最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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-追記-




死ノ淵

大事な後輩が一人"死にかけて"から、数カ月後。

色々なことがあった。

 

「ホシノ、ちゃん...」

 

結論から言う。

あの時の用事に関しては、無事に終えた。

内容は、依頼主の砂に埋れた家の掃除だった。

自分の財産やヘソクリなどが戻ってきた家主は、とても喜んでいたし、報酬も多少だがもらえた。

 

───だけ、ど。

 

帰ってきたら、もう、すべて終わっていた。

 

「...」

 

彼女は何も言わなかった。

...いや、言ってくれなかった。

校舎にあった唯一の病室で...ベッドに寝かされた"屍"を、ずっと凝視している。

 

...何も言葉を包まずに言うと、私が居ない間に来た襲撃に巻き込まれて、撃退はした。

その時に、謎の脳出血に見舞われ、死亡したようだ。

これは、眼の前でずっと泣いている彼女から...以前、聞いたことだった。

 

その時の表情、色のないように思えた世界は、とても恐ろしかった。

 

「...私も、起きてほしいと思ってるよ、でも───「英一、また来ますね。」

 

私の声を遮り、まるで、まだ彼が生きているように振る舞う彼女が、日に日に怖くなってしまう。

でも、取り乱す自分を落ち着けるために、深く深呼吸をする。

そして、病室の外にあるガンラックに手をかける彼女に、ふと声をかけた。

 

「また、賞金狩りに行くの?」

 

「...そうですよ。」

 

彼女は、ずっとそれっきりだった。

夜も寝ずに、朝方に...少しお見舞いをして。

治安がとっても悪いと言われている、ゲヘナ学園というマンモス校に賞金狩りに行く。

最近では、そのせいで貯金がかなり増えた。

だからこそ、嫌だった、怖かった。

 

───後輩を、もう一人失う...のは。

 

「少しは休んでよ...」

 

そう不満げに呟いて、彼女がこっちを見る。

もう光がない瞳に、隈がびっしりと並んでいて。

服も、戦闘をする回数が多すぎたのか、所々が擦り切れている。

 

「...この設備を維持するのが、私の生きる意味なんです。」

 

言葉は出なかったのに、唇が震えた。

点滴、生命維持装置を少しの間指差し、ゆっくりと校門に向かう背中は。

まるで、死に囚われ、呪われたお人形さんみたいだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(ここは...?)

 

気付けば、浅い水面上に僕は立っていた。

ふと、上を見上げる。

すると、綺麗な青空、流れ行く透き通った雲がある。

 

「綺麗な空だなぁ...」

 

ふと呟く、すると。

 

「...なにが"綺麗な空だなぁ..."だよ!?」

 

「ぐえっ!?」

 

頭に、痛みと衝撃が走る。

どうやら、げんこつされたみたいだ。

 

「え、誰──って、五条悟!?」

 

「正確には"お前の記憶を具現化した五条悟"だよ、馬鹿野郎。」

 

その疑似五条悟は、怒りを孕む声とは裏腹に...どこか哀れむような目線をこちらに向けている。

 

「...馬鹿野郎って言われる理由は分かったよ、でも何でここに呼んだんだ?」

 

その姿に、僕は、今までの状況を理解した。

 

「...僕が言いたいのはただ一つだ。」

 

───引きこもってねぇで、さっさとここ(生得領域)から出ていけ。

 

返事、そして相槌を返す時間すら、残されていなかった。

暗転する視界の中...ふと、ホシノの笑顔が、記憶に浮かんだ気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(ッ...)

 

かなりの頭痛、頭に走る電流のような感覚と共に、僕の沈んでいた意識が上がり始める。

少なくとも、出血している事はハッキリと理解できた。

15秒程、反転術式を様々な方法でイメージするが、成果はなく、鋭い痛みだけが頭に響いた。

 

(クソッ...)

 

──呪力を編み合わせる感覚が掴めない。

その事実は僕の意識を、決心を再び、そして大きく揺るがした。

 

(──痛い、凄い痛いっ...)

