この素晴らしい世界に諸刃の剣を!   作:shch

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4.全身全霊

 

 

 

 

 

 

「貴様らには仲間の死に報いようとする気概は無かったのか!?」

 

デュラハンの怒りの声が周囲に響く。

 

「…我が名は『ベルディア』…生前はこれでもまっとうな騎士のつもりだった…そんな俺から言わせれば…仲間を庇って魔王軍幹部である俺に立ち向かったあの勇敢な魔法剣士の命を無駄にするなど……言語道断だ!!!」

 

あのデュラハン、ベルディアって名前だったんだ…

 

そしてそのベルディアは怒り心頭といった様子で俺たちに向けて怒号を上げている。

 

まあ確かに…ベルディアの視点からすれば死の宣告を与えたベネクトはもう既に死んでいることになるのか…

 

実際はアクアがすぐに浄化魔法で呪いを解いてくれたんだけど。

 

「ベネクトの『死の宣告』の呪いは私があっさりと解いちゃったんですけど!ベネクト別に死んでないんですけど!」

 

アクアがベルディアに向けてそう言い放つ。

 

「…こんな駆け出しの街のプリーストに俺の呪いが簡単に解かれてたまるか!…第一あの魔法剣士がこの場にいないのが、あの者の死を一番に物語っているではないか!」

 

……彼は酒に酔って眠ってるから来てないだけなんです。

 

だが、どうやらそんなふざけたことを考えている場合ではなさそうだ、ベルディアの怒りが一向におさまる様子が無い。

 

「……愚かな冒険者どもよ…俺がその気になれば町の住民を皆殺しにすることができるのを忘れるなよ…」

 

低い声でそう言いながら鋭い眼光を俺たちに向けるベルディア。

 

流石魔王軍の幹部といったところか、その威圧感は相当なもので、少し距離があるはずなのに身の毛がよだつ。

 

これが魔王軍の幹部……やっぱりこええ…ここは相手を刺激せずになんとか穏便に帰ってもらうしか……

 

と考えていたその時。

 

「アンタアンデットのくせに生意気ね!!…『ターンアンデット』!!」

 

「おいバカアクア!刺激するんじゃ…」

 

突然デュラハンに浄化魔法を放つアクアに俺は声を上げる。

 

クソ!ここで攻撃なんてしちまったら戦闘になってしまう、今の俺たちじゃ魔王軍の幹部なんて…

 

「ギャアアアアア!!!!!」

 

……あれ?

 

俺の焦りとは裏腹にアクアの浄化魔法に大きな悲鳴を上げるベルディア。

 

…もしかして、効いてるのか??

 

アクアの浄化魔法が有効なら話は別だ、うまく戦えればもしかしたら勝てるんじゃないか?

 

「アアー!!アァァ!!」と喚き声を上げながらゴロゴロと転がるベルディアを見て俺は思う。

 

「くううう…」

 

しばらく痛みに喚いた後、苦しそうにそう言いながらよろよろと足をふらつかせながら立ち上がるベルディア。

 

それを見たアクアが焦ったように口を開く。

 

「ねえカズマ!変よ!私の浄化魔法が効いてないわ!」

 

「いやぁ結構効いてたように見えたんだが…「ギャアアアアア!!」って言ってたし」

 

俺とアクアがそう話していると、ベルディアが荒れた呼吸を整えながら口を開く。

 

「…はあ…はあ…お、お前…ホントに駆け出しか?……駆け出しが集まる街なのだろうこの街は?なあ??」

 

アクアに向けてそう言うベルディア。

 

まあよく考えれば、女神とアンデット…相性は言うまでもないだろう。

 

「…くそっ…ま、まあいい…貴様らごとき、この俺が相手をしてやるまでもない!」

 

ベルディアがそう言うと、ベルディアの周囲に黒い霧のようなものが発生し始め、そこからアンデットの大群が大量に生み出される。

 

……まずいな…このままだと本格的に戦闘になりそうだ。

 

俺がそう考え、冷や汗を流していると、ベルディアが再び口を開く。

 

「アンデットナイトよ!地獄を見せてやるがいい!!…町の連中を…皆殺しにせよ!!!!」

 

ベルディアがそう言い放つと、生み出されたアンデットナイトの大群が砂埃を上げながら俺たちめがけて走り出す。

 

