この素晴らしい世界に諸刃の剣を!   作:shch

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1.硝子の剣士

 

 

 

 

 

 

 

『魔王軍襲撃警報!魔王軍襲撃警報!騎士団は出撃準備!王都内の冒険者各位も準備を終え次第参戦を!!』

 

 

 

 

ーーーカンカンカン!!と鳴り響く警鐘、それと共に緊迫したアナウンスが周囲に響き渡る。

 

この『王都』と呼ばれる都市ではこのようなアナウンスは特段珍しいわけでも何でもない。

 

都市を守るようにぐるりと囲む外壁の外に目を向ければ、もう既に警鐘を聞きつけた王都に住む冒険者、王国に所属する騎士団が続々と襲撃をしてくる魔王軍を迎え撃つため出撃を始めている。

 

この国『ベルセルク王国』は世界征服を謀る魔王軍と唯一国境が重なる国だ。

 

そんな国の中枢であり、魔王軍との戦いの最前線でもある『王都』という都市には気合の入った熟練の冒険者たちが集まる。

 

そのような猛者たちと王国直属の騎士団にかかれば、魔王軍からの襲撃といえど、毎回なんなく撃退することができる。

 

 

 

 

……のだが、今回の襲撃は少し様子が違った。

 

 

「…お、おい!!あれを見ろ皆!!」

 

戦闘中だった弓を持つ冒険者の一人が口を開き、自らの視線の先を指さした。

 

周辺にいた冒険者たちはその声を聴いて、声を荒げた男の指さす方向に一斉に目線を移す、そこには…

 

 

 

その巨大な体は光沢のある漆黒の鱗で覆われ、その大きな瞳は黄金色に妖しく輝く、そしてその口を開けば、地獄の底から響き渡るような咆哮が辺りに轟く。

 

 

「ドラゴンだ…!ドラゴンが出たぞ!」

 

冒険者たちの目の前に現れたのは最強のモンスター『ドラゴン』だった。

 

「ドラゴンだと!?どっから出てきやがった!?」

 

「とにかく一旦退避!退避だー!!」

 

一人の冒険者がそう言うと、他の周囲にいた冒険者たちも一斉にドラゴンに背を向けてバタバタと駆け出す。

 

いくら腕利きの冒険者が集まっているといっても相手はあのドラゴンだ。

 

ドラゴンとまともにやり合おうとするつもりならば、今戦場の各地に散らばっている騎士団員全員をこの場に集め、数の暴力で迎え撃つ…もしくは神々からの祝福を受け、特殊な武器や能力を巧みに使いこなす黒髪黒目の姿をした『勇者候補』でも呼んでこなければお話にならない。

 

ドラゴンというモンスターはそれ程強大な存在、それがこの世界の共通認識、つまり冒険者たちの判断は正しい、ここは『逃げ』一択。

 

冒険者たちの忙しなく逃げる足音が周囲に響く。

 

だが…そんな中…

 

コツ…コツ…コツ…

 

ゆっくりと歩く何者かの足音が走る冒険者たちの足音の中に紛れ込んでいた。

 

そしてその足音の向かう先は、今、冒険者たちが進んでいる方向とは全くの反対方向…

 

つまりは…ドラゴンのいる方向に足音は進む。

 

そうなれば当然、その足音の主と、一時退避しようとする冒険者の内の一人がすれ違う。

 

「おい兄ちゃん!!見ねぇ顔だが…そっちは危ねえぞ!ドラゴンが出たんだ!」

 

逃げようとする自分とすれ違う人間を見つけ、驚いた冒険者はその男に声をかける。

 

それに対し、男は足を止めることもなく振り返り、口を開く。

 

「あ、お構いなく………切羽詰まってるんで自分」

 

そう言うと男は前に向き直り、足を進める。

 

コツ…コツ…コツ…

 

その男…いや、よく見れば少年と言ってもいいかもしれないほど若いその少年は腰に禍々しい装飾がなされた2本の剣を携え、彩度をまるっきり抜いたような白に近い金色の頭髪を風に靡かせながら足音を立てる。

 

歳は16、7といったところだろうか?

