最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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いつもこの作品を見てくれている読者様...本当にありがとうございます。
これからも不定期ながら進めていきます、よろしくお願いします。

そして最近、ブルーアーカイブの【世界として】の考察を見たんですけど、凄いしっくり来ました。
考察者って...薄っぺらい褒め方で本当に申し訳ないですが、ガチで尊敬してます。


御厨子

~翌日~()アビドス自治区近郊~

 

 

「解析出ました!先程から鳴り響いてるこの音は迫撃砲による爆発のようです!!」

 

 アヤネの緊迫した声が通信端末を通して響く。空気が張りつめ、全員が無言で顔を見合わせた。

 

街の方でいきなり響いた爆発音。その原因を探るべく、アビドス対策委員会のメンバーたちは現場へ急行していた。オペレーターとしての役割と、危険時に備えて後方に残されたアヤネと悠二。

 

「迫撃砲!?私達の街でなんてもの撃ってくれちゃってるの!!」

 

“勢力は分かりそう?”

 

セリカが怒りを露わにしながらも、必死に走り続ける。その隣では先生が真剣な面持ちでアヤネに問いかける。彼らの足音が、砂埃が舞うアスファルトの上で響いていた。

 

「ちょっと待ってください.......出ました!どうやらゲヘナ学園の風紀委員のようです!現在便利屋68と戦闘中です!」

 

アヤネの報告に、皆は驚愕する。

ゲヘナ学園、その中でもかなりの戦闘能力を誇る風紀委員。

そんな彼女たちがアビドスの街中で戦闘を行っているという事実に、その場にいた誰もが驚いた。

 

ズサァァァァァァ...

 

地面に足を滑らせるようにして止まる一同。目の前に広がるのは、瓦礫と煙に包まれた旧市街地。

その中心で、濃い青色の制服を纏った風紀委員たちと便利屋68のメンバーが睨み合っていた。

現在のアルバイト先である柴崎ラーメンが巻き込まれている可能性に気づき、セリカの肩が小さく震えた。

 

”風紀委員、という事は...久しぶりだねチナツ。”

 

「先生!?まさか先生がアビドスにいるなんて.....」

 

ゲヘナの風紀委員の1人であるチナツが目を見開く。まさかの人物の登場に動揺を隠せず、声はわずかに震えていた。

 

「......誰だアイツ?取り敢えず私達の邪魔をしようってのなら部外者だろうと容赦はしないぞ?」

 

チナツを背後に庇うように立つイオリが鋭い視線をこちらに向ける。その口調には敵意と、冷ややかな緊張感を纏っていた。

 

「どうしましょう.....便利屋の人たちは知らない仲ではないとは言えここで戦ったらゲヘナとの政治的な紛争の火種になりかねません.....」

 

アヤネが通信越しで先生に問いかける。立場と関係の微妙な線引きが、彼女たちの選択を難しくしていた。

 

「それに、ゲヘナの風紀委員は今まで戦ってきた不良とは訳が違います!戦闘になって無事でいられるか.....」

 

ノノミの声には、彼女らしくない焦りがにじんでいた。

 

“じゃあ大人しくこの戦闘を見てるだけにする?”

 

「そ、それは....ですが....」

 

「...私は行くよ」

 

「シロコ先輩!?」

 

静かに前に出たシロコの横顔は、いつになく険しかった。

 

「ここはアビドス、私達の自治区.....たとえゲヘナの問題児を捕まえる為とは言え好き勝手するのは許せない」

 

その言葉には、静かだが強い決意が込められていた。

 

「.....そうですね、どんな理由があろうと他校の風紀委員が私達の許可もなくこんな暴挙を敢行していいなんて事はありません!!」

 

ノノミがシロコの言葉に続き、拳を握る。

 

「そうよ!!ここは私達の街なんだからウチらの許可なくなんて許せるはずないわ!!」

 

セリカも懸命に声を上げ、意志を表明する。彼女なりの力強さが、そこにあった。

 

“.....そういう訳で私達は便利屋68の味方をするからよろしくね。”

 

「よ、よろしくって.....」

 

瓦礫の側で敵の斜線を隠していたアルは、少し困惑していた。

 

「面倒だな......だけど売られた喧嘩を買わないなんてことは風紀委員には出来ない、総員戦闘準備!!」

 

イオリの号令と同時に、ゲヘナ風紀委員たちは一斉に構えを取り__

 

「あっ、えぇ...?」

 

__チナツに関しては、終始困惑していた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~数分後~

 

“流石はゲヘナの風紀委員なだけあって実力者揃い.....”