「うわああ!!やべえぞ!誰かプリーストを呼べ!!」「誰か教会へ行って聖水をありったけ貰ってきて!!」

 

迫りくるアンデットナイトの大群に集まっていた冒険者たちの緊迫した声が辺りに飛び交う。

 

「クハハッ!!さあ!お前たちの絶望の叫びをこの俺に…ん?」

 

アンデットナイトの大群にビビる俺たち冒険者を見ながら高笑いしていたベルディアの声が突然止まる。

 

まあ…それもそのはずだ。

 

「ん?……わ、わああああ!!なんで私だけなのよおー!!!」

 

俺たちに向かってきていたと思っていたアンデットナイトの大群だったが…

 

俺たちの元に到着するその直前で進行方向を変えて、全員がアクアだけを追いかけ回し始めたのだ。

 

「わああ!!来ないで!来ないでええ!私女神なのにいいい!!日頃の行いもいいはずなのに!!」

 

そう嘆きながらアンデットナイトの大群に追われるアクア。

 

……ちょっと可哀そうだ…日頃の行いは良くない気がするが。

 

と俺がなんとも言えない表情で追われるアクアを眺めていると、隣に立っていたダクネスが息を荒くして口を開く。

 

「ああっ…アクアずるいぞ!私は本当に日頃の行いは良いはずなのに!!」

 

…追われるアクアを羨望の眼差しで見つめるダクネス。

 

コイツはもうどうしようもないとして…まあおそらく、迷えるアンデットたちは本能的に女神に助けを求めるんだろうな。

 

「あ…」

 

と俺が考えていると、一つの案が頭に浮かぶ。

 

「めぐみん!!あのアンデットの大群に爆裂魔法を撃ち込めないか!?」

 

「えっ?…ですがああもまとまりがないと…」

 

…くそ…良い案だと思ったが…確かに少しアクアを追うアンデット達は爆裂魔法を使うには散漫している。

 

とその時。

 

「カズマさーん!!カズマさああーん!!!」

 

俺の目に映ったのは俺の名を呼びながらこちらに向かって走ってくる駄女神の姿…それも背後に大量のアンデットナイトを連れて。

 

「おおい!!こっちに来るんじゃねえええ!!」

 

そう言いながら、迫るアンデットに思わず俺も走り出す。

 

「何やってんだ駄女神!!こっち来るな!!帰ったら晩飯奢ってやるから!俺についてくるなあ!!」

 

「私が奢るからなんとかして!!コイツらいくら『ターンアンデット』を撃っても効かないの!!」

 

俺が叫ぶもそんなことを言って、逃げる俺に頑なについてくるアクア。

 

俺はアクアと共にアンデットの大群から逃げながら思考する。

 

…ヤバいぞ…あまりにも数が多すぎる!

 

…いや…ちょっと待て…このままコイツらを引き付けてアイツのところへ連れていければ…

 

よし!この作戦ならいける!

 

新たな作戦を思い付いた俺は別の方向に逃げていためぐみんに大きく声を上げる。

 

「めぐみん!!魔法を唱えて待機してろ!!」

 

「え?…り、了解です!」

 

そう言いながら、少し離れた場所で詠唱を唱え始めるめぐみん。

 

…よし…舞台は整った…!!

 

「アクア!!着いてこい!!」

 

俺はそう言いながら、逃げていた進行方向を大きく方向変換をする。

 

すると俺たちを追っていたアンデットナイトの大群も俺たちを追いかけ進行方向を変える。

 

よし!このまま走ればアイツの元にたどり着く!

 

そんな俺たちが走る先には…

 

「何!?」

 

アンデットナイトの大群の総大将ベルディアの姿。

 

「今だめぐみん!やれー!!」

 

そう言いながら俺とアクアはベルディアの目の前でアンデットナイトの大群を押し付けるように大きく方向変換をした。

 

そうすることで、ベルディアとアンデットナイトの大群は一か所に集まる!

