れサマンサー!グッドルッキングガイの五条悠二でーす!』

 

真っ黒な服装に、仮面と目隠しつけている男___五条悠二が挑発込みに名乗り上げた。

 

(――な......なんかきたぁぁぁ!!?)

 

まさに乱入。あまりに唐突な登場に、室内の誰もが呆気に取られる。

アルも怒りどころか、ただただ困惑するばかりだった。

 

「な、なんだ貴「ッス......」ギュァァァァドゴン...ぎゃぁ!?」

 

次の瞬間、悠二が左手をバッと横に振り向けると、銃火器を持ったマーケットガード達が、まるで見えない引力に吹き飛ばされ、壁に激突して行動不能となる。

 

『!?』

 

事態が急変し、タレットが悠二の敵意を察知して起動を始める。

だが__

 

「はーいさせないよ〜」

 

「ん、制圧完了」

 

【1】と、【2】の数字が刻印されている覆面を被った生徒たちがタレットに急接近し、瞬時にショットガンとアサルトライフルで破壊した。

 

「この場所は我々覆面水着団が占拠した!全員その場に伏せて武器を持ってる者は捨てて!でないと...」

 

「痛い目にあいますよ~?」

 

ノノミが構えたミニガンが、説得力と恐怖を持ち、指示の意味を更に強くする。

 

アルの対応をしていた銀行員が慌てて受付裏に隠れ、トランシーバーを手に取った、だが__

 

「...術式反転、赫」

 

バアアアアアアアアアン!!!!

 

次の瞬間、通信ボタンを押すまでも無く、赤い閃光、轟音と共に銀行員の胴体が半壊し、金属の破片が吹き飛ぶ。

悠二はその残骸を鷲掴みにし、容赦なく握り潰す。

 

「君等も抵抗するとこんな感じのスクラップになるよ?こんな感じに、ね!」

 

グシャッ!!!

 

まさに見せしめ。

恐怖は瞬時に広がり、銀行員や客は勿論、マーケットガードすら叫んだ。

 

「ヒィィィィィィ、命だけはぁぁぁ」

 

「それだけはやめてくれぇええええ!」

 

「キャアアアアアアァ!!」

 

「...もうあの人一人で良くないですか?」

 

ヒフミでさえ、味方である悠二の行動に少し怯えていた。

その【5】と書かれた紙袋越しの顔は、正に真っ青だった。

 

「私達の目的はただ一つ、あなた。このバッグに少し前に到着した現金輸送車から受け取った書類を入れて。はやくしないと...」

 

そしてシロコが冷静に、生き残った銀行員に指示を出す。

バッグを突きつけ、目的の書類の回収を促す。

 

「こうなっちゃうよ~?」

 

五条悠二もクシャクシャになった銀行員を自慢げに見せびらかし、シロコの言葉に便乗するが。

 

「お待ち下さい!本日の取引記録は全て金庫の中にございます!だから命だけは...」

 

「...これですか?」

 

「はい......しかし困ったなー...、今ちょうど金庫の鍵が無くて、取りに戻ってもよろしいですか?(よし、この隙に逃げ... )」

 

「案内お疲れ、壊すから鍵はいいよ。」

 

冷酷かつ淡々とした返答に、銀行員の背中が凍る。

 

「え?」

 

「(よし誰もいないな、まさか、こんな時に使うときが来るとは...)」

 

__深洋_吸引_亡者の啼声

 

 

悠二が詠唱を始め、金庫の前に立つ。

 

___「捌」

 

 

スパパパパパパパパパパッ!!!

 

「...よっし」

 

鋭い斬撃が幾重にも走り、分厚い鉄扉を容易く刻み、破壊する。

 

ズガアアァァァン!!!

