寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
42 力関係
グレイデル死地にて、兵士が写真に収めた新たな自己進化体。それすなわち、この死地内は侵食の活性が高いということだ。活性が高い死地となれば、突然広がって過去のゼロライン死地のような大災害を起こす可能性もある。
翌朝、探索チーム募集の文字が大きくエントランスのスクリーンに映し出された。
(絶対私は行かないから…最近連戦だしサキサは一緒に来れないし…)
ヨナギは苦々しい表情でスクリーンを見ながらソファに腰掛けた。サキサは前の任務で重傷を負っているためいまだ病室で横になっている。少しくらい長期休みを取ってもいいだろう。
「ヨナギさああん!」
ヨナギが声の方に顔を向けると、ナルカラがファイヤスタッフを持って走ってきた。いかにも戦闘準備万端という感じだ…。
「…ナルカラちゃん?」
「あの任務、よかったら一緒に行きませんか…?」
そう言われると思った。しかしナルカラちゃんに悪気はないだろうし…。
「いいよ!行こう。」
…言っちゃった。
ヨナギとナルカラは探索チームのメンバーが集合することになっている小さな部屋へ向かった。エントランスの階段の側面に設置された木製の扉。なんだかサウナみたい。
ヨナギがドアを開けると、中にはまだ1人しかいなかった。黒紫色の髪色に、手にはショットガン。暇そうに足を組んで壁に突き出た簡易的な椅子に腰掛けている。ナルカラがうぐっと息を呑むのが聞こえた。
「ギャクラ。アンタも探索に行くの?」
「あ…?ヨナギだっけキミ。」
ギャクラがだるそうに言った。彼はかつてのディッパー死地での任務で行動を共にした隊員だ。実力はあるらしいが…素行が終わっている。そんなやつが自分の名前を覚えていたことにヨナギは少し驚いた。
「そ、そうだけど…」
「やっぱりぃ?花火の子でしょ」
ギャクラがショットガンの照準をナルカラに合わせて手入れしながら言った。ナルカラがぷるぷる震えながらヨナギの後ろに隠れた。ヨナギはムッとした顔でギャクラを睨んだ。
「あんまりナルカラちゃんをいじめたらまたビンタだからね」
「あっははは。なんだよ、ただの戯れだろ〜?」
ギャクラが立ち上がってヨナギに歩み寄った。身長はヨナギより10センチは高い。ギャクラがヨナギをまっすぐに見下している。
「…威圧しようってこと?そんなの意味ないからね」
ヨナギは一歩も引かない。
「威圧ぅ?そんなつもりはないけどな〜。」
ギャクラがヨナギの周りを歩き回りながら言った。ギャクラは体を捩ると、ナルカラの頬をツンと指で触った。
ヨナギが右手を構えて力任せにギャクラに振り下ろした。
ところがギャクラはそれを肘で容易く押さえ込んだ。
「気をつけなよ?僕はキミより強いんだから〜。」
ヨナギは静かに手を下ろした。間違いをただそうとしているだけなのに力関係で手出しができないとは妙にイラつく。
そこから2時間も待つと、少しずつ部屋の兵士も増えていった。ヨナギとナルカラは部屋の壁に埋め込まれたテレビで話題のアニメを見ている。ギャクラがそれを見てうるさそうに座っていた。かなり暇そうだ。
それからしばらくすると、今回の作戦長が部屋に入ってきた。その瞬間部屋の空気が大きく変化した。
作戦長は黒髪を靡かせ、和服がひらりと舞った。ヨナギどころか、この街に住んでいる者ならば誰もが知っている存在…。
「…嘉さん!?」
黒狩り・月影嘉 探索チームリーダー。