 

そしてそこへ…

 

「絶好のシチュエーションをありがとうございますカズマ!!いきます…」

 

「『エクスプロージョン』!!!」

 

 

めぐみんの放った爆裂魔法は、ベルディアとアンデットナイト達を巻き込んで大きな大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す…すごく…気持ちよかったです………はふ」

 

爆裂魔法を放った直後のめぐみんはそう呟きながら地面に倒れた。

 

爆裂魔法が炸裂した場所に目を移せば、そこにはアンデットナイトの大群の姿は無く、ベルディアだけが地面に倒れている。

 

「おーいめぐみん!おんぶはいるかー?」

 

「…お願いします」

 

俺はそう言われるとめぐみんの元に駆け寄り、倒れためぐみん自分の背中に背負う。

 

「おおお!!頭のおかしい魔法使いがやったぞ!!」「頭がおかしくてもやるときはやるんだな!!」「名前と頭がおかしいだけでやるときはやるじゃねえか!!」

 

「…むっ…ちょっとあの人たちの顔覚えといてくださいカズマ…あとでぶっ飛ばします」

 

賞賛の声を浴びるめぐみんがその内容が気に食わないのかぶつくさと俺の背中で何やら呟いている。

 

…とその時。

 

「ぐぅぅ…はあ…はあ…フフフ…面白い…面白いじゃないか!…本当に俺の配下を全員吹き飛ばすとはな…!!」

 

土煙の向こうで、ベルディアが立ち上がり、そう言った。

 

…アイツ…爆裂魔法を受けてまだ立ち上がるのかよ…!!

 

ベルディアは焦る俺の方を向き直りさらに口を開く。

 

「…ではこうなれば仕方あるまい…この俺が直々に相手をしてやろう!!」

 

ベルディアはそう言うと、黒いオーラを纏った巨大な大剣を俺の方に向ける…

 

くそ…めぐみんの魔法はもう使えない…アクアの浄化魔法も致命打にはならない…どうしたらいい??

 

俺がそう考え、後ずさりをしたその時。

 

「カズマ!」

 

「ダクネス!?」

 

ダクネスがそう言いながら俺とめぐみんを庇うかのように俺たちの前に踊り出た。

 

…だが、ダクネスは硬いが攻撃は期待できない…俺たちの不利な状況は変わらない…!!

 

…とその時。

 

「ビビる必要はねえ!すぐにこの街の切り札がやってくる!!」「ああ!そいつに掛かれば魔王軍の幹部だかなんだか関係ねえ!!」

 

そんな冒険者たちの声が後ろから聞こえてくる。

 

…この街の切り札…??

 

と俺が嫌な予感を覚えていたその時。

 

「一斉に攻撃すれば死角ができる!行くぞ皆!!」

 

「全員でやっちまえ!!」

 

そう叫びながら、後ろにいた何人かの冒険者たちがベルディアに向けて駆け出す。

 

「おい待て!行くな!!」

 

俺がそう叫ぶがもう遅い、冒険者たちた各々武器を取り出してベルディアに襲い掛かっていた。

 

大方、大勢で攻撃をすればベルディアと言えど死角ができて攻撃が通ると思っているんだろう…だが俺の前世のゲームの知識によればデュラハンは…

 

「…よほど先に死にたいらしいな」

 

ベルディアはそう言うと、自らの首を上空に放り投げる。

 

…そう、デュラハンは首なしの剣士…自らの首を上空に投げることで、空から全体を見渡すことができる…即ち、デュラハンにとっては死角なんてものは元からないのである。

 

だから一斉攻撃には意味は無い。

 

俺がそんなことを考えている間にベルディアは襲い掛かる冒険者たちの攻撃を次々と躱し、その冒険者たちを切り伏せて行った。

 

倒れた冒険者たちに囲まれながらベルディアは口を開く。

 

「…次は誰だ…?」

 

コイツ…やっぱりとんでもなく強い…!!

 

勝てるのか…こんな奴に…??

 

とその時。

 

「あ…あんたなんか今にミツルギさんが来たら一撃で倒しちゃうんだから!!」

 

そんな声が後ろから響く…

 

ミ、ミツルギだって…!?

 

それってもしかして…あの時俺が魔剣を売ったあのイタイ奴か!?

 

ミツルギがこの街の切り札だとすれば…今は俺のせいで魔剣が無くて戦えない。

 

…ま、まずい…!!まずすぎるぞ…!!完全に俺のせいじゃないか!?

