寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
ギシギシという不穏な音と共に最高警戒対象が近づいてきているらしい。瓦礫の影になっていてまだ姿は観測できないが、移動音は明らかにすぐ近くから聞こえる。
「メアノイドだね〜」
マドレットが表情一つ変えずに言った。
「ボクとメアノイド同時に相手することになったら大変だね。」
「一度撤退しようか…!」
灼猛が叫び、引き返そうとするがマドレットがそこに立ちはだかった。メアノイドが到達するまでこの場所に留まらせるつもりらしい。
「この…!どけ…!」
灼猛が殺す気で斧を叩きつけるがひらりと避けられる。マキルは戦闘しながら考えた。ほぼ「詰み」だと。最高警戒対象から逃れたくても、マドレットがそうはさせてくれない。次の瞬間には、最高警戒対象がその姿を現した。
その姿はまるで巨大な獣のようだ。長く発達した顎には目も鼻も耳もないが、鋭い牙がいくつもはみ出ている。四足で歩く姿は大型犬を彷彿とさせる。尾は太く長い。体高は2メートル、体長は5メートルはある。
「ぐっ…!」
「じゃあ頑張って。ボクここで見てるから。逃げるのは許さないからね〜。」
マドレットは施設の残骸の上へ腰掛けた。最悪な状況が完成してしまった。逃げようとすればマドレットに殺され、最高警戒対象と戦っても恐らく死ぬ。死ぬ以外の選択肢が無くなった。
最高警戒対象《ファングテール》。
ファングテールが牙の生えた口を広げてマキルに向かって突進する。その速度は大きさに見合わずかなり速い。マキルは右で接近してくるファングテールの下顎を蹴り上げて無理やりその口を閉じさせた。その隙に、黒い装備の男性兵士が敵に銃弾を何発も浴びせた。だがファングテールには大した効果はなく、その攻撃の矛先が変わっただけだった。
ファングテールは男性に向かって走り出した。挙動は単純だがあまりにも豪快で俊敏だ。
「くそ…どうにもならないのか…!」
灼猛がイライラと怒鳴る。そしてファングテールの後足に斧を叩きつけた。それと同時に、長く硬い尾が薙ぎ払いを繰り出した。
「ぐあっ…!」
避けきれずに転びそうになったところをマキルが後ろから支えた。
「前も後ろも危険ですね…。」
ファングテールは定期的に襲う対象を変えているかのような動きを見せている。全員を平等に疲れさせたいのだろうか。
そしてマドレットは、瓦礫の上で足をぶらぶらさせて眺めている。
「全部あいつのせいだ…!」
灼猛が何度も斧を叩きつけながら絞り出すように言った。