崩壊と混沌の黙示録   作:天崎

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活動報告に2-Cの生徒一覧載せてます。


紅崎 黒白の沸点

 

さて、生徒会室の前には来た。

背後には楓が付いてきている。

並んで歩く気は無いらしい。

正直無駄に目立つわけだが気にしない事にした。

もうそこらへんは言っても聞かないと分かっている。

楓の事はそこまで知らないがこういうタイプは何人かあった事がある。

それはともかく俺は生徒会室の扉をノックする。

 

「入りなさい」

 

明らかに聞き覚えがある声が返ってきた。

予測は出来ていた。

何となくこの後の流れも予想が付くので正直引き返したいのだがそれはそれで後が怖い。

しょうがないので諦めて扉を開ける。

それはそれで失敗だったが。

 

「ごふぅ!?」

 

「入る前に“失礼します”とか言いなさいよ。郷に入れば郷に従えって言うでしょ?」

 

おそらく辞書と思われる本を投げ付けられた。

完全な不意討ちだった事もあり、バランスを崩して後方に倒れる。

すると、どうなるかと言えば単純である。

俺の後ろを楓が付いてきていたのである後方に倒れれば下からスカートの中身が丸見えである。

 

「これ…………俺が悪いか?」

 

「さぁ?」

 

楓は笑いながら首を傾げる。

これだけなら可愛らしくある動作なほだが、目が笑ってないので台無しである。

そのまま楓は俺の頭に踵を落とすのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一悶着あった物の中にいたのは予想通りの人物であった。

墓森青葉、ようは姉御だ。

姉御の服装は楓とは真逆だった。

どう真逆かって?

生真面目なぴっしりした格好の逆と言えば着崩し、改造制服に決まっている。

黒髪長髪のストレートはそのままではあるが。

上はブレザーを羽織らずにYシャツにリボンではなくネクタイを絞めている。

それも緩めている上に上二つ程のボタンが外れている。

言っちゃ悪いが姉御はそこまで胸ある訳じゃないので露出させてるわけではない。

下はロングスカートだ。

ただし、スリットが入って下着が見えないのが不自然なレベルだが。

 

「姉御が“表”では高校生やってるのは知ってましたがまさか生徒会長とは思いませんでしたよ」

 

「学校では会長と呼びなさい。それはともかく高校なんてそう経験出来る事では無いからね。楽しむ所は楽しませて貰ってるのよ」

 

姉御は此方に目を向けない。

何か書類を処理しているようだった。

椅子に座らず机の上に座ってるのは何時もの事ではある。

 

「ちなみに私は庶務です」

 

「………ぴったりだな」

 

言われても反応に困るので無難な答えでも返しておく。

はっきり言ってそこらへんの感覚はピンと来ないのだ。

そんな事を話していたら後ろの扉が大きく開いた。

 

「会長、理事長よりの返答が届き………」

 

どうやら生徒会役員が入ってきたようだ。

何やら報告しようとしていたがその声が止まる。

理由は分かっている。

というか明白だ。

分からない方が不自然だ。

なんたって聞こえて来た声は俺の知る中で最も不愉快な声だからだ。

 

「何でテメェが此処にいるんだ、クソ吸血鬼!!」

 

「それは此方の台詞だ、クソ狼男!!」

 

能力も武装も今は魔封じの枷のせいで使えないが関係無い。

素手でもやるだけである。

拳を構え、何時でも掴み掛かれる体勢に入る。

向こうも向こうで大体同様な様だ。

 

「テメェは自分の状態分かってんのかぁ?そんな枷を付けて俺に勝てるとでも?」

 

「テメェみたいな腐れ狼を潰すくらいならこのくらいのハンデがあった方がちょうどいいくらいいなんだよ。鎖に縛られてるのが羨ましいのか?」

 

互いに殺気を剥き出しにする。

奴の言う通り、不利なのは確かだ。

だからと言って敗北が確定しているわけではない。

戦い様によっては十分に戦える。

まさに戦闘開始数秒前という時だった。

 

 

「ねぇ……あんた達さぁ…………………此処が何処で私の立場が何か分かってやってんの?」

 

 

凍える様に冷えた声が睨み合っていた俺達の視線を姉御に固定させる。

表情は変わらない。

だが、目は明らかに怒ってる。

 

「あんたらが何処で喧嘩しようが構わないけどよ。あんたらは私の下僕と犬なのよぉ?見世物はもっと面白くやりなさい」

 

言いながら指を小さく鳴らす。

途端に俺とクソ狼の首輪から鎖が伸びて全身に巻き付いて体を拘束する。

魔封じそのものと言える鎖に巻き付かれては俺もこいつも身動きなど取れるわけがない。

 

 

「そもそもさぁ………あんたらの生殺与奪権は私が握ってるのは忘れるなよ?私は私の害になる物なら容赦無く斬るわよ?たとえ、身内でもね」

 

 

いつの間にか手に握っていた刀の刃を鞘からチラつかせながら凍える瞳で言ってくる。

元々逆らう気も無いが俺達は姉御には絶対に逆らえないのだ。

少なくとも首輪がある内は。

首輪がある限り、拘束される上に姉御には絶対に実力的に勝てないのだ。

姉御は斬ると言ったら斬る。

俺達は冷や汗流しながら無言で頷くのだった。

背後で楓がクスクス笑ってる気がするのはきっと気のせいでは無いのだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