 

「おい!逃げた方が良い!!死ぬ気か!!」

 

「兄ちゃん!!ありゃ最近近くの山に住み着いた『黒曜竜』だ!!動きは鈍いが鱗が恐ろしく硬い!兄ちゃんのその剣は通らねえぞ!!」

 

逃げようとしていた他の冒険者達も無謀にもドラゴンに単騎で挑もうとするその若者に気がついたのか、足を止めて声を上げる。

 

だが、もはやその時には、少年はもうドラゴンの目の前までたどり着いてしまっていた。

 

目の前に現れたその少年に向けてドラゴンが口を開き、地響きが起こるほどの咆哮を放つ。

 

そして、そのドラゴンの喉元が震え、赤く発光を始めた。

 

「やべえ!ブレス攻撃が来るぞ!逃げろ!」

 

遠くからそんな声が飛ぶ…だが、金髪の少年はそんなドラゴン対して、落ち着いた様子でゆっくりと両サイドの腰に掛かった剣の鞘に手をかけ、2本の剣を鞘から抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

「…属性付与(エンチャント)……………」

 

 

 

 

      

そんな声と共に…

 

 

 

 

 

 

少年の両の手に携えた双剣がキラリと光った…

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だけど、俺はカズマ…佐藤和真だ。

 

()()()()の駆け出しの街である『アクセル』で一介の冒険者をやっている。

 

この世界の…なんて言ったのは俺の出身がこの世界とは違う異世界だからだ、俺が元いた世界には冒険者なんていないし、魔王軍とかいう物騒な輩もいない平和な世界だった。

 

まぁ話せば長くなるから詳細は省くが、色々あってその世界からこっちのロクでもない世界に転生してきた…まあ所謂異世界転生ってヤツだ。

 

色々世知辛かったり、お金がなかったり、パーティーメンバーの癖が強かったりと俺の想像していた異世界生活とは少し違う生活を送っているが…まあなんだかんだで楽しく過ごしていた…

 

 

 

 

…だが…そんなある日の朝…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あ…ド…ラゴン………生首…………あああ……」

 

 

いつも通り、馬小屋で目を覚ました俺の隣に見たことない男が転がっていた、しかもなんかうなされてる。

 

 

「おいアクア」

 

「何カズマさん?」

 

 

俺は反対の隣で寝ていたアクアに声をかける。

 

アクアはまあ…色々省くと…俺が転生する時に連れてきた駄女神だ。

 

 

「コイツ…誰だ?」

 

俺がそう言って隣で寝ている男を指さす、するとアクアもその男の存在に気が付いたのかバッ!っと勢いよく立ち上がり、口を開いた。

 

「カズマ!不法侵入者よ!身ぐるみ剥いで追い出しましょう!」

 

いや馬小屋に不法侵入も何も無いと思うんだが…

 

と俺がそんなことを考えているとその間にもうアクアがその男に飛びかかり、身ぐるみを剝ごうと上の服に手をかけていた。

 

「おい待てアクア!…馬小屋に不法侵入してなんになるんだよ!それによく見たら怪我してないかソイツ?」

 

「カズマは黙ってて!犯罪者に容赦なんてしなくていいの!」

 

俺の発言に耳も貸さずにアクアが上着を脱がし、肌着にまで手をかけたその瞬間…

 

パチッ…

 

「「あ…」」

 

その男が目を覚ます。

 

そして服を脱がそうと自身の上半身に跨るアクアとバッチリと目が合った。

 

「…」

 

「…」

 

沈黙が2人の間に流れる…その直後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ギ、ギャアアァァァ!!!お、襲われる!!よくわからん女神みたいな美しい顔面の人に襲われるうううう!!!」

 

 

その男の叫び声がボロい馬小屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ございません」

 

しばらく経って、俺たちから事情を聞いたその男は地面に頭を擦り付けて、見事な土下座を俺たちに披露していた。

 

…中々綺麗な土下座だ…ここまでのレベルの土下座はあまり見られないぞ…

 

と俺がそんな感想を抱いていると、アクアが口を開く。

 

「そうよ謝りなさい!貴方は私たちの馬小屋に不法侵入した挙句、ケガしてた貴方を治そうとしていた優しくて女神のように美しい顔面のこの私を見て悲鳴を上げたのよ!ねえ謝って!」

 

嘘つくなこの駄女神、身ぐるみ剝ごうとしてただけだろ。

 

「ケガの治療をしていただいたにも関わらず…悲鳴を上げてすいませんでした」

 

そう、アクアがああ説明しちゃったから、コイツのケガはさっきアクアが回復魔法で治した。

 

「…十万エリスでいいわ!ほんとは百万くらい払ってほしいけど、私のことを女神と見破った貴方の見る目の良さに免じて減額してあげる!感謝なさい!」

 

女神みたいとは言ってたが、本物の女神とは言ってなかった気がするが…

 

