仮題名『異界から召喚された竜(ドラゴン)と復讐者となった村娘』 作:蜜柑ブタ
場面は、開門の日にオリキャラが現れたこと。
それからクラウ家で無理やり居候していたこと。
降臨の日に竜(うつろわざるもの)としての力を発揮して、カノヌシに傷を負わせたことなど。
アバルの村の結末と、ベルベットとライフィセットは原作通りです。
その男は、色々と異質だった。
肌が濃い色であるとか、オレンジ色の髪色とか、黒曜石のような黒い瞳とか。
着痩せするタイプの細マッチョの長身で、顔立ちもかなり整っている。
そんな派手な見た目の男は、アバルの村で起こった開門の日と後に呼ばれることとなる悲劇の日に現れ、アバルの村にそのまま住み着いたという経緯を持つ。
「クライズ。クライズー? どこにいるの?」
アバルの村の奥の方にあるクラウ家で、ベルベット・クラウの声が響く。
彼女が家から出てきて家の周りを探すと、家の横の枯れ葉の山の上に座ってボーっとしているオレンジの髪の男がいた。
彼がクライズ。
開門の日に現れ、そのままアバルの村…クラウ家に居候した謎の男である。
ボーっとしているのは、本人曰く趣味らしい。
「ベルベット。どうした?」
「どうした、じゃないわよ。冬に向けて色々支度しとかないといけないんだから手伝ってって今朝話したじゃない!」
「…すまない。」
プリプリ怒るベルベットに、クライズは立ち上がって謝罪した。
「アーサー義兄さんも手伝ってくれるけど、急に出かける用事があるからって流れになったのに…。」
「悪かった。」
「…反省してるならいいけど。忘れてた分はちゃんと挽回してくれる?」
「分かっている。」
「じゃあ今から力仕事いっぱいあるから頼むわね!」
「ああ。」
ベルベットから説教が終わり、二人は冬支度に備えた準備をするために村の方へ向かった。
クライズという名前は、かろうじて思い出せた記憶のひとつだった。
十年前の開門の日。
アバルの村を業魔が襲撃し、ベルベットの姉で、アーサーの妻であったセリカが亡くなった。
そんな悲劇の最中でアーサーに言われて身を隠していたもっと幼かったベルベットと弟のライフィセットの二人を見つけて襲い掛かってきた業魔から救ったのがクライズだった。
なぜか全裸で。
しかし素手で業魔を殴り倒しあっという間に始末したのだ。
業魔は、普通の攻撃は通用しない。
倒せるのは聖隷術を使う聖隷か、同じ業魔か、聖隷と契約した対魔士でないと倒せないというこの世界でもっとも畏怖される存在をいともたやすく倒したこと。
そのため発見された時には、外見の派手さもあって聖隷ではないかと考えられたりしたが、本人はほとんど記憶をもっておらず名前もあやふやな記憶を必死にほじくり返してやっと思い出せたぐらいだ。
生まれたての聖隷なら記憶がそもそもないという可能性を対魔士であるアーサーが考察したが、聖隷ではないということがすぐに判明して余計に正体不明さが増した。
クライズは、なぜかベルベットとライフィセットを守らなければならないという使命感を持っており、ベルベット達が戸惑う中で半ば強引に居候したのだった。
ただでさえよそ者を疎遠にしがちな村人達の傾向があったため煙たがられていたアーサーの存在に続いて、正体不明だが業魔を倒せる強さを持つ謎の男クライズの登場とクラウ家に居候したことで、クラウ家のアバル村での立ち位置はますますおかしなことになった。
クライズは、奇妙だが不思議な男だった。
奇妙なほど話しやすい雰囲気があり、気が付けば心のうちに溜め込んでいた不平不満や悩みを話したくて彼に近寄ってくるため、村人やたまに来る行商人の聞き相手をしているのだ。
話を聞きながら程度的確に相槌をうち、悩みの種を解決させる発破となる言葉を投げかけるため、クライズと会話をした相手はとても心が救われた気持ちになってスッキリするそうだ。
筋肉質で派手な髪色やら外見をしているのに、どういうことなんだと変な目を向けられるが、悪いことをしていないしむしろ人助けしかしていないので、クライズに話をして助られた人を中心にクライズは村に受け入れられていった。
「ねえ、クライズ。」
「ん?」
「クライズは、どうして僕と姉さんを守ってくれるの?」
「……そう願われたからだ。」
「ずっとそう言うよね。それって誰の願い?」
病気で虚弱体質のライフィセットがもう何度目かになる問いをクライズに問いかけるが、答えはいつも同じだ。
「…忘れた。思い出せない。」
それがいつもの答えだ。
どうしてもその部分が思い出せないが、その誰かの願いを叶えるためにベルベットとライフィセットを守らなければいけないのだとクライズは自分の存在意義としている。
意地でもそれを曲げないし、拒否されてもやり遂げるためにしか行動しない。
そんなだから仕方なく居候を許可して、同じ屋根の下で生活している。