 

「ほう…ではソイツが来るまで…持ちこたえられるかな!!」

 

ベルディアはそう言いながら大剣を振り下ろす。

 

「はあああ!!」

 

それをダクネスがなんとか剣で受け止める。

 

辺りに響く剣と剣の衝突音…ジリジリと火花が散る。

 

「よくも…よくも皆を!!!」

 

そう言うダクネスの視線の先には先ほどベルディアに切り伏せられた冒険者たちの姿。

 

ダクネスが頑張ってベルディアの剣に対抗してくれているが…

 

「よせダクネス!!お前の剣じゃ無理だ!!」

 

明らかに押されている!力量差は明白だ…

 

「止めるなカズマ!!守ることを生業とする者としてどうしても譲れないものがある!!」

 

俺の制止の声も聞かず、ダクネスはそう叫びながらも果敢にベルディアに剣を振るう…

 

「はあああ!!」

 

だが…

 

ボコッ…!!

 

ダクネスの剣が切ったのはベルディアでは無く、その隣の岩だった。

 

ダクネスの顔が真っ赤に染まる。

 

…動かない者に剣を当てられないなんて仲間として俺も恥ずかしいよダクネス…!

 

「…はあ…もう良い…期待外れだ!!」

 

攻撃を外したダクネスにベルディアは興味が失せたのか、そう言いながら大きく大剣を振りかぶり、それをダクネスめがけて振り下ろした。

 

「なっ…」

 

そして、その一振りはこれまでの攻撃とはスピードが違い、ついていけないダクネスはその一撃を無防備に受けてしまった。

 

「うわあああああ!!!」

 

「ダクネス!!!!」

 

ダクネスの悲痛な叫びが周囲に響いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐああっ!!」

 

ダクネスは再びベルディアの剣を受け、地面に倒れる。

 

「…く、くそっ…」

 

…だが、それでもまだダクネスは立ち上がる。

 

先ほどからどれほど時間がたっただろうか…ダクネスは何度もベルディアに挑み、倒れ、立ち上がる、そしてまた挑む…それを何度も繰り返している…そう…何度も…

 

もはや見ているこちらが目を塞ぎたくなるほどに痛々しい光景…ダクネスの体はボロボロになっていた。

 

「ダクネス!もう良い!!下がれ!」

 

俺がそう叫ぶもダクネスは一向に引く気配は無い。

 

「…クルセイダーは背に誰かを庇っている状況では下がれないんだ!!」

 

…くそっ…何か…俺にできることは無いのか…!!

 

「あっ…そうだ!!」

 

ある作戦を思い付いた俺は背負っているめぐみんを近くの岩に座らせ、ベルディアとダクネスがいる場所めがけて右手を突き出す。

 

「くらえ!『クリエイト・ウォーター』!!」

 

俺がそう叫ぶと、ダクネスとベルディアの頭上から少量ではあるが水が降り注ぐ。

 

「…突然こんな仕打ちとは…嫌いではないが…時と場所を考えてくれ」

 

「ち、違うわ!妙なプレーじゃない!!」

 

俺のクリエイトウォーターでずぶ濡れになったダクネスがそう言うが…俺の狙いはそこじゃない。

 

「これはこうするんだ!!…『フリーズ』!!」

 

俺がそう叫ぶと、さっきの水で濡れた地面が一気に凍る。

 

「…うっ…ぬかった!!」

 

そしてそこに立っていたベルディアの足元も凍りつく…そう俺の狙いはそこだ!

 

足が凍って回避しづらくなったところに…

 

「…『スティール』!!!」

 

俺はそう叫び、右腕を突き出す。

 

これであの大剣さえを奪うことができれば…!!

 

…だが。

 

「…えっ」

 

スティールをした後の俺の右手には何もなかった。

 

…失敗したのか…俺が?スティールを?

 

困惑する俺にベルディアが口を開く。

 

「作戦は悪くなかったが…レベル差というやつだな…さて…」

 

くそっ…良い作戦だと思ったのに…!

 

悔しがる俺とダクネスの元にベルディアはゆっくりと近づいてくる。

 

「…この茶番を終わりにしよう」

 

「くっ…」

 

「カズマ!!」

 

ダクネスが俺を庇おうと立ち上がるが、その体は満身創痍…もう流石のダクネスも長くは持たない…!!

