崩壊と混沌の黙示録   作:天崎

2 / 9
紅崎 黒白の悪夢

 

それは最悪の目覚めだった。

数百年振りに目が覚めたと思ったら辺り一体は火に包まれ、廃墟同然な光景だった。

封印が解かれたのだろう。

けれども、それは“俺”には関係無かった。

どうせ身勝手な人間が施した封印だ。

知った事では無い。

問題なのは誰が解いたかだ。

もしも、“俺”を利用するというのなら殺すつもりだった。

が、目的を確認する暇も無かった。

封印を解いたのは男女という事を把握した時点で男の方が襲ってきたからだ。

当然応戦した。

当たり前だ。

誰だって殺されるのは嫌だ。

“元々の神格”をいじりにいじって吸血鬼に固定した“俺”でも相手は出来ていた。

勝つか負けるかは分からない。

しかし、それどころでは無くなった。

“俺”は“それ”だけは見逃せ無いのだ。

敵の事では無い。

そんな物はどうでもよくなった。

封印解除の余波か、戦闘の余波かは分からない。

でも、それもどうでもいい。

大事なのは“あれ”を救えないなら“俺”は___

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____最悪の目覚めだった。

よりによって一番見たくない夢を見ていた。

額に手を当てるとジャラリと鎖が動くような音がした。

当然だ。

だって、俺の手足には枷がはめられてるのだから。

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

「いや、姉御…………俺は高校生って年齢じゃ無いんですが」

 

「ハァ?」

 

当然の疑問を言ったら睨まれた。

こういう時は大抵パターンが決まっている。

自分が楽しむor自分のストレス発散の為にセッティングしたのに口を挟むな、というパターンだ。

まぁそれ自体は構わないのだがさすがに高校というのは抵抗ある。

てっきり“表”の身分証を作った上で“表”の仕事をやると思っていたので想定外だった。

 

「別に外見年齢も精神年齢もそのくらいでしょうが。どうせ不老なんだからそこらへんは楽しめるのを選んだ方がいいでしょ」

 

「いや、ですけどね…………」

 

「文句言おうが手続きは此方で済ませて置くから無駄よ」

 

これはもう無理なパターンだな。

いや、抵抗してもいいが返り討ちにされる。

こういう時は素直に従うのが吉だ。

 

「分かりましたよ。制服とかもそちらで用意してくれるんですか?」

 

「えぇ、そこらへんは任せとけばいいわ。………………あぁ忘れる所だった」

 

何かを思い出した様に姉御が指を鳴らす。

直後に首輪から鎖が伸びて俺の体に巻き付く。

この鎖は暴走した“封印指定”を抑え込む為の機能である。

勿論魔封じを込められてる。

ただでさえ力を抑えられてるのに更に力が抜ける。

 

「えーと、姉御…………何故今これを?」

 

「下僕のあんたにプレゼントがあるからよ。喜びなさい」

 

そう言い、にこやかに笑う姉御の手には枷が四つ。

明らかに手足に付ける奴である。

枷からは中途半端に鎖が伸びている。

おそらく首輪と同様の仕掛けがあるのだろう。

 

「何で枷を増やされるんですかね?」

 

「そりゃあんたがやり過ぎだからよ。謹慎処分兼重封印ってわけ」

 

納得と同時にゾッとする。

首輪だけでも結構な力を封じられてるのにこれ以上封を付けられたら何処まで力が落ちるか分かった者じゃない。

 

「しかし、姉御。これって着替えとかの邪魔になりませんか?」

 

「そこらへんは大丈夫。半実体って言う物でね。特殊な方法じゃないと触れないから服もすり抜けるわよ。“管理人”と“鍵”を持たないと触れられない。とはいえ、手とか斬り落とされても面倒だからそういう刃物とかは弾く設計にはしてあるけど」

 

「そうですか」

 

確認作業をする中でも枷は付けられていく。

さすがに抵抗はしない。

というか出来ない。

全て付け終わると首輪の鎖が消えたので立ち上がる。

 

「さっきの言い方だと“管理人”と“鍵”の所有者は別に聞こえましたが」

 

「そうよ。“管理人”は当然私だけど、“鍵”は……あんたの後ろにいる子が持ってるわよ」

 

「ッ!?」

 

思わず振り向く。

本当にいた。

気配すら感じ無かった。

“血”の臭いすら無かった。

そこらへんは常に気を配ってるので気付かない方がおかしいのに。

 

「墓守 楓(はかもり かえで)。黒白さんの枷の“鍵”の管理と学園での監視役を担当させてもらいます」

 

白髪長髪ストレートで赤目で眼鏡の少女が微笑みながら頭を下げてくるのだった。

何処か似た様な臭いを感じたが身に覚えは無かった。

 

 

◇◇◆◇◇◇

 

 

というわけで手枷足枷が現在の俺にははめられてるのだった。

どうもどうやら首輪に比べて封は弱いというか方向性が違うらしい。

身体能力などはそのままなのだが、吸血鬼としての力が一部を除き根こそぎ封印されて使用不可な状態になっていた。

姉御の言った様に完全に実体では無いようで邪魔には感じ無かった。

 

「ったく、面倒な事この上ねぇな」

 

「何が面倒なのですか?」

 

「ッ!?」

 

思わずベッドから飛び飛び降りて臨戦体勢を取ってしまった。

気配を感じさせずに近付かれるのは職業柄警戒してしまう。

 

「あら?驚かせてしまいました?」

 

楓は不思議そうに首を傾げた。

とはいえ、俺はこの子の事を何にも知らないわけだが。

何処か幼さを感じさせる。

まぁ重要なのは“枷の鍵”を持ってる事だ。

それを奪えればだいぶ楽になる。

その為にも普段は使いたくない故に使わない力を使うしか無い。

それは“魅了の魔眼”だ。

相手の精神を壊す可能性があるがこの際仕方無い。

俺は楓に近付くとその目を見詰めながら魔眼を発動させる。

 

「なあ、ちょっと聞きたいんだが………………」

 

「あ、言っておきますが“魅了の魔眼”は私には効きませんよ?」

 

「なァ!?」

 

マジか!?