最初に出会ったときはなぜか全裸だったのも含めて謎ばかりなのに、彼に記憶がないため謎の答えが見つからない。
「ねえ、クライズ…。」
「どうした?」
「……僕がいなくなっても、姉さんのことを守り続けるの?」
「…ああ。」
「僕はもうすぐいなくなっちゃう…。」
呪いとも解釈されるほどの原因不明の不治の病を抱えたライフィセットは自分の命がもう長くないことを自覚していた。
「…お姉ちゃんを残していきたくないんだ。本当は…。」
「ああ。」
「お姉ちゃんは強いけど…、ずっと気を張ってて……僕がお荷物になってるかもって…。すごく心配…。」
「そうだな。」
「ねえ……。」
「うん?」
「僕がどうなっても…、お姉ちゃんが寂しい想いをしないようにずっと…いてくれる?」
「…そのつもりだ。」
「クライズは覚えていないけど、そう誰かにお願いされたから?」
「それもある。」
「それ以外にも?」
「ライフィセットの願いを含めたものとする。」
「僕のお願いも入れちゃうの? クライズって、結局聖隷? それとも別の何か?」
「…覚えてない。」
「もう、そればっかり。クライズが作ったご飯が絶対不味いのも、聖隷の特性なら説明がつくのに。」
「それは…知らん。」
なぜか作る料理は全てメシマズになるクライズ。
見た目は完璧でも味は……恐ろしい味になる。謎の補正。
横でベルベットなどに指導されながら作ってもメシマズは解消不可能という、もはやある種の呪いじゃないかとアーサーは頭を抱えたほどだ。
ただ包丁使いは神レベルなので、調理の途中までを手伝うことだけはできた。ただし味付けは絶対NG。
あまり表情を動かさず、いつも冷静だが料理のこととなるとションボリする姿が見られるため、本人はそれなりに気にしているようだ……。
「じゃあ、約束してくれる? 僕のお願いも含めてくれる?」
「…約束する。」
クライズは、それが自分の存在意義だと無意識なのかそんな雰囲気をまとう。
「僕が死んじゃっても。お姉ちゃんが寂しくないように…、傍にいて…ほしい。お姉ちゃんがたくさん大切な人や物を見つけて僕がいなくなったあとに生きる意味を見つけられるように、助けてあげて。」
「…分かった。」
そうしてライフィセットと約束を交わした。
それは、開門の日以来、再び訪れる緋の夜が来る数週間前の話だ。
再び訪れた緋の夜は、後に降臨の日と呼ばれることとなる運命の日。
そこでベルベットとライフィセット、そしてアーサーの関係は村の滅亡と共に全てが壊れた。
そして、ライフィセットをアーサーによって殺され怒りと憎悪で正気を失ったベルベットが喰魔という業魔と化した後に現れたクライズは、それまで忘れていた己の力を思い出すに至る。
「やっと思い出した。」
その言葉と共に業魔となった村人達を喰い殺した返り血に塗れて呆然自失となったベルベットの前に現れたクライズは、その姿を人ではない物に変化させた。
その姿はまるで……。、
「人の形をしたドラゴン⁉」
まず竜人と例えられそうな見た目となり、残りの業魔を力を集約して生成した大きな剣で薙ぎ払うように倒しつくし、背後に光の柱のような何かが天に上るように出てくる中、アーサーを見据えて咆哮をあげて更に力を引き出してみせる。
光に包まれてから現れたのは、数倍も大きい筋骨隆々な竜騎士のような見たこともない緋色のドラゴン。
そのドラゴンの出現に反応してかアーサーに殺されたライフィセットの亡骸を落とされた穴の底から現れた何かが急に方向転換して緋色の竜騎士に襲い掛かろうとした。
その何かを竜騎士は手にする大きな剣を握って構えて、目に見えぬほどの一振りを浴びせた。
切り裂かれた何かは悲鳴のような音を出しながら暴れ狂い、周囲を破壊しながら緋色の竜騎士の胴体に重い一撃を食らわした。
穴が開くほどの一撃だが倒れずに耐えきった緋色の竜騎士は、ふらつきながら再度剣を握り、背にある翼を広げて高く飛び、暴れ狂ういくつも頭のあるそれに剣を振り降ろした。
そこで全てが一度大きな光に包まれ見えなくなった。
それが喰魔となったベルベットが最後に見た光景となった。
次に目を覚ましたベルベットは、監獄の地下深くに造られた牢獄に放置されていた。
緋色の竜騎士の姿は、彼女の脳裏に強く焼き付いて離れない。
あれがクライズであることも。
アーサーに命を奪われたライフィセットの遺体を喰ったアレに一太刀浴びせて傷をつけた光景も忘れられない。
あの時に少しだけ見えたアーサーの表情は、ライフィセットを殺した時とベルベットの左腕を容赦なく切り落とした冷徹な仮面のようではなく、酷く焦った顔になっていた。
「クライズ……。」
上から投げ込まれる業魔を喰らう日々の中、ベルベットは、緋色の竜騎士であった謎の居候だった男の名をたまに口にする。
クライズが変身した緋色の竜騎士は、一太刀浴びせた後にカウンターで手痛い一撃を受けたが、それでも倒れずにアレを斬ろうとして……そのあとのことは分からない。
