この素晴らしい世界に諸刃の剣を!   作:shch

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5.不器用

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

ギルドの隅の方のテーブルにて無言で顔を突き合わせる俺たち5人。

 

知らない人のために説明しておくと、俺たち5人は同じパーティに所属しているメンバー同士であり、ついこの間、なんとあの魔王軍の幹部の一人『デュラハン』の討伐に多大な貢献をし、3億エリスの懸賞金を貰うということがあった。

 

言わばこのアクセルの街随一のエリートパーティなのである。

 

そんなエリートでイケてる俺たちがなぜギルドの隅っこで神妙な面持ちで何も言わずに顔を突き合わせなくてはいけないのか?

 

俺がそんなことを真剣に考えていたその時、ずっと黙っていたパーティメンバーの一人が口を開く。

 

「…………このパーティ抜けます」

 

「ダメです」

 

そんなバカなことを呟いたのはウチの魔法剣士のベネクトくん。

 

彼に抜けられると本格的に前衛のまともなアタッカーがいなくなるので非常に困る。

 

「……いや、抜けます」

 

「ダメです」

 

しつこいなこの野郎。

 

「……」

 

「……」

 

俺とベネクトの間に少しの沈黙が再び訪れる。

 

「………こうなったの、多分僕の呪いのせいなので抜けます」

 

「違います、アクアがバカだったからこんなことになってます、ベネディクトくんは関係ありません」

 

俺がベネクトにそう言うと、ベネクトの隣に鎮座していたアクアが聞き捨てならないと立ち上がり声を上げる。

 

「違うわよ!!あれはカズマさんがやれって言ったんじゃない!!カズマのせいよ!!」

 

「黙れ駄女神が!!」

 

俺はアクアに対抗するように立ち上がると駄女神を指さしながら声を荒げる。

 

「俺は水を出せと言っただけだ!!誰があんな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修理費4億エリスの災害レベルの洪水を出せって言ったんだ!!??この駄女神!!借金製造機!!!」

 

俺の怒声がギルドに響く。

 

「わああああ!!カズマさんが!!カズマさんがまた駄女神って言ったあああ!!!ベネクトォォ!!!」

 

「……ああ……俺はやっぱり…どこまでも…借金王子なんだ…ああ」

 

「…………」

 

「…………」

 

喚き散らしながらベネクトに縋りつく駄女神とブツブツとうわ言を呟く借金魔法剣士、無言で顔を逸らして他人の振りをしているめぐみんとダクネス。

 

このやり取りで何があったのかは大体分かると思うが、一応説明しておくと……

 

デュラハンを倒したときにアクアの魔法が街の外壁を壊して4億エリスの借金ができました。

 

懸賞金の3億エリスと差し引いても残額は1億エリス……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もうやだ」

 

俺は取り乱すパーティメンバーたちを見ながら一言呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……2人ともそろそろ落ち着け、嘆いていても仕方がないだろう、借金は借金だ、しっかり返済方法を考えなければ」

 

「そうだぞお前ら」

 

「「…はいぃ」」

 

ベネクトとアクアの様子が元に戻ってきたころ、ダクネスが2人に向けてそう言った。

 

ダクネスの言う通り、こんなところで喚いていても借金は減らない……でも1億エリスだもんなあ。

 

金額が大きすぎてもはやそのヤバさにイマイチピンとこないまであるな。

 

…だが俺にはそのデカすぎる借金を一部返済する手段に一つだけ心当たりがあった。

 

しかし、この方法を提案するのは流石に気が引けるんだけど。

 

…と俺が考えていたその時。

 

アクアが何かを思いついたかのように勢いよく右手を上げて口を開く。

 

「そうよ!!ベネクトのドラゴン討伐の懸賞金があるじゃない!!5000万エリス!!アレを使えば借金は半分よ!!」

 

まあコイツなら普通に言っちゃうよな。

 

アクアの発言は俺が考えていたことそのまんまだった。

 

でも流石に…

 

「まてアクア、その5000万エリスはベネクトがウチのパーティに入る前に稼いだ金だ、流石に俺たちのパーティの借金返済に当てるのはヤバいだろ……」

 

…と、俺はそんな事を言いながらも、横目でベネクトの様子を確認する。

 

正直ここでベネクトがちょっとでも懸賞金からお金を出してくれると非常に助かるのだが…

 

「どうなのよベネクト!私たち仲間よね!?」

 

アクアがそう言うと、俺たちの視線がベネクトへと集まる。  

 

「あー……あのお金ね…」

 

そして、ベネクトがゆっくりと口を開く。

 

「なんかこの前、王都に取りに行ったら「期限切れで渡せません」って言われたんだ……まあ要するにアレだな…」

 

 

 

 

 

……は?