 

“しかもこっちは人数が少ないからかなり厳しいね。"

 

先生は冷静に状況を観察しながら、次の一手を頭の中で組み立てる。

 

”(...悠二には申し訳ないけど、人前で私の術式は使えない...悠二に連絡入れておこうかな...)”

 

「私達が勝つんだ!十人も居ない敵程度に負けていられない!」

 

イオリは狙撃銃のコッキングを済ませ、前線へと踏み出す。

 

「(...やはり先生とはいえ、かなり苦戦を)__「いやー...救援要請で来てみれば...こりゃ酷いな。」

 

チナツが先生に同情した直後、道路の側面から聞こえた男声にアビドスと風紀委員の視点が動く。

 

『!?』

 

全員は電柱の上にいる黒色に統一された服に目隠しをした人物を視認した。

 

「誰だ!?」

 

イオリが謎の人影に向かって叫ぶ。

 

「うーん...グッドルッキングガイ?とか、か?」

 

その軽口に、空気がざわつく。

 

「そんな冗談を聞きたいわけじゃない!さっさと答えろ、お前は誰だ?」

 

イオリが一歩前へ出て、鋭く問い詰める。

 

「俺は五条悠二、アビドス高校の味方だ。」

 

「...じゃあ敵だな?ヘイローが無いとは言え容赦はしないぞ?」

 

悠二は肩を竦め、余裕の笑みを浮かべ__

 

「手加減しなきゃいけないのは俺だってのに...変な事言うね、君。」

 

「...スチャ」

 

イオリは無言で銃口を悠二に向ける。

だが、トリガーは引けなかった。

ヘイローの無い者は銃弾一発で致命傷に成り得る。

その事実がトリガーを引くという動作を邪魔していた。

 

「...なぁ、質問し返してやるよ。」

 

だが、その考えが間違えだと気づくのは悠二が電柱から降りようとして間もない時だった。

 

「容赦しないっつったのは...」

 

シュバッ...

 

「お前だよな?」

 

と言ったその瞬間には、既にイオリの目前に悠二の拳があった。

 

「なッ__

 

ドゴッ!!

 

「ぐっ、!」

 

ドサッ

 

「イオリッ!」

 

チナツの叫びが響く中、イオリは腕の痛みに地面に倒れ込む。

防げなかった訳では無い。イオリの両椀による防御姿勢の上、痛みが貫通してきた。*1

 

「ほら、一応手加減してやったぞ。話し合ってくれ。」

 

悠二は淡々と告げたが、他の風紀委員は手加減をしたと言う事実は、落ち着くのには逆効果だった。

 

「え、あの人、ヤバくない...?」

「絶対人殺してそう...!」

「し、しかも要注意人物に書いてなかったよね?*2

 

「(はぁ...もう少し声小さくしろよ。)」

 

悠二は自分に対する風紀委員の愚痴を呪力で強化している五感で聞き、大きな溜息を零す。

 

「...アビドス対策委員会の奥空アヤネです、そちらの所属をお願いします。」

 

空気を読みつつ、アヤネが警戒しながらも通信機越しで話しかける。その瞬間__

 

「...それは私がお答えいたしましょう。」

 

「通信?」

 

「アコちゃん......?」

 

「こんにちはアビドスの皆様、私はゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します」

 

電子的な仲介音声とともに、空気が再び張り詰めていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アコの主張は、ゲヘナ学園の外...つまり、今アビドスに潜伏している規律違反者を確保するために、戦闘行為の許可を求めるというものだった。

