寄生世界 -PARASITE WORLD-   作:NIGHTMARE⭐︎

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10 最高警戒

ディッパー死地、東門。ヨナギたちは突入する準備を着々と進めていた。

「準備はできましたか?」

黒髪に赤毛が混じった女性、マキルが静かに問いかけた。ヨナギには彼女自身が戦闘準備ができているようには見えなかった…あまりにも軽装すぎる。

「ああ万端だねえ…いつでもキミらを打ち抜けるよ」

黒紫の髪の青年が牙を向くように笑いながらショットガンを構えてマキルに撃つ真似をしている…マキルは微動だにしないが。

気弱そうな少女はヨナギには何なのかすらわからない赤い棒を持って青年から隠れるようにしている。

「それでは向かいましょう。」

マキルが先陣を切って東門の中に入った。他の兵士も次々と追いかけていく。

死地の中は電光設備がほとんど生きていないためとても暗い。月すらも雲に隠れて光を届けてはくれない。アトラクションだったであろう残骸が左右に大量に散らばっている。砕けたガラス片やプラスチックなどが、なぜこんなに粉々なのか不思議なほど派手に粉砕されている。

「豪快だねぇ…」

青年が地面に散らばるアトラクションのかけらを踏み砕きながら呟く。

「ギャクラ、やる気がないのならさっさと帰れ」

ヨナギの背後から重装備な男性が青年に向かって忠告した。いかにもベテランな雰囲気を感じる。白髪混じりの黒髪に鋭い目つきの出立で、手には黒い銃剣を持っている。

ギャクラと呼ばれた青年は振り返り、さらにニヤリと笑って無言で先を急いだ。

「まったくアイツは…」

銃剣の男性が呆れたように首を振った。

「あの人ってずっとあんな感じなんですか…?」

ヨナギが尋ねた。

「昔からああではなかったが…どうもどこかで人情を失ったらしい。戦闘力は高いが素行のせいで実践採用率は極めて低い。それがかえってアイツにストレスを与えて態度が悪化しているようにも思えるがな…。」

男性は静かにヨナギを追い抜く。

「もう少しペースを上げないとはぐれるぞ。」

ヨナギも彼に続いた。

 

「な…」

ヨナギが先頭に追いついた時、マキルが足を止めた。何か不快な重低音がズズズと響いたからだ。

「うるっさいなぁ!」

ギャクラが不満げに言い放つ。

「これは…まさか」

銃剣の男性が近くの瓦礫へ登り、辺りの様子を確認し始めた。ヨナギもおもむろにそこに近づいてみる。

男性の目は油断なく警戒している。辺りをくまなく探っていた白い目が、ある一点に釘付けになった。

「…まずいな」

「え?」

男性は瓦礫から飛び降り、他兵士の元へ着地する。

「ここから約20mの場所で大型のメアノイドを確認した。形状からしておそらく自己進化体だろう…5mはありそうだ。」

「5m!?」

気弱そうな少女が思わず叫ぶ。

ヨナギは先ほどまで男性がいた瓦礫の上から同じように自己進化体を探していた。

「あ…!?」

思っていたよりも巨大なそれは本当にいた。暗闇にわずかに輪郭が浮かび上がり、いかにも重そうな頭部のない胴体と長い腕が見える。人間のように直立しているようにも見える。

 

「ひとまずあれから離れるぞ。」

男性が言うや否や全員が自己進化体と逆方向に走り出した。

「自己進化体と言うにはあまりに進化しすぎている…他との差別化で最高警戒対象とでも呼ぶべきか。」

「討ち取ったら大手柄だなぁ!?」

ギャクラがショットガンを背後に向けて構えながら走る。

マキルは先ほどとは逆に最後尾で飛行するように滑らかに走っている。

最高警戒対象の移動音や破壊音は徐々に小さくなっていった…

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