 

 

困惑する俺たちにベネクトは続ける。

 

 

 

 

 

「5000万エリス……失効いたしました☆」

 

「「「………」」」

 

 

 

……沈黙。

 

誰も、何も言えなかった。

 

時間が止まったような空気の中、ただ一人ベネクトだけが能天気にヘラヘラと笑っている。

 

そんな中、俺は無言でスッと立ち上がり、口を開く。

 

「…よしアクア、このゴミ魔法剣士を早くどこかに埋めよう」

 

「そうね」

 

「……新聞の下の方に受け取り期限が書いてあったみたいなんだけど見落としてたみたいで…………って……ちょ、ちょっと2人とも?……無言で近づいてくるなよ……え?……あ…あああああ!!!」

 

 

ベネクトの悲鳴がギルドに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふへえ……」

 

「よし、バカが一人いなくなったことだし、話し合いを再開しようじゃないか」

 

ぐるぐる目を回してテーブルに顔面を埋めているベネクトを横目に俺は気を取り直して会議を再開させる。

 

……まあ話し合ってどうこうなる問題では無いのだが。

 

「…これがベネクトの借金の呪い…意地でも本人にお金を持たせないという気概を感じますね」

 

目を回すベネクトをつんつんとつつきながらそう言うめぐみんが続けて俺たちに口を開く。

 

「…やはり借金返済のためにはクエストを地道に受けていくしかないんじゃないでしょうか?」

 

「めぐみんの言う通りだ…ここで話し合いをしていても金は返せん」

 

めぐみんの言葉に賛同するダクネス。

 

やっぱりクエストを受けるしかないのか…??

 

もうベルディアの件から危険なことはしたくなかったんだが…まあ仕方ないか…

 

観念した俺は口を開く。

 

「…まあそうだな!じゃあクエスト掲示板になにかよさげなクエストがないか探しに…」

 

俺がそう言いながら席を立とうとしたその時だった。

 

「カズマさん!サトウカズマさん!!」

 

俺の名を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。

 

「ん?」

 

俺がその声に振り返るとそこにいたのはギルドの受付のルナさんだった。

 

急いで俺たちの元へ来たようで肩で息をするルナさんに俺は恐る恐る口を開く。

 

「…ど、どうしましたか?また何か悪い知らせでも…」

 

この前のの借金の通達からルナさんの言伝が若干トラウマになっている俺はビクビクしながら返答を待つ。

 

そして、ルナさんが口を開く。

 

「いえ!朗報ですよサトウカズマさん!……なんとカズマさんのパーティが背負っていたこの街の外壁の修繕費に王都から寄付金が出たんです!!」

 

……ん?つまりどういうことだ?

 

「……というと?」

 

「王都から支給される寄付金の分、カズマさんのパーティの借金が減ります!!」

 

「おお!!マジかよ!!」

 

「いくら!?いくら支給されるの!?」

 

ルナさんの言葉を聞いて真っ先に立ち上がり、そう詰め寄るアクア。

 

「はい…支給額は……なんと『5000万エリス』です!!良かったですねカズマさん!借金が半分になりましたよ!」

 

「5000万エリスも!?」

 

ルナさんの言った支給額に俺は思わず驚きの声を上げた。

 

だって5000万エリスだぞ?そう簡単にポンと出ていい金額では無い。

 

流石王都と言ったところか太っ腹だ…

 

「やったわ!!やったわよカズマ!!ベネクト!!働かずして借金が半分になったわ!!」

 

アクアもよほど嬉しいのか喜びの舞を踊っている。

 

「カズマさん!!今日はもう働かなくても大丈夫じゃない!?だって実質5000万エリス一日で稼いだようなもんよ!!今日は飲みましょう!!酒盛りよ!……すいませーん!シュワシュワくださーい!!」

 

「おいアクア!半分になったって言ってもまだ5000万エリスの借金があるんだぞ!?」

 