「…十万…借金が…」と悲しげに呟きながらその男は今度は俺の方に目を向けて、口を開く。

 

「そっちの貴方もすいませんでした…勝手に馬小屋に入っちゃって」

 

「いや…別にそれはいいんだけど…色々と聞きたいことが………ああそうだその前にアンタ名前は?」

 

俺はその男にそう聞いた。

 

すると、その男は土下座をやめてその場に立ち上がり、口を開いた。

 

「…ああ申し遅れました、俺は魔法剣士の『ベネディクト』と言います、俺のことを知ってる人は皆『ベネクト』って呼びます…あ、歳は16です」

 

丁寧な口調でそう自己紹介した目の前の男『ベネクト』。

 

色素を抜いた様な白に限りなく近い金色の髪に大きく澄んだ蒼い瞳、硝子のように透き通る白い肌………まあ少しムカつくがイケメンというやつだ。

 

それに『魔法剣士』はたしか上級職だったはずだ…コイツとは仲良くしておいた方がいいかもしれない。

 

俺はそんなことを考え、ベネクトに向けて口を開く。

 

「俺はカズマ、冒険者の佐藤和真だ、よろしくなベネクト、俺も16だからそんなに硬い口調じゃなくてもいいぞ」

 

俺はそう言うと握手を求めるように右手をベネクトに突き出す。

 

「…同じ歳なのか…あ…じゃあ…よ、よろしく」

 

ベネクトはぎごちない笑顔を浮かべながら、たどたどしくもそう言って、俺の手を握った。

 

…なんだコイツ?案外コミュ障か?イケメンの癖に親近感沸かすなよおい。

 

そんなことを考えていると、隣のアクアも口を開く。

 

「私は水の女神アクア様よ!よろしくねベネクト!」

 

「…………よろしくお願いします、アクア様」

 

ベネクトは少しポカンとした表情を浮かべたがすぐに気を取り直して笑顔でそう答えた。

 

きっとさっきアクアに恐喝されたせいで、女神発言を否定できなかったのだろう。

 

「ねえ聞いたカズマ!?アクア様だって!この人女神って言っても信じてくれたわ!!」

 

よほど女神を否定されなかったのが嬉しかったのかこれまでにない程嬉しそうな表情でそう言うアクアと複雑そうな顔をするベネクト。

 

そんなベネクトに俺は問いかける。

 

「なあベネクト、話が戻るんだが、なんで俺たちの馬小屋で寝てたんだ?しかも結構酷い怪我だったぞ?」

 

「そうよベネクト!このアクア様が治すのに結構時間がかかっちゃったんですから」

 

アクアもどうやら珍しく興味があるようだ。

 

「…ちょっと長くなるですが…聞いてくれますか?」

 

俺とアクアの問いかけにそう答えたベネクトは、俺たちが頷いたのを見るとその理由を淡々と語り始めた。

 

 

 

 

 

 

「…実は俺…色々あってお金がなくて…昨日まで王都に出稼ぎに行ってたんだ」  

 

へぇ…王都か…いつか行ってみたいもんなだな…

 

「…それで俺、いつも1人で出かける時はある魔道具を持ち歩いてるんだけど…」

 

「へぇ、どんな魔道具なんだ?」

 

俺がそう聞くと、べネクトは答える。

 

「指定した街のどこかにランダムでテレポートできるって効果の魔法石…」

 

それめちゃくちゃ便利じゃないか?ランダムってのが気になるけど…

 

多分べネクトはその魔法道具でアクセルに帰って来ようとして、ランダムでこの馬小屋に飛ばされたんだろうな…

 

とか俺が考えていると、べネクトが信じがたい事を口走った。

 

「…それで発動条件が『少しでもダメージを受けたら』なんだけど…」

 

「クソ使いにくいじゃないか!」

 

発動条件を聞いた俺は驚く。

 

つまりその石を持ってクエストなんかに行けば、ちょっとモンスターに殴られたその時点で指定した街のどこかに強制送還って事だろ?

 

なんだその変な魔道具…そんでなんでそれをコイツは持ち歩いてんだ…

 

「まぁそうなんだけど…俺はソロでどこかに行く時それを持つのをある人に義務付けられてて……ああ、ごめん、話が逸れた」

 

いや、普通にその話も気になるんだが…

 

魔道具の話をやめて、何故馬小屋にいたのかを再び話し出すべネクト。

 

「まぁとにかくその魔道具のせいで俺は王都で…ドラゴンの生首………いや、うん、勇敢に戦ってた真っ最中にダメージをくらってしまってここに飛ばされたんだ」

 

何だその間は?ドラゴンの生首?

