【完結】俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな   作:羽黒楓

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第61話 昼も夜も

「いいんですか?」

 

 俺は画面に顔を出して言った。

 ちなみにココの手を握ったままだ。

 魔力をココに供給してもらいながらこの通信魔法を実現させているからな。

 デールは俺の顔を見て、

 

「おお、トモキ殿か。言った通りだ。今、わがキャルル家は難しい立場にいる。女王陛下に忠誠を誓うべきなのはもちろんなのだが、しかし、シャイア閣下にも恩がある。そこでだ。私はシャイア閣下に従おうと思う。シャイア閣下の目論見がうまくいけば私が、女王陛下がシャイア閣下を抑え込んで権力を維持するのならシュリアが、膠着状態が続くならばそれはそれで、私はシャイア閣下、シュリアは女王陛下についていけばよい。どちらが勝ってもキャルル家は存続できるだろう」

 

 なるほどな、と俺は思った。

 日本における戦国時代の武家、真田家と同じ戦法だ。

 『犬伏の別れ』として有名な逸話である。

 関ヶ原の戦いの時、真田家は父親の昌幸と次男の幸村(信繁)が西軍に、長男である信之が東軍に与し、どちらが勝っても真田家が存続するようにしたのだ。

 勝敗はご存じ東軍の徳川家康が勝ったが、その戦いで活躍した信之のとりなしもあって正幸と幸村は処刑されずに流刑にされたのだ。

 

 まあ日本人男子なら戦国時代大好きなはずなので、わざわざ説明することでもなかったかもしれないけどさ。

 

 デールの言葉を聞いたメールエが笑い出した。

 

「うひゃひゃ! 策士だねえ、デール卿! しかしそれでは負けた方の安全が確保できないんじゃ?」

「もちろん、勝った方に着いた側がとりなすことになる。私はシャイア閣下に土下座でもなんでもして、全力でシュリアの身を守る。もしシュリアの陣営――女王陛下が決定的な勝利を得ることになれば、シュリア、お前はまず妹のミラリスの安全だけは女王陛下にお願いしてくれ。女王陛下はあんなお方だが、お優しい方だ。まだ十歳のミラリスをどうこうはしないだろう。私自身はどうなってもいい」

 

 シュリアは真っ青な顔で、

 

「そんな……」

 

 と手を震わせる。

 

「シュリアよ、仕方がない。戦争も政争も尽きぬこの世の中だ。私はなによりも娘のお前たちがかわいい。お前たちが生き残るためにキャルル家自体は守らねばならぬ。まだ十八歳のお前にこんなことを頼むとは、父親として情けないが、これが一番の方法だと思うのだ。シュリア、お前は女王陛下の陣営につき、全力で女王陛下をお守りしろ」

 

     ★

 

 その晩、俺は一人で宿の部屋のベッドに横になっていた。

 いろいろ考えることがあったのだ。

 なんだか知らぬうちに、貴族の勢力争いに巻き込まれてしまった。

 そこで俺は考えた。

 俺のやるべきこと、やりたいことって、なんだろう?

 死んで異世界転生させられて、気が付いたら戦争と政争の中にいる。

 俺は、このまま流されてしまっていいのだろうか?

 

 なんなら、逃げ出して辺境の地でスローライフとしゃれこむのもいいかもしれない。

 ココとアリアを連れてさ。

 

 救世主なんて呼ばれても、俺という人間はそんな清廉な性格してるわけでもないしさ。救世主、つまり世を救う者だなんて……。

 ガラじゃないよな。

 

 と、その時、部屋のドアがノックされて、俺が返事もする間もなく、ココが部屋の中にするりと入ってきた。

 

「ん、どうしたんだココ?」

「おほほほ! トモキさんが心配できたのですわ」

「心配?」

「うふふふ。私、わかったことがありますの。トモキさんは救世主として、最強のお方ですわ! でも、その奇跡の力を起こすには、ほかの人の魔力が必要なんでしょう? ……私の魔力が」

 

 ココは俺が買ってやった服とは別の、小ぎれいなネグリジェみたいなのを身に着けていた。

 肩のあたりまで伸びた金髪が、燭台のロウソクに照らされてキラキラしていた。

 しろい肌のほっぺたがすこし上気しているように見える。

 

「……こんな夜中に、男の部屋に一人で来ちゃダメなんだぞ……」

 

 俺が言うと、ココはふふ、と笑って、

 

「一人で来ただなんて……。今はトモキさんと私、二人いるじゃないですの」

「いやだからそれが駄目なんだって!」

「おほほほ! トモキさんは……私がいなければ……なにもできないじゃありませんの……。そういうことですわよね? ふふふ。一人でいると危ないのはトモキさんですわ。この間だってお風呂で襲われましたし……だから」

 

 ココはすーッと俺のベッドまで来ると、

 

「私が一番最初にトモキさんをこの世界で見つけたのです。私が一番目の使徒ですわ。だから、私、昼も夜も、ずっとトモキさんのそばにいますわ。それが、救世主様の一番目の使徒の役目ですもの」

 

 そう言って、俺が横になっているベッドに潜り込んできた。

 

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