昼から酒盛りを始めようとするアクアに俺はそう言うが、そんな俺の肩にポンと手を置いためぐみんが口を開く。

 

「まあまあ…今日くらい良いんじゃないですか?アクアは最近ずっと責任を感じているのか元気無かったですし、5000万エリスも貰えたことですし…それにどうせベネクトが伸びちゃってるのでアクアが回復しないとクエストには行けませんよ?」

 

そんな事を俺に言ってくるめぐみん。

 

……まあ確かにアクアやめぐみんの言うことも一理ある…本来一億あったのが今日一日で半分になったのだ。

 

…うん。

 

じゃあ今日一日くらいそのお祝いとして休んでも良いよな!?

 

「すいませーん!!俺にもシュワシュワをー!!」

 

テンションの上がった俺はアクアに続けてそう叫ぶ。

 

「ベネクトも早く起きなさい!アンタの損失がチャラになったのよ!早く起きて一緒に王都に向かってお礼を言わないと!」

 

目を回すベネクトの肩をはしゃぎながら揺さぶるアクア。

 

それを見ながら俺は運ばれてきたシュワシュワのジョッキを煽る。

 

…まあベネクトがちゃんとドラゴンの懸賞金の5000万エリスを貰ってきてくれてたら…借金は全部チャラだったんだが…

 

「……今は考えないようにしよう」

 

俺はそんなことを考えながら口を開く。

 

「すいませーん!シュワシュワ追加でー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなカズマとアクアがはしゃいでいるその時…

 

 

「………ダクネス?さっきからずっと黙ってますがどうかしましたか?」

 

 

はしゃぐ他のメンバーとは対照的に何か考え事をするように口元に手を置くダクネスにめぐみんが声を掛けた。

 

ダクネスは口を開く。

 

「…いや…ちょっと引っかかってな…あの時の新聞…ベネクトのドラゴン討伐の記事についてだ」

 

「それがなにかありましたか?」

 

めぐみんがダクネスにそう尋ねるとダクネスは頷きながら言葉を続ける。

 

「…ああ…それが…私の記憶だとあの記事には受け取り期限なんて書いてなかったハズなんだ」

 

「ダクネスもベネクト同様見落としてたんじゃないんですか?…それともベネクトが嘘を付いているとでも?」

 

「…おかしいと思わないかめぐみん?なぜ王都がこんなタイミングで寄付金など送ってくる?送るならばすぐに送ってくるはずだ……しかもその金額は……ベネクトの懸賞金の5000万エリスと全く同じ額だぞ?」

 

「……!…じゃあさっきの期限切れで懸賞金を受け取れなかったと言うのは…」

 

「おそらく嘘なんだろう…確証は無いが、大方ベネクトがドラゴンの懸賞金を王都から丸々全部このアクセルに寄付金として送ったのだろう」

 

めぐみんとダクネスはそんなやり取りをしながら、アクアに起こされて一緒に何やらよく分からないことをやっているベネクトに目を移す。

 

「「ははー…ありがたやー…」」

 

ベネクトとアクアは二人並んで地面に座り、どうやら王都の方角に向けて感謝の祈りをささげているようだ。

 

そんな二人を見たダクネスは微笑みながら呟く。

 

「…アイツのことだ、私たちパーティに変に感謝されるのが恥ずかしかったんだろう…相変わらず不器用な男だ」

 

ダクネスがそう呟いていると、アクアと並んで座るベネクトに今度は酒で顔を赤くしたカズマが近づいて何かを言っている。

 

「おーいベネクト〜!何アクアとバカなことやってんだよ〜!」

 

「邪魔してくれるなカズマ、今姐さんと王都に向けて感謝の儀をやってんだ」

 

「そうよカズマ!アンタも一緒にやんなさい!お金の恩は重いのよ!」

 

「女神の頭はそんな軽くてもいいのかよ…」

 

酔っ払ったカズマに肩を組まれたベネクトが迷惑そうにしながらもアクアと一緒に楽し気に笑っているのがダクネスとめぐみんの目に入る。

 

「…まあ…これまでずっとパーティを組めなかったアイツなりの恩返しなのかもしれないな」

 

「……そうかもしれませんね」

 

ダクネスのそんな言葉にめぐみんも優しい表情を浮かべながら同調した。

 

