崩壊と混沌の黙示録   作:天崎

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紅崎 黒白の困惑

さて、名乗ったはいい。

ヒソヒソ話してるのも転校生相手には当然だろう。

が、問題なのは手枷足枷だ。

 

『あの枷、何?首輪は先生のと同じだろうけど』

『そんな事も知らないのかい?』

『ありゃ首輪と同じで魔封じの枷だ』

『けど、滅多な事じゃなけりゃ付けてる奴いないけどね』

 

やはり手枷足枷は目立っている。

当たり前だ。

こんな物は“封印指定”の重罪人くらいしか付けてない。

というか、五つも枷を付けて普通に行動してる時点でまともじゃない。

そこらへんは俺故にだが。

まぁ悪目立ちしてるのは確実だ。

今日から俺の所属するクラス、2-Cの連中の話題としてはちょうどいいのだろう。

 

「はいはい、静かに。質問があるなら本人に聞きなさい」

 

「はい!!じゃあ、紅崎君の種族は何ですか?」

 

視線が俺に集まる。

そりゃ気になるよな。

つーか、さすが安全区だな。

“裏”じゃ命取りだから隠しておくのをホイホイ聞いてくるぜ。

俺としては構わないが。

 

「吸血鬼だ。神格はいじってあるけどな」

 

嘘は言ってない。

ちょっと誤解が生まれやすくなっただけだ。

神格をいじった末に吸血鬼に落ち着いて、吸血鬼としての弱点を削ったのが俺だからな。

相変わらずザワザワしてるが時間的に解放されるだろう。

 

「じゃあ、皆仲良くするように。紅崎君の席は右から三列目の一番後ろだから」

 

「分かりました」

 

適当にそれっぽく返事してから席に向かう。

途中で周囲の臭いを嗅いでおく。

妙な臭いは………とりあえずはしなかった。

本当に一般人の集まりなのか、巧妙に隠してるのが混ざってるのかは知らないが。

そして、朝のホームルームは終わり一時間目の授業が始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

油断はしてなかったと言えば嘘になる。

何故ならこんな面倒な事になるとは思っていなかったからだ。

授業の間もヒソヒソ話が続行され、ノートの切れ端が回ってるのを見て察するべきだった。

まさか、本番は休み時間だとは………………

 

「吸血鬼らしいけど、何処までいじったの?」

「“封印指定”が何でこんな所に?」

「おいおい、“封印指定”なら副会長とか風紀委員長とかいるんだし聞くような事でも無いだろ?」

「手枷足枷は何をやらかして付けられたの?」

「何処から転校してきたの?」

「どうして此処に転校してきたん?」

「そもそも何歳?私達と同じ?」

 

聞いた話によると若い奴らは退屈を持て余して新しい何かを求めているらしい。

そして、此方は話題の塊。

こうなるのは必然だったのだろう。

とりあえず間違いは正してからさっさと質問攻めから抜け出す。

とはいえ、休み時間は短い。

抜け出すと言っても便所に逃げるくらいである。

 

「で、何でお前はそこにいるわけ?」

 

「私は先輩の監視役ですから」

 

そう答えたのは楓であった。

白い髪を揺らし、ズレた眼鏡の位置を正す様にしながら立っている。

こいつは確か一年だったはずである。

一年の教室は南校舎の方だったはずだ。

俺のいるのは北校舎。

何故わざわざ来たのか。

 

「教室以外では監視していろと言われてますので」

 

「ったく、真面目だねぇ」

 

服装を見てもブレザーはキッチリ着て、リボンもしっかり絞めてあり、スカートの長さもおそらく校則通りだろう。

まさに模範的な感じである。

 

「さすがに便所までは付いてこないよな?」

 

「当然です」

 

冷たい目で睨まれた。

当然と言えば当然だが。

そんなこんなで適当に便所を済ませて教室に戻ろうとすると止められた。

 

「まだ何か用か?」

 

「えーと………弁当の用意ってしてありますか?」

 

「してないけど?」

 

「な、ならどちらかいいがですか?」

 

前に出してきたのは輸血パックと屍肉の臭いがする袋と普通の弁当箱だった。

……………何で用意してあるんだ?

まぁいいけど。

 

「じゃあ、弁当を貰っておく。ありがとな」

 

弁当箱を受け取るとそのまま教室に入るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

次の休み時間も何とかやり過ごした。

変化が起きたのは三時間目の授業である。

何か教師がグループ組めと言って来たのだ。

とはいえ、転校初日で積極的に組もうとしてくるのはいない。

居眠りでもしようかと思った時に話しかけられた。

 

「僕は浅間信二(あさま しんじ)。委員長をやってるわけだけど、良かったら僕達と組まないかい?」

 

「いいけど」

 

特に断る理由も無いので了承した。

グループは俺を含め男三人、女三人と言った感じだ。

 

「紅崎君もグループに加えようと思うんだけどいいよね?」

 