 

…まぁでもべネクトの話には納得だ、馬小屋で寝てた時に怪我をしてたのはモンスターから攻撃をくらってたからか。

 

一通り説明を終えたらしいべネクトは一呼吸おくと、改めて俺に聞いてきた。

 

「どうだカズマ?納得してくれたか?」

 

「ああもちろん、それでどうだったんだ?王都では金を稼げたのか?」

 

「………聞かないでくれ」

 

 

まあ……ドンマイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「へえ…カズマはこの街にきたのは結構最近なのか、どおりで見ない顔だと思った」

 

「まあそうだな…そう言うベネクトはずっとこのアクセルにいるのか?」

 

俺たちはそんな会話を繰り広げながらギルドへの道を歩いていた。

 

最初は少しぎこちなかったべネクトの口調も少しずつ柔らかくなってきた気がする。

 

おそらく、異世界に来てから格段に上昇した俺のコミュニケーション能力の成せる技だろう。

 

まあそんなことは置いておいて…

 

どうやらベネクトは本格的に金がないらしい。

 

今日はお金を稼ぐためにクエストを受けたいらしくギルドに向かうようだ、そして特に用事もなかった俺たちはそれに同行することにしたのだ。

 

「…まあ俺もこの街にきたのは1年くらい前だからそこまで長いわけでは無いな、比較的最近だ」

 

ベネクトがそう答える。

 

「へえ…そう言えばベネクトはパーティーとか組んでないのか?王都も一人で行ってたって言ってたけど」

 

「…俺は特定のパーティーは組まないんだ……理由は…まあ…色々あってな…」

 

そう言うベネクトの表情は心なしか暗い、きっと深刻な事情があるんだろう、この話題はもうやめておこう…

 

「…ねね、ベネクトはなんでお金ないかしら?」

 

俺が黙るとさっきまで黙っていたアクアがひょこりと顔を出してベネクトにそう聞いた。

 

「ああ、さっき言ったいつも持ってる魔道具あるじゃないですか?」

 

「テレポートするヤツね」

 

「そう、それが結構良い値段するんです、だからそれを買うのに一苦労で……………まあそれ以外にも色々問題が…」

 

色々ありすぎないかコイツ?

 

…まあ大変なんだなベネクトも…でもさっきたしか…

 

『俺はソロでどこかに行く時それを持つのをある人に義務付けられてて……』とか言ってたよな?

 

…ってことは複数人で動けば魔道具を持たなくても良いって事ではないのか?

 

それなら、どっかのパーティーに所属して行動すれば、もう高い魔道具を買わなくてもいいんじゃないか?

 

ベネクトだったら、話している感じ普通のヤツっぽいし、上級職だし、この街だとパーティーなんか入りたい放題だと思うけど…なんなら色物しかいないウチのパーティーに入って欲しいくらいだ。

 

ますますベネクトがパーティーに入ってない理由がわからんな…

 

…と俺が考えていると、アクアとベネクトが何やら話をしている。

 

 

「あのアクア様…さっきの十万エリスっていつまでに用意すればいいですか…」

 

「明日ね!私こう見えていろんなところから借金してるの!」

 

「明日は無理ですよ、物理的に……あとなんで借金しているのにそんなに誇らしげなんですか?」

 

「女神だからよ」

 

「……なるほど参考になります」

 

 

 

 

…ならんだろ…あとさっきからアクアに敬語使ってるけど使わなくてもいいぞそんな奴に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで歩いているといつの間にかギルドに着いていた。

 

そして今は…

 

 

 

「ベネクトじゃねえか…やっと帰ってきたのか!」

 

「おお!ベネクト!お帰りー!!」

 

「ベネクトさんお帰りなさい!!無事で何よりです!」

 

 

 

なんだかギルドに入るなり取り囲まれてしまったベネクトを遠巻きからアクアと一緒に眺めていた。

 

………ああ…思ったよりも人気者なんだなアイツ(ベネクト)

 

俺たちが新参過ぎて知らなかっただけか…まあ確かによく考えてみたら当たり前か、顔もよくて上級職のアイツが人気者じゃない訳なかったわ。

 

ちょっとコミュ障っぽいなとか、なんか仲良くできそうとか、話してて親近感感じたりとかしてたんだけどな…アレ仲間になるフラグとかじゃなかったのか…??