さすがにここまでやられて喧嘩を続ける程馬鹿でもねぇので中断した。

ギスギスとした空気の中で副会長らしいクソ狼と姉御が書類を処理する。

俺への用件は後らしい。

楓も姉御もギスギスした空気など涼しそうにスルーしている。

まぁ実質俺とクソ狼が殺気を向けあってるだけなので当然ではあるが。

 

「先輩、お茶です」

 

「悪いな」

 

楓の出してくれた茶をすすりながら待機する。

ちなみにクソ狼は制服改造をしていない。

多少着崩してる程度である。

 

「さて、面倒な伝達事項も済んだ事だし、本題に入りましょうか」

 

姉御が机の上に座ったまま言ってくる。

やっとである。

とはいえ、用件そのものがどんな物かは想像が付かないが。

 

「わざわざ呼び出したって事はそれなりに急な物ですか?」

 

「そうね。出来るだけ早く解決して欲しい案件ではあるわね」

 

という事は依頼の類いか。

断る気は更々無いがこのタイミングは意外である。

てっきりしばらく仕事が回ってこない物かと思っていた。

 

「それで何処からの依頼ですか?」

 

「ん?あぁ勘違いしてるようだけど、これは私の個人的な依頼よ」

 

「へ?」

 

「報酬はきっちり支払うから安心しなさい」

 

いや、そういう事では無い。

姉御が個人的な依頼をしてくる事など滅多に無いので驚いたのだ。

けれども、そういうのは大抵面倒事だ。

単純に解決出来るレベルではないだろう。

 

「まずは幾つか聞くわ。最近此処らで起きている失踪事件は把握している?」

 

「いえ、安全区の情報はあまり」

 

「そう。なら、これから話す事にしましょう」

 

そう言いながら姉御は書類に手を伸ばす。

神隠しとか珍しくも無いのでそういうのは事件として扱われる事は少ない。

大抵手段が分かれば芋蔓式に解決するからだ。

 

「失踪事件とは言ってるけど本当に消えたのか、肉体も残らないレベルで殺されたかは不明よ。残留思念も上書きされた様になっていて読み取り不可」

 

「被害は現在で十三件。問題は神隠しの前兆も観測出来ず、神格の読み取りすら出来ていない事よ」

 

「どんな神隠しでも十件を越えれば臭いが割り出せる。最低でもどういう系統かくらいはね」

 

「これが残らない場合は二つ。一つは肉体も残らないレベルで消された。もう一つは神隠しに頼らずに誘拐した」

 

「後者の方は今時使う奴なんてそういないけど、逆にそれが盲点となっている可能性があるわ」

 

「事件の概要としてはこんな物よ」

 

面倒な事件というのは分かった。

その上で幾つか疑問が出てきた。

 

「えーと、その情報って何処から得た物ですか?」

 

「情報屋よ。割りと高かったけど割りには合う程度だったわ」

 

………………こりゃ珍しい。

姉御はほとんど情報屋には頼らない。

下っ端でもいいから捕まえて拷問してでも根元まで辿り着くタイプだからだ。

 

「それで肝心な事ですが早急に解決する必要がある理由とこの件と姉御がどう関わってるかだけでも教えてくれませんか?」

 

「姉御じゃなく会長と呼びなさい。まぁそれらは同じ事よ。さっさと解決しないと折角計画してる学祭が中止になりかねないのよ!!」

 

………………一瞬思考が止まった。

何かと思えばそんな事か、と思える。

だが、姉御らしいと言えば姉御らしい。

気分屋で楽しめる物は楽しむタイプである姉御にとって最高に遊べる物なのだろう。

まぁ姉御が望むなら出来る範囲で叶えるのが俺である。

 

「分かりましたよ。失踪事件を解決すればいいんですね?」

 

「そうよ。でないと、この地区周辺が警戒指定されて学祭が中止になりかねないのだから」

 

「報酬は何時も通りでお願いしますよ」

 

とはいえ、さすがに姉御の依頼でも理由が理由なだけにモチベーションが下がったのは確実だが。

それほど切羽詰まった状況では無いのは姉御自身が動かない時点で分かっている。

そんな事を考えていると姉御は此方に顔を向け、

 

「頼んだわよ、“黒白”」

 

とびっきりの燃料を投下してきた。

姉御がニッと笑いを向けてくれた上に名前まで呼んでくれたのだ!!

やる気が出ないわけがない!!

 

「お任せあれ!!」

 

そんなこんなで俺は姉御から書類を受け取って生徒会室を後にするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あの先輩、幾つかいいですか?」

 

「何だ?」

 

生徒会室を出るなりに楓が声を掛けてきた。

教室に戻るまでついてくる気なのだろう。

 

「青葉さんの性格からして先程の笑みも全部計算の上ですよね?」

 

「それがどうした?」

 

そんな事は分かっている。

唐突な高校への編入。

編入当日に呼び出してこの依頼。

更にはくだらない理由。

そして、あの笑み。

全てが俺を都合良く動かす為の計画だろう。

理由だって別にあるのは大体察せれる。

……………さっきの理由も本気ではあるのだろうが別の思惑は確実に入っている。

ようは動かしやすい立場にした上で解決に都合の良い所へと設置したのだ。

 

「俺は姉御が望むなら叶えるだけだ。それが今の俺のやるべき事だからな」

 

それがあの日誓った事だ。

それを果たす為ならこの身は幾らでも削る。





黒白、二年生無所属
青葉、三年生生徒会長
不炎、三年生副会長
楓、一年生庶務
という感じです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
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