最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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色々ごっちゃになって申し訳ないですが、温かな目で見てもらえたら幸いです。


プロローグ
S.C.H.A.L.E


D.U.地区の一角であり、閉鎖区域。

その中心に、俺は空から術式を使い侵入していた。

 

「...ここか。」

 

冷たい風が頬を仮面越しに伝う。 

 

「これがあるって事は、もうすぐ先生が来るんだよな?」

 

近未来感があり、今後多くの生徒が利用するであろうオフィスビル──S.C.H.A.L.E

自然と連想したのは、一人の"大人"だった。

 

「ちょっと緊張する、まだ数時間はあるけど...」

 

スマホを片手に、僕は頭を軽く掻く。

その画面には、こう書かれていた。

 

【《速報》まさかの連邦生徒会長が失踪!?】

 

彼女によって呼び出される大人...この世界で言う先生は"キャラクター"じゃない。

言うならば"主人公"であり、プレイヤーがその役割を担ってきた。

更に、設定としては自分の身を顧みず、数多の奇跡を具現化してきた救世主。

 

「...楽しみだな、先生に会うのは。」

 

その呟きは、月が淡く照らす夜に溶けていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、昨夜の静かな雰囲気とは違い、マズルフラッシュと共に銃弾が飛び交う、シャーレ付近の通路。

 

「なんで私たちが不良達と戦わないといけないのよ!!」

 

紫髪を持ち、デュエルサブマシンガンを不良に向け放ち続けるミレニアムサイエンススクールの生徒会の会計──

 

──早瀬ユウカ。

 

「ユウカさん、サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから......。」

 

ユウカを鎮めながらセミオートピストルを瓦礫の裏で装填する黄金色の髪と瞳を持つゲヘナ学園の風紀委員会所属──

 

──火宮チナツ。

 

「チナツさん、それは聞いたけど......!」

 

ユウカは苦い顔をしながら反論をする。

 

「私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!?なんで私が...」

 

ユウカが不満は言い終える直前、背後から火薬が爆ぜる音が響く。

 

「痛っ!......って、あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」

 

 

 

「伏せてください、ユウカさん。それに、ホローポイント弾は違法指定されていません。」

 

瓦礫の隙間からボルトアクションライフルを覗かせる大きな黒翼を持つトリニティ総合学園の正義実行委員会、副委員長──

 

──羽川ハスミ。

 

 

 

「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」

 

 

 

「...ですが今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう。」

 

白髪を靡かせ、紅眼で後方に隠れている【先生】に目を配るトリニティ自警団所属──

 

──守月スズミ。

 

 

「そうですね...先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です。」

 

冷静に敵を撃ち抜いていくハスミは言った。

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので......。」

 

チナツはゆっくりと、だが何処か遠慮気味にハスミに重ねて肯定をする。

恐らく、近頃予定が組まされている"エデン条約"にも関係があるのだろう。

 

「実際、私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされます。その点にご注意を!」

 

スズミも賛成を返した。

先生側の方が人数がいないとは言え、士気自体はとても高く、不良も迂闊に前に詰めれない状況。

 

「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください! 私たちが戦ってる間は、後方のこの安全な場所にいてくださいね!」

 

ユウカも冷静を取り戻し、先生に念押しをするが

 

“...いや、私が指揮するよ。良ければ指示に従って欲しい。”

 

だが、返ってきた返事は想定とは全く違った。 

 

「え、えぇ!?戦術指揮をされるんですか? まぁ...先生ですし...?」

 

「...分かりました、先生の指揮に従います。」

 

「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」

 

生徒達については、最初は困惑していたものの、数秒後には各々の納得の色を見せ、武器のリロードを終わらせる。

 

"よし、じゃあ出撃開始!"

 

『はい!』

 

 

21##/##/## 10:14 ##先生、キヴォトス就任。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

不良達の銃撃はかなり激しく、リロードの合間の隙を無くすために、合間を縫うように射撃をしている。

それにより、先生陣営は前に出れない状態。

だが、先生は打開を試みた。

 

 

"...ユウカ、側面の通路から敵の注意を引いて欲しい!”

