寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
男が銃を構えたまま岩場の端で立ち止まった。サキサたちは、アーミアの策略でスペクトルレイダーの本部へ取り調べのために入ることになった。言い方を変えれば潜入が半分成功したようなものだ。
「それでは今から本部の中で取り調べだ。もしお前らが意図的にここにきていたと判明したら…拷問じゃ済まないからな?」
男が脅すようにアーミアに銃を突きつけた。
「やっ…!そんな意図的になんてしてないですよぉ!」
アーミアが泣きそうな表情で叫んだ。男は不機嫌な表情でアーミアを見つめる。サキサは表情には出さないようにしているが内心はとても不安だった。もし潜入に来たことがバレて、アーミアさんが殺されてしまったら…いや、余計なことは考えないべきね。サキサは胸が苦しくなるような想像を心から追い出し、緊張みたいなガッチガチな表情で突っ立っていた。
そしてその様子をナルカラが不安げに見つめていた。
(サキサさん…完璧な子に見えたのに演技力が…普通だったら仲間が銃向けられてたらあんな真顔で硬直しないですよ〜…)
ナルカラがアーミアに抱きつくようにして不安な気持ちを演出し始めた。それでもサキサは…嫌な妄想を消そうと必死になって硬直していた。コルオンは男を反抗的な目つきで静かに睨んでいた。
しばらくその場で嫌な沈黙が流れた後、小型の黒い水上バイクのようなものが岩場に接近してきた。滑るように海の上を猛スピードで進んでくる。そこには戦闘服の運転手と、黒い戦闘対応スーツに身を包んだ青年が腰掛けていた。
「マヅキ様、こいつらが先ほど連絡した不審な4人組でございます。」
銃を下ろした男が先ほどまでとは別人のように頭を下げた。マヅキと呼ばれたスーツの青年は仮面のような完全な無表情で指を立てた。少し長めな暗い髪の奥で金色の目がぼうっと不気味に光っている。
「めんどいことさせんな。」
マヅキがほとんど口を動かさずに静かに言った。たった一言で空気の重みが変わるような威圧感が溢れた。
「…申し訳ござ…」
「さっさと終わらせる。邪魔お前」
マヅキが頭を下げる男をポンと片手で押しのけてアーミアの前まで歩いていった。
「あ…どうも…?」
「さっさと乗れ。お前らみたいなのに割く時間とかほんとにもったいなから」
マヅキはくるりと背を向けて水上バイクへ戻る。まるで機械のようだ。アーミアがその後を追い、さらにその後ろをサキサ達がついていく。
水上バイクの後ろに増築されたかのように外向きについたソファのような椅子が明らかに異常な輪郭を形作っている。サキサとアーミアは右側、ナルカラとコルオンは左側に座った。4人が座り終えるとマヅキが機械のような感情のない顔で右側の椅子のサキサの横に腰掛けた。その目が横目で自分を見ているのをサキサは痛いほど感じた。反対隣に座ったアーミアが安心させるようにサキサの肩をぽんぽんと優しく叩いた。自分に寄り添うアーミアの体温を感じながらサキサは、この人の「優しいお姉さん」はただの演技ではないのかもしれないと密かに感じた。
「さっさと出して。」
マヅキが抑揚のない声で命じると、運転手が少し前までアーミアが自分のバイクでやっていたようにレバーを引いてエンジンを起動させた。
「仮にお前らがスパイだとかだったら死ぬまで痛めつけるから。それが俺の専門だし。」
マヅキがそう言うと共に水上バイクが動き出した。潮風を切り開きながら、水上バイクは海中の基地の真上に向かって海上を滑っていった…。