 

その後、英一は傷だらけの扉を蹴破り、内部に侵入し書類と紙幣が混ざったもの、書類が入った棚などを漁り尽くし全部をバッグに入れた。

 

「これで目標を確保...おい、お金は別にいらねぇんだけど...」

 

敗北を悟った銀行員たちは、もう抵抗の意思すら全くない。

銀行員は、ただ情けなく泣き叫ぶことしかできていなかった。

 

「もうかんべんしてくださぁぁぁい!!いやぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「....ま、いっか...初の御厨子も上手く発動できたしな。」

 

悠二は説明するのも面倒だな、と放置していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後、アビドスメンバーと先生...そして悠二は銀行から飛び出した。

悠二は不可視の術式順天【蒼】を地面に展開し、慣性を増幅させた補助で、アビドスメンバーのスムーズな逃走を助けた。

いつもより体が軽いなと感じていたアビドスメンバーと先生は、口笛を吹き、誤魔化しながら先に逃走先に逃げた悠二を問い詰める事を同時に誓った。

 

そして、アビドスメンバーと先生を追っていた増援は___

 

「奴らを捕らえろ!道路も封鎖しろ!ブラックマーケットからネズミを逃すな!それからあの頭のおかしいバカアホ目隠しは出禁にしろぉぉぉぉ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「くしゅんっ...!」

 

「......風邪か?いや、時期おかしいよな。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~闇銀行~内部~

 

「...お、追うわよ!」

 

「へっ?アルちゃん?」

 

アルが走り出した。

 

ムツキとカヨコは顔を見合わせる。ハルカはもうアルを追いかけ初めていた。

 

「...取り敢えず、行こう」

 

「そうだねー」

 

そうして続々と走り出した便利屋はアルの少し後方で会話をする。

 

「あ、あの...あの人達って...アビドス生徒達と、悠二さんですよね?」

 

「うん......何やってるんだろうね。」

 

「まあでも、あのむかつく銀行員をぶっ◯してくれたから感謝しないとね!」

 

「......それには同感、かも。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~アビドス近郊~夕方~

 

 

 

ブラックマーケットから離れたアビドス近郊の空は、夕焼けが滲むように赤く染まり始めていた。

対策委員会の面々にとっては見慣れた風景で、覆面水着団は逃走に成功していた。

 

「......もう脱いでいい?」

 

質問をしてはいるが、セリカは既に覆面を引っ張り始めている。

 

「ん、大丈夫、追撃はもういない。」

 

シロコの冷静な声が返ってきた。

 

「...よかった~!」

 

セリカは安堵の息と共に覆面を取り、頭を振って乱れた髪を整え始める。

 

「ん。ミッションコンプリート」

 

その隣で、シロコはまだ堂々と覆面姿のまま立っていた。

片手には、他のアビドスメンバーが使っていた覆面が束になり持たれている。

 

「シロコ?脱がないんですか?」

 

アヤネが首を傾げて問いかけると、ホシノが冗談めかして続ける。

 

「天職感じちゃって脱ぎたくないんじゃなーい?...シロコちゃん?」

 

ホシノの圧を感じたのか、一拍おいてシロコは「...ん」とだけ答えると、ゆっくりと覆面を外した。

 

"みんな、お疲れ様。"

 

先生がそう言ってから間もなく、ヒフミが口を開いた。

 

「いいえ......ではなくて!悠二さんの...何ていうか、謎の力はなんですか!?」

 

"あ、ごめん...今悠二はいないし...私も詳しくは知らないんだ。"

 

「えぇ...そうなんです、か...」

 

ヒフミはどこか冷めたように肩をすくめる。

そして、一瞬野沈黙の後、アヤネが口を開いた。

 

「あの...悠二さんから預かったこれ、どうしましょう...。」

 

改めて全員の視線を集めるように、現金がたんまり詰まったバッグを取り出した。

 

"これざっと...1億、あるね。"

 

「...へぇっ!?悠二さん、現金盗んじゃったの!?」

 

セリカが驚愕の声を上げると、シロコがスマホを見ながら答える。

 

"いや...【急いで今日の書類入れてたのに、銀行員に勝手に入れられた】ってメールで言ってるね..."