その言葉にセリカが不快そうな表情を浮かべる。

 

「あくまでそっちはゲヘナ学園の違反者を捕まえるためだから私達は黙って見てろって言うわけ?」

 

「その通り、そちらの違反者達は一度こちらの戦力に大打撃を与えた程の実力者揃い......こちらも捕縛にはそれなりに本気で挑む必要があるのです」

 

敵意は抑えているものの、その声音には、はっきりとした覚悟が滲んでいた。

 

「だからと言って私達の許可も無しに戦闘行為なんて!」

 

アヤネの声が一段階張り上げる。絶対に認めない、と言わんばかりの目線を込めて。

 

「これに関しては止むを得ず.....私達も望んでこんな事になった訳ではありませんのでそこの所を理解していただけると幸いです....出来ることなら風紀委員としての活動にご協力願えませんか?」

 

「先程も言いましたが他校が他校の敷地内での戦闘行為など明らかな違反行為!!もし便利屋の方々が犯罪者であるのなら私達が捕えて処遇を決めます!!」

 

アコの柔らかく、どこか威圧的な声にもアヤネは屈しず、場の緊張はさらに高まる。

 

「.....ふぅ、ここまでの戦力差でも怯まないなんて.....これも信頼出来る大人がいるからなのでしょうか.....ねえ先生?」

 

その視線は、シャーレの先生へと向けられた。

 

"......"

 

「先生もこの方達と同じ考えのようですね?」

 

"...そうだね、それに便利屋の子達は良い子だし連れて行かせるわけにはいかないよ。"

 

先生はシッテムの箱を握り直し、静かに頷いた。

その瞳はこれから起きる出来事を()()()()()ようだった。

 

「あ、アコ行政官...ちょっ__「そうですか、本当は穏便に済ませたかったのですが......それではもう戦うしかなさそうですね?」

 

チナツの静止も振り切り、アコが言い切った瞬間。

場の空気が先程の戦闘のように、熱を帯び始める。

 

「【穏便に?】...冗談はよして、アンタは最初からこの状況を狙ってたんでしょ?」

 

カヨコが詰め寄るように問いかけた、アコは薄く微笑み、口を開く。

 

「カヨコさん......貴女も面白い事を言いますね?」

 

「確かに私達はアンタ達を退けているから警戒するのも分かるかもしれない.....けど結局偶然の不意打ちが成功した結果であって私達にこの戦力、しかも他校の自治区で展開なんて非効率なやりかたあの風紀委員長がやるわけない、つまりこれはアンタの独断での行動ってことになる」

 

「......ふむ」

 

アコの笑みが、次第に薄れていく。

 

「これは明らかに私達以外.....アビドスの生徒との戦闘も視野に入れてるけどそれでも戦力が多すぎる、アンタは最初から私達ではなくシャーレの先生と...この目隠しをおまけで連れ去る目的で動いていたんだ。」

 

言い切り、カヨコの視線が悠二に向けられる。

 

“.....私?”

 

「...カヨコは頭いいな。まあ俺はこんな奴らに捕まる気、元から無いけどね...あと__

 

 

悠二は広い道路の更に奥、正に視界の角にあるビルの屋上を指差した。

何百メートル先かも分からない距離に、届かないと知っている上で悠二は言い放った。

 

 

「シャーレの先生を狙ってる狙撃手...それで隠れているつもりか?見えてんだよ。」

 

 

「そのガラクタを手から今すぐに離せ。」

 

 

「それか、今すぐにでも最悪な目に遭い(ぶっ殺され)たいか?」

 

 

その声には感情が無かった。

ただ深く、重く、どこまでも冷たく、まるで人の形をした何かが怒りや敵意とは別次元の【殺意】そのものを説明していた。

そんなドスの効いた肉声を辺りが聞いた瞬間、先生を含む全員の背筋を、氷刃が切り裂いた。

 

"えっ、私!?"

