若葉さんに連れられてシェルターのテントから出て、少し歩いてからやや小さいテントに入る。
「このテントの小さいほうの入り口、荷物搬入口から入ってすぐの支柱を、基地に入る人数ごとに決まった回数ノックする、そのあとはしばらく経つと扉が開きます。これから階段を降りたところからは湖下孤立機械化中隊の秘密拠点の上層部になります。」
支柱の近くにあった大きめな箱が開き、中にあった隠し階段が現れる。二人で下り始める。
「いまさらですけど、さっきの避難用シェルターで大声で部隊名言っちゃいましたけど、若葉お姉さんも名前出してたから大丈夫なんですかね?」
基地についてすらいない段階で情報漏洩で罰則とかは勘弁してほしい。
「ああ、それなら大丈夫ですよ。
名無湖の76番隊と言えば公式情報では孤立した敗残兵が勝手に名乗っているだけということになっていますからね~。
そんなところに多少の兵がいたって不自然ではないし、部隊名を出したくらいでは問題ないんですよ~。
だいいち、言ったら問題あるような部隊名なら新入隊員に知らせたりはしませんからね♪」
「なるほど、口を滑らせたと思ったけど、想定内だったんですね。」
「そうですね~♪口を滑らせても問題が無いように時々口を滑らせることになっています。
だいたい怪しい人は別部隊がマークしてあるという話ですし。
だれが隊員なのかくらいの情報はほぼ漏れているでしょうけどそのくらいならまだ想定内ですし。」
「ああ、バスのチケットの時点である程度怪しい対象は絞れそうですね。あとは広範囲をカバーするようにカメラを仕掛けておいて特に怪しい動きを探したりかな。いや、逆に相手がこちらを調べるのもその程度なら簡単ということでもあるか。けっこう下りますね」
「そういうことです、表向きは湖があるだけだから長期間滞在するだけでも目立ちますし、特定は難しくありません。
そろそろ着きます、急ぎの時にはほかの出入り口がありますけどここはちょっと疲れますね、しかたないですけど。」
階段を下り終えると、受付のカウンターと椅子がいくつかある待合室のような場所についた。
受付のカウンターには緑色の制服のお姉さんが立っている。
「ようこそ、そろそろ来ると思ってたわ。
私は1000番式人型接続端末外装、略して1000HIRO、チヒロと呼ばれています。
受付の任務にあたっています。」
「はじめまして、ジャック・J・ブレット少尉です。」
「こんにちは、ちひろさん。日下部大尉です、外部で避難誘導中に予定外にブレット少尉と遭遇したため案内してきました。」
「若葉ちゃん、おつかれさま。若葉ちゃんはこの時間は非番だったはずですが、休養は充分ですか?
次のシフトはエム対応だったはずですが。」
「予定以上に回復できました、残量ブルー、通常対応は充分にできる程度には回復しています。もうすぐ交代時間なので、時間になったらこのままシフトに入れます。」
「それは心強い。よろしくお願いしますね。
ところで、ブレットくんは観光はできましたか?名無湖周辺のお店でお買い物はしたかしら。」
「バスを降りて出店を覗こうかと思ったところで警報が流れて避難しただけなのでほとんど見てはいません。」
「ああ、それならお買い物はできていないんですね。
とりあえず最初に重要なところを説明しますね。
地球連邦極東方面軍76番大隊湖下孤立機械化中隊、名前の通り湖の下、地中がメインの拠点となります。今居るところが入り口です。
そして、戦力は寄せ集めなので正直言ってしまうとたいしたことないです。人数も全然足りてない、物資も足りてない。
見た目観光地なので武器弾薬の補給がほとんどできていないのが致命的ですね。Eキャップの補充すら追いつかないときもあります。
一応戦場から拾ってモビルスーツはいくらか集めてありますが、まともに動くものも少ないです。
そこで買い出ししてもらったものが役に立つわけです、ちゃんと買って来てくれましたか?領収書もあれば出してくださいね。」
「指示通り買ってきています、戦力が足りないという説明と何がつながるのかわかりませんが。
ほとんど菓子類ですよね。これ。商品保護の梱包がずいぶん厳重にされていましたが。」
「受け取りました、まず領収書の金額の24ハイトをお支払いします。あとは商品の鑑定のあと買取金額との差額をお支払いしますね。スイーツはここの隊員が戦うために必要なものですね。外部から買ってきたものだと効果が倍増します。
量より質が必要ですから、スイーツは。」
「はあ、そういうものですか。確かに24ハイト受け取りました。」
「そういうものなんです。えっと、あとは基地内で休憩してもらいたいところですが、内部との連絡通路がまだ開く時間じゃないんですね。
見ての通り入り口には何もありませんし。そんなわけで、お昼過ぎくらいまでここで待つか外を観光するなどしてヒトサンマルマルくらいに合流していただけますか?