「私たちもそろそろ混ざるか?めぐみん?」

 

「そうですね!見てるだけじゃつまらないですからね!」

 

 

 

その日、カズマパーティは残り5000万エリスの借金があるとは思えないほど、宴を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが借金を背負ってから…そこそこの時間が流れた。

 

あれから季節は冬に入り、ギルドにいる冒険者たちは魔王軍の幹部討伐の報酬の貯えからめっきり冒険に繰り出さなくなった。

 

だが、借金のある俺たちはクエストに出ないわけにはいかない…

 

だからダンジョンに行ってみたり、雪精の討伐なりと色々なクエストをこなしたのだが……まあ思い通りにいかない。

 

雪精の討伐に至っては冬将軍のせいで俺一回死んじゃったし。

 

そこで俺は考えた…考えた結果出た結論が…

 

 

 

 

ウチのパーティはバランスが悪い。

 

ベネクトが加入して幾分マシになったとは思うがまだまだだ。

 

ベネクトの攻撃性能は確かに高い、だが…

 

アクアの杖に引っかかってコケるわ、めぐみんの爆裂魔法の軽い爆風で吹っ飛ぶわ、ダクネスの空振りした剣が当たるわ、ダンジョンなんかではゴブリンの子供の不意打ちで倒れるわ…まあ要するにヤツは脆すぎる。

 

そして、そんなベネクトと一発屋のめぐみんが倒れれば俺たちのパーティはモンスター相手に逃げ惑うことしかできない…これはかなりの問題ではなかろうか?

 

そこで俺は今回『ある人物』に強力なスキルを教えてもらうことにしたのだ。

 

「…よし…着いたぞアクア、先に言っとくけど絶対暴れるなよ?分かったか?」

 

今回の目的地のとある魔法道具店の前に付いた俺は、その扉を開ける前に軽くアクアに注意をする。

 

「ちょっと何を言ってるの!?カズマって私を何だとおもってるの!?神様よ!神様!そこらへんの躾のなってない畜生とは違うの!…ねえ聞いてるカズマ!?」

 

注意されたアクアが何か言ってるが…まあ無視だ無視。

 

俺はアクアに構わず、目の前の扉に手をかける。

 

キィィ…

 

木のきしむ音と共にその扉が開いた。

 

そして俺は部屋に入るなり軽快な挨拶を口にする…

 

「…ようウィズ!久しぶ…」

 

…が、真っ先に俺の目に入ったのは予想外の光景だった。

 

「どうしてですか!?私は貴方の身を案じて言ってるんですよ!?」

 

「だからその魔法石はもういらないんだって!その使いにくいテレポートするやつ…」

 

「私と約束してましたよね!一人で外に出るときは絶対これを持たなきゃいけませんって!!この魔法石が無いと貴方すぐに死んじゃうじゃないですか!!」

 

「パーティ!パーティ組んだの!だからもういらないの!」

 

「悲しい嘘はやめてくださいベネクトさん!借金製造機の貴方とパーティを組む人なんて誰もいませんよ!!」

 

「あー!!ウィズが言っちゃいけないこと言った!!もう知りませーん!!」

 

俺が店に入るやいなや、目の前で怒涛の勢いで口論をしていたのは見知った顔の2人。

 

「もうウィズなんか嫌いだ!!」

 

片方が俺たちのパーティのポンコツ魔法剣士のベネクト。

 

そしてもう片方が…

 

「私ももうベネクトさんなんて知りません!もう一人でダンジョンで倒れていても助けてあげませんからね!!」

 

ここの魔法道具屋の店主であり、アンデットの王リッチーでもある女性の『ウィズ』だ。

 

彼女とはベネクトと出会う少し前にゾンビメーカー討伐の依頼を受けた時に知り合った。

 

墓地の迷える魂の成仏をしていた良いリッチーだ、今回リッチーの強力なスキルを教えてもらえればと思って足を運んだのだが…

 

どうやら先客がいたようだ。

 

「「フン…!!」」

 

そう鼻を鳴らしてそっぽを向き合う両者。

 

ウィズさんってこんな感じだったっけ?もっとこう…お淑やかな感じじゃなかったか?