 

 

「分かりました!」

 

 

ユウカは遮蔽物から飛び出し、素早く走りヘイトを買う。

更に、その左手に持っていた端末を数回弾くと、円形状の白い光がユウカを包んだ。

 

 

「私の計算は完璧よ。」

 

 

電磁偏光シールド。

直撃コースに存在する銃弾すら横に逸れ、決して当たることのない擬似的なバリアのような装置。

 

 

"よし、スズミ。お願い!”

 

 

「はい! 閃光弾、投擲しますッ!」

 

 

スズミは腰に携えていたフラッシュバンのピンを引き抜き、前線の空中に投擲。

辺りを埋め尽くす閃光と轟音が、確かに不良たちの動きを鈍らせる。

 

 

「...撃ち抜くッ!」

 

 

直後、事前に壁裏で待機していたハスミが、視覚と聴覚を遮断された不良一人一人を的確に撃ち抜き、気絶させる。

 

 

「...不良達の殲滅を確認。」

 

 

銃口を肩の下に下ろすハスミ。

コッキングレバーを弾き、後方へ引く。

マガジンを素早く取り替えるその姿は、まるで一つの儀式のようだった。

 

 

"よし、皆んな。ケガは無い?”

 

 

後方で指示出しを行っていた先生は、前線で待つユウカ達に駆け寄る。

 

 

「はい、先生のお陰で無傷です。それにしても...」

 

 

「...えぇ、なんだか、戦闘がやりやすかった気がします。」

 

 

「......やっぱり、そうよね?」

 

 

ユウカは顎に手を当て、どこか納得した様子。

その他の生徒達も、どうやら同じ意見のようだった。

 

 

(...指揮能力については、原作と相違無しか...)

 

 

先生達がいる右側面のビル、その屋上から見下ろす俺は、そう思った。

ここまでくれば、原作の先生と何ら変わりはない──だけど。

 

 

(...先生、この世界では持っている側なんだな。)

 

 

そう、先生は術式を持っていた。

...しかも、俺が知っているモノだが──それについてはまた今度話そうと思う。

 

 

「なるほど...これが先生の力......まぁ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前なのかしら......」

 

 

"...いや、それほどでもないよ。でも、指示に従ってくれてありがとう。"

 

 

ハスミ「...それでは、次の戦闘もよろしくお願いしますね。先生。」

 

 

"勿論さ。"

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜シャーレ目前にて~

 

 

「もうシャーレの建物は目の前よ!」

 

 

 

「(...先生、この騒動を起こした生徒がわかりました。)」

 

リンはインカム越しに先生に話しかけた。 

 

“(そうなの?...それで、その生徒って?)」

 

リンは深呼吸をした後、覚悟したかのように話し始める。

 

「(ワカモ。...とある『事件』をきっかけに百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。)」

 

「(似たような前科がいくつもある危険な生徒なので、気を付けてください。)」

 

"...了解したよ。"

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

電気が通っていなく、薄暗いシャーレの入口を歩く一つの影があった。

 

「......あらら。連邦生徒会は来てないみたいですね。フフッ、まぁ構いません。」

 

陰の目の前にある"地下室"と書かれた扉の取っ手を掴み、ゆっくりと開ける。

 

「この先に何があるのかは存じませんが、連邦生徒会が大事にしてる物と聞いてしまうと...壊さないと気が済みませんね...」

 

「......あぁ...久しぶりに楽しくなりそうです、ウフフ♡」

 

ワカモは高らかに笑いながら停電のせいでセキュリティーの一つもない地下室の中に消えていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方その頃、先生達は幾度となく押し寄せる不良達の対応に追われていた。

 

「先生!10時の方向に!」

 

ハスミが狙撃兵としての優れた五感で不良の密かな足音に気づき、先生に報告する。

 

“ユウカが前衛、アレお願い!”

 

その報告を受け、先生は即座にユウカを戦力として不良に回す。

 

「分っかりました!」

 

ユウカは再び端末を操作する。

 

「これは単なる計算結果に過ぎないわ。」

 

再びフィールドが展開され、敵の銃弾が側面に反れた。

 

「さぁ、まだ終わらないわよ!」

 

ユウカは勢いを途切れさせることなく、前線を押し上げていく。

対してハスミは敵を一人ずつ確実に仕留めていくが何せ数が多い...そう思考した先生は"ある作戦"を思い付き、ハスミに声をかけた。

 

“ハスミ!不良の頭上にある看板を!”