 

「ッ...!」

 

アコは悠二に向けられている碧眼の殺意と、深海奥深くに沈んだ声に初めて動揺を見せる。

 

「...イオリ、狙撃班に急いで撤退するように命じて下さい。」

 

「えっ、な__「早く」...分かった。」

 

イオリの困惑すら圧殺し、悠二の警戒を解くことを最優先したアコ。

 

「...そう言えば__」

 

そう言ってアコが指を弾くと色んな方向から足音が響いてきた

 

「!?」

 

「増援!?」

 

「12時から....いえ!3時6時、9時からも!?四方から新たな兵力が集結してきます!!」

 

「包囲は抜けたと思ったけど...二重だったんだ。」

 

「フフッ、シャーレと、噂の【五条悠二】を相手にするので念の為にと思って用意しておいたのです。それと流石はカヨコさんですね、まさかこちらの思惑の内半分を言い当てられるとは思いませんでした.......一応言っておきますが私も好んでこのような状況に持ち込みたかった訳ではありません。」

 

「...これでも半分なんだ」

 

カヨコは舌打ちを零し、少し悔しそうに地面を睨んでいた。

 

「...そうですね、事の次第をお話しま__「...もういい」

 

余裕の笑みを浮かべていたアコの話を悠二が遮断する。

 

「...ティーパーティの件だろ?知ってんだよ。」

 

「...ご存知で?」

 

「申し訳無いとは一切思っていないが、その質問には答えられない。」

 

悠二の一言は、まるで急所を突くように鋭く、アコの思惑に突き刺さった。先ほどまでの自信に満ちた笑みは跡形もなく消え、代わりに浮かんだのは、理解が追いつかないという顔だった。

 

「はぁ.....」

 

悠二の発言に、アコは心底諦めたように溜息を零した後、ゆっくりと俯いた顔を上げた。

 

「...奥空アヤネさん」

 

「.....なんでしょうか」

 

「ゲヘナの風紀委員は必要でしたら戦力を行使することもあります、私達はその判断を一度したら一切の遠慮はしません」

 

「.....!!」

 

アヤネは拳を握りしめ、カメラ越しでありながら、アコを睨みつける。

そんな緊迫した空気の中、カヨコは後方の瓦礫の裏で【何か】の機会を伺っている他の便利屋メンバーに話しかけた。

 

「どうする社長?向こうのターゲットが先生と五条になってる今なら私達は安全に逃げられるけど」

 

「フフッ......カヨコ、貴女分かってて聞いてるのでしょう?」

 

アルは愛銃のリロードを済ませ、口端を上げて問い返した。

 

「.....一応聞いてみただけだよ。」

 

「あは~♪」

 

ムツキは相変わらず能天気かつ適当な返事を返すが、片片手にぶら下げたバッグからは抑えきれない高揚感が滲み出ていた。【早く暴れたい】そんな気持ちが、バッグの中身である高性能爆薬と共に透けて見える。

 

「こんな状況でこんな扱いをされて逃げる?しかも一応恩のある悠二さんを身代わりにして?」

 

「そんな三流小悪党以下のカスみたいな真似私達が出来るわけないでしょ!!」

 

アルは愛銃を掲げ、言い切った。

 

「アル様....っ!!」

 

ハルカはアルの一言に衝撃を受けて、その場で気絶しかけた。がくりと膝をつきかけた彼女の肩を、カヨコが慌てて揺さぶる。そんなコントのようなやりとりを経て、便利屋一行は瓦礫の中からゆっくりと立ち上がる。

 

「.....まさか便利屋がこの状況で逃げずに向かってくるとは、まぁいいでしょう。」

 

アコは一区切りを付け__

 

「総員、攻撃開__「...いやぁ、正直びっくりしたよ。」

 

運命を決する戦いへの火蓋は切られることはなく、たった1人の男子生徒の拍手と冷酷な称賛によって止められた。

 

「でしょう?流石の貴方でもここまでの戦力は__「チゲぇよ横乳」...は?」

 

「その程度の兵力で俺を鎮圧できると思い込んでる【脳みそ】に驚いたっつってんだよ。」

 

『!?』

 

アビドスメンバーや先生は勿論、風紀委員の殆どは彼の挑発に怒るわけではなく、驚きを露にした。

 

「...何様ですか?」

 

「そもそもな、情報部からの俺の情報、多分正しくないぞ?」

 

"悠二、何を...?"