 

ああ、さっきまで隣で話していたベネクトが遥か遠くに感じる…

 

とそんな思いにふけっていたその時。

 

「おおカズマとアクアじゃないか、今日はギルドに来ていたんだな」

 

そう言いながら同じ席に座ってきたのは最近、ウチのパーティーに加入したクルセイダー『ダクネス』だった。

 

「なあ、せっかくだし何かクエストを受けないか??…そうだな…一撃熊とかはどうだろうか?……きっと一撃熊というくらいなんだから…どんでもない威力の攻撃をこの身に…はあ…想像しただけで…」

 

…コイツは御覧の通りドMの能筋クルセイダーだ。

 

「いえいえ!クエストに行くのならば雑魚モンスターがたくさんいるヤツにしましょう!!新調した杖での爆裂魔法を試すのです!!」

 

そう口を挟んできたのはこれまたウチのパーティーのアークウィザードの『めぐみん』…コイツは爆裂魔法しか打てない頭のおかしな魔法使いだ、しかもその爆裂魔法は一日一発という制約付き…

 

この2人と駄女神と俺の4人が今のパーティーだ………ああ、まともなヤツが一人でもいればなあ…

 

そんなことをぼんやりと考えながら、気が付けば再び、大勢に囲まれているベネクトへと視線を移していた。

 

「…む?…どこを見ているんだカズマ………ってベネクトじゃないか!もう帰ってきていたのか!」

 

「…あ、ほんとですね…昨日の今日でよく帰ってきましたね」

 

ベネクトを見ながらそんなことを言い出した2人。

 

俺は口を開く。

 

「…お前らベネクトのこと知ってんのか??…そんで昨日の今日ってなんだよ?」

 

俺がそう聞くと、最初にめぐみんが口を開く。

 

「…ベネクトはこの街ではそこそこ有名ですよ?なんせこの街唯一の魔法剣士ですからね、まあ私は話したこともありませんからどんな人かは知りませんが」

 

そう言っためぐみんに続いて、ダクネスも口を開く。

 

「私は一度だけ一緒にパーティーを組んだことがあるからな!顔見知りだ!…それからめぐみんが言っていた昨日の今日っていうのはこれのことを言ってるんだろう」

 

ダクネスはそう言うと、懐から新聞のようなものを取り出して俺に手渡してきた。

 

「え、ナニコレ?新聞?」

 

俺はそんなことを言いながらダクネスの差し出す新聞を受け取った。

 

「ああ、昨日の新聞だ、一面を見てみろ」

 

ダクネスに言われるがまま、新聞の一面に書いてある記事に俺は目を通す。

 

『黒曜竜討伐!!新たな勇者候補の行方は!?』

 

そんな見出しが真っ先に俺の目に入り、その下の細々とした文章も読み進めていく。

 

「えーと何々…『昨日の王都への魔王軍襲撃の際、最近王都付近の鉱山に住み着き始めた黒曜竜が姿を現し、戦況の混乱を生んだ…』」

 

続けて俺は新聞を読む。

 

「えー『だが…その黒曜竜は何者かによって単独討伐された模様…付近にいた冒険者の話によれば、「王都ではあまり見ない顔だった」「生首に吹っ飛ばされた」「突然どっかに消えた」との話が上がっている…おそらくは別の街の冒険者だと推測される』……」

 

そして、どうやら王国はその黒曜竜だか何だか強そうなヤツを倒したものを探し、懸賞金を贈りたいらしい。

 

記事の一番下には討伐した冒険者と思わしき男の似顔絵が…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ってこれベネクトじゃねえかあ!!!」

 

 

 

俺は驚きの声はギルド中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

新聞に書いてある似顔絵はちょっと白っぽい金髪に蒼い瞳、そんで真っ白な肌………間違いない…これベネクトだ。

 

じゃあアイツ…ドラゴンを倒してからこっちに飛ばされてきたのか?…そんなこと一言も言ってなかったぞ??俺だったら滅茶苦茶自慢するのに…

 

てか新聞をよく見たら懸賞金5000万エリスとか書いてあるぞ!?アイツ一気に大金持ちじゃないか…!!

 

…ん?ちょっと待て…アイツもしかしてこのことをまだ知らないんじゃないか?

 

だって朝馬小屋で起きてからずっと俺たちと一緒にいたから、新聞なんて見ている暇もなかったはずだ。

 

今囲まれてても新聞を見せられている雰囲気は無い…きっとここのギルドの連中に律儀に毎日新聞なんて読むやつはダクネスくらいなんだろう……まあとにかく早く教えてやろう。

 

お金に困ってたって言ってたからきっと喜ぶぞ!!

