この素晴らしい世界に諸刃の剣を!   作:shch

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「…ってことでこの度、ウチのパーティーに加入してくれた魔法剣士ベネディクトくんです」

 

「ぼうもべべでぃくとでしゅ、ぜいいっぱいばんぐらでしゅ(どうもベネディクトです、精一杯頑張ります)」

 

ギルドの一角、テーブルの椅子に座る俺とベネクト、その対面にはめぐみん、ダクネスの2人が並ぶ。

 

そんな中、何の捻りもない自己紹介をして見せたベネクトがペコリと頭を下げた。

 

「…ああ……よ、よろしく頼む…」

 

「……よ、よろしくお願いします…ベネクト…」

 

お辞儀をするベネクトにたどたどしくそう返す女性陣二人。

 

「おいお前ら、新人が挨拶してるんだぞ?もっときちんと挨拶を返せよ、雰囲気が悪いパーティだと思われるだろ?」

 

全く、はじめてのパーティで緊張しているであろうベネクトがかわいそうだぜ。

 

そう考えていると、おずおずとめぐみんが口を開く。

 

「…いやいや、ちゃんと挨拶を返せと言われましてもね、肝心の本人がこれじゃあ…」

 

「そ、そうだぞカズマ!ちゃんと説明をしろ!」

 

めぐみんに続くようにダクネスが声を上げた。

 

「はあ…」

 

俺はそんな2人の言葉に肩をすくめてベネクトに話しかける。

 

「いや説明しろって言われても…なあベネクト?」

 

「ぼうだ…びっばいばにびぶいてべぶめいぶればいいんばぼ(そうだ…一体何について説明すればいいんだよ)」

 

そう俺の言葉に賛同したベネクトの顔面は………

 

「……ぼべばがんべぇよ(……俺わかんねえよ)」

 

…ありえないほどむくみまくっていた。

 

もうそれはパンパンに膨れ上がっていた…顔面中を蜂に刺されたんじゃないかってくらいむくみまくっている。

 

「ほらベネクトも困ってるじゃないか、なぁ?」

 

そう言って俺たちは顔を合わせて頷きあう。

 

その時、しびれを切らしたダクネスがテーブルをバン!と叩き声を荒げる。

 

「だから説明しろと言ってるんだ!そのむくみまくった顔面の理由を!もはやベネクトかどうかすら判別できないレベルではないか!」

 

「この前までは普通でしたよね!?」

 

女性陣2人がそのように喚いていたその時。

 

「解呪してたのよ!そこのベネクトの呪いをね!」

 

そう言いながらギルドに現れたのは、ウチのパーティの駄女神ことアクアだった。

 

「解呪だと??ベネクトの呪いを?」

 

突然現れたアクアにダクネスがそう聞くと、アクアはそのまま言葉を続ける。

 

「そうよ!この女神アクア様のいるパーティに呪い持ちがいるなんて許されないわ!それにその呪いがパーティにまで影響を及ぼすなんて以ての外よ!」

 

アクアはそう言うと、ベネクトの隣に座ってまた口を開く。

 

「だから昨日は私が出した聖水の中に一晩中ベネクトを入れて解呪の呪文を唱えまくったわ!ね!ベネクト?」

 

「びぶがどぼぼいました(死ぬかと思いました)」

 

一応言っておくがアクアの出した聖水ってのは決して変な意味ではない、まあそんなの言わなくても誰もそんな誤解はしないと思うが…目の前に座る乙女2人が顔を真っ赤にしてるので一応明言しておこう。

 

…話を戻すが、そんなアクアの聖水風呂に一晩中浸かっていたベネクトは途中で顔色が悪くなってきて何度も意識を失いそうになりながらも、アクアの回復魔法によって倒れることはできず、結局一回も風呂から出ることは無く、まるで拷問のような一晩を過ごした。

 

こんな顔面になったのは一晩中風呂に入っていて皮膚が水を吸ってしまったからである。

 

「……そ、それで結局ベネクトの呪いは解けたのでしょうか??」

 