 

先生は今から悠二がする行動に予想がつかず、目を見開いている。

 

「...まあいい。そんで、立場に対する回答だけどさ。」

 

「俺は、今すぐにでも一町四方に居る...例えば、お前らの汚れたヘイロー(神の証)を破壊できる。」

 

「何を言っているので__「...屈め、さもないと死ぬぞ。」

 

キキキキキキキキキキキキキキキィィィィィン...

 

ズガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァン!!!!!!!!...

 

ただ指を向けただけ。だが次の瞬間、目に見えない刃が天を裂き、世界を貫いた。無数の悲鳴が飲み込まれ、風が逆巻き、建造物の鉄骨が音を立てて切り裂かれる。時間が引き伸ばされるような圧倒的な迫力だった。

 

「えェっッ?!??!!!」

 

アコは先程の冷静さを完全に失い、言葉にもなっていない悲鳴を上げた。

 

ガガガガガガガガガガガガガガガグシァァァァァァァァァンン!!!!!

 

破壊されたビルは、まるでブロック玩具のように規則正しく崩れ落ち、音もなく瓦礫の山と化し、土煙が巻き起こる。誰もが動けず、ただその力の余波に呆然と立ち尽くしていた。

 

「...やっぱり術式は手加減無しでなんぼだよな。」

 

“(こ、腰抜けちゃった...)”

 

誰もが視線を逸らせずにいた。悠二のその無造作な言葉とは裏腹に、今目の前に起きた現象は、完全なる【戦争行為】だった。

 

「くッ......以前ニュースで報道された【単独での学園都市転覆が可能】は正直、いつもの誇張表現かと思いましたが、恐らく本当みたいですね...」

 

全員の視線がビルと悠二を左往右往する中、ホログラム越しでも生存本能で屈んでしまったアコは悔しそうに静寂を破った。

 

「...ほらほら、分かったらさっさと退いたらどうだ?」

 

悠二の軽口の中、風紀委員たちの間にも動揺が広がっていた。

 

「アコちゃん...」

 

「私もそう思います...恐らく委員長でも、あの規模の能力で勝利は厳しいかと...」

 

静かだったチナツの声だが、そこには確かな諦めが滲んでいた。風紀委員という立場の彼女たちでさえも、この【例外】には手が出せないのだと、どこか納得していた。

 

「......ですが...恐らくあの能力もタメがあるはず...クールダウンを突けば勝てるかもしれません...」

 

「ん?何か勘違いしてない?」

 

「え?」

 

「あの斬撃は1秒間に40回ほど連射したからビルが粉々になっただけであって一回だけなら良いとこいって被害は倒壊ぐらいだぞ?」

 

"..."

 

その事実に、誰も言葉を返せなかった。脅しではなく、ただの事実を語っているに過ぎない。それだけで充分に、悠二の呪術師としての【格】が理解できてしまう。

 

「...こちらとしても、死者を出すわけには行きません。」

 

「あぁ...忘れていた、あと風紀委員長。多分今のお前の耐久値なら俺の斬撃は、一回までなら多分耐えれるよ。てかそもそももう戦闘する気無いから出てきなよ。」

 

風紀委員たちの間に、不可解な空気が流れる。彼が今何を言っているのか、理解が追いつかない。

 

「???」

 

「.....ねぇ、これは一体、何を?」

 

『えっ...?』

 

"(絶句)”

 

「委員長!?どうして此方に!?」

 

「そういや、中々遅かったね...どっかの道草でも食った?」

 

「...これでも急いだつもり、ビルが鈍い音と共に急に崩れてきて、塞がれたから、あれ誰がしたの?」

 

