座に刻まれる位の悲しみを体験させたマスターと体験させられたサーヴァント達の(非)日常   作:ガジュマルさん

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願いは叶えるものではない

「ええと、マスター様?」

 

「ああ」

 

「その……お膝に乗せられている御仁は、一体?」

 

「それが……」

 

 

 ……幾分か震えた声をしている(気がする)キャスターを傍目に、状況を振り返ってみるとしよう。

 

 

「……」

 

 

 俺は屋敷の庭にて魔術式を描いていた。

 防衛兼、練習という意味合いを含んでな。

 そうしているといきなり、術式が勝手に変化し始めて    

 

 

「……何よ」

 

 

 この赤い少女が、俺に突撃して来たという訳だ。

 俺に乗り掛かっているのはその結果であるに過ぎない。

 

 

「うん、全然わからん」

 

「え、えええ……?」

 

「……」

 

 

 とは言え敵意はないらしい、俺の上でしていることと言えば、俺の顔をじっと見続けている程度だし。

 

 

「いえ非常に羨ま……ではなく! マスター様から離れて貰えますか、そこな御仁!」

 

「……」

 

 

 ちら、とキャスターの方を見た少女。

 そして口を開き、一言。

 

 

()()()()()()()()()

 

「ッ    

 

「私は、私の為にここに来た。それを邪魔されるつもりはないわ」

 

 

 ……まじか。

 少女が行ったのは、軽く睨み付けただけ。

 しかしその行為に不相応な程の圧が、そこには在った。

 

 

「私の前では、そんな願いは叶わな    いいえ、()()()()()()()()()()()()

 

 

 そうして、少女は再びこちらに目を向ける。

 部外者に告げることはもう、これ以上ないと言った風である。

 

 

「……」

 

「とりあえず、名前を聞いてもいいか、サーヴァント」

 

「? ああそっか……人間は記憶を引き継けないものね」

 

 

 記憶を引き継ぐってなんでしょうかね!

 まぁたいわくつきのサーヴァントが聖杯もなしに、勝手に、自ら俺の所にやって来たとでも言うのかな?

 ありえんことを2度も起こすんじゃないよ全く。

 

 

「プリテンダー……そうね、ただのプリテンダーよ。今の貴方にはそれで十分」

 

「真名は教えては貰えないと」

 

「ええ、必要ないから」

 

 

 プリテンダー……?

 そんなクラスあったか。

 

 いや、俺の知ってる7騎+αには含まれていない筈だ。

 

 

「プリテンダー……詐称者ってところ、か?」

 

「間違ってないわ」

 

「正解してもいなさそうだ」

 

 

 そう答えると、プリテンダーは満足そうに笑みを浮かべている、意外と表情に出るなこっちのサーヴァントも。

 

 

()の心を揺らがせたのに、普通に死ねると思ってるの?」

 

 

 ……なんかとんでもないワード聞こえなかったか?

 

 

「今竜って    

 

「そんな願いは叶わない」

 

「ちょい待てって」

 

 

 聞く耳持たず、とはこのことか。

 少女が俺の顔に自身の顔を近付けて来る。

 

 

「ってストップ、ストーップっ! 私の前でそれ以上のことは御免蒙りますよ!?」

 

「……貴女に止められる筋合いはないのだけど?」

 

「其方に無くとも此方にございます故! というよりも()()は貴女の専門ではありませんからね?」

 

「はぁ? いや、ちょっと待ちなさい」

 

 

 プリテンダーがキャスターの方をじっと見つめる。

 先程よりもより正確に、だ。

 

 

「……ああ、そう。そういうこと」

 

 

 今度はじろりと此方を見つめる。

 え。

 

 

「これは浮気と捉えてもいいのかしら、契約者(マスター)?」

 

「いやいやいや、そもそも初対面だが!?」

 

 

 プリテンダーも、ついでにもう馴染んでるがキャスターもな!

 

 

「面倒なものね、人間って」

 

 

 そう寂しそうに呟くプリテンダー。

 非常に実感が込められた一言だ。

 

 

「面倒で、脆くて、捻くれ者な貴方」

 

「……お、おう?」

 

「ふふ、もう離さないわ」

 

「ちょっ」

 

 

 キャスターの静止虚しく、俺は目の前のプリテンダー(少女)    

 

 

「……あら、釣れないのね?」

 

「ははは、流石にまずいだろいきなりってのは」

 

 

 口付け、することはなく。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それはそうとして色々とすっ飛ばし過ぎじゃあないですかねプリテンダーさん!

 

 

「いいわ、その抵抗は無意味だって教えてあげる」

 

「うげ」

 

 

 キャスターにも言えるけど、なぁんで俺の魔術がしっかりばれてるんですか!

 現代の魔術師が頑張って秘匿してるものを一瞬で見破られる、これが尊厳破壊ですかそうですか。

 

 

「こ、これ以上はだめぇ    っ!」

 

「ヤメヤメロー!」

 

 

 うわっドアップの斬ザブロー。

 斬ザブローに抱えられてその場を抜け出す、地味に助かった。

 

 

「マスター様大丈夫でございますか? 南蛮の呪いなどかけられていては一大事です!」

 

「いや、大丈夫だと思う……ぞ?」

 

 

 敵意があった訳じゃ、ない。

 多分。

 あるのは俺に対する執着のようなもの。

 

 

「まあ、これからお世話になるわね、契約者(マスター)

 

「色々とすっ飛ばされてる感は否めないんだがなぁ」

 

 

 そうしてまた、うちの屋敷の住人が増えましたとさ。

 サーヴァントの概念壊れる、ってか俺はもう壊れてる。

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