寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
スペクトルレイダー、事実上の独裁兵団。
かなりの大型団体であり、組織内もさらに幾つもの小団に分かれている。そのうちの一つはメアノイド対策本部にも所属しており、危険な目的を合法的に遂行しようとしている。
…そんな団体の本部内に、サキサたちはいた。アーミアの策略のおかげで、取り調べという名目で潜入を成功させたのだ。真っ白な壁と床の廊下が遠くまで続いている。生活感や安心感などは皆無で不安すら覚えるほどの白くツヤのある空間だ。
「さっさと行こうか。時間無駄」
スペクトルレイダーのメンバーのマヅキが4人の後ろに立った。必然的に相手から表情が見えなくなったので、アーミアがニコニコし出した。潜入が成功したことによる喜びか、得意げな表情なのだろうがサキサは共感できなかった。この人、緊張感ってものを知らないの…?
マヅキが4人を追い立てるように後ろから迫る。おそらく前を歩くと逃げられるリスクがあるから後ろなのだろう。
「そこ入れ」
マヅキが右側の真っ白な鋼の扉を指差す。アーミアが潜入捜査官モードになって、不安を隠しきれないかのような表情でその扉へ近づく。扉はその体温を検知して自動で上に引き上げられるように開いた。
部屋の中は打って変わって電気がついていなく薄暗かった。ほとんど何も見えない。ただ、部屋の中央に外側に向けて円形に設置された五つの椅子だけがほんのりと浮かび上がっていた。
「な…ここで何をすれば…?」
アーミアが不安げに聞いた。
「座るに決まってる」
マヅキが完全な無表情で言い放ち、扉を閉めた。
「早くして」
マヅキの声が部屋に響き、ナルカラが慌てて椅子に座った。それに続いて全員が椅子の腰掛ける。背中合わせに設置されているせいで誰の顔も見えない。マヅキがふーっと息を吐くと、扉のすぐ近くにあった折りたたみ式の椅子をすーっと4人の座る椅子の近くまで移動させた。
「軽く解説する。めんどくさいし時間がもったいないけどしないといけない決まりだし」
マヅキが折りたたみ椅子に腰掛けながらため息混じりに言った。
「お前らが今座ったその椅子、個別でそれぞれ電流流せる。すぐ誰でも殺せる。なんか重大な目的でもあるなら今すぐは殺せないけど」
アーミアが息を呑んだ。サキサもだんだんとその違和感に気づいていた…これは取り調べというより処刑か拷問に近いのでは…?
「これで終わりだったら幸いだったね」
マヅキが真顔で壁に設置されているレバーを下ろすと、機械が動く重低音が響いた。サキサは首を捻って何が起きているのかを見る。他の仲間の不安げな表情と共に目に入ったのは、円形に並んだ椅子の中央の空間に何かがせり上がってくる様子だった。それはすぐに円柱形のガラスケースのようなものだとわかった。
「これはどういう…」
サキサが言葉を切った。ガラスケースの内部に蠢く姿を見つけたからだ。黒い肉片のような体から突き出た足。自己進化体メアノイド、MutantOnnerだ。
「それメアノイド。ガラスがちょっとずつ開いてくから食われる前にほんとのこと話しな。さっきも言ったように重大な目的があるならもっと詳しく聞くために止めるから」
マヅキが素っ気なく言った。サキサは咄嗟にアーミアを見るが、彼女はみたことのないほど深刻な表情で硬直していた。
「私たち本当に泳いでただけですよ!!なのになんでこんな命の危機みたいなことにならなきゃいけないの!?」
「どうでもいいから」
メアノイドがカサリと音を立てて足を動かしている。サキサは、自分の目の前にいるこのマヅキという男について少しだけ理解した。この男は、私たちがスパイでも泳ぎに来ただけでも関係なく殺すつもりの、正真正銘の死神なのだ。自分の時間を奪ったというだけで、私たちを殺そうとしているのだ。