 

てかベネクトお前、ウィズと知り合いだったのかよ…

 

「あ、あのー…」

 

俺が2人に恐る恐る声を掛ける。

 

「…あ…カズマさんじゃありませんか!」

 

「おー!カズマじゃないか!」

 

2人が同時にそう言いながら俺の方を振り返る。

 

「…ようウィズにベネクト…」

 

と俺が2人に挨拶を返したその時…

 

「アンタあの時のリッチーじゃない!!何こんなとこで店構えてんのよ!!こっちは毎日馬小屋で寝泊まりしてるって言うのに!!」

 

俺の後ろにいたアクアがウィズを見るなりそう叫んで、ウィズに突っ込んで行った。

 

アイツ…暴れんなって言ったのに。

 

「リッチーのくせに生意気よ!!」

 

そう言いながらウィズの胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと揺らすアクア。

 

アンデットの王であるリッチーを仮にも女神のアクアはかなり毛嫌いしており、まあこうなるのはある程度予想できていた。

 

だから店に入る前に釘を刺しておいたのに…

 

俺がアクアの様子にヤレヤレと肩をすくめていると、そんな俺の元にベネクトがトコトコと歩いてきて口を開く。

 

「何してんだカズマ?こんな変な魔道具しか置いてない店に何か様でもあるのか?」

 

「お前こそここで何してるんだよベネクト、ウィズと知り合いだったなんて聞いてないぞ?」

 

話しかけてきたベネクトに俺はそう返す。

 

「ああ…確かに言ってなかったな、最初に会った時に言ったろ?「ある人に魔法石を持つのを義務付けられてる」って」

 

「ああ…確かダメージを少しでも受けたら指定した街にランダムでテレポートするっていうお前専用みたいな魔法石の話だよな?」

 

その魔法石のせいで俺たちの馬小屋にベネクトが来たんだよな確か…

 

「そう、それだカズマ…それでその魔法石を売ってるのがこの店で魔法石を俺に持つのを義務付けた人ってのがウィズなんだ」

 

「へぇーなるほどなぁ」

 

どういう経緯でそうなったのかめちゃくちゃ気になるんだが…

 

だが俺がそれをベネクトに聞こうとする前に、ベネクトが口を開く。

 

「そう言うカズマこそ、ウィズのこと知ってたんだな」

 

「ああ、この前ゾンビメーカー討伐のクエストを受けた時知り合ってな、今日は戦力補強にリッチーのレアスキルを教えてもらえないかと思って尋ねたんだ」

 

「そっか、カズマは冒険者だもんな、リッチーのスキルでも覚えられるのか」

 

…と、そんな風に俺とベネクトがやり取りをしていたその時。

 

「ちょっとカズマ!?アンタリッチーのスキルなんて覚えようとしてるの!?女神の従者がリッチーのスキルを覚えるなんて見過ごせないんですけど!!」

 

「誰がお前の従者だ!」

 

何やら、ウィズにお茶を出させて寛いでいたアクアが俺たちの会話を聞いていたのか、そんなことを言ってきた。

 

「いい?カズマ?リッチーってのはね薄暗くてジメジメした所が大好きな…言ってみればナメクジの親戚みたいなもんなのよ??」

 

「ひ、ひどい…」

 

可哀想なウィズ…

 

「いや、リッチーのスキルなんて普通は覚えられないだろ?そんなスキルを覚えられたら結構な戦力になると思ったんだが?」

 

「じゃあこんなリッチーじゃなくて、ベネクトにでもスキルを教えてもらいなさいよ、魔法剣士はこの街に1人なんでしょ?十分レアじゃない」

 

…確かに!!何でそれを思いつかなかったんだ俺は?

 

ベネクトの属性付与(エンチャント)なんか覚えられたらカッコいいしめちゃくちゃ強くなれるぞ!?

 

「…そ、それは少し難しいのでは無いでしょうか?」

 

勝手に盛り上がっていた俺に恐る恐るそう言ってきたのはウィズ。

 

「どうして難しいんだ?」

 

俺がウィズにそう聞くと、ウィズは語り始めた。

 

「まず魔法剣士という職業は高い魔力の素養と筋力、俊敏性の全てを両立していないとなれません」

 

ゲッ…そんな難しい職業だったのか?

