寄生世界 -PARASITE WORLD-   作:NIGHTMARE⭐︎

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43 見て見ぬ素ぶり

現黒狩り隊長・月影嘉。今回の作戦長は彼女だった。そしてヨナギは彼女とそこそこ関わりがあった。

彼女は2度もヨナギたちの命を救ってくれた。まさに救世主だ。

「ヨナギ。また会ったな」

嘉が少し微笑みながら横目でヨナギに言った。ギャクラがはぁ?みたいな顔で見ている。

「月影サンってこの子と知り合いなんすか?」

「文句あるか」

嘉が一言でギャクラを抑え込んだ。

「嘉さんが作戦長なら安全そのものだね!」

「む…」

嘉が急に黙る。ヨナギは彼女があまり特別扱いは好まない人だということは知っている。でも強いのは事実だからしょうがないじゃん…。

 

「準備を整えろ…ゆくぞ」

嘉が刀の鞘に手を置いて部屋を出た。ヨナギたちも後を追った。ナルカラが歩きながら嘉の後ろ姿に見惚れている。黒光りする竜の尾、華奢だが流麗な肉体、美しく整った顔立ち。そして天性の剣技。まさに彼女は完全無欠に見える。

「…なんだ?」

嘉がナルカラの視線に気づいて言った。ナルカラは無言でしぼむように下がってヨナギの横に落ち着いた。

 

全員が駐車場に停車している輸送車に辿り着くと、嘉は無言で輸送車の屋根の上に飛び乗った。

「えぇ…」

「む?」

困惑するヨナギをよそに、どうかしたか?の顔で見おろす嘉。そこが定位置なの…?

他の全員は大人しく輸送車のコンテナ部分の中に入った。相変わらずソファが設置されており、そこそこ快適だ。前はなかった棚が隅の方に置いてあり、中にはテクニカルボム…手榴弾のようなものがたくさん積まれていた。

コンテナの天井部分からガンッと音が響いた。嘉さんが屋根の上で何かしている音だろう。

 

輸送車が発車した。ナルカラはギャクラを避けるようにピッタリとヨナギにへばりついている。ヨナギはそのおかげで少しも体勢を変えることができず、両足がめちゃめちゃに痺れていた。

「ナ…ナルカラチャン…」

ギャクラがその様子を面白そうに見ている。

 

コンテナにはめ込まれた窓から、外の街の様子がよく見える。街の住人たち…メアノイド対策本部内では非戦闘者と呼ばれることが多い者たちは、メアノイドが世界に現れる前と同じように買い物をしたり遊んだりして休日の午後を楽しんでいる。街の様子は世界が寄生される前と何も変わらない。ヨナギはそんな様子を見ているとどうも切なくなってくる。何事もないかのように住人たちは過ごしているが、そうしている間も多くの命が失われている。それを見て見ぬ振りしているように思えて、ヨナギは街の空気があまり好きではなかった。

しばらく輸送車に揺られていると、人通りはどんどん減っていく。死地に近づいてきている証拠だ。非戦闘者の死地への立ち入りは厳禁だ。それは本人の安全のためでもあり、メアノイド化して脅威とならないためでもある。

 

やがて輸送車が完全に停車した。少し先には黒ずんだ地面が見える。グレイデル死地、商店街が飲み込まれた死地。

嘉が輸送車の上に立って死地内を見ていた。

「…これは厄介だな」

黒狩りは密かにつぶやいた。

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