 

 

「分かりました。」

 

 

ハスミは対物強化徹甲弾を装填し、アイアンサイトを不良の真上にある看板の根本に向けた。

 

 

「撃ち抜くっ!」

 

 

火薬が弾け、それにより飛翔した鉛玉が元々崩れかけだった看板の鉄骨を貫いた。

そのまま大勢の不良の真上から崩落し、その質量で身動きを封じる。 

 

「な、なんで落ちてきた!?」

 

「出してくれぇっ!」

 

そんな混乱も束の間、動けなくなり格好の的と化した不良をチナツ、スズミ、ユウカ、ハスミが仕留めていく。

 

「無力化に成功しました。」

 

ハスミは軽く吐息を漏らし、集中を解除した。

 

“よし!”

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(...今のところは順調だね。)

 

恐らく生徒達が軒並み高水準なのもあるとは思うが。

それ以上に、それを活かす先生の指揮能力の高さ、これが凄かった。

ただ、それを黙って見ている不良たちでもないだろう。

 

「...先生!2時の方向に増援です!」

 

「8時方向にも戦車と不良生徒を複数確認しました!」

 

(挟み撃ちか、それにしても...)

 

「戦車!? あの不良達、一体どこから手に入れたの!」

 

ユウカが驚愕した原因、そしてトリニティ総合学園の制式車両であるクルセイダー巡航戦車。

キュラキュラと音を立て進撃するそれは、キヴォトス上位の個人戦力を持つ生徒でもある程度の苦戦を強いられる、一般の生徒にとっては相当の脅威になりえる代物だ。

 

“ちょっと不味いかな......”

 

先生も困ったように言って、頭を片手で抱えた。

 

「せ、先生!どうしましょう!?」

 

ユウカは未だ前進をやめない戦車に焦りながら先生に詰め寄る。

 

(...そろそろ、声かけた方が良いかな。)

 

ゆっくりとビルから降り立つ。

蒼で速度を殺しながら、ゆっくりと。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

“...とりあえず、スズミの閃光弾で牽制して、相手が怯んだ隙に迂回路を──

 

「...手伝うよ、先生。」

 

先生の背後から肩に優しく手を置き、声を掛ける。

 

"えっ!?"

 

先生はこの世界で初めて聞いた俺...いや、男の声に驚いている様子だった。

恐らくヘイローが無い点においても驚愕したとは思うが。

 

“君は...?”

 

「蒼き最強の後継者...って言えば良いかな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まさか、貴方が...」

 

“ごめん、どちら様...?”

 

先生は頭をポリポリと掻き、戦車を見たときとは別の意味で困ったように苦笑いするが、チナツがそれに答える。

 

「かつて、ゲヘナを中心にキヴォトスの犯罪率をたった一人で大幅に下げた伝説の賞金狩りです。名前は確か...五条英一ですよね?」

 

確認を取るように、鋭い目つきでこちらを見るチナツ。

今度はこっちが困ったような顔を浮かてしまう。

 

(なんで知ってるんだ...黒服が学歴を偽装登録したときの名前か?)

 

黒服に名前を告げた覚えはないが、多分どっかで伝えたんだろう。

そう半分ヤケクソで納得した。

それはそうとして、名前がバレたらマズイ事になる。

とっさに考えついた偽名を、元から考えておくべきなのに、忘れていた間抜けな頭で考えた。

 

「...違う違う、俺の名前は五条英一じゃなくて悠二だよ。」

 

悠仁...呪術廻戦の主人公の名をとっさに思い浮かべてしまった。

今度は顔に出さない。

だけど、この偽名を使うことに後悔するのはもう少し先立った。

 

“悠二だね?...それより、なんで後継者なの?”