つーか、何でだよ!?

俺の魔眼が効かないのは神格が上の相手くらいだぞ!?

 

「私は半吸血鬼、いわゆるハーフヴァンパイアなので吸血鬼の力は一部無効化出来るんですよ」

 

丁寧に説明してくる。

まぁ納得出来ないがそうというならそうなのだろう。

手っ取り早い安易な方法を選んだのが間違いだったのだろう。

とりあえずは切り換えていくべきだ。

聞きたい事は幾つかある。

 

「そもそもお前はどうやって入ってきた?」

 

「監視役という事で合鍵を青葉さんから」

 

「……………」

 

下僕のプライバシーなんて知った事では無いんだろう。

俺は姉御の所有物なのでそこらへんは構わないが。

それより気になるのが姉御との関係何だよな。

 

「青葉さんとの関係が気になりますか?」

 

「まぁ一応な」

 

どうやら表情でも読まれたらしい。

とはいえ、都合はいいのでそのまま聞く。

 

「私はとある事件で天涯孤独の身になっていましてね。青葉さんは偶然その事件に関わっていて拾われたんですよ」

 

「拾われた?」

 

「そのままの意味ですよ。もしかしたら捨て犬を拾う感覚だったのかもしれません。そのまま墓守家の養子という事にされて青葉さんには妹の様な扱いを受けてました」

 

姉御だからありえそうな話である。

実際俺も拾われたに近い。

ん?待てよ。

 

「姉御は確か本家と喧嘩してて勘当されてるはずだぞ?」

 

「はい。なので、私も本家の人には会った事はありません。どういう手を使って養子云々の手続きをしたかは分かりませんが」

 

…………何故だか嫌な予感がしたがおそらく気のせいだろう。

とはいえ、関係性は大体分かった。

そして、“魅了”が効かなくて本当に良かったと思う。

姉御の妹にそんな事をやったと分かれば殺されかねない。

そういや、肝心な事を聞き忘れてた。

 

「今更何だが、お前は何しに来たんだ?」

 

「あぁ………忘れる所でした。青葉さんから頼まれ事を受けてまして、この封筒を先輩に渡す様にと」

 

「先輩?」

 

「はい。学園の方でも、会社の方でも黒白さんは“先輩”となりますので」

 

大体分かった。

それはともかく封筒の中身を確認する。

内容は編入の手続きが終わった事、編入は一週間後、制服の手続きなどが書かれていた。

たった一日でここまで話が進んでいるという事はおそらく以前より進めていた話なのだろう。

姉御らしい事だ。

こりゃ今更どう足掻こうが無駄だな。

 

「それでは、わたしはこれで」

 

「ん?もう帰るのか?茶くらい出すぞ?」

 

「私は他にも用事があるので」

 

「そうか。わざわざ封筒を届けてくれてありがとうな」

 

「いえいえ、このくらいは幾らでもやりますよ。それではまた今度」

 

そう言うと楓は部屋を出ていくのだった。

玄関まで見送ろうかと思ったがタイミングは逃した。

何か引っ掛かりを感じたのだが、それが何かはピンと来ないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そんなこんなで一週間後。

俺は制服に身を包み、編入先の太刀川学園に来ていた。

制服は黒のブレザーだった。

ネクタイは青い。

さすがに初日なので着崩したりはしない。

とはいえ、首輪と手枷足枷は目立つが。

拘束されてるのとは別の意味で。

 

「では、教室まで案内しますね」

 

と、言って俺の前を歩いているのは担任教師だ。

東山 千鶴(ひがしやま ちづる)というらしい。

周りの様子を人気の女教師的な空気がある。

担任も同じく首輪をしている。

“封印指定”の証である首輪だが、首輪持ちが何故教師をしているかには疑問を持つが種族が分からない分には何とも言いがたい。

教室の前に着くと呼ぶまで廊下で待ってる様に言われる。

 

「それでは、転入生入って来てください」

 

「はい」

 

教室の引き戸を開けて中に入る。

同時に生徒達が騒ぎ始める。

それもそうだろう。

“封印指定”を見た時の普通の反応がそれである。

俺はそれを無視しつつ、黒板の前に立つ。

 

 

「紅崎 黒白だ。これからよろしくな」

 

 

最初はまぁ無難に始めていくつもりではあった。

決まった物は仕方無い。

あとは面倒を起こさない程度にやっていくだけである。





軽く説明すると
“封印指定”は“ある脅威”を持つ存在に対する物です。
“封印指定”が安全区で生活するには管理下に置かれ、力を封じられる事になります。
首輪はその分かりやすい目印です。

この世界そのもの聖気と障気のバランスがかなり不安定であり、それらの濃度が高いと魔族などは影響を受け、人類は体に悪影響が及ぶ可能性があります。
で、それらのバランスが安定してるのが安全区というわけです。
危険区に関してはランク分けされてますがそれらは本編で出てから説明します。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。