 

「そしてそんな魔法剣士の固有スキルである『属性付与(エンチャント)』は魔法剣士であれば最初から習得しているスキルですが、これを冒険者が習得しようとすると莫大なスキルポイントか必要となります、それに『属性付与(エンチャント)』の後に属性を決定する呪文にもスキルポイントが必要なので…魔法剣士であればかなり低いスキルポイントで呪文を習得できるのですが…冒険者だと…」

 

「俺の覚えてる『ティンダー』とか『ウィンド・ブレス』とかじゃダメなのか?」

 

「それらの初級呪文だと…そのカズマさんが持っている短剣に『属性付与(エンチャント)』しても、ちょっと暖かくなったりするだけだと思うので…あまり意味は無いかと…」

 

「そ、そうか…ならいいや…」

 

…よし…悔しいが諦めよう。

 

と俺が決心したその時…

 

「まあそう言うことだカズマ…でも気が向いたらいつでも教えてやるからな?なんて言ったって俺たちは…()()()()()()()()()なんだから」

 

ベネクトは俺の肩に手を置きながらそう言うと、チラリとウィズの方に視線を送る。

 

なんだコイツ?

 

…と俺が思ったその時?

 

「……へ?…も、もしかしてカ、カズマさん…ベネクトさんとパーティーを…?」

 

「え?ああ…まあそうだけど…」

 

「ええ!?」

 

驚いた表情のウィズに俺がそう言うと、隣に立っていたベネクトも口を開く。

 

「だから言ったろウィズ?俺はカズマたちとパーティを組んだんだって」

 

「ほ、ホントだったんですか!?悲しい嘘ではなくて!?」

 

「マジだってずっと言ってるだろ?…てことであのよくわからない高い魔法石はもう買いません!OKウィズ??」

 

OKグー◯ルみたいに言うな。

 

と俺が脳内でツッコミをしていると、ウィズがベネクトに対して声を上げる。

 

「OKじゃありません!ベネクトさんがあの商品を定期的に買わなくなったらいよいよこのお店は潰れちゃうんです!お願いしますベネクトさん!!」

 

そう言いながらベネクトに縋り付くウィズ。

 

ウィズの店ってそんなに経営難なのか?大変そうだなぁ…

 

俺が呑気にそう考えていると、ベネクトが難しい顔をしながら口を開く。

 

「いやあ…でも今の俺は前の俺よりも借金が増えてるからなあ…流石に不必要な魔法石にお金を払うのは…金額もバカにならないし」

 

5000万エリスの借金あるからな俺たちには…余計な買い物はできないよな。

 

「そこをなんとかお願いしますよベネクトさん!……じゃあもうこうなったら…!」

 

その時、ウィズが何かを思いついたか、少し顔を赤らめて恥ずかしがりながら口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以前の様に私の部屋に一緒に住んでいただいてもいいですから!!」

 

…は?

 

い、今なんて言った?以前ウィズの部屋に一緒に住んでた?ベネクトが?

 

それが本当なら許し難いんだが?

 

「え?嫌だよ今冬だし、ウィズの部屋寒いんだも…「おいこのポンコツ借金踏み倒しカス魔法剣士」

 

俺はブツブツと文句を言おうとする澄まし顔のベネクトの胸ぐらを掴む。

 

「な、なんだよカズマ…?何怒ってるんだ…??」

 

俺に胸ぐらを掴まれて、焦った様にそう言うベネクト。

 

そんなベネクトに向けて俺は声を上げる。

 

「…お前…ウィズと一緒の部屋で暮らしてたのか?」

 

「…え…あ…まあ…王都へ出向く前は…魔法石を定期購入する代わりにウィズが一緒に住んでも良いって言うから……い、今は違うぞ?魔法石買ってないから…」

 

「ああ…そうか…そうかそうか…」

 

なるほどねぇ……

 

俺の中に沸々と激しい怒りと悲しみの感情が湧き出ててくるのを感じる。

 

俺はこの抑えられない感情をそのまま吐き出すことにした。

 

「…なんで…なんで俺はこのポンコツ駄女神と馬小屋生活なのに………お前は美人で巨乳の優しいお姉さんと一つ屋根の下で暮らしてんだよ…」

 

すぅと大きく息を吸って俺は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ズルいだろうがああああ!!!!!」

 

 

 

俺の悲痛な叫び声がアクセルの街に響く…

 

 

やはり…このロクでも無い世界は…不公平だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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