 

俺はそう思い立つと、その場からバッ…!!と勢いよく立ち上がり、ベネクトの下に速足で向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええええ!!!5000万!!!????」

 

「そうだぞベネクト!一気に大金持ちだ!!凄いじゃないか!!!」

 

「俺がドラゴン倒したの…あれ夢じゃなかったんだ…」

 

驚愕のリアクションを取るベネクト、やはり知らなかったようだ。

 

「おいベネクト!!酒奢れよ酒!!」

 

「よっ!ドラゴンスレイヤー!!」

 

周囲もやはり知らない者が多かったようで驚きと祝福の声が飛び交う。

 

だがしかし…

 

 

「…………あ、でも待って…」

 

ベネクトがテンションが急激に落としてそう呟く。

 

「…え、どうしたんだ?」

 

そんなベネクトに俺は心配の声をかける。

 

「…懸賞金って王都に取りに行かなくちゃいけないんだよな…?」

 

「新聞にはそう書いてるけど…」

 

「…………無い」

 

「…ん?何が無いんだ?」

 

「…王都まで行くお金が……無い」

 

そう呟きながら、その場で項垂れるベネクト。

 

「…今、俺スカンピンなんだ…」

 

なんとも情けない姿であろうか…

 

だが俺は項垂れるベネクトの肩にポンと優しく手を置いて口を開く。

 

「なんだそんなことか…金くらいなら俺が貸してやるよ」

 

俺はできる限り良い声でそう言って親指を立ててサムズアップした。

 

この前のキャベツ狩りで俺は小金持ちになったんだ、王都に行くくらいの交通費なら貸してやれるだろう。

 

それにコイツは結構いいやつだし、上級職だし、恩を売っておいて損は無い。

 

「ほ、ほんとかカズマ!?」

 

俺の提案に項垂れていたベネクトはバッ!っと勢いよく顔を上げて、嬉しそうな表情で俺を見る。

 

「もちろんだ(イケボ)」

 

俺がそう返すと、ベネクトは笑顔で俺の両手を掴み、口を開く。

 

「ほんっとにありがとうカズマ!!」

 

にこやかにそう言うベネクト。

 

こんなに嬉しそうな顔をしてくれるのなら貸す方も気持ちが良いってもんだ。

 

 

 

だが、俺がそんなことを思っていたその時…

 

 

 

「………ふぅ…もう色んな人からお金借りてて、あてが無かったから助かったぜ…」

 

 

 

…ん?コイツ今なんて言った?

 

俺は小さなベネクトの呟きを聞き逃さなかった。

 

俺の中である疑念が浮かぶ…

 

その時、誰かが背後から俺の肩に手を置いて、声をかけてきた。

 

 

「ハハハ!ベネクトに金を貸したら中々返ってこねえから、覚悟した方が良いぜ兄ちゃん!」

 

俺にそう言ってきたのは良くギルドの酒場で見かける冒険者風のおっちゃんだった。

 

……ん〜?

 

「…そうなのかベネクト?」

 

俺はその言葉を聞いて、ニコニコしながら俺の手を握っているベネクトの方に向き直り口を開く。

 

「…そんな訳無いだろ、すぐ返すに決まってるじゃないか」

 

ベネクトは取って付けたような笑顔を崩さずにそう言った。

 

だが、その額には冷や汗のようなものがダラダラと流れている。

 

…おやおや…?

 

そして追い打ちをかけるようにベネクトの発言を聞いていた周囲の冒険者たちから野次が飛び交う。

 

「おい!じゃあまずは俺への借金を返せよバカベネクト!」「そーだそーだ!どんだけ待ってると思ってんだ!」

 

……これではっきりした。

 

…俺は再び、ベネクトに向けて口を開く。

 

「…………って言われてるけど?ベネティクトくん?」

 

「…………」

 

俺がそうベネクトに問い詰めると、ベネクトは笑顔は絶やさずに、握っていた俺の手を放して、ひざを折って地面に座り込む。

 

そして…

 

 

 

 

「………お願いします…何も聞かずに…黙ってお金を貸してください」

 

ベネクトは額を地面に擦り付けた。

 

 

疑念が確信に変わる…やっぱり…コイツは借金踏み倒し常習犯のカス…カスベネクトだった。

 

 

 

俺はベネクトの綺麗な土下座を無言で見下ろす。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツの土下座ってずっとやりなれてるから綺麗だったんだなあ…

 

 

 

 






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