 

先生は純粋な疑問を投げるが、恐らくその質問は多くの地雷を踏んでしまった。

気まずくなる空気の中、スズミは口をためらいながらも開いた。

 

「...二年程前、彼──五条英一は、アビドス砂漠と言う地域の砂嵐に遭遇し、命を落としているからです。」

 

“...えっ”

 

先生は腑抜けた声を漏らした直後に"本当に?"と、付け足した。

恐らく先生が元々いた場所でも、死という概念は身近ではなかったのだろう。

まあ逆に、死が軽い世界から来てもらっても困るわけだが。

 

「...はい。証拠として千切れた腕、血痕、それらのDNA

が一致すること。それと、後継者は五体満足と言うことがニュースになっているので、容姿が似ていても本人は死んでいると()()()()()()()。」

 

スズミは冷静に話し続ける。

キヴォトスでも腕を生やすことはできない、それこそ反転術式でも腕一本を治すのはとても難しい。

 

「まぁまぁ、そんな堅苦しい話すんなよ...手伝ってやるからさ。」

 

こうは言っているが、既に手伝いというか、手助けは行っている。

噛み砕いて言えば、戦車の動きを"車体のみ"に付与した無下限呪術で止め続けている。

六眼のお陰で、拡張術式という高度な呪力操作を楽に行え、それによる呪力ロスも殆ど無い。

理屈をつらつら並べられても困るだろうし簡単に言うと、結果搭乗員である不良も動けないハメ技のようなものだ。

 

“うーん...”

 

先生は腕を組み、首を傾げ深く考えている様子だった。

 

「先生...ひとまず、彼から離れた方が良いのでは?」

 

さっきからずっと俺の警戒をしているハスミは距離を取ることを促す。

 

「...まぁ、離れるかどうかは任せる。」

 

...適当に返事をするが、ハスミがそう主張するのも、無理はない。

実際、急に知らん奴から協力してあげると言われただけでも怪しいのに、それがこの世界でも指折りの実力者。

極めつけには活動意図、所属も出現時からずっと不明となると、妥当としか言いようがなかった。

 

「そうですよ先生!こんな怪しいヤツの何処を信じろって言うんですか!?」

 

ユウカもハスミを肯定するように言う、正直仕方ないとはいえ、美少女に拒絶されるのはどうにも辛い。

 

「人に向かって何を言っているんですか、貴方は...」

 

チナツは怪訝な表情を俺に向け、眉を顰める。

 

「え、口に出てた...?」

 

「...」

 

(そのゴミを見るような目だけはやめてくれ...)

 

チナツの無言の肯定、これ以上に恥ずかしい事はなかった。

 

“どうしたら...”

 

先生は苦悩しているようで、ずっと腕を組み、目を瞑って考えている。

本来、俺の脳内シュミレーションでは即オッケーを出されると思っていた。

その結果がコレで、内心背筋が凍りついている。

ただ、直後にふとアイデアが浮かんだ。

 

「先生、足、見せて。」

 

“えっと...な、何で?”

 

「足首のとこ、捻ってるだろ。」

 

...証明という名の、周りが気づいていないであろう外傷の治療。

何故こんな事を言っているかというと、さっき先生は瓦礫の隙間で足を軽くひねっていた。

普通はかなり痛いと思うんだが...多分、人柄的もあって言っていなかったんだろうなとすぐに予想がつく。

 

『...?』

 

周りは困惑を表情に浮かべ...ハスミに関しては、いつ俺が何をしても良いようにリロードとコッキングを終わらせていた。どんだけ俺のこと敵視しているんだ。

 

「何を言ってるの...? そんな訳無いじゃ──

 

そうユウカが言いかけた瞬間、先生が口を開いた。

 

“ど、どうして分かったの?”

 

──その先生の素直な疑問に、ユウカの否定は掻き消された。

 

「俺は見れば一瞬で大体分かるんだよ。そんで治すから...足、出して。」

 

「...先生、彼に隙をわざわざ与えなくても良いと思います。私たちも治療はでき──“信用していいんだね?”

 

チナツの発言を遮り、先生は本日2回目の爆弾発言をする。

俺は先生に歩み寄った後に屈み込み、怪我をしている足首に手を添える。

すると白い光が先生の足首を包んだ。

 

「はい、治った。」

 

数秒後、俺は立ち上がり...目を点にしている先生から距離を取る。

別に、警戒しているわけじゃない。

無下限があるとはいえ、ヘイローがないのに撃たれるのだけは御免なだけだ。

 

「何言ってんのよ!手をかざしただけで治るわけ無いで──

 

“いや...ユウカこれ治ってる、何なら疲労も足だけ消えた...!”