「誰だと思う?」

 

「...」

 

“委員長、という事はゲヘナ学園のトップのようだね。”

 

その言葉に空気がピリつく。場に立ち込める空気が、先程までとは明らかに違っていた。緊張ではなく、“均衡”に似たもの。

 

「...そうよ」

 

「そ、その....これは、以前取り逃がした便利屋が此方で活動していると報告を受けまして......」

 

「便利屋?確かに警戒するに越したことは無いけど、それが何でアビドスの地であの【シャーレの先生】との抗争に繋がるの?」

 

ヒナの問いは、冷静でありながら確かな怒気を持っていた。事の本質を問い詰めるその口調に、アコは言葉を詰まらせる。

 

「え!?いえ、便利屋ならアビドスと一緒に.....いない!?」

 

「(便利屋は...俺が時間を稼いだ間にか逃げてたな、ナイス!)」

 

「え、えぇと......全て説明します」

 

「いや、いい.....大体はここに来る前に把握してる。ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除.....そういう政治的な活動の一環ってところでしょ?」

 

「さっすが~!分かってるじゃーん。」

 

「アコ、私達は風紀委員であって生徒会じゃない....詳しい話は帰ってから、通信を切って校舎で謹慎してなさい」

 

ヒナの一言で、アコの背筋がピンと伸びる。明確な命令。その一言は、彼女にとって何よりも重く響いた。

 

「......それじゃあ改めてやるの?」

 

再び交わる視線。熱を帯びる空気に、アヤネの声が張り裂けた。

 

「シロコ先輩!?やめてください!!どうしてそこまで戦うのが好きなんですか?!」

 

「...ごめん」

 

その一言には、苦しげな色が含まれていた。それでもシロコは譲らなかった。戦う理由が、そこにある限り。

 

「俺もやんなーい...、たかが一度の攻撃であのビルのようになるし、初対面の女の子を傷つけたくない。」

 

「あのビルの何者かがブロック状に切断したような残骸、まさか貴方がしたの...?」

 

「それがどうした?」

 

「............そう」

 

「(反応薄っす...)」

 

悠二の力を示すような一言にすら、ヒナは動じない。だが最早、緊張が常識になっていた。

 

「こちらアビドスの対策委員会です、ゲヘナの風紀委員長ですね?初めまして....この状況については理解されてますでしょうか?」

 

「.....もちろん、事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒達との衝突.....けれどそっちが風紀委員会の公務を妨害したのも事実、違う?」

 

「それは......」

 

「それは確かにそうだけど」

 

「だから?」

 

「私達の意見は変わりませんよ?」

 

張り詰めたヒナとアヤネのやり取りの中、ノノミ、セリカ、シロコは吐き捨てるように言い、愛銃を構え直す。

 

「(俺よりは弱いとはいえ自分たちじゃ勝てない相手に肝が据わりすぎじゃね...?)」

 

「ちょっと待ってください!便利屋の人たちは居ない、あっちの戦力は増える、私達には先生と悠二さんしか....悠二さんに関しては戦わないんですよね...?」

 

「(......アヤネ不憫すぎるな。)」

 

「あうぅ、こういう時にホシノ先輩がいてくれたら.....」

 

ぽつりと呟いたが、その小さな声をヒナは見逃さなかった。

 

「.....ホシノ?アビドスのホシノって......もしかして小鳥遊ホシノの事?」

 

「...中々遅かったけど...もうすぐ来そうだね~」

 

「.....はい?悠二さん、それはどうい__「うへぇ...こいつは何があったんだか.....物凄い事になってんじゃ~ん」

 

「!?」

 

「お、来た。」

 

「ホシノ先輩!?どこに居たんですか?!」

 

「ごめんごめん、ちょっと昼寝してたら寝過ごしちゃった.....」

 

「えぇ...」

 

「昼寝ぇ!?こっちは色々大変だったのに!」

 

ホシノが道路脇から歩を進めると、緊張しきっていた場にほんの少しの和みが生まれた。けれどその空気は、次の瞬間に凍りつく。

 