 

ああ、駄目だ。

そう思考する間にも、痛覚は意識を刈り取らんと決意を、精神を削り取る。

 

視界が紅色に染まり、意識が限界を迎えかけた──その瞬間。

 

──力を貸してやる、小僧。

 

(は...えっ)

 

声を出す間もなく、濃い痛みが薄まっていく。

深い傷口が、痛みもなく大量の水に溶け出すような感覚。

 

「...何が、起きて。」

 

理解を本能で求めるように、自分の掌を半分条件反射のように、見る。

血が流れていて、ドクンドクンと脈を刻む...しっかりと生きている掌に、手の甲。

だけどその直後、甲高い破裂音が聞こえた。

 

「...あ、え...嘘で、しょ」

 

恐らくガラスが割れたような音と共に聞こえたのは、ユメ先輩の懐かしいような声だった。

先輩が持っていたコップの飲み物が部屋の床に広がる数秒間、僕と先輩は固まっていた。

彼女は幽霊でも見たかのような目で僕を見つめていた。

僕におどおどと、千鳥足で近づき、口や頬を引っ張ったりペタペタ触ったりしてくる。

先輩の身長が高いのも相まって、その姿は幼子らしく見えた。

 

「...」

 

(こっちこそ嘘だって言いたいわ...)

 

先輩は、目を点にし、瞳孔は震えていた。

小さな嗚咽と共に目には涙を浮かべ、それを抑えるために唇を噛み締めている。

僕も思わずを泣きそうになるも、なんとか抑え込みながら起き上がり、そのままユメ先輩の頭を優しく、丁寧に撫でた。

こんな状況だったし、嫌がられるかなと思った。

だけど、先輩は顔を赤くしながら、それを受け入れていた...いや、むしろ微笑んでいた。

ほどんど初めて触る女性の頭、なんなら前世ですら無かったような体験。

撫で続けるうちに、先輩の頬が赤くなるのを感じ取った。

感触は髪によってさらさらしていて、言葉にするのであれば、太陽のような温かい香りがする。

その直後、急に喉から声がついて出た。

 

「...ただいま、ユメ先輩。」

 

出来る限りの、愛を込めて。

 

「おかえ...ねぇ───今日はずっと、説教だからね。」

 

「えっ」

 

温かい返事を言いかけたユメ先輩が、直後に思い出したように告げた宣告に、僕は戦慄する。

ユメ先輩はさっきとは違い、少なくともポジティブではない目で僕を捉えた。

 

(これがジト目ってやつか...)

 

そして、懐から取り出したボロボロの携帯電話で、電話をかけるような仕草を...いや、実際に掛けていた。

相手に関しては、すぐに見当がついた。

 

「...ホシノに、掛けてます?」

 

先輩は無言で頷く、嫌な予感がして止めようとするが、体が痛みと疲労で言うことを聞かない。

大慌てで、声での静止を試みる。

 

「えっ...ちょ、マジですか!?ま、待って!」

 

なんとかホシノだけはと乞うが、効果はあるように思えなかった。

起き上がったばかりの僕に負担をかけたくなかったのか、ユメ先輩は口を開く。

 

「大人しくしてて。実はホシノちゃんね、英一くんが寝てた間...凄い怖かったんだよ...」

 

明らかに顔を曇らせ、ホシノが電話に出るのを待ちながら告げる先輩。

指先が凍りつき、息が喉を通らなかった。

...これが、キャラ崩壊の恐ろしさというやつだろうか。

 

「...わかり、ましたよ...」

 

自分が置かれている状況を理解しきれいていない僕は、渋々と言った感じで返事を返す。

まぁ、状況は理解できていないとは言ったが、僕が寝ていた間に何があったかは、ある程度予想がついた。

 

(同級生が、目の前で倒れて、ずっと...昏睡していて───ん?...今、いつだ?)

 

ふと思った、僕はどれほどの時間寝ていたのだろうかと。

治療室のような場所、そして僕が寝ているベッドの隣に立てかけてあったカレンダーを見る。

 

「...マジかよ」

 

日付は先生がキヴォトスに来そうな日も含めて計算しているので、よく見ていた。

そして...記憶に残っている日時と今の日数を照らし合わせると──大凡、二ヶ月半。

 

(...覚醒するまで、こんなに時間がかかるなんてな...)