 

「?!」

 

ユウカは口に手を当て驚いたように言う。

当の先生も、驚きを隠せていないようだ。

 

多くの戦闘の被害に遭い、廃墟と化してしまったビルの屋上に立ち、見下ろす。

 

(...さて、少し遅れたけどなんとか着いた。)

 

恐らく生徒達が軒並み高水準なのもあるとは思うが。

それ以上に、それを活かす先生の指揮能力の高さ、これが凄かった。

ただ、それを黙って見ている不良たちでもないだろう。

 

「...先生!2時の方向に増援です!」

 

「8時方向にも戦車と不良生徒を複数確認しました!」

 

(...挟み撃ちか、それにしても。)

 

「戦車!? あの不良達、一体どこから手に入れたの!」

 

ユウカが驚愕した原因、そしてトリニティ総合学園の制式車両であるクルセイダー巡航戦車。

キュラキュラと音を立て進撃するそれは、キヴォトス上位の生徒でもある程度苦戦を強いられる、相当の脅威になりえる代物だ。

 

“ちょっと不味いかな......”

 

先生も困ったように言って、頭を片手で抱えた。

 

「せ、先生!どうしましょう!?」

 

ユウカは未だ前進をやめない戦車に焦りながら先生に詰め寄る。

 

(...そろそろ、声かけた方が良いかな。)

 

“...とりあえず、スズミの閃光弾で牽制して、相手が怯んだ隙に迂回路を──

 

「...手伝うよ、先生。」

 

先生の背後から肩に優しく手を置き、耳打ちする。

 

"えっ!?"

 

先生はこの世界で初めて聞いた俺...いや、男の声に驚いている様子だった。

恐らくヘイローが無い点においても驚愕したとは思うが。

 

“君は...?”

 

「蒼き最強の後継者...って言えば良いかな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まさか、貴方が...」

 

“ごめん、どちら様...?”

 

先生は頭をポリポリと掻き、戦車を見たときとは別の意味で困ったように苦笑いするが、チナツがそれに答える。

 

「かつて、ゲヘナを中心にキヴォトスの犯罪率をたった一人で大幅に下げた伝説の賞金狩りです。名前は確か...五条英一ですよね?」

 

確認を取るように、鋭い目つきでこちらを見るチナツ。

今度はこっちが困ったような顔を浮かてしまう。

 

(なんで知ってるんだ...黒服が学歴を偽装登録したときの名前か?)

 

黒服に名前を告げた覚えはないが、多分どっかで伝えたんだろう。

そう半分ヤケクソで納得した。

それはそうとして、名前がバレたらマズイ事になる。

とっさに考えついた偽名を、元から考えておくべきなのに、忘れていた間抜けな頭で考えた。

 

「...俺の名前は、悠二だよ。」

 

悠仁...呪術廻戦の主人公の名をとっさに思い浮かべてしまった。

今度は顔に出さない。

だけど、この偽名を使うことに後悔するのはもう少し先立った。

 

“ユウジだね?...それより、なんで後継者なの?”

 

先生は純粋な疑問を投げるが、恐らくその質問は多くの地雷を踏んでしまった。

気まずくなる空気の中、スズミは口をためらいながらも開いた。

 

「...二年程前、彼──五条英一は、アビドス砂漠と言う地域の砂嵐で命を落としているからです。」

 

“...えっ”

 

先生は腑抜けた声を漏らした直後に"本当に?"と、付け足した。

恐らく先生が元々いた場所でも、死という概念は身近ではなかったのだろう。

まあ逆に、死が軽い世界から来てもらっても困るわけだが。

 

「...はい。証拠として千切れた腕、血痕、それらのDNA

が一致すること。それと、後継者は五体満足と言うことがニュースになっているので、容姿が似ていても本人は死んでいると()()()()()()()。」

 

スズミは冷静に話し続ける。

キヴォトスでも腕を生やすことはできない、それこそ反転術式でも腕一本を治すのはとても難しい。

 

「まぁまぁ、そんな堅苦しい話すんなよ...手伝ってやるからさ。」

 

こうは言っているが、既に手伝いというか、手助けは行っている。

噛み砕いて言えば、戦車の動きを"車体のみ"に付与した無下限呪術で止め続けている。

六眼のお陰で、拡張術式という高度な呪力操作を楽に行え、それによる呪力ロスも殆ど無い。

理屈をつらつら並べられても困るだろうし簡単に言うと、結果搭乗員である不良も動けないハメ技のようなものだ。

 

“うーん...”

