寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
ヨナギは知らないうちに新種メアノイドの捜索の作戦長に任命されていた。
「イ…いつのまに!?」
取り乱すヨナギと、いつも通り真顔で見つめるサキサ。
「支配長が推薦したようね」
「アイツかよ…!」
ヨナギは銃をギリギリと握りしめる。
「…ガンバッテ」
サキサがぼーっとした小声でそう言ったのが聞こえた。
支配長は団体の兵士を自由に動かす権利を持っている。そのためヨナギに拒否権はない。
「…仕方ないなぁ!行くぞー!」
…諦めて作戦長を全うすることにした。
対侵食加工が施された輸送車で例の死地へと向かう一向。目標の死地はこれまで危険度が5で注目されていなかったガルミネ死地だった。しかし昨夜の探索で未知のメアノイドが撮影されたため、一時的に危険度は最大の「10」とされた。新種はどうやら下級メアノイドのOnnerに似ているらしく、黒い肉体から突き出た細い脚が複数確認できる。
「確かにOnnerに似ている。」
サキサが写真を見ながら呟く。その目は相変わらず落ち着いているが少しだけ警戒の色が強いように感じる。
「もうすぐガルミネ死地へ到着します。戦闘準備を整えてください。」
輸送車の運転手が言う。死地は予想より近いらしい。もしくは侵食が広がっているか。
輸送車が止まり、全員が降車した。誰も一言も発さない嫌な緊張感が張り詰めている。もしかしてこれ私がなんか言わないとダメな感じ?
「そ…それじゃ、本部に到着報告したから捜索を開始しよう」
自身なさげに言うヨナギだったが、兵士たちは無言で頷いた。そして全員が武器を構え、侵食された地へ入っていった。
死地の中は相変わらず黒く変色している。それはどの死地にも共通なのだろう。だがこの死地は少し変わった地形をしていた。街全体が崩落しているせいか12°ほど傾いているのだ。地盤が侵食でスカスカになったことで崩れたのだろう。その傾きのせいで、この死地では平衡感覚が狂いやすい。
ヨナギはサキサと共に傾いて侵食した街の奥深くへ進んでいく。サキサの電磁刀がバリバリと青い火花を放っていて少し怖い。
「すごい嫌な雰囲気がするね…」
「そうね。でもメアノイドが全然いないわ」
街の異様さと打って変わって、メアノイドはほとんどいなかった。最初期形態であり小さく戦闘能力を持たない「One bug」が何匹かいるだけで、有害なものは全く目に入ってこない。
「…逆に怖い」
ヨナギは銃を構えた手をより入念に構えて進んでいく。サキサは相変わらずキョロキョロと目線であちこちを観察している。
「!」
サキサが何かを感知してヨナギを突き飛ばす。
ザシュン! 何かが頭を掠め、ヨナギの紺色の髪がわずかにハラリと舞う。
「な…!?」
サキサがヨナギの横で電磁刀を構えている。その視線の先には、一体のメアノイドがいた。すぐに、写真に写っていた個体だと分かった。
Onnerと形状はよく似通っているが、サイズは二回りも大きく1メートルは軽く超えている。黒い触手か触覚のようなものが背面に生えている。何より恐ろしいのはその巨大な大顎だった。アンバランスなまでに発達した横開きの顎が黒光りして鋭さを際立たせていた。
「自己進化体ね」
サキサが囁く。
自己進化体。寄生する対象が見当たらなかったために、自身の体で戦闘可能に進化した存在。
自己進化体は棘の生えた脚をかしゃかしゃと動かし、ヨナギに一直線に飛びかかる。ヨナギは咄嗟に銃を放つが、焦りによって集中が途切れてなかなか当たらない。その顎がヨナギに食いつく直前…
ガキン!
サキサが自己進化体の顎に電磁刀をねじ込んでいた。そのタイミングで、ヨナギは自己進化体の体に銃を押し付けて引き金を引いた。パァン!
自己進化体の肉体が貫かれ、グシャリと崩れ落ちた。ドス黒い体液が大量に溢れ出る。
サキサは電磁刀を抜き取り、自己進化体の残骸を見つめる。
「…この死地…予想より手強そうね」
2人はさらに奥へと進んでいく。
奥には本当の悪夢が待ち受けているとも知らずに。