 

歪に言葉を並べることしか出来なかった僕は、これからどうなってしまうのだろうか。

そう考え、ホシノが帰って来るまでの間、苦い絶望と事実をひたすらに噛み締めていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数分ユメ先輩がホシノと話した後に、聞かされた話を話そうと思う。

尤も、ホシノは僕が起き上がったことを知るなり、走りながら電話をしていたみたいだが。

 

曰く、さっきカレンダーで確認した通り、僕は数カ月間昏睡状態で、脈もなかったということ。

 

曰く、ホシノは、僕が生きているように振る舞っていて...怖かった事とはこれだということ。

 

曰く、僕が寝ている間のホシノは、僕に繋がれていた設備を維持するために、校舎の防衛と並行で、賞金狩りも行っていたこと。

 

「脈がないのに、なんで生き返ったんだよ...?」

 

正直..."嬉しくないか?"と問われれば"嬉しいです"と即答するだろう。

だが、理屈がわからない以上...僕に意識がなかったことを踏まえても何をされていたか分からない。

 

「...」

 

無言で思考を回す。

思い当たるのは黒服だ。

アイツは後から条件を突きつけてくるかもしれないが──

 

「クックック...随分とお元気そうですね。」

 

右側面にいる馬鹿野郎と視点が合い、数十秒が経った。

その思考の末に出た言葉が、これだ。

 

「...ヒビ割れた温泉卵じゃん、久しぶり。」

 

「その言いようは酷いですねぇ...?」

 

不満そうに、だけどほとんど表情を変えない黒服は、たった状態で続ける。

 

「...貴方のご友人が此処に向かっているので手短に。」

 

パンと、一回手を叩いて黒服は話し始めた。

内容はこうだ。

 

1オーパーツで僕を強制蘇生したこと。

 

2その対価として、僕の血液をほんの少し貰ったこと。

 

余りにも僕の得るものが多すぎだが...血液は何に使われるのか分からない。

 

「...そろそろのようですね、失礼します。」

 

黒服が影のように姿を消した直後、病室の扉が勢いよく開かれた。

 

「英一っ!!」

 

息を切らして駆け込んできたホシノは、僕の姿を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。

張り詰めていた空気が熱に溶けたみたいに、彼女は大粒の涙を零していた。

 

「...えいいち、ほんとに...ほんとに死んだと思ったんですよっ...!」

 

胸倉を掴まれ、殴られるかと思った。

だけど次の瞬間、彼女の手は震えながらも僕の背中に腕を回していた。

 

「ごめん...ただいま。」

 

それだけ言うのが、やっとだった。

ホシノはしばらく声も出せず、嗚咽を繰り返していた。

多分、迎えに行ったユメ先輩を置いていったのだろう。

スマホには"ホシノちゃんそっちに居る?"という通知が来ている。

 

(...まだ分からないことだらけだ。でも──生きて帰ってきた以上、暫くは...精一杯青春を謳歌しよう。)

 

心臓の鼓動を確かめるように、ホシノが僕の胸へ手を当てる。

生きている、その実感が再び彼女の顔を涙で濡らした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、長い月日が流れた。

 

ある日。

ユメ先輩主導で、お宝を掘った。

彼女たちの水着は普通に可愛くて、僕のビナーがかなり危なかった。だけど、ジロジロと見ている僕に近づいた赤面のホシノに、ツルハシでぶん殴られた。

 

ある日。

ホシノとゲヘナでペアを組み、一日の半分をデートに費やし、半分で賞金狩りをした。

特に、温泉開発部は徹底的に潰した。

アビドス砂漠にも温泉があるんじゃないかとか、元から無い環境を更に壊すような事を言い出したからだった。

 

その途中に、ネフティスの令嬢...原作で言うノノミ。

彼女もアビドスを救いたい、自分の会社の罪を償いたいという強い願いを持って体験入学を済ませた。

借金返済も、御厨子も反転術式も、ある程度は順調で、術式や技に関しては習得も出来た。

 

きっと、ユメ先輩とホシノの喧嘩も...時期的には起きないだろうと、そう思い込んでいた。

 

 

だけど、運命はあまりにも残酷で。

 

 

...本当は、分かっていた。

 

 

でも、"死ぬほど"辛いことは、必ず乗り越えないといけない時が来るんだと、改めて思い知らされた。




ありそうな質問「定着について」


Q.反転術式は定着という概念があるから、数ヶ月経っていたらもう効かないのでは?

A.逆に今まで仮死状態だったので、定着が運良く起きなかった...という設定です。

英一と結ばせたい人(アビドス内)

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