 

先生は腕を組み、首を傾げ深く考えている様子だった。

 

「先生...ひとまず、彼から離れた方が良いのでは?」

 

さっきからずっと俺の警戒をしているハスミは距離を取ることを促す。

 

「...まぁ、離れるかどうかは任せる。」

 

...適当に返事をするが、ハスミがそう主張するのも、無理はない。

実際、急に知らん奴から協力してあげると言われただけでも怪しいのに、それがこの世界でも指折りの実力者。

極めつけには活動意図、所属も出現時からずっと不明となると、妥当としか言いようがなかった。

 

「そうですよ先生!こんな怪しいヤツの何処を信じろって言うんですか!?」

 

ユウカもハスミを肯定するように言う、正直仕方ないとはいえ、美少女に拒絶されるのはどうにも辛い。

 

「人に向かって何を言っているんですか、貴方は...」

 

チナツは怪訝な表情を俺に向け、眉を顰める。

 

「え、口に出てた...?」

 

「...」

 

(そのゴミを見るような目だけはやめてくれ...)

 

チナツの無言の肯定、これ以上に恥ずかしい事はなかった。

 

“どうしたら良いんだ...?”

 

先生は苦悩しているようで、ずっと腕を組み、目を瞑って考えている。

本来、俺の脳内シュミレーションでは即オッケーを出されると思っていた。

その結果がコレで、内心背筋が凍りついている。

ただ、直後にふとアイデアが浮かんだ。

「先生、足、見せて。」

 

“えっと...な、何で?”

 

「足首のとこ、捻ってるだろ。」

 

...証明という名の、周りが気づいていないであろう外傷の治療。

何故こんな事を言っているかというと、さっき先生は瓦礫の隙間で足を軽くひねっていた。

普通はかなり痛いと思うんだが...多分、人柄的もあって言っていなかったんだろうなとすぐに予想がつく。

 

『...?』

 

周りは困惑を表情に浮かべ...ハスミに関しては、いつ俺が何をしても良いようにリロードとコッキングを終わらせていた。どんだけ俺のこと敵視しているんだ。

 

「何を言ってるの...? そんな訳無いじゃ──

 

そうユウカが言いかけた瞬間、先生が口を開いた。

 

“ど、どうして分かったの?”

 

──その先生の素直な疑問に、ユウカの否定は掻き消された。

 

「俺は見れば一瞬で大体分かるんだよ。そんで治すから...足、出して。」

 

「...先生、彼に隙をわざわざ与えなくても良いと思います。私たちも治療はでき──“信用していいんだね?”

 

チナツの発言を遮り、先生は本日2回目の爆弾発言をする。

俺は先生に歩み寄った後に屈み込み、怪我をしている足首に手を添える。

すると白い光が先生の足首を包んだ。

 

「はい、治った。」

 

数秒後、俺は立ち上がり...目を点にしている先生から距離を取る。

別に、警戒しているわけじゃない。無下限があるとは言え、ヘイローがないのに撃たれるのだけは御免なだけだ。

 

「何言ってんのよ!手をかざしただけで治るわけ無いで──

 

“いや...ユウカ、これ治ってるよ。何なら疲労も消えてる...!”

 

「えぇ!?」

 

ユウカはまだ信じきれていないように、驚きながらも眉を顰めた。

だが、軽快に、そして軽く足踏みをする先生を見てその疑惑は晴れた。

当の先生も、反転術式と言う名の治癒能力に驚いているようだ。

 

「...まぁ、信用はもらえた感じかな? とりあえず目の前に敵いる訳だし、2時方向頼んだ。俺は8時方向やるから。」

 

"...だ、大丈夫かい? いくら強いと言われていても、1人じゃ..."

 

「...頼む、信じてくれ。」

 

先生に手を合わせて頼み込む。

 

"...危なくなったら、すぐ頼ってね?”

 

数秒後、先生の優しさに漬け込んでしまう形にはなったが、溜息の後に承諾をしてくれた。

 

「大丈夫...俺、最強だから。」

 

"...!?"