 

「くそっ…あの大剣さえ…どうにかできれば…!!」

 

…だが俺の頭には何の作戦も思い浮かばない。

 

考えている内にベルディアは俺たちの目の前まで迫る…

 

「終わりだ!!」

 

ベルディアがダクネスに向けて大剣を振り下ろす…

 

万事休すか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が諦めかけた……その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

「カズマ!!!!!!」

 

聞き覚えある声が俺の耳に入った。

 

ギィィン!!

 

そしてその声の主はダクネスとベルディアの間に割って入り、ベルディアの剣を2本の剣で受け止めた。

 

そのまま剣を大きく振るい、ベルディアを跳ね飛ばす。

 

「大丈夫だったか?カズマ!ダクネス!」

 

 

 

 

 

 

 

その声の主は…

 

太陽の光を反射させる白金色の髪…見開いたその大きな蒼い瞳…そして硝子のように透き通る白い肌…

 

間違いない。

 

「ベ、ベネクト!!」

 

我らがパーティの魔法剣士ベネディクトさんだった。

 

「ベネクト!お前なんで…」

 

「…いやあ…なんかいつの間にかギルドで寝ちゃってたみたいで…ついさっきルナさんに起こされて、状況を聞いて飛んできたんだ」

 

…ああ…そうだった…コイツなんかちょっとカッコいい登場してるけど、シュワシュワ一杯飲んで潰れてただけなんだった。

 

「まあでも…俺のおかげで助かっただろ?」

 

そう言って能天気に笑うベネクト…いや死人出てるから助かってないよ?

 

…まあでも、コイツの顔を見ているとさっきまでの絶望的な状況がウソみたいに気が楽になる。

 

「遅いんだよバカベネクトが」

 

俺はそう言ってベネクトの肩を軽く小突く。

 

「悪い悪い…………それでカズマ…俺は何をすれば良い?」

 

べネクトは真剣な表情に戻り、俺の目を真っ直ぐに見つめてそんなことを聞いてきた。

 

…何をすれば良い…か。

 

ベルディアを倒してくれれば一番だけど…まあ、とりあえずは…

 

アイツ(ベルディア)のあの大剣…ムカつくからへし折って来い」

 

「あい」

 

俺の言葉にそう答えたベネクトは、その直後に地面を蹴り付けてベルディアの元へと突っ込んでいった。

 

 

…まかせたぞ…ベネクト…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベネクトの2本の剣とベルディアの大剣の衝突音が周囲に響く。

 

「おい!貴様はあの時の…なぜ生きている!?」

 

「なぜって言われても…姐さんに呪いを解いてもらったとしか…」

 

ベネクトの素早い連続攻撃をベルディアがなんとか受け流す。

 

「…あ、あのプリーストの話は本当だったのか…!!」

 

ベルディアはそう言いながらその大剣を全力で振り下ろした。

 

だがベネクトはその攻撃を片方の剣で軽くいなし、もう片方の剣で隙のできたベルディアの半身に一撃を入れる。

 

ギィン!!

 

ベルディアの鎧とベネクトの剣の衝突音と火花が散る。

 

一撃を受けたベルディアは思わず後ろに飛び上がり、ベネクトとの距離を取った。

 

数メートルの間合いでお互いが見つめ合う。

 

「…おい小僧…俺は今、お前が生きていてくれて良かったと思っている」

 

「…へえ…嬉しいこと言ってくれますね」

 

ベルディアの言葉にベネクトが返す。

 

「…ああ…なんせここまで俺と剣でやり合えるヤツに会ったのは久方ぶりでな……だからその分……腕が鳴る!!」

 

ベルディアはそう叫ぶと全身からドス黒いオーラが溢れ出した…

 

「ここからは…『本気』で行かせてもらう…!!」

 

そしてベルディアはそのままベネクトめがけて走り出す。

 

それを見たベネクトはグッ…と姿勢を低く両方の剣を構え口を開く。

 

属性付与(エンチャント)………… 『テンペスト』…」

 

 

 

 

 

 

 

 

その剣身から翡翠のオーラが溢れ出る、そして…

 

 

「……『烈風の舞』!!!」

 

 

そんなベネクトの声と共に周囲に突風が吹き荒れ始めた。

 

やがてその突風は渦を巻き、ベネクトの姿を隠す。

 

その直後…

 

ベルディアが声を上げ後ろを振り返る。

 

「見えているぞ!!」

 

ギィン!!!

