おいおい………