 

何とか少しは信用してもらえたようだと、俺はホッとする。

 

(...決め台詞に関してはノーコメントでいかせてもらおうかな。)

 

そんな後味の悪い思考を頭で回しながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「...よーし終わった...手伝いに行くかぁ...」

 

数分後。

俺は見るも無惨な姿の不良の部隊に背を向け、先生のところへ向かった。

 

「8時の部隊は殲滅してきたよ。」

 

"いや早いね!?"

 

「まぁね...」

 

先生は信じられないものを見るような目で、ドヤ顔の俺を見る。

 

「そんなに時間経ってないんですが...」

 

スズミは...驚愕というよりかは、引きつるような顔を向けていた。

 

“...流石悠二だね。でも、こっちももう終わるよ。”

 

「流石先生だ!」

 

"...それほどでも、無いよ。"

 

この時、先生は自虐的な笑みを浮かべていた。

 

「...先生は、夢はある?」

 

気づいた時には、唐突な質問が、戦場の後方で、俺の口から呟かれていた。

 

"...まあ、あるかな。"

 

「そう、か...」

 

先生は、さっきと同じ表情で言う。

夢の内容は、今きっと完成したんだろう。

それでも先生には、そんな風に微笑んで欲しくなかった。

 

そして、()()()()()この世界の先生を。

俺は、救えるのだろうか。

 

(...いや、違うな。)

 

───救いたいんじゃない。

 

──────救うんだよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先生の戦闘も終わり、もう前方かつ、目前にあるシャーレを前に先生は俺に問いかける。

 

“それで、何で手伝ってくれたの?”

 

「うーん、ちとお願いがあるんだよね、2つ。」

 

俺は人差し指と中指を立てて、所謂ピースをする。

 

“そのお願いって...?”

 

「一つ目は、先生の専属生徒になりたい。」

 

”うん、いいよ。“

 

承諾を得たので、中指を曲げる。

 

『えっ?』

 

「お!わかってるじゃーん!」

 

周りの生徒は困惑しているようだが、先生は即答した。

 

「い、いや...駄目でしょ...!こんな危険な人を先生の側近にするなんて...」

 

「そうです!!この人は危険すぎます!!」

 

"確かにこの子は危険な力を所持している。でも、絶対に間違った使い方はしないと思う。”

 

「な、どうしてですか!?」

 

ユウカは問いただす。

 

“部外者だったとはいえ、私たちを助けてくれた心優しい生徒だからだよ。”

 

「...今回だけですからね。」

 

先生の一言で納得している。

やっぱり、このボスエネミー...大魔王ユウカを納得させられる程の心、そして優しさを先生は持っているのだろう。

 

「...あ、それと五条さん。」

 

「うーん...悠二で良いよ。」

 

「その...悠二さんの2つ目の目的は...?」

 

「まあ、ちょっと助けてほしくてね」

 

“...?”

 

「...まだその内容は来たるべき日まで明かせない。と、いうかこんなゆっくりしてていいの?」

 

ユウカにそう矛先を向けると、彼女はハッとした表情で先生に言う。

 

「...あっ!先生は先にシャーレの中へ!!」

 

「あ、俺護衛で行きたい。」

 

「頼みますよ...?」

 

「勿論、外の警備は任せたからな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜シャーレ地下にて〜

 

 

“え〜と、こっちかな?”

 

「...。」

 

さて、ワカモか...どうしよ。

ちょこっと隠れてやり過ごすか。

 

“......んー?”

 

よし来たな、ワカモ参戦!

 

「......あら?」

 

さぁ、運命は...どうなる? 

 

“やぁ、こんにちは。”

 

先生は柔らかい笑みを浮かべて挨拶を飛ばす。

 

「あら、あららら......」

 

「あぁ......」

 

「...」

 

ワカモはあからさまに顔を赤くし、黙り込んでしまう。

 

“...?”

 

「...」

 

「し、し......」

 

“し......?”

 

「失礼致しましたーー!!」

 

"...え?"

 

(...ん?いつの間にか消えてる?)

 

気づいた頃には、巻き上がる地下室の書類と共にワカモは消えていた。




いらねぇ豆知識:

英一(現悠二)は結界術が苦手です。というか、結界術に関しては呪力ロスを余り抑えられていません。ですが技術は他の技同様めっちゃ強いです。

-追記-

日付や季節などの設定はガバガバですが...どうか御愛嬌下さい。
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