「ゲヘナの風紀委員会かぁ...便利屋を追ってここまで来たの?事情はよく分からないけどこっちは勢揃いだよ。という訳で改めてやり合ってみる?風紀委員長ちゃんとそこの男の子。」

 

「ホシノ、勘違いしてない...?」

 

「うへ?!ご、ごめん...服装で見間違えちゃったよ。」

 

「小鳥遊ホシノ..........................一年の時とは随分変わった、人違いじゃないかと思うくらいに.....」

 

「.....ん?おじさんの事知ってるの?」

 

「情報部に居た頃に各自治区の要注意人物達をある程度把握してたから.......特に、貴女の事は忘れる筈がない。」

 

ヒナは言い続けた、この場にホシノの過去を晒し上げるように。

 

「蒼き最強の事件の後に生徒会から貴女はアビドスを__「ねぇ」

 

「...一回、黙ろっか。 風紀委員長ちゃん?」

 

その瞬間だった。

先程まで軽く笑っていたホシノの声が、一気に心臓が凍てつくような冷気を纏う。

今までで、最も殺意の籠もった一言。

それが、風紀委員長__ヒナの鼓膜に突き刺さるように響いていた。

 

「...悪かったわ。」

 

ヒナは、【流石に配慮が無さすぎた】と、謝罪を述べた。

 

「あの事件...です、か...」

 

そして、ノノミは誰にも聞かれない声で、悲しそうに__悲観的に呟いた。

 

「.....まぁいいや。私も戦うために来た訳じゃ無いから....チナツ、イオリ...は居ないか...とりあえず撤収準備、帰るよ」

 

「か、帰るんですね...」

 

「...それとも、片手でビルを細切れにさせることが出来る彼に勝てる案があるとでも?」

 

「ん?...どゆ、こと?」

 

「あ~...後で説明するよ。」

 

「ホシノ先輩が壊れちゃった...」

 

一方ホシノは悠二の弁解も虚しく、【片手でビルを細切れに】という単語に動揺を隠せていなかった。

セリカも半分諦めたように呟き、ホシノに近づき【大丈夫?】と声をかけながら背中を擦っていた。

そんなコントのような場面を横目に、ヒナはアビドスの生徒達に近づくと頭を下げた。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと......この事については私、空崎ヒナよりゲヘナの風紀委員長としてアビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する」

 

"気にしなくていいさ、大丈夫。"

 

先生は柔らかい笑顔を向け、ヒナは一瞬頬を赤らめる。

 

「今後ゲヘナの風紀委員がここ【アビドス】に無断で侵入と戦闘をすることは無いと約束する、どうか許して欲しい」

 

「...やっぱり、土地は__」

 

悠二はヒナの発言を聞き、何かに勘づいたようにボソボソと口にする。

そして、ゆっくりとヒナに近づき、一言を添えた。

 

「隈、酷いことになってるよ。」

 

「...気づいていたの?」

 

「御生憎様、目がいいもんで。」

 

「でも、気にすることじゃ__「しっかり、休んでくれよ。」

 

「...何故、そんな事を?貴方が私の心配をする必要はないじゃない。」

 

「ヒナを...風紀委員長としてじゃなくてさ、【空崎ヒナ】として...色んな人が、大事にしているからさ。」

 

「...!」

 

そして、一時の時間が流れた。

その時間はまるで希望だけが生きているようだった。

 

「...ふふっ、ありがとう。」

 

「分かってくれたようで、良かったよ。」

 

ヒナの笑みでその静寂は破られ、悠二は内心ホッとする。

 

 

 

これからも、そして__

 

 

 

 

この先も。

*1
防御が貫通しているだけで、折れたり外傷を負っているわけではありません。強いて言うなら打撲(弱)みたいな感じ。

*2
ゲヘナの出撃前に読む強敵や敵将の情報が載っている紙




おかしい部分とかちょっとでもあればどんどん報告をお願いします。長い話であればあるほど確認が疎かになるんですよね...
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