眼鏡で黒髪の委員長がグループのメンバーと話している。

たかが授業のグループ作りでそんな物が必要なのかは疑問だった。

どうやら話はついた様なので俺は席につく。

 

「紅崎 黒白だ。改めてよろしく」

 

一応名乗っとく。

一応知り合いは作っておいた方がいいだろう。

 

「原与一(はら よいち)だ。よろしくな」

 

筋肉質だが小柄な男が名乗ってくる。

手を見た感じだと弓辺りでも扱ってそうな感じだ。

 

「本陣色(ほんじん しき)よ。副委員長をやってるわ」

 

ボブくらいの黒髪で後ろに一房長いのが伸びている女が名乗った。

 

「浄心衣(じょうしん ころも)よ。お見知りおきを」

 

次は丁寧そうな黒髪長髪の女が名乗った。

 

「信二に、与一に、色に、衣な」

 

「いきなり下で呼ぶのかい?」

 

「悪いか?」

 

「いいや、そんな事は無いよ」

 

名字で呼ぶのはあまり好まない。

距離離れてる気がするしな。

血の臭いはしないが何かありそうな臭いをどいつもこいつも漂わせている。

そこで一人忘れていたのを気付く。

 

「そういや、聞き忘れていたな。あんたは?」

 

「私?」

 

紫髪長髪ストレートで蒼い瞳の女が此方を向く。

よく見ると制服の上からローブの様なのを纏っている。

とはいえ、今となっては髪色も格好もおかしな物では無いが。

 

「赤池ディメアよ。好きに呼んで」

 

「ディメアな。お前らは見た感じだと、人間っぽいが間違いじゃないよな?」

 

「そうだね。クラスには色々といるけど、この五人は人間だよ」

 

委員長が答える。

人間か。

それにしちゃ何かありそうではあるが。

人間と言っても神格を得ずに己を研ぎ澄ますタイプもいるのだ。

 

「ねぇ。少しいいかしら?」

 

「何だ?」

 

ディメアがネットリとした声で話し掛けてきた。

こいつは明らかに怪しいタイプである。

というか、自分から怪しく見せてるタイプだ。

それも怪しさを利用する系の。

 

「吸血鬼というには何か妙な気配を感じるのだけれども貴方、本当に吸血鬼?」

 

「それを聞くか」

 

中々鋭い。

そうは言っても吸血鬼である事に変わりは無いが。

混ざり物なのは間違い無い。

けれども、それを正直に言う気は無い。

 

「それを聞きたいならお前の秘密でも明かしてくれないか?今日は質問されてばっかりだからな」

 

「ふーん、いいわ。明かす事に問題があるわけでは無いしね。私は魔女の一族よ」

 

「……………そうか」

 

うん、知ってた。

格好的にも予測はしていた。

臭いをよく嗅ぐと薬品と思わせて魔術用の触媒の臭いが混じってるしな。

 

「じゃ、俺も言うとしたら純粋な吸血鬼では無いな。混ざり物だよ」

 

「そう、そういう事なのね」

 

手枷に目を向けながら言ってくる。

その様子も不気味である。

何を考えてるか読みにくいのにも程がある。

俺達のやり取りを聞いていた委員長が何か思い付いた様な顔をする。

 

「そうだ!!此処は皆で秘密を明かして行こうじゃないか」

 

そんなこんなで質問攻めよりは楽だが俺達の六人グループは秘密暴露大会みたいになるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ようやく一区切りが付いた。

時としては昼休みだ。

弁当食って寝るかとでも考えているとこんな放送が流れてきた。

 

[えー、2-Cの紅崎黒白君。生徒会長がお呼びです。至急生徒会室まで来てください。繰り返します。2-]

 

何やら呼び出しを食らった。

クラスメイトの視線が痛い。

転校初日に生徒会に呼び出されるとか異常以外の何でも無い。

理由は予測付きはするが。

 

「委員長、飯を誘ってくれたとこ悪いが言ってくる」

 

「別に構わないさ。今日がダメなら明日一緒に食べればいい」

 

そういうわけで教室から出るわけだが出た直後に楓と出くわした。

……………何故いる。

 

「ほら、呼び出されたんだから早く行きますよ」

 

「それは突っ込むなって事か?」

 

突っ込む気も無いが。

何はともあれどう言おうが仕方ないので俺達は生徒会室に向かうのであった。

その途中、

 

「ん?」

 

何か脈打つのを感じて思わず振り向く。

だが、特に気になる様な事は何も無かった。

あるとしたら、クラスメイトの一人とちょうどすれ違ってた事だけだ。

だが、そんな物はただの偶然だろう。

すれ違っていたのは確か………八事羽生(やごと うい)だったか?

まぁ後で委員長にでも少し聞いとくか。

とにかく今は生徒会室に向かうのであった。

 

 





転校初日でした!!
クラスメイトについては35人います。
後日活動報告に名前一覧として載せます。

それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。
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