 

いつの間にかベルディアの背後に回っていたベネクトの剣をベルディアはその大剣で受け止めた。

 

「…ッ!!マジか!?」

 

攻撃を受け止められたベネクトは再び竜巻の中に姿を消した。

 

ギィン!ギィン!ギィン!!

 

鳴り響く金属音、竜巻と共にありとあらゆる方向から風を纏った剣撃をベルディアに撃ち込むベネクトだったが、そのほとんどはベルディアに受け止められ、たまに鎧にあたっても致命打になっている様子は無い。

 

そして…やがてその竜巻はおさまり、その中からベネクトの姿が浮き出てくる。

 

「はあ…はあ…はあ…」

 

肩で息をするベネクト、そんなベネクトに涼しい顔のベルディアが口を開く。

 

「…スピードは悪くない、だが本気を出した俺の守備力と魔法耐性の前では圧倒的にパワーが足りないな…どうする?このままではお前は俺には勝てないぞ」

 

「…はあ…はあ……みたいだな……もしかしたらいけるかもとか思ったんだけど……魔法耐性ね…どうやら俺たち相性悪いみたい」

 

ベネクトは息を切らしながらそう言った。

 

「…ではどうする小僧?大人しく俺に殺されるか?」

 

それに対し、ベルディアはそう言いながらゆっくりとベネクトに迫り歩いていた。

 

そんなベルディアに対してベネクトは再び口を開く。

 

「…いいや…このまま負けたんじゃ、カズマに笑われる……だからせめて最低限の仕事はさせてもらう」

 

ベネクトはそう言うと…

 

ズンッ…!!

 

と音を立てて左手に持っていた剣を地面に突き刺した。

 

そして右手に持っていた『硝子の剣』を両手で持ち直し、構えをとった。

 

「なあ…あんたベルディアって言ったっけ?」

 

「ああそうだ…小僧…貴様何をする気だ??」

 

突然、片方の剣を地面に刺したベネクトにベルディアはその足を止めて、ベネクトに言葉を返す。

 

そんなベルディアに対して、ベネクトがまた口を開く。

 

「…俺はベネクト…魔法剣士のベネクトだ……ベルディア…今からアンタのその馬鹿デカい大剣をへし折る」

 

「……ほう…その貧弱な片手剣でわが魔の大剣をへし折るだと…??」

 

ベルディアはベネクトの言葉に興味深そうにそう返した。

 

「…そうだ…そんでベルディア…俺はアンタに一人の剣士として…頼みがある」

 

「…なんだ?」

 

「…………この一撃は…必ずその大剣で受け止めてくれ…」

 

「面白い…!」

 

ベルディアはそう言うと、大剣を自身の体の前で大袈裟に構える。

 

それを見たベネクトはニヤリと笑い口を開く。

 

「…属性付与(エンチャント)…………『不滅の剣(デュランダル)』…」

 

ダッ…!!

 

ベネクトはそう呟くと、地面を蹴りつけ、その場から大きく飛び上がった。

 

その剣身は元々の銀の鈍い輝きとは違う、光沢のある漆黒で染め上げられ、空中でベネクトは両手で持ったその一本の剣を大きく振りかぶる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身のありったけの力をその一本の剣に込めて…ベネクトは再び口を開く。

 

「……『全身全霊斬り』!!!!!」

 

ベネクトは文字通り全身全霊でその剣を振り下ろした。

 

「ぐぅ…!!」

 

ベルディアはそんなベネクトの剣をその大剣で受け止める。

 

 

…これまでにない…大きな金属音が辺りに響く…

 

ドコォッ…!!!

 

ベルディアの立つ地面が音を立てて一段下がる。

 

「ぬおおおおお!!!!」

 

ベネクトの剣を受け止めるベルディアの声が周囲に響き渡っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランッ…

 

ベネクトの『硝子の剣』が地面に落ちる。

 

先ほどの一撃に全身全霊をかけたベネクトの体にはもう力が入らず、剣を握る力も立つ力すらも無い。

 

だが、そんな中、地面に座り込んでいたベネクトの口角が上がる。

 

ベネクトの一撃を約束通り大剣で受け止めたベルディアはゆっくりと口を開く。

 

「…良い…一撃だった…」

 

ベルディアがそう言うと…

 

パキン…!!

