本当にごめんなさい、異論は認めまくります。
少し雑かもしれませんが、どうにか仕上げました…
「...!」
理事が背後に感じたのは静かな...だが確かな殺意だった。
左腕を自身に出来る最大の速度で、頭部をめがけ振り抜く。
ただ、その拳は無限の障壁に阻まれ、英一はその手首を握る。
彼の圧倒的な握力にミシミシと音を立て、義体の手首がひしゃげる。
「ぐぁッ!?や、やめろ貴様!」
理事は必死で英一を払い除けようと暴れる。
その拍子に結合力を失った関節は配線と共にもげ、理事は一歩二歩と後退した。
「何故だ、何故、貴様が生きている!?」
「知りたいか?」
そう告げ、英一は理事の手の残骸を術式でアルミ缶のように潰す。
「...ッ!!」
答えを実演した英一は後ろに倒れ、自身の一歩手前で無慈悲にも阻まれる手先のない腕を必死に振りかざす理事を見下ろした。
「お前の愚行だらけの人生を終わらせる為だよ」
英一が突きつけた回答は理事の背筋を凍てつかせ、残りわずかだった希望も砕いた。
「...今際の時だ、今から殺されるお前の為に全て言ってやる」
「何をッ...!」
理事の言葉を意に介さず、英一はぽつりと、まるで永遠の別れのように告げる。
尤も、永遠の別れと言うのは間違ってはいないのだが。
「...僕は、未来を知ってるんだよ」
「...は?」
理事は呆然とし、つい、自分らしくない声を漏らす。
だが、目の前の人物が何を言っているのか理解できなかった。
「前々から、アンタが採掘している現場の作業員が行方不明になってただろ」
「...何故、知ってい__「その犯人は僕だよ」
「何だと?」
遮られた上でか被された英一の言葉は、またしても理事の思考をかき乱した。
「嘘じゃねぇ、なんならアンタが探している"お宝"も、場所...までは知らないが、中身は後に発掘されるから知っている」
「...」
理事はどこか未練がましくも、すべてを受けれる合図かのように大きなため息を零した。
そんな理事に対し、英一は掌を胸部装甲に添え告げた。
「最後に...言い遺すことはあるか、いくつかなら聞いてやるよ」
「...無い」
「以外だな...」
理事の諦めきった表情で放たれた言葉に、英一は多少の驚愕を返した。
「私は軍事関係者、そのトップだ...死ぬ覚悟など、とっくに出来ている」
「そうか...」
甲高い切断音と同時に、ボディラインの光がうっすらと消え尽きた頃。
「...先生、早く治さねぇと」
血と混ざる希望だけが残る実験室に、英一の呟きが木霊した。
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基地の扉をくぐった瞬間、僕の足が止まった。
いや、止まってしまった。
砂地に伏す理事の部下たち。そして、そこに立ち尽くす風紀委員、便利屋、対策委員会。
その背後には、きっと仕事を放り出して駆けつけたであろう、アビドス制服のユメ先輩の姿も。
「みん...な...」
その光景は、言葉にし難いほどに痛ましかった。
破壊された建築物の残骸と、無数の弾痕。それらが、この場所でどんな戦いがあったのかを語っている。
「悠二...だよね?」
最初に口を開いたのは、シロコだった。
目を見開き、真っ直ぐに僕の瞳を見つめてくる。
もう言い逃れできないんだなと、そう思った。
(これが......未来を知っていながら......っ)
対策委員会のみんなの表情が、服にこびりついた血痕を目で追いながら、徐々に曇っていくのが分かった。
おそらくその血の一部は、先生のもの。そして、僕自身のものでもあるだろう。
...それでなければ、あの優しいユメ先輩が、あそこまで険しい顔をするはずがない。
「...ごめん。全部...全部、僕のせいなんだ...!」
込み上げる感情に耐えられず、涙、そして自虐が溢れた。
いや、自虐ではない、必要以上でもない、当たり前なんだ。
そう言い聞かせ、痛む胸をよそに叫んだ。
「勝手に...! 皆を置いて、走って...調子に乗って...!」
崩れ落ちるように地面に膝をつき、拳を叩きつける。
砂煙が舞い上がり、脱出をする時に切らしてしまった呪力を纏っていない腕に、じんわりと痛みが走った。
けれど、心がぐちゃぐちゃの僕は拳を止めることはできなかった。
「...もう速く...殺してくれ! ...速くッ!!」
自暴自棄。その言葉が、今の僕にはよく似合う。
心の底から望んでいるわけじゃない。ただ、逃げたかっただけ。
自分の無能さに、自惚れに、知識ばかりが先走る頭に、全部、そう、全て打ちのめされて。
そんな僕の耳に、冷静な声が伝った。
「英一くん」
それは、ユメ先輩だった。
打ち付けていた拳が、何故か理性を取り戻したかのように、身勝手にも止まる。
「それは、ちょっと間違っているんじゃないかな?」
近づいてくる足音が、視界の端に映る。
きっと、僕の目の前に立っているのだろう。
「...仮に慢心だとしても、その気持ちが、決意が、英一くんをここまで連れてきたんだよね」
違う、違うはずだ。
でも未来を知ってるなんて、口が裂けても言えない。
もう、先輩の言葉も、何もかもが分からなくなっていた。
自分のしたことも、これから背負うべき責任も、もうすべてを否定したかった。
だから声を、痛みの走る肺を無視して、張り上げようとする。
「そんな訳な____「...それだけ、誰かや何かを大切にしてたんだってことだよね?」
ただすぐに僕の情けない嘆きを、先輩は優しく断ち切った。
「...っ」
「そんな英一くんを、私は結構、誇りに思ってるんだよ?」
少し見上げた先には、涙越しにユメ先輩の微笑みがはっきりと見えた。
その笑顔は後ろから太陽の光に照らされて、まるで救いのようだった。
「...赦すのか? こんな、僕を...」
それでも、自分を赦せない僕は問う。
「うん! 寛大な心で後輩の過ちを正すのも、先輩の役目だからね!」
胸に手を当てて"えっへん!"と誇らしげに言い切るその姿に、不意に笑ってしまった。
「...なんだよ、それ...」
僕の頬を渡る水滴は。
いつも元気だけどちょっとポンコツな先輩の笑顔に包まれて。
いつの間にか僕の背中に抱きついたホシノの告白に照れさせられて。
どこまでも透き通る青空に昇る太陽に輝いて。
もう、流れていなかった。
【失ったもの、手放さなかったもの】完
アンケートに基づき、エデン条約編3章まで進めた後にパヴァーヌ1〜2章、そしてエデン条約編4章と行けたらなと思います。(途中変更の可能性あり、その時は何かしらの方法でお伝えします)