 

「多分悠二さんに銀行員がびびっちゃったのかなー?」

 

先生の報告に、のホシノが苦笑しつつ呟いた。

 

「なるほどね~...本当に5分で1億稼いじゃったなぁ...」

 

セリカがバッグを両手で持ち上げ、思わずうっとりとした表情を浮かべる。

 

「まぁ、借金が9分の1返せるし、いっか。」

 

"いや......これは返さないとダメだよ。"

 

先生がキッパリとした声で全員を制した。あまりにも静かで、しかし強い言葉だった。

 

「え?ちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!? 1億円よ!? これだけあれば借金返済だって......」

 

「え、ダメだよセリカちゃん! そんなことしたら本当に犯罪になっちゃう!」

 

アヤネが慌ててセリカを止めようとする。だが、セリカの目にはまだ迷いがあった。

 

「アヤネちゃん、何言ってるの!?こ...このお金はそもそも私達が汗水流して稼いだお金なんだよ!?......それをあの闇銀行が悪いことに使おうとしてたんじゃない! 私達のお金を犯罪に使われるくらいなら、私達が正しく使った方がいいに決まってるでしょ!!」

 

「私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私達が正しい使い方をした方がいいと思います」

 

ノノミが普段のふわっとした雰囲気を捨て、真剣な眼差しで言い切る。

その表情に、アヤネは一瞬だけ言葉を失った。

 

「の、ノノミちゃんまで......」

 

議論は次第にヒートアップしそうになるが、シロコが先生の方に視線を向けて、静かに問いかける。

 

「ん......先生はどう思ってるの?悠二さんは...いないけど。」

 

先生は迷うことなく、そのバックを両手で持つセリカと目を合わせる。

 

"...セリカ"

 

「な、何...?」

 

”私は生徒に、犯罪をしてまで物事を解決するような方法に手を出して欲しくない。”

 

「...なんか、いつもそんな事言わないよね、先生。」

 

「し、シロコちゃん...。」

 

シロコのぶっちゃけ発言に、ホシノは【それ、言っちゃいけないやつだよ...】と小声で耳打ちをする。

だが、時すでに遅し。

 

"...シロコ、これから一週間ナデナデしない"

 

「ッ!そんな...」

 

それを聞いた瞬間、立ち直りかけていたシロコの耳が、ふにゃりと垂れた。

先生の声は、少し優しさを含んで続く。

 

「...シロコちゃんはともかく...もし、これに慣れちゃうと......この先またピンチになった時......仕方ないよねとか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う。おじさんとしては、可愛い後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー」

 

「そ、そうだけど......でも...でも...」

 

ホシノの言葉は、セリカの胸にじわじわと染み入っていった。

それでも迷いは消えない。

するとシロコが改めて、先生とホシノの意志を受け止めたように、語り始めた。

 

「ん...先生とホシノ先輩の言う通りだと思う、私達に必要なのは書類だけ。

確かに今回ここにあるのは犯罪者の資金。これを正しく使ったっていいのかもしれない......

でもこの手を次もを使わないなんて保証はない。」

 

シロコの言葉には、冷静な分析と仲間への信頼がにじんでいた。

更に追い打ちをかけるように、ホシノは言う。

 

「後さ、こんな完全犯罪みたいな方法に頼るなら、セリカ最初からノノミが持ってゴールドカードに頼ってたはずだよね?」

 

その一言で、セリカはハッと何かに気づいたように目を見開いた。

 

"...最終的な判断は任せるよ、でも、それでも、私はセリカは...いや、アビドスメンバーには...犯罪に手を染めてほしくないんだ。"

 

仲間全員の想いが重なった時、セリカはようやく言葉を絞り出す。

 

「...............ごめんなさい、みんな。」

 

「そういうことー」

 

考えがまとまったところで、ホシノが拍手を2回し、いつもの口調で言った。

 

「そんじゃ、書類だけ持って行こうか。こんなお金持ってたって、面倒事に巻き込まれるだけだしね。」

 

"そうだね、でもどこに置く?"