 

ベルディアが持つその大剣が音を立てて崩れ去った。

 

そしてそれと共に、ベルディアを煽っていた本気モードの黒いオーラも消える。

 

『硝子の剣』は呪いの剣…装備者の耐久のステータスの全てを吸収して0にする…だがそのかわり…

 

…その剣身はどんな鉱石よりも『硬い』。

 

だから、ベネクトの全身全霊を懸けた『硝子の剣』での一撃は魔王軍の幹部の武器でさえも砕いた。

 

「…たいしたものだ…片手剣一本で我が大剣を砕くとは…」

 

大剣を失ったベルディアは素手になりながらもゆっくりと地面に座り込むベネクトに近づく…

 

「…小僧…いや…剣士()()()()よ…貴様のことは忘れない」

 

ベルディアはそう言うと、その右腕を大きく振りかぶり…無防備なベネクトめがけてその拳を突き出す…!

 

だが、その時…

 

「『クリエイト・ウォーター』!!!!」

 

そんな声と共に飛んでくる水…

 

「何ッ…!!」

 

ベルディアはそれを咄嗟に躱し、その声の方に視線を移す。

 

そこには…

 

「サンキューベネクト!!!おかげで思い出せたぜ!!アンデットであるデュラハンの弱点がな!!」

 

そう叫ぶカズマの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ…水…怖い」

 

カズマの水を避けられずにずぶ濡れになっているベネクトもいた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出したのは…最初にベルディアが街に来た時…アクアの宴会芸で出た水に過剰に反応していたこと…そしてさっきの俺がスティールを決めるために撃ったクリエイト・ウォーターにも過剰に反応していた。

 

 

そこから導かれる……コイツの弱点は……

 

 

「水だあああ!!!!!」

 

 

俺は後ろに控える大量の冒険者たちに向けてできる限り大きな声でそう叫んだ。

 

「「「クリエイト・ウォーター!!」」」

 

俺の声を聞いた街の魔法使いたちが一斉にクリエイト・ウォーターを唱え始める。

 

「くそっ……貴様ら!……小癪な……!」

 

ベルディアはそう言いながら大量の水を躱すのに集中している。

 

「ダクネス!今の内にベネクトをこっちに運べ!!」

 

「わかった!!」

 

俺がダクネスにそう言うと、立てないベネクトの元にダクネスが走り、ベネクトを背負った。

 

それを見た俺は再びベルディアめがけてクリエイト・ウォーターを連発する。

 

「クリエイト・ウォーター!!クリエイト・ウォーター!!」

 

……と、その時。

 

「ねえ…いったい何の騒ぎなの?カズマったら何を遊んでいるの?バカなの?」

 

急に出てきたと思ったら能天気な口調でそんなことを言う駄女神。

 

コイツはなんなんだ一体…!!

 

俺はアクアに向けて口を開く。

 

「ベルディアは水が弱点なんだよ!!なんちゃって女神でも水の一つくらい出せるだろ!?ちょっとくらい役に立て!!」

 

俺はそう声を荒げると、それに対してアクアは怒ったように声を上げる。

 

「あんたねえ!!そろそろ罰の一つでも当てるわよこの無礼者!!私は水の女神よ!?洪水クラスの水だって出せますから!!」

 

「出せるのかよ!!」

 

じゃあはよ出せよこの駄女神……!!

 

「ねえ謝って!この水の女神をなんちゃって女神って言ったことをちゃんと謝って!!」

 

「後でいくらでも謝ってやる!!だからとっととやれよこの駄女神が!!」

 

「ああっー!!今駄女神って言った!!……見てなさい……女神の本気を見せてやるから」

 

……どうやら俺はアクアの逆鱗に触れてしまったようだ…

 

まあ水出してくれるならなんでもいっか……

 

「この世にある全ての我が眷属たちよ…水の女神アクアが命ず…」

 

「えッ」

 

……なんか詠唱始めたんだけどコイツ…なんかヤバい雰囲気が出てるんですがコイツ…!!

 

「うん?こ、これはっ!!」

 

ほら、ベルディアさんもなんかヤバそうな雰囲気を感じ取ってる!!

