寄生世界 -PARASITE WORLD- 作:NIGHTMARE⭐︎
9 廃墟に蠢く闇
夜。出発の10分前、ヨナギは目を覚ました。いつのまにか寝てしまっていたらしい。ソファの誘惑は恐ろしい。
すぐに準備を整えてロビーへ向かうと、すでに大勢の兵士が集まっていた。デジャヴ…。
「ぎっりぎりな到着だねぇ」
ニヤリと笑った黒紫の髪の青年がヨナギに言う。ヨナギは少し腹が立ったが落ち度があるのは自分だと思い出し何も言い返さなかった。ヨナギは顔を少し伏せたまま周りを見渡してみた。見覚えのない兵士ばかりで、当然ながらサキサの姿はない。前回の任務で怪我を負ってしまったのでしばらく休憩中だ。サキサ自身は気にしていないものの、ヨナギはやはりその怪我の責任は自分にあると思ったままだった。
「それでは…全員揃いましたので向かいましょうか。」
真面目そうな男性が落ち着いた声で告げる。おそらく今回の作戦長だろう。ヨナギは他の兵士とともにロビーを出て長い廊下を通り、冷たい夜の屋外へ踏み出した。
「今回は夜の任務ですので、こちらを配給します。」
作戦長が全員に懐中電灯を手渡した。先ほどの青年が1人の少女の顔に点灯した懐中電灯を向けて嫌がらせしている。
(サイッテー…)
ヨナギは胸糞悪くなるような思いで大きなトラックを改造して作られた輸送車の荷台部分へ乗り込んだ。
横長なソファが窓に沿うように左右に二つ置かれたトラックの荷台。案外座り心地もいい。
ヨナギは少しチラリと横に座る見知らぬ女性兵士を見た。赤毛がわずかに混ざる黒の髪が肩あたりの長さでがさらりと流れ、戦闘に向かうとは到底思えない黒く美しいドレスを纏っている。一目で「只者ではない」と理解できる出立だ。
ヨナギは少しでも無能作戦長のイメージを消そうと思い、フレンドリーに話しかけた。
「ど…どうも…!任務頑張りましょう…!」
女性は赤く透明感すらある宝石のような目でヨナギを見据えた。
「ええ、ありがとうございます。」
「私ヨナギ。あなたは?」
「マキルです。気合いを入れて頑張りましょう。」
同時に輸送車が停車した。目的地に着いたらしい。マキルが武器も持たずにふわりと降車する。ヨナギもそれに続いた。
外の光景はあまりに不気味だった。荒廃した遊園地に死地が侵食し、コースターの線路は崩壊寸前のようにギリギリと音を立てている。遠くには観覧車がわずかに見える。暗闇の中、ところどころにどういうわけかまだついているライトがあり、その不気味な輪郭を浮かび上がらせている。
「今回の作戦では、2チームに分かれて探索をする。何せ作戦目標が新種の自己進化体、MutantOnnerの捜索だ。戦闘は避けられないため安全の確保は重要。」
作戦長が手で兵士たちを区切るようなジェスチャーをする。
「そこから右の者は西から、そうでない者は逆からだ。」
(私は東からってことか…)
ヨナギは銃を構え、戦闘準備を整えた。東組には黒赤髪の女性…マキルやあの紫髪の青年、気弱そうな少女などがいた。
「それじゃ行きましょうか。東の門から入りましょう。」
2チームはそれぞれの入り口へと向かっていった。