食事は中で食べるならヒトヨンマルマル以降になると思います。」
「ああ、最初に指示を受けた合流時間がヒトフタサンマルでしたし、まだ早いのは納得しました、外の出店で食事を済ませてきます。」
「お気をつけて。」
外に出ようとすると出口近くにいた若葉さんと目が合った。
「まだもうちょっとだけ時間がありました。急用があれば外にも中にも走れますからここで待っていようかなと。
それではわたしはもうちょっとしたら防衛任務に入りますが、その前にブレット君に食事代としてこれをあげます、えいっ、あー、変なところ跳んだー!」
コインを親指で飛ばそうとして部屋の隅のほうに飛ばしてしまったみたいだ。俺に近いほうに飛んできたのでとりあえず拾う。
「これですね、って、これ100ハイトコインですね。
食事代として出すには高すぎますよ、いくら食べてもそこまではいかないでしょうに。10ハイトか5ハイトの間違いじゃないですか?それでも多いですけど。」
「かっこよく渡したかったけど失敗しました。
100ハイトで間違ってはいないので大丈夫です。もしお酒を飲むならそのくらいは持って行ったほうがいいですよ。
名無湖では食事はすごく高いで済むけど、お酒はものすっごく高いですから。ちょっと調子に乗って飲めばそれ一枚じゃ足りません。
新人さんには誰かが渡すことになってるから、気にしないで使ってくださいね。
おつりもお小遣いにして大丈夫です。」
「そういわれると怖いですね、ありがたくいただきます。買う前に値段をしっかり確認することにします。」
「そうしてください、それとやっぱり10ハイトコイン10枚と両替しましょう。慣れないうちは高額コインは目立つだけですから。
あと、名無湖ではハイトのことをキュートと呼びますが使い方はハイトと同じなので気にしないでください。」
「助かります。ありがとうございます。若葉お姉さんはやさしいなあ。」
「そうでしょう、おねーさんは気が利くでしょう、ふふふー。」
・・・そのあと、一人用の出入りの合図を教えてもらってから酒場に出てみたが。
「なるほど、酒場の果実水が5クール、水が大ビンで半キュート、熊ビールが一杯6キュートからでウイスキーの水割りが1杯15キュートからか。
酒は高いと聞いていてもびっくりするな。まあもともと飲むつもりもないが。初出勤前で飲むのはありえん。
食事は合成食糧が1キュート半、ハンバーガーが3キュート、定食が5キュートから、これなら高いがまあ観光地価格と考えれば理解できる値段だ。
俺が酒好きだったらいくら金があっても足りないだろうな。一晩で100ハイト使い切るまでありえる。金があれば高くても飲んでしまうんだろうしな。」
「定食うまいな、まともな食料でこの値段は安い、のかな。予算も余ったし、ほかに何か買ってから戻るかな。」
あぶく銭を手に入れた時にどんな行動をとるかの調査も兼ねているのかもしれないし、適度な散財はしておいたほうが良さそうだ。そうでもなかったら食事代に100ハイトは渡しすぎだろう。
「とりあえず今日は食料品を見ていくとするかな。酒場とどのくらい違うのか。」
残量ブルー→独自設定、状態をオールグリーン→グリーン→ブルー→イエロー→レッドという風に言っている。オールグリーン絶好調、グリーン好調、ブルー普通、イエロー問題あり、レッドヤバい、くらいな感じ。
通貨設定(ハイトとクールはガンダム原作にもあるけど金額はここの独自設定、ほかの話とは多分全然違うので信じないように)
1ハイト=1キュート(地方通貨、だけどキュート硬貨は誰も見たことが無い気がする、ハイトのほうがみんな知ってるから両替する意味もメリットもないから。でもなぜかキュートと呼ぶ。
1キュート=500円くらい、1キュート=24クール、1クール=20円くらい。
食事代5万、ウイスキーの水割り1杯7500円と考えるとかなりヤバい感。酒は容赦なく高値で売ってます。