顔を赤らめながらもそう聞くめぐみんにアクアは答える。

 

「ええもちろん!!……と言いたいところだったんだけど、結構呪いがベネクトの体に定着しちゃっててね…ベネクトあんた!この呪いの剣どのくらい使ってるって言った??」

 

「ずぐばくどもぎきねんいぼう(少なくとも1年以上)」

 

「使っている期間が長いと呪いが定着しちゃって解呪がほぼ不可能になっちゃうのよね…でも安心なさい!ベネクトの借金の方の呪いはかなり緩まって私たちパーティには影響が出ないくらいにはなったから!」

 

アクアはピースサインを突き出しながらそう言った。

 

「ばびばぼうぼざいばすばくばさま(ありがとうございますアクア様)」

 

…正直今回のアクアはマジで有能だった、確かにベネクトの全呪いを解ければそれはベストだったのかもしれないが、ベネクトの借金の呪いが俺たちに及ばないというのはかなり大きいだろう。

 

この解呪が成功しなければベネクトを返品するとこだったぜ…

 

「…コホン!…ま、まあだがそうなればなんの懸念もなくベネクトを受け入れられるな!…………苦しい借金生活も捨てがたかったが…」

 

「聞こえてんぞドMクルセイダー」

 

相変わらず変な事を言うダクネスだが、後半を除けばまあその通りだろう。

 

「じゃあ新メンバーも無事加わったことですし…デュラハンのせいでキツイクエストしかありませんが、よければ何かクエストを受けませんか??」

 

めぐみんがそんな提案を俺たちに投げかける。

 

…まあ確かに、キャベツ狩りで稼いだ金もいずれ無くなるだろうし…それに…

 

「そうよクエストよ!!もう借金に追われる生活は嫌なのよ!!」

 

そう、借金に追われているのはベネクトだけでは無い、この駄女神もだ。

 

「…わ、私は構わないぞ」

 

きついクエストに行けそうなダクネスが顔を赤らめてそう言う。

 

「ぼべぼいいぼ、ばねはびくばあばっべぼぼびががば(俺もいいよ、お金はいくらあっても足りないからな)」

 

「…お前、何言ってるか分からんからもう今日は喋らなくていいぞ」

 

「ばび(はい)」

 

まあ皆もそう言ってることだし、良さそうなクエストがあれば行ってみるか。

 

「よし、じゃあ良さげなクエスト探しに行こうぜ」

 

 

 

 

 

…とまあそんな感じで、新生パーティとしての初クエストが決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!アクアー!!何かあったら言えよー!檻ごと引き上げてやるからー!」

 

俺は頑丈そうな檻の中に入り、湖の真ん中で鎮座しているアクアに向けてそう言い放ち、その場に座った。

 

…決して使えない駄女神を湖に投棄しに来たわけではない。

 

今回俺たちが選んだ……というよりかはアクアがこれにしようと強行したクエストは『汚れた湖の浄化』だ、まあ一応水の女神たるアクアにとっては確かにうってつけのクエストなのかもしれない。

 

どうにもアクアが浸かっているだけで汚れた水が綺麗になっていくらしい。

 

そんでアクアを檻に入れているのはその汚れた湖に『ブルータル・アリゲーター』とかいうモンスターが住み着いているらしく、ソイツらから身を守るためだ、いざとなれば俺たちが檻を引っ張り上げて逃走すればいい。

 

だから俺たちはモンスターが現れないかを見張ってなくちゃいけないんだが……

 

 

 

 

「…おい、顔パンパン魔法剣士」

 

「ばんば?(なんだ?)」

 

「なんでお前だけ後ろを向いているんだ」

 

「…びぶは…びばばぶびたくばい(…水は…しばらく見たくない…)」

 

 

 

 

 

どうやらベネクトは水責め解呪のせいで水がトラウマになってしまったようだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後…

 

 

 

 

 

「…モンスターは出てこないな」

 

何故かちょっと残念そうにダクネスが呟く。

 