「きっと…生きてる…。」
全員が業魔となってしまったアバルの村人達を全員自分が殺した。親友と呼べる少女だったニコもそこに含まれていた。業魔化して怒りと憎しみで我を失っていたとはいえ、全員を喰い殺した。
憎い。憎い。
姉セリカの夫であった義兄のアーサーが…、アルトリウスが憎い。
何の罪のないライフィセットを殺し、自分のこともあっさりと……。
けれど…、クライズが死んだという確信だけは持てなかった。
なぜか不思議とそう思えるのだ。
理由は分からない。
けれど、クライズは……、自分を含めてみんなとは違う存在だったから。
どう作ってもなぜか不味い料理しか作れない。
趣味がボーっとすること。
どちらかというと強面なのに、奇妙なほど聞き上手。
十年経っても、外見が全然変わらないからとんでもない若作りと陰で呼ばれてた。
業魔と倒せる力があって、見たこともないドラゴンに変身する力を持っていた。
遺跡の穴から現れた光る何かに一太刀浴びせ、アルトリウスが信じられないほど狼狽するほどの力があるようだった。
3年後のある日。
壁沿いに降ろされた梯子から降りてきたのは、赤い髪の聖隷だった。
クライズじゃないのかと内心でガッカリしつつ、アルトリウスの使役聖隷だったシアリーズという聖隷に試され行為で戦闘を行った。
そこに突如割って入った濃い肌の筋肉のついた腕の持ち主。
「遅いじゃない…。」
ベルベットは目を見開き、しかしすぐに自分で驚いてしまうほど久しぶりに表情筋が動いて泣きそうな顔で苦笑していた。
「遅くなった。すまないベルベット。」
上半身が特にボロボロの衣装で現れたクライズが3年前とちっとも変わらない顔で微笑んだ。
その変わらない姿と様子に忘れかけていた涙が目に溢れそうになるほど、この3年間で凍り付いていたベルベットの心が揺さぶられた。
クライズが何者なのか。
なぜ開門の日に突然現れて、ベルベットとライフィセットを守ることに固執したのか。
彼が言う誰かの願い。それを願ったのは誰だったのかはいまだ分からず。
十数年経過しても見た目がちっとも変わっていないことも含めて多くの謎が残っている。
ただ、3年間姿をくらましていた間に降臨の日に思い出したことがあったようだ。
クライズは、この世界ではな別の世界から呼ばれてきた、【うつろわざるもの】と呼ばれる竜のひとりで、自分達のその不変で不動な姿を見た人間達から神と称されてきた存在だということをクライズは自分の力であり本来の姿である竜の力を取り戻したことで思い出したと語った。
だが誰に呼ばれてこの世界に来たのかは思い出せなかった。
「まだ契約が不完全だからだな。」
彼が言うにはそれが理由で記憶がずっと曖昧であったことと、記憶が一部戻ったとはいえ全部の力を出し切れないのだという。
すべてを喰らう業魔となり、全てを奪った憎き仇への復讐に身も心も燃やすようになった、かつてただの家族想いな村娘だったベルベットの傍らに、不変不動の異界の竜(ドラゴン)が常についてくる物語は、こうして始まった。
なぜか思いついたネタでした。
何を言われても何が起こっても心身ともに変化なしの存在が急に現れたら?ってそんな唐突な思い付き。
ブレスオブファイア4に登場する竜は、見た目も内面も変化しないという異界の存在で一方的な召喚で呼ばれる神として崇められています。
オリキャラのクライズもそんな竜のひとりですが、他の竜とはかなり変わった能力の持ち主という設定です。
ブレスオブファイア4の主人公のリュウとフォウルのように強大な力を持つ竜とは違う意味で異質ですが、あくまで彼が生まれ持った役割と性質があり、役割が終われば自力で元居た世界に帰れる能力があるという設定にしています。
けれどそのせいで自分を必要とする声を聴くと勝手にその世界へ召喚されてしまう。
そのため他の竜より多くの人間の呼ぶ声で色んな世界に召喚されるため、多忙な苦労人と他の竜達からは思われているとか……。
ただし他の竜がいても一緒には帰れないし、召喚された先の世界で手に入れた物を持ち帰ることもできない自分限定の帰還能力です。
稀にイレギュラーで自分を呼んだ相手が直後に死亡していたりすると契約が結べず、その影響で記憶が曖昧になってしまうけど、同じ願いを持っているか、近しい人間が契約を引き継げば契約が完全な形になり全ての力が解禁される。
竜としての形態は、ナイトに近い竜騎士のような姿。
異界の存在であるせいか、復活したてとはいえカノヌシに大きな傷を与えことができた。
あとで恨まれるフラグ。
ベルベットをはじめ、誰とも特別な感情を交わす深い関係にはならない予定です。
しかしそこにいるだけで、穢れによる呪いに侵された世界の理が部分的に変容し始めてくるためカノヌシや四聖主、天界からは歓迎されない扱いになります。
能力や役割については、仏教の要素を入れる予定です。