 

「我が求め…我が願いに応え…その力を世界に示せ………『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!!」

 

 

 

 

……その直後…俺たちを……文字通り洪水のような水量の水が襲った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『セイクリッド・ターンアンデット』!!」

 

 

大量の水を浴びて力を無くし、武器である大剣もベネクトに壊されたベルディアはアクアの浄化魔法を成すすべなく受け、その体は消滅した。

 

途中でベルディアに切り伏せられた冒険者たちも無事にアクアのおかげで蘇生をすることができた。

 

 

「……水…もう…ほんとに怖い…ああ…」

 

「…大丈夫ですかベネクト?」

 

「…全くもって大丈夫じゃない」

 

「カズマ大変だ!アクアの魔法でできた水溜りにベネクトとめぐみんが浮いている!!」

 

ダクネスの言う通り、攻撃の反動で動けないベネクトと爆裂魔法の反動で動けないめぐみんが水溜りに浮かんでいる。

 

「ダクネスー!早く助けてやれー!……ハハっ…」

 

まあちょっと周囲が騒がしいが…終わってみればべネクトの水のトラウマが増したくらいで犠牲者無しで俺たちの大勝利だった。

 

まぁでも今回はなんとかなったけど…次からはこういう危ないのは無しにしよう。

 

俺はそんな決心をこの光景を見ながら密かに固めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「べネクト、あなたの剣技と魔法には私の紅魔族としての血が騒ぎます!…ちょっと今から色々語り合いませんか?」

 

「……今…そう言う気分じゃ無い…ごめん」

 

「ではまずは私の爆裂魔法の魅力から話してあげましょう!まずはですねこの詠唱の…」

 

「ああ…始まっちゃった…」

 

お前らは2人は水溜りに浮かびながら何をしてんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

 

俺はぼんやりとした気分でなんとなくギルドに足を運んでいた。

 

そしてギルドに入るや否や…

 

 

「待ってましたよカズマ!聞いてください!ダクネスが私にお酒はまだ早いなどとドケチなことを…」

 

「そうだぜカズマ!…まあ…めぐみんはこんなんだからともかく……俺もなぜか止められてんだよ!なんとか言ってくれよカズマ!」

 

「…おい、こんなんとはどんなのか詳しく聞こうじゃないか!?ねえベネディクト!!??」

 

「ロ、ロリッ子が怒った!逃げろー!」

 

 

よく分からんじゃれ合いをしている2人が俺の視界に入る。

 

何をやってんだアイツらは…てかいつの間にそんなに仲良くなったんだ?

 

「あ~!!遅かったじゃないカズマ~!!」

 

そして次に酒臭い駄女神が俺の元に歩いてきた。

 

…ってもう出来上がってんじゃねえかコイツ…

 

俺の肩に肘を載せて、シュワシュワのジョッキを仰ぐアクアを見て俺がそんなことを考えていると、その時。

 

「あっ…カズマさん!お待ちしておりました!」

 

そう俺に声をかけてきたのはいつものギルドの巨乳お姉さんだった。

 

お姉さんは続けて口を開く。

 

「…実はカズマさんたちのパーティには特別報酬が出てるんです!!」

 

「えっマジで!?」

 

驚いた俺は肩に寄りかかるアクアを振り払い、声を上げる。

 

俺たちに特別報酬?でもなんで俺たちだけ?

 

「魔王軍の幹部を倒しちまうなんてな…」

 

突然聞こえてきたその声の方を向くと、そこにはいつものギルドのおっちゃんがいた。

 

「俺は初めからお前の中の輝きを信じていたぜ」

 

「俺の中の輝き?(イケボ)」

 

おっちゃんは再び口を開く。

 

「『地獄の入り口に光が差す』…古い言い伝えだったのかもしれんな…」

 

「そうだぜ!カズマがいなきゃ幹部なんて倒せなかったんだしよ!!」

 

「「「カズマ!カズマ!カズマ!」」」

 

ギルド内の冒険者たちから俺へと大量の歓声が響き渡る

 

おっちゃんが言ってることはよくわからなかったが…なんか良いな…こういうのも…

 

と俺が歓声にすこし照れていたその時…

 

「コホンッ…!」

 

受付のお姉さんが一つ咳をして、高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

 

「サトウカズマさんのパーティにはその功績を称えて……三億エリスを贈呈します!!」

 

「「「「さ、三億!!??」」」」

 

 

俺たちの驚きの声がギルド内に響いた…

 

 

 

 






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