 

その問いに、ホシノは軽く手を振る。

 

「んーそこら辺捨てとけばいいと思うよ、ほら貸して~」

 

ためらいながらも、セリカは現金入りのバッグをホシノに手渡す。

 

「ぽーい」

 

ホシノは軽く助走をつけて、そのままバッグを大きく投げ飛ばした。

そうして、ようやく帰ろうとしたその時だった。

 

「ちょっと待って!!」

 

背後から声が飛び、全員がびくりと振り返る。

即座に覆面を被り直し、先生は既に【術式】で姿を消していた。

現れたのは、息を切らしながら両手を上げるアルだった。

 

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから」

 

その言葉に、メンバー全員がざわざわと小声で作戦会議を始める。

 

「何であいつが......?」

「あれって、便利屋の社長さん...?」

「ん、証拠隠滅する?」

「どうかな、戦う気がない相手を叩くのもねぇ。」

「この中に知り合いがいるんでしょうか?」

「さぁねぇ...」

 

場の空気を切り裂くように、アルが勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。

 

「あ、あの......た、大したことじゃないんだけど......銀行の襲撃、見せてもらったわ......!」

 

【まさか現場にいたのか】と全員が凍りつく。

アビドスメンバー達は書類の奪取に集中していて、周囲の状況まで目が回っていなかった。

 

「ブラックマーケットの銀行をものの数分で攻略して見事に撤収......あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ!」

 

続けざまに言われた言葉に、全員の表情が一気に曇る。

 

銀行にいたのかと全員が思った。正直、あの時は書類を手に入れるために必死だったので、あまり周りのことを見ていなかったので気づいていなかった。

 

「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて......感動的というか。わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

 

何の話とセリカが小声で聞くが、全員、さあっと首を傾げた。

 

「そ、そういうことだから......な、名前を......あなたたちの名前を教えて!!」

 

「名前......!?」

 

その言葉に、シロコの手がスモークグレネードに伸びかける。

 

「その、組織ていうか、チーム名とかあるでしょう?私が今日の雄姿を心に深く刻んでおけるように!!」

 

何やら壮大な勘違いをしているみたいだが、ノノミが一歩前に出ると、誰も予想していなかった話を始めた。

 

「......はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」

 

(のっ、ノノミ先輩!?)

 

何を言うのと言いそうになる前に、ノノミがキメポーズでビシッと名乗りを上げる。

 

「私たちは、人呼んで......覆面水着団ですっ!」

 

「......覆面水着団!?」

 

(あっ、終わった......)

 

セリカの理性が崩れ落ちる音が聞こえた気がした。

あれだけやめようと言っていた名前が、堂々と名乗られてしまった。

 

だが__

 

「や、ヤバい......!!超クール!!カッコ良すぎるわ!!」

 

(......えぇ~)

 

なぜかテンションがさらに上がるアルに、セリカは困惑するばかり。

さらに、ホシノが調子に乗って爆弾を投下する。

 

「ふふふのふー!目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!!」

 

(変な設定を付け足した......)

 

「か、カッコいい......!!」

 

先程よりも目を輝かせて、大好きなアニメショーに行った子供のようにはしゃいでいた。

そして、その惨劇をまた別の離れた所から見ていたカヨコ達は__

 

「......何してるの?あの子たち」

 

「アルちゃんものすごくはしゃいでるねー」

 

ムツキが楽しげに笑い、カヨコは深いため息をついた。

 

そして__

 

「もういいでしょ?適当に逃げようよ」

 

セリカはこっそりとホシノに耳打ちした。

今は、長居するにはリスクが高すぎる。

ホシノもすぐに状況を理解し、頷く。

確かに、封鎖地点を抜けたとはいえ、まだブラックマーケットの中であるので、余裕はそこまでない。

 

ホシノたちもそれをわかっているため頷いて答える。

 

「それじゃあこの辺で。またね~!」

 

「行こう!夕日に向かって!」

 

「夕日、そろそろ終わりますけど......」

 

シロコが投擲したスモークグレネードの煙に紛れ、彼女たちは静かにその場から姿を消した。

アルは、消えゆくその背中に向かって力強く叫んだ。

 

