寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
2台のバイクが音もなく岩場の影に着水した。幸い岩場に立っている見張りのような男は気づいていないらしい。ゴツゴツと山のようにそびえた岩の影になっていたのだろう。アーミアがすぐにバイクのハンドルの近くのボタンを押した。そして無言でサキサへ降りるようにジェスチャーする。サキサは岩場に飛び乗り、アーミアもその後に続くように降りた。バイクが中の空気を全て排出し、水中へと沈んだ。
「よし…バイクは隠した。これで私たちはただの海に遊びに来た人たち。」
アーミアが小声で囁いた。この後の計画は、岩場に立っている男に話しかけて意図的に怪しませ、取り調べ目的で例の本部へ連れて行ってもらうのだ。
「…あまり不自然さを出しすぎるとメアノイド対策本部の者とバレるリスクが高くなりますね…もし完全にバレたら…適度にやらないとだめですよ〜…?」
「わかってるってば〜。信じてついてきてよ。」
アーミアが軽いノリで言うと、男のいる岩場の反対方面へ歩いていく。ゴツゴツとした岩の孤島の上を歩く4人。男の背中が徐々に近づいてくる。
「誰だ!?そこで何をしている!」
男がアーミア達4人に気づき、手に持っていた銃を構えて振り向いた。
「わっ!?銃!??」
アーミアが腰を抜かす。サキサにはこれが演技なのか本心なのかすらわからなかった。
「質問に答えろ。ここで何をしているんだ。」
男が威圧するように繰り返した。サキサは無言でアーミアの動きを待つ。この男、普段の私たちみたいな重装備ね…。
アーミアはまっすぐ立ち直して焦りの表情で男の銃を見つめる。
「泳いでただけですよ…!砂浜からこの岩山まで競走してたんです…!」
アーミアの美形な顔が焦りと恐怖で引き攣っている。男は銃を少しだけ下ろす。
「…その服装でか?」
「えっ?これはあの…岩山に着いたから着ただけで…。」
男が疑うように目を細める。アーミアは引き攣った笑顔で不自然さを誤魔化している…ような演技をしてる。ナルカラもサキサも呆気に取られてそれを見ていた。この人、すごい。
アーミアはその間にそろりと右のポケットに手を入れていた。それに気づいた男が銃を構えて叫ぶ。
「ポケットから手を出せ!さっきから見てるようじゃどうも怪しいな…。」
コルオンが真剣な表情でアーミアを守るように前に出る。アーミアはあたふたと落ち着きのない焦り方をしている。
男はゆっくりと銃をあげると言った。
「詳しい取調べが必要そうだな。来い!」
男が銃を構えたまま自身についてくるよう指示した。アーミアはくるっと振り返って岩場の端に歩いていく男の方を向いた。一瞬だけ男から顔が見えない角度になった時、彼女の顔は先ほどまでの焦りが嘘のように余裕そうなニヤリ笑いを浮かべていた。
「と…取調べですか…!?ほんとに何もしてないのに〜!」
アーミアは再び焦りと困惑の中間の表情で少し走りづらそうに男の方へ走っていく。
(あれが潜入捜査官…心理戦のレベルが違う。相手の感情を完璧に操作しているわ…。)
「お前達も来い!早く!」
男がサキサ達に向かって怒鳴った。ナルカラがビクッとして慌てて走っていった…あれは多分演技じゃなくて本当に驚いてただけね…。サキサもその後に続いて男に近づいた。
本部への潜入はもう目の前だ。