寄生世界 -PARASITE WORLD-   作:NIGHTMARE⭐︎

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30 待ち受けるもの

マキルたちは静かに本部に向かって帰っていた。太陽はまだほとんど出ていなく、不思議な色合いがあたりを染めている。まだ本来の任務終了時刻ではないため、迎えの輸送車は来ていない。黒い装備を身につけた男性が疑いと感謝が混じったような表情でヨナギを見つめている。それに気づいた嘉が威圧感満載で男性を見つめ返した。男性はすーっと目線を落とした。

「嘉さん…ほんとにどれだけお礼を言えばいいのかわからないよ…。」

ヨナギが口を開いた。だが嘉は呆れたかのような表情をした。

「人命がかかっているのなら良いと何度も言っているだろう…。」

「いや…私が感謝してるのは『任務に向かってくれて』、じゃなくて『仲間を助けてくれて』、の方なんだけど。」

ヨナギの何気ない一言にわずかに表情を変える嘉。

「…そうか。仲間を思うが故の感謝だったか。」

嘉はほんのわずかに微笑んだ。それはまるでヨナギの感謝を受け入れたようだった。

「仲間が危険な時はいつでも頼っていいぞ…」

嘉がいつになく優しい声で言った。ヨナギは嬉しさ全開の表情で大きく頷いた。

 

それからしばらく歩くと、メアノイド対策本部が見える。安心感のある場所、いつもの拠点だ。だが、その入り口の前に1人の見慣れない人影が立っていた。真っ黒な軍隊のような服に身を包み、帽子の鍔に隠れて顔はあまり見えない。性別すらもはっきりしない。

「誰だろ…?」

軍服の人影はヨナギたちに気づくと真っ直ぐ近づいてくる。近づくにつれてその容姿が詳しく見える。

金髪が片方の目を覆い隠している。黄色い目がギラリと光り、警戒とも油断ともつかない「素」な表情をしている。不思議がるかのような純粋に見える目がヨナギを貫くように見つめている。身長はマキルより少し高いくらいだろうか。性別は中性的だがおそらく女性だろう。

「どうも。」

軍服の彼女が静かにヨナギを見下ろしながら告げた。何の感情も読み取れない。

「誰ですか…?」

ヨナギは本能的に感じる恐怖心の中必死に声を出した。他の兵士もほぼ硬直している。ただ1人嘉だけが静かに剣の持ち手に手をかけていた。

「私はカミラ。メアノイド対策本部、スペクトルレイダー団の団長だ。」

カミラは抑揚のない声で淡々と告げた。中性的で美しい顔立ちと裏腹に底知れぬ威圧感を感じる。マキルは静かに息を呑んだ。

スペクトルレイダー。あのマドレットと同じ団の団長。

「うちの団員を半殺しにした、または間接的にさせたのはお前だな?」

カミラが金色に光る目を少し見開いてヨナギに詰め寄る。即座に嘉がヨナギの横にボディガードのように立った。

 

「スペクトルレイダーが何なのかはよく知らぬ。だが彼女に手を出すことは私を敵に回すことと同義だと思え」

嘉がカミラを超える威圧感で忠告した。カミラは無表情で聞いている。

「能書は結構。今は手を下すつもりはないのでな。」

カミラは体勢を下げてヨナギに目線を合わせた。その目が心を透かすかのようにじっと力強く見つめてくる。

 

「これ以上我々の邪魔をすると後悔することになるだろうからせいぜい気をつけることだ」

 

カミラは真っ直ぐに立ち直して背を向けた。その間も嘉は刀の持ち手を握ったまま深刻な表情でその後ろ姿を睨んでいる。カミラは本部とは反対の街の方へと消えていった。

彼女が良い存在であるはずがないと、誰もが直感で理解していた。

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