「我が道の如く魔境を行く......その言葉、魂に刻むわ!私も頑張る!」

 

そんな楽しそうなアルの背中を見て、カヨコはムツキに話す。

 

「......はぁ、いつ言うの?」

 

「面白いからしばらく放置で!」

 

「あ、あの......」

 

ハルカが地面に落ちていた覆面水着団のバッグを指差し、口を開く。

 

「このバッグ、どうしましょう?あの人たちが置いていったみたいなんですけど......」

 

「まさか、覆面水着団が私のために!?」

 

「えぇ...そんなわけないよ、ただの忘れ物でしょ。」

 

「でも、このバッグかなり重いよ。中身はなんだろね?」

 

そう言ってムツキは勝手にバッグを開ける。

なんと、その中には大量の札束が入っていた。

3人が驚愕する横で、ハルカはポツリと呟いた。

 

「......これでもう、食事を抜かなくて済みますか?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~アビドス高等高校~校門~

 

ブラックマーケットを抜けてアビドス高校に戻ってきた対策委員会と先生と悠二たち。

学校に就いたその時、ノノミがあることを思った。

 

「...現金のバッグ、お金に困ってる人が拾ってるといいですね」

 

「あはは......良いことをしたって思いましょう」

 

ノノミとヒフミも良しと思うが、セリカは未練がましく文句を言っていた。

 

「うう......もったいない......どう考えてももったいなさすぎる!!まったくもう、みんなお人好しなんだから!!」

 

そうセリカは言いながらも、アヤネ達アビドスメンバーは、校舎へと向かうのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~悠二視点~アビドス高等学校~休憩室~

 

その日の月が上がり始める頃、アビドス廃校対策委員会はヒフミとの挨拶を済ませていた。

休憩室での、のんびりした空気の中、絶妙に開いた窓についているカーテンがふわりと揺れる。

 

「......ふぅ、なんか、ようやく少しは落ち着いたねぇ。」

 

ホシノがソファに深く沈みながら、ぐいっと手を伸ばして伸びをする。

その横でシロコは先生に【撫でて】と言わんばかりに頭を押し付けていた。

が、中々撫でてくれない先生にムッとした顔を浮かべるも、どこかほっとした表情も浮かべていた。

 

「無事に帰ってこれたからいいけど......ほんと、命がいくつあっても足りないよね」

 

セリカが机に突っ伏しながらぼやくと、ノノミが少し笑う。

 

「でも、これで明日の会議も上手く進むといいですね~」

 

「あっ、そういえば......」とノノミがぽんっと手を打つ。

 

「先生、悠二くん、今日はお疲れさまでした♪」

 

"ありがとう、ノノミもお疲れ様。"

 

「...待って、眠い、うーん...。」

 

俺が机に突っ伏しながらぶつぶつ呟くと、ノノミが声を上げる。

 

「でも悠二さん、途中はカッコよかったですよ!銀行内に居たマーケットガードを横に飛ばした時とか!」

 

「ん、地味に決まってた。」とシロコも同意し、なぜか拍手を始める。

 

突然持ち上げられて戸惑う悠二だったが、思わず苦笑しながらも頭をかく。

その横では、アヤネが小さく呟いた。

 

「...でも、本当によかったです。誰も捕まらなくて......」

 

「...ん、確かに。」

 

シロコが小さく頷いたその時。

 

「ところでさ」

 

ホシノが急にひょいっと顔をあげる。

 

「覆面水着団、またやってみる~?」

 

「絶対しないからッ!!」

 

セリカのツッコミが、部室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後しばらく、部室には笑い声が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

新たな危機も、不安も、きっとこれからまた訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

けれど、今日だけは、どこまでも穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

星空でゆっくりと点滅する蒼い星のように。




作者「今日の話は、ずっと晴れるでしょう。」

作者「そして、湿度は徐々に下が...ちょ!?まってッ!助け__((((スラッグ弾

※悠二が「さん」付けで呼ばれてるのは年齢を言っていないからです。
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