ここね…あの女のハウスは。
まずはノックから。
コンコン
シーン___
返事がない。ただのしかばねのようだ。
確実に居るし生きてるんだけどな。
もう少し強くやってみるか
ゴンゴンゴン
シーン__
あの雌猫、相当頑固だな
もっと強く
ドンドンドンドン
また居留守…!俺も相当やってることやばい奴だとは思うが、この音量で寝てるっつうことはさすがに無いだろうし
一度声を掛けてみるか
「おーい!開けろー!杏山カズサー!」
「居るのはわかってるんだぞー!いい加減立てこもるのを止めろー!
田舎にいるお前の母親も泣いてるぞー!」
「うるっさいな…誰…」
「よっ、久しいなカズサ。美人はすっぴんでも美人なんだな。」
その瞬間、杏山カズサの脳裏によぎる存在しない記憶。
『だーれだ。』
『カズサだろ?オラがカズサのことを間違えるわけがない。』
『わかるんだ。そんなに私のことが好きなの?』
『ああ、大好きだ。』
『へ~…そうなんだ。』
『今日はみんなに紹介したい人がいるんだ。』
『カズサちゃん、誰を紹介してくれるの?』
『私の彼氏、孫悟空って言うんだ。』
『おお、キャスパリーグにも遂に春が来たのかい。』
『その呼び方、止めてって言ってるよね。』
『痛い痛い…止めたまえキャスパリーグ。無言で力を強めないでくれ…』
『へへへ…』
「…ズサ?おいしっかりしろカズサ!」
「ん…?ああ…ごめんね…彼氏を待たせるなんて…彼女失格だよね…上がって、ちょっと汚れちゃってるけど。」
ん?…ん!!!??!?!!????!!!?
なんで恋人関係に!?
「今、彼氏って言ったよな?」
「そうだけど、なにかおかしい?」
「い…いや…なにも…」
こいつ…気が狂っているのか…
「ちょっとお手洗いに…」
「そこの廊下を突き当たって右側にあるよ。」
「助かる。」
というか…彼氏扱いにかき消されてたけどなんか暴れた形跡があったな。
一回報告しておくか。
プルルルルル…
「なにかわかったことがあったかい?」
「気がおかしくなってた。」
「気がおかしく?それはどういったふうに?」
「なんか、彼氏扱いをしてきた。正直興奮しなかったと言えば嘘になる。」
「もうそのままで良いんじゃないかな?君もキャスパリーグを憎く思っている訳では無いんだろ?その方がお互いに幸せだろう?」
「ああ、オラだけなら問題は無いんだ、ただ!数ヶ月間に音信不通になっているとは言え、交際相手がいるんだ。」
「うわぁ…これはひどい…」
どうすれば良いんだ…もう…救護騎士団に救護ォ!してもらうか…
せめてこれがカズサにとっての悪夢なら良かった。悪夢なら覚めて終わりだから。
けど…いい夢は…覚めたら終わってしまう。
どこぞの派手柱みたいに嫁を3人娶られるような度量が俺にあれば…
いや…無いものはない。ずっと夢を見てるんじゃ駄目だ。夢から覚まさねば、現実に向き合わさせなければいけない。
「切るぞ」
「頑張りたまえ。」
「カズサ、戻ってきたぞ。」
「おかえりー。今日は何する?」
「話をしよう。まずは、カズサと付き合ってなんかない。」
「そんな嘘つかないでよ…しっかり覚えてるんだからね。」
「何を覚えてるんだ?」
「そりゃあ、二人で………あれ、思い出せない。」
「それはそうだろう。だってそんな過去は存在しないのだからな。」
「嘘、悟空から告白してきたよね?」
「こちらから告白をしたことはない。
いい加減に夢から覚めろ。グズグズしてるんじゃない。」
「うそ…うそ…そんなに私をからかいたいの?」
「生憎、今話した事が事実だ。
重ねて言わせてもらうが、今のカズサは嫌いだ。理想を追うだけで現実が伴っていない。」