【完結】俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな   作:羽黒楓

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第25話 買う奴隷を選ぶ

 いくらココの魔力が規格外であろうと、消費し続けていればいつかはENPになる。

 それに、なんらかの不測の事態で、俺より先にココが意識を失うことだってあるかもしれない。

 そのときに、ココを回復させる手段、そして予備魔力として、もう一人くらいはどうしても従者としてほしかった。

 魔力と、俺への信仰心。

 どちらも兼ね備えた人物、それが最大の条件だ。

 

 それも、奴隷ならばなおよい。

 一般の自由民をデールの権力で借り受けたとしても、そのうち故郷に帰りたいと思うだろうし、俺の言うことを聞く義務もない。

 いつかピンチに陥ったら、一目散に逃げるかもしれない。

 だったら、俺の言うがままになる奴隷が一番いい。

 ……奴隷制を嫌悪すべきものと思っている俺が、奴隷を便利に使おうとしている。

 なんなら、ココまでをも魔力タンクとして利用しようとしている。

 

 葛藤はあった。

 ココを奴隷から解放するために、危険があるかもしれない旅にそのココを連れて行こうとしているのだ。

 二律背反(アンビバレンツ)な思いはあったが、じっとしていてはなにも始まらない。

 ココやほかの人の魔力を使って高度な魔法を実現する。

 

 それが俺にできることで、俺に配られたカードだった。

 俺自身の信念からほど遠い結果になるかもしれない。

 ココやほかの人の運命を大きく悪い方へ変えるかもしれない。

 だけど、俺はそんな迷いを振り切って、やれることをやるつもりだ。

 

 まず、行動を起こすことだ。

 だって、俺の前の人生では、『なにかが起こるはず』と思いつつ35歳まで生きて、なにも起こらないまま俺は死んだのだから。

 悪いことになるかもしれない、と思って行動を起こさないと、()()悪い結果になる。

 ならば、良い結果を追い求めて動くべきだ、と35年間の失敗人生から俺は学んだのだ。

 せっかく二度目の人生をやりなおすチャンスをもらえたんだから、経験は生かさないとな。

 

 まず、村中の奴隷のステータスを見て回った。

 だけど、やはりタルミの魔力Bが最高だった。

 その上、タルミは物心ついてからこの村を出たことがないという。

 

 俺はこの世界の地理について全く何も知らない。

 土地勘があるってのは、移動において本当に重要なことなのだ。

 今回の旅路はたった320キロ。

 道に迷ったら、二十日の道のりが何倍もの日数となるかもしれない。

 その間に、致命的なアクシデントに見舞われるかも。

 なにしろ、魔法とモンスターにあふれている危険な世界なのだから。

 だから、道に詳しい奴隷がほしかった。

 

 デールは俺の希望をすんなり聞き入れてくれた。

 王都に手紙を出し、奴隷商人を呼び寄せたのだった。

 その奴隷商人は、近隣の村を回って、イマルまでの地理に詳しく馬車を扱う技術のある者を集めてくれた。

 

 数日後。

 ちょうどそのころ、シュリアの母親も帰郷し、久々の母親との再会を喜ぶ姉妹を尻目に、俺は居並ぶ奴隷たちのステータスを眺めていた。

 

 総勢三十人。

 

 奴隷商人がこの村に来るのは一年に一度くらい、とのことで、ほかの村人たちも奴隷を品定めしている。

 とはいえ、デールの領主権限で、まず俺が一番最初に選んでいいことになっていた。

 

「旦那、裸も見ますかい? 処女以外は指で確認してもいいですぜ、げっへっへ」

 

 汚らしいガマガエルみたいな顔の奴隷商人が俺に耳打ちした。

 ()()()()()()で奴隷を選ぶときは全裸にさせるらしいのだが……。

 

「いや、着衣のままでいい。()()()()()()じゃないからな」

 

 俺が言うと、居並ぶ奴隷たちはほっと息をつく。

 男の奴隷もだ。

 やっぱり嫌だよなー。

 

 さて、ステータスをざっと見ていく。

 めぼしいのが二人いた。

 

一人は、20歳くらいの男の奴隷。

 

身体能力 S

▲ C

■ B

魔力 A

信仰心 S

 

 お、いいじゃん。

 最初から信仰心もSだし、魔力もAあればいいんじゃないか?

 そして、身体能力もSだ。

 なるほど見るからに身体も屈強そうだし、言うことないかもしれない。

 

 少し話してみる。

「名前は?」

「アルドルです」

「鍛えているのか? いい筋肉をしている」

 

 いやまじで、すげえいい身体しているもん、こいつ。

 男ながらほれぼれするぜ。

 発達した大胸筋、盛り上がった二頭筋。たくましい三頭筋。

 大腿四頭筋やハムストリングスも、普段から鍛えてなきゃこんな太くはならんぞ。

 ……若返ってんだから、俺も今から筋トレしたらこうなれるかな?

 うーん、憧れの身体だ。

 アルドルは、俺の質問にキラキラした目で答える。

 

「はい! 普段から運動が好きなんです! あの……噂で聞いたんですが……あなたが、あのダークドラゴンを倒し、瀕死のけが人も全快させて、その上建物まで元通りにしたという……救世主様ですか!?」

 

「まあ、そう呼ぶ人もいるな」

 

「あの、俺、絶対に役に立ちます! 役に立たせてください! 救世主様にお供させてください!」

 

 うん、ハキハキしていて好印象だな。

 

「ふむ、コバヤシ殿が選ばないなら私はこれを買おうかな」

 

 などとデールも言っている。

 

「お前は、生まれながらの奴隷か?」

 

 自由民としての生活を経験したことがあるかどうかはわりと重要だ。

 接し方も若干変わるし。

 

「はい、父母も奴隷だったので!」

 

 なるほどねえ。

 

 そして、もう一人の候補を見る。

 

 それは、女性だった。

 

 年齢は……。

 まあ本人に聞いた方が早いか。

 

「お前、名前と年齢は?」

「アリア。十七」

 

 ぶっきらぼうに答える。

 

 水色の髪を雑にポニーテールにしている。

 身長は俺より頭半分くらい低い。ココよりは高いな。

 なんつーか、細いな。

 ココなんか奴隷にしてはいいもの食っているせいか、けっこういろいろ発育がいいのだが、この子はもっと食えよ、と言いたくなるくらい細い。

 彼女は金色の瞳を俺に合わせることなく、じっと地面を見ている。

 

 そして、ステータスは。

 

身体能力 D

▲ A

■ D

魔力 S

信仰心 C

 

 

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