「…みたいだなあ」

 

ダクネスの呟きに答えたのはやっと顔のむくみが取れてきたベネクト。

 

ってかベネクト入れての初クエストなのにアクア以外なんもやっていないとはこれ如何に…

 

とか考えていると、めぐみんが口を開く。

 

「…そう言えば…ダクネスとベネクトは顔見知りでしたよね?昔一度だけパーティを組んだことがあるとか」

 

…確かにそんなことを言ってたな…ベネクトは特定のパーティに入っていたことは無いが、一日限定とかでは色々な人と組んだことがあるのだろう。

 

「…ああ、確かあれは…カズマたちがこの街にやってくる少し前くらいだったか?」

 

めぐみんの問いかけにダクネスがそう答えると、続けてべネクトも口を開く。

 

「確かに俺が王都は出稼ぎに行くちょっと前だからそれくらいか…たしかあの『クリス』っていう盗賊の人と一緒に3人でダンジョンに行ったんだっけ?」

 

「ああそうだ」

 

『クリス』って言うと俺が盗賊スキルを教えてもらったあの人か、確かにダクネスとよく一緒にいたな。

 

「んで最下層付近でポンコツダクネスの剣が敵をすりぬけて俺の顔面に直撃して撤退と…」

 

「お、おい!そ、それはいうなぁ!…って、そもそも私の剣1発で倒れるお前も悪いんだべネクト!おぶって帰るのも大変だったんだぞ!」

 

「……大変だったって言うけど……俺は一応ダクネスよりは体重がかr「言うな!それ以上は言うなぁ!!」

 

コイツらはどこで何をやってても変わらないんだな…

 

とか、言い合いをするベネクトとダクネスを見ながら思う。

 

「ベ、ベネクト!私の体重を誰から聞いた!?」

 

「クリス」

 

「クリスぅ!!!」

 

うーん…こうして見てると…

 

……なんかダクネスが俺が見つけてきたベネクトと想像以上に仲良さげでムカつく。

 

「カズマ?」

 

2人から少し離れた所で拗ねて三角座りをしていた俺にめぐみんが声をかけてくれた。

 

やはり俺にはめぐみんしかいないのか…

 

「なんだめぐみん、蚊帳の外の俺を慰めてくれるのか?」

 

「…いえ、蚊帳の外なのは私も同じなので……それよりアレは大丈夫なのでしょうか?」

 

「え?アレって…」

 

俺はそんなことを言いながらめぐみんが指差す方向に視線を向ける。

 

すると、そこには…

 

 

 

「か、カズマ!!!なんか、なんかいっぱい来てるんですけど!!!」

 

 

湖の真ん中で、ワニの群れに囲まれるアクアの姿があった。

 

 

…ああ…普通に忘れかけてた。

 

 

 

 

 

 

 

4時間後…

 

 

 

「ビュリフィケーション!ビュリフィケーション!」

 

あれからアクアは神としての浄化能力だけでは無く、それはもう懸命に浄化魔法を唱えまくっている。

 

「ビュリフィケーション!ビュリフィケーション!ヒイイイ!!か、かじゅまさーん!!檻が!檻が変な音立ててるんですけどー!!!?」

 

悲鳴を上げるアクアを囲う檻にワニのモンスター達が群がりその歯でガシガシと檻を攻撃している。

 

流石にヤバそうだと感じた俺はアクアに向けて声を上げる。

 

「おーい!アクアー!!ギブアップなら言えよー!!鎖引っ張って檻ごと逃げるからー!」

 

だが、それに対してアクアは…

 

「嫌よ!ここでギブアップしたら報酬が貰えないじゃない!…ヒイイイ!」

 

…ホントに大丈夫なのか?

 

「…キャアァァ!!檻から鳴っちゃいけない音が鳴った!!カズマさーん!!」

 

ワニに攻撃されまくり、ゴロゴロと転がされるアクアの入った檻…ホントにホントに大丈夫なのだろうか…今回こそはちょっとアクアが可哀想だ…

 

「…楽しそうだな」

 

「……行くなよ?」

 

…やはりコイツのドM度は侮れない。

 

「ヒイイイ!!ビュリフィケーション!ビュリフィケーション!!……カズマさん!たすけ…あ!べ、ベネクト助けなさい!!」

 

「……」

 

俺には助けてもらえないと判断したのか、アクアが今度はべネクトに助けを求め始めた…だが、ベネクトは助けを求めるアクアをどこか遠い目で見つめているだけで動く気配は全く無いようだ。

 

「ベ、ベネクト!!アンタ昨日私が水責めしてた時言ってたわよね!?「僕は生涯女神アクア様の舎弟になります、だからもう解放してください」って言ってたわよね!?アンタ私の舎弟なら助けなさいよ!!姐さんのピンチなのよ!!」

 

「……」

 

「ねえ何してるの!?黙ってないで助けなさい!「僕はアクア様のためなら何でもします…いえ…させてください!」って迫真の表情で言ってたじゃない!!だから速く助けなさい!今助けてくれたら後でお姉ちゃんがヨシヨシしてあげるからああ!!」

 

「ええ…」

 

俺はアクアの叫びに絶句する。

 

「………」

 

そしてさっきから黙って遠い目でアクアを見つめているベネクトに向け口を開く。

 

「……ベネクト…お前…昨日の夜そんなことを言ってたのか?正気か?…あのアクアにだぞ?」

 

俺がそう聞くと、べネクトは一瞬フッ…と笑って答える。

 

 

 

 

「………カズマ……俺は…金と苦しみから逃れる為なら土下座でも何だってできる男だ……舐めるんじゃあないぜ…」

 

「…カッケェ」

 

 

な、なんて頼もしい男なんだコイツは…仲間にして良かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いやただのプライドが全く無いだけの男ですよね?」

 

「…だな」

 

めぐみんの正論とダクネスの短い同意がベネクトの心に刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7時間後…

 

 

 

 

「はああっ!?女神様をこの世界に引きずり込んで?しかも檻に閉じ込めて湖につけた??何を考えているんだキミは!!」

 

…こちらカズマです、なんか変な人に絡まれてます。

 

経緯を説明すると、湖の浄化のクエストを無事に終えた俺たちが、長時間ワニに襲われて外の世界を怖がり檻の中に引き篭もったアクアをそのままの状態で運んでいると、アクアを檻に閉じ込めていると勘違いしたこのミツルギという男に絡まれたのだ。

 

話を聞く感じ、この『ミツルギ』という男も俺と同じようにアクアにこの世界に送られた転生者のようで、アクアのことを妙に崇拝している。

 

どこが良いんだろうかこんな駄女神…

 

んで、アクアが檻に閉じこもっていた経緯とかを簡単に話したら思いっ切りキレられていまに至る。

 

普通に胸ぐら掴まれてて痛いです。

 

「ちょ…ちょっと!私としては結構楽しい日々を送ってるし、もう連れてこられたことも気にしてないから…」

 

俺の胸ぐらを掴んで憤慨するミツルギにそう言うアクアだったが、ミツルギの口は止まらない。

 

「アクア様!こんな男にどう丸め込まれたのか知りませんが…あなたは女神ですよ!?それがこんな…」

 

言いたい放題だなコイツ…アクアのことロクに知りもしないくせに…

 

「アクア様?寝泊まりは普段どこで?」

 

「………馬小屋で…」

 

アクアがそう答えると、ミツルギの俺を睨む眼光がさらに鋭く、胸倉を掴む力も強まる。

 

…とその時。

 

「おい…うちのカズマになにすんだマツルギ、今すぐにその手を放せ」

 

そう言って俺の胸倉を掴んでいるミツルギの手を掴んだのはベネクトだった。

 

…なんだコイツ俺を守ってくれんのか?

 

「マツルギじゃないミツルギだ!………ってキミ…どこかで見たことがあるぞ?名前は?」

 

「俺はカズマのパーティの魔法剣士ベネディクトだ」

 

ベネクトがそう名乗ると、ミツルギはハッ…と何かに気が付いたかのように口を開く。

 

「…そうだ間違いない!この前王都でドラゴンを倒したっていうやつの顔とそっくりだ…魔法剣士ってのも一致する……キミほどの実力者がなぜこんなパーティに…」

 

ミツルギはそう言いながら、視線をベネクトからめぐみんやダクネスに移す。

 

「…魔法剣士の他にもアークウィザードにクルセイダーか…なるほど…パーティーメンバーには恵まれているんだね」

 

ミツルギはそう言いながら俺を掴んでいた手を放して再び口を開く。

 

「キミはこんな優秀そうな人たちがいるのにアクア様を馬小屋で寝泊まりさせて恥ずかしいとは思わないのか?」

 

そんなことを言ってくる目の前の男…ミツルギ。

 

コイツはきっと転生の特典でもらった魔剣グラムとやらで何の苦労もせずに生きてきてたんだろう。

 

俺は考える…

 

そんなヤツに1から頑張ってきた俺がなんで上から目線で説教されないといけないんだ?

 

大体コイツらが『優秀』?

 

すぐに借金を作ってカエルに喰われる駄女神…

 

一日一発の爆裂魔法しか撃てない頭のおかしいアークウィザード…

 

攻撃の当たらない硬いだけのドMのクルセイダー…

 

そして最近加入した転んだだけで気絶する紙装甲借金魔法剣士…

 

一体どこをどう見たらコイツらが優秀に見えるんだ??

 

そんなことを考えているとまたもやミツルギが口を開く。

 

「キミたち、これからはソードマスターの僕と一緒に来ると良い、高級な装備品も買いそろえてあげよう」

 

…とそんな提案をするミツルギだったが…

 

「…ちょっとヤバいんですけど…あの人本気で引くぐらいヤバんですけど…ナルシストも入ってる系で怖いんですけど…」

 

「どうしよう…あの男は生理的に受け付けない…攻めるより受けるのが好きな私だが、アイツだけは無性に殴りたいのだが…」

 

「撃っていいですか?撃っていいですか?」

 

「日給100万エリスで手を打とうじゃないかカツラギ」

 

そんなことを言う俺の愉快な仲間達一同。

 

…とまあ全員の意見も一致していることだし。

 

「えーと俺の仲間は満場一致であなたのパーティには行きたくないみたいです…じゃあこれで」

 

俺はそう言うと、くるりと踵を返し帰路に戻ろうとする。

 

…だが、ミツルギはそんな俺たちの前に回り込み再び口を開く。

 

なんだコイツしつこいな…

 

「悪いがアクア様をこんな境遇には置いておけない」

 

…どうしようコイツは人の話を聞かない系の人だ。

 

この後の展開は目に見えている…

 

ミツルギが口を開く。

 

「勝負をしないか?」

 

ほら来た…どうする?

 

勝負といってもチート持ち上級職のコイツと最弱職の俺とじゃ勝負にならない気もするが…そういうのも分かったうえで言ってるんだとしたら卑怯極まりないぞ?

 

普通に嫌なんですけど…

 

ベネクトに代わりに戦ってもらうか?

 

…と俺が考えていたその時。

 

「…カズマさん!コイツ早くやっちまいましょうよ!俺ムカつきますよマジで!」

 

後方でそう野次を飛ばすベネクト…

 

コイツさっきまで俺を守ってくれてたのに…!急に子分ムーブしてきやがって…さてはベネクトも流石にソードマスターを相手にするのは嫌だったか?

 

「僕が勝ったらアクア様を譲ってもらう…」

 

…まあ…俺がやるしかないみたいだな…一回くらいは新メンバーのベネクトにいい所見せといた方が良いしな。

 

算段はもう着いている。

 

「キミが勝ったらなんでも言うことを聞こうじゃないか…「よし乗った、行くぞ!!」

 

俺はミツルギが条件を言い終わるその瞬間にそう言ってミツルギめがけて走り出し左腕を伸ばす。

 

「ちょ…まっ…」

 

急な戦闘開始に戸惑うミツルギ、だが容赦はしない。

 

「スティール!!」

 

そう叫んだ次の瞬間…俺の左手にはミツルギの武器の魔剣グラムが握られていた。

 

「…っ!…??」

 

「ほいっと」

 

そして俺は魔剣を取られてあたふたしているミツルギに向けて、取った魔剣を振り下ろす。

 

ガンッ…!!

 

振り下した魔剣がミツルギの頭に直撃し、鈍い音が周囲に響く。

 

「…かはっ…」

 

そして、フラフラとした足取りでミツルギはその場に倒れた。

 

…よし、なんか知らんけど勝った。

 

と、俺が安堵の一息をついたその時、

 

「ナイスカズマ!ほんとに勝てると思ってなかったけど!…いやあスカッとした!!」

 

背後からそう言って、ベネクトが肩を組んできた。

 

…いや勝てると思ってなかったのかよ、あんだけ煽っといて何だコイツ…

 

「…ん?どうしたカズマ?」

 

まあいいや…コイツ(ベネクト)の嬉しそうな顔を見てたらどうでも良くなった。

 

なんでも言うこと聞くって言ってたし、この魔剣グラム持って帰ろっと…

 

俺がそう考えて魔剣を持ち帰ろうとしたその時。

 

「ひ…卑怯者卑怯者卑怯者ー!!」

 

そんな声が聞こえてきた、声の方に視線を移すと、そこには若い女性の冒険者が2人…ミツルギの仲間か?

 

「あんたたちコイツの仲間かー??」

 

俺がそう聞くと、その女性の冒険者の片割れが顔を真っ赤にしながら口を開く。

 

「そうよ!この最低男!卑怯者!」

 

「魔剣持ってるソードマスターが駆け出しで最弱職のカズマに勝負を挑む方が卑怯だろ…なあカズマさん」

 

ミツルギの仲間の発言に呆れた顔でそう言うベネクト…全くその通りである。

 

「…ぐっ…グラムを返しなさい!その魔剣はキョウヤ専用よ!」

 

「え?そうなのか?」

 

俺がアクアにそう聞くと、アクアが答える。

 

「残念だけどその魔剣はその痛い人専用よ」

 

マジか…俺がやっと無双できると思ったのに…まあでもせっかくだし貰っていくか…良い記念になるだろうし…

 

「やっぱりもらってくわ」

 

俺はそう言うと、クソ重い魔剣を引きずって再び帰路についた。

 

ミツルギの仲間のおなごたちが引き止めようとしてきたが、俺の男女平等を盾にしたセクシャルハラスメント攻撃で撃退したので無問題だった。

 

 

 

 

…ただ、街の女性陣からの評価は下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日…

 

 

「な、なんでよー!!!」

 

アクアが受付のお姉さんの胸ぐらを掴んで暴れている。

 

どうやら昨日のクエストの報酬30万エリスが、あのミツルギが壊した檻の弁償代によって減ってしまったらしく、暴れているようだ。

 

アクアは今回ばかりは頑張っていたから流石に可哀想だ。

 

ただそれはそうと…

 

「なあベネクト」

 

「なんだカズマ?」

 

俺は隣に座るベネクトに声をかける。

 

「お前、いつ王都に5000万エリス取りに行くんだよ、金ならいつでも貸すぞ?」

 

「…んー、今はデュラハンのせいで街が騒ついてるからな…王都からの騎士団とかが来て、落ち着いてから取りに行くよ」

 

「ほーん……」

 

…コイツ…もしかしたら「俺がいない間にデュラハンが来たらどうしよう」とか考えているんだろうか?

 

まあ一応紙装甲ではあるが、コイツもアクセルの街では有力な冒険者の中の1人だもんな…

 

ポンコツそうなイメージだけど、ベネクトにも一応そういう意識はあるんだなあ…

 

とか俺が感心していると、べネクトはポケッとした顔で口を開く。

 

「…なーんか今の時期だとアクセルから王都への交通費がやけに高いんだよなあ…絶対あのデュラハンのせいだ…はよどっか行けよな」

 

…違った、交通費をケチってただけだった。

 

俺とベネクトがそんなやり取りをしていると、アクアがトボトボとこちらに歩いてきて、ベネクトの隣のカウンター席に腰を下ろした。

 

そして顔をカウンターに埋めて泣き言を言い出した。

 

「檻の修理代が20万エリス…私が壊したんじゃないのに…あの男…今度会ったら絶対ゴットブローをお見舞いしてやるんだから…!!」

 

「ドンマイです…姐さん…」

 

そういってアクアの背中を優しくさするベネクト。

 

「うう…ベネクトォ…」

 

ベネクト…お前は一体アクアの何になろうとしているんだ…お前とアクアの距離感だけずっと謎だぞ…?

 

…というか自分が慕っている人にここまで恨まれるとはあのミツルギってヤツもちょっと可哀そうだな。

 

と俺が考えていたその時…

 

「見つけたぞ!サトウカズマ!」

 

背後からそんな声が聞こえてきた。

 

「え?」

 

久しぶりにフルネームで呼ばれた俺は反射的にその声の方に振り向く。

 

そこには、噂をすればなんとやらのミツルギくんが立っていた。

 

「…キミのことはある盗賊の少女に教えてもらったよ…パンツ脱がせ魔だってね!!」

 

…クリス…アイツ余計なこと教えやがって。

 

「…他にも女の子を粘液まみれにするのが趣味だとか…噂になってるそうじゃないか…『鬼畜のカズマ』だってね!!」

 

「お、おい待て!!それ誰が広めたのか詳しく!」

 

だが俺のそんな悲痛な叫びにミツルギは見向きもせずにこちらに歩み寄ると、アクアの方に視線を向けて口を開く。

 

「アクア様!ボクは必ず魔王を倒すと誓います…ですから、この僕と同じパーティに…「ゴットブロー!!!」

 

…ミツルギの言葉が終わるその前にアクアの渾身のゴットブローがミツルギの顔面に炸裂した。

 

よかったなアクア、宣言通りにゴットブローお見舞いできて…

 

「はあーん!!」

 

良く分からないミツルギの叫び声と倒れた音でギルド内の冒険者たちの視線が一斉にアクアとミツルギに集まる。

 

そしてアクアは倒れたミツルギの胸倉を掴んで声を荒げる。

 

「ちょっとアンタ!壊した檻の修理代払いなさいよ!30万よ30万!!」

 

「えっ…あっ…はい」

 

素直に金の入った袋をアクアに差し出すミツルギ。

 

…てかさっき檻の修理代は20万って言ってなかったか?

 

「すいませーん!シュワシュワ2つとカエルのから揚げ山盛りください!ほらベネクト!このシュワシュワは姐さんの奢りよ!ちょっとお酒付き合いなさい!」

 

「わーい!一生ついていきます!」

 

金をぶん取ったと思いきやすぐさまカウンターについて酒を頼むアクア。

 

…とんでもないヤツだな相変わらず。

 

その時、アクアに殴り倒されていたミツルギが立ち上がり、俺に声をかけてきた。

 

「…くう……サトウカズマ…こんなことを頼むのも虫がいいのも理解している…だが頼む!魔剣を返してくれないか!!」

 

そう言って深々と頭を下げるミツルギ。

 

…うーん…アクアに騙されて金を取られてかわいそうだし…返してやりたいのは山々なんだが…

 

「まず、この男がすでに魔剣を持っていない件について」

 

「え?」

 

めぐみんにそう言われたミツルギが顔を上げて俺の体を上から下まで見回す。

 

「サ…サトウカズマ…ぼ、ぼくの魔剣は…ぼくの魔剣はどこへ…??」

 

「売った」

 

魔剣を売った金がパンパンに入っている袋を掲げて俺はそう言った。

 

「チックショー!!!!!」

 

俺の発言を聞いたミツルギはそう叫ぶとものすごいスピードでギルドを去って行った。

 

「ふっ…むなしい金だぜ…」

 

俺はそう呟きながらミツルギの背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体なんだったのだアイツは…」

 

ミツルギを見送った俺にダクネスがそう声をかけてきた。

 

「…ところでなんだが…先ほどからアクアがあの男に『女神』だとか呼ばれていたが…あれは何の話だ?」

 

ダクネスが俺にそう言った。

 

まあ流石にあれだけ連呼していれば気になるよな。

 

……この際だ…パーティーメンバーのめぐみんとダクネス、ベネクトにはアクアが本物の女神だってことを話してもいいかもな。

 

俺がそう考えていると、酒盛りをしていたアクアがシュワシュワのジョッキをカウンターに置いて、まじめな口調で話し始めた。

 

「…今まで黙ってたけど、あなた達には言っておくわ…」

 

そう言ってカウンター席から立ち…アクアはついに宣言する。

 

「私はアクア……アクシズ教団が崇拝する水をつかさどる女神…そう私こそがあの女神アクアなのよ!!」

 

「「…という夢を見たのか」」

 

「違うわよ!!」

 

まあこの2人は信じないよな…

 

と俺たちがそんな茶番を繰り広げていたその時…

 

『緊張!緊張!全冒険の皆さんは直ちに武装し町の正門まで集まってください!!…特にサトウカズマさんとその一行は大至急でお願いします!!』

 

 

……名指し?一体なんだ…??

 

 

とにかく俺たちはアナウンス通り正門へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様ら…なぜ城に来ないのだあ!!!この…人でなしどもがあーっ!!!」

 

俺たちが正門前に着いた時、目の前にいたのはそう叫んで憤慨するデュラハンの姿だった。

 

人でなし…??何の話だ??

 

俺たちの頭に浮かぶ?マーク。

 

その時、再びデュラハンが声を荒げる。

 

「お前らは!!あの身を挺してウィザードを守った魔法剣士の男の命はどうでもいいということなのか!?」

 

……ああ、そう言えばベネクトが死の宣告を受けてたんだっけか…まあアクアがすぐに解呪してくれたんだけど。

 

「…ん?」

 

俺はその時…異変に気が付いた。

 

キョロキョロと俺はあたりを見渡すがやはりいない…

 

「どうしたのですかカズマ?」

 

俺が変な動きをしているのを察したのかめぐみんがそう声をかけてくる。

 

そして俺はめぐみんに答える。

 

「…なあ…ベネクトはどこだ?」

 

「……たしかに見当たりませんね」

 

俺の言葉を聞いためぐみんもキョロキョロと辺りを見渡すがやはりいないようだ。

 

……ま、まずい…ベネクトがいないのはかなりマズイ…戦力が全然違ってくる…!!

 

「…あ!…おいアクア!!ベネクトはどうした!さっきまで一緒に酒盛りしてたよな!?」

 

そうだ!アクアなら知ってるはずだ!

 

「…ああベネクトならお酒を飲んだらすぐ寝ちゃったから、今はギルドで寝かせてるわ!よっぽど疲れてたのね!」

 

「は?」

 

どういうことだ?

 

「お、おいアクア!お前ベネクトに酒を飲ませたのか!?」

 

ダクネスが焦ったようにそう言う。

 

「ええもちろん!舎弟にお酒を奢るのは当たり前じゃない??」

 

「……まずい」

 

「何がまずいんだダクネス!?」

 

俺はすぐさまダクネスにそう聞く。

 

「カズマ…言っただろう…ベネクトの耐久のステータスは全て0になっていると…」

 

ま、まさか…

 

俺はダクネスの発言にゴクリと喉を鳴らす…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ…ベネクトは…アルコール耐性も0なんだ……一滴でも酒を飲んだら酔ってしばらくは目を覚まさない……」

 

 

 

 

 

…ベネクト…お前……割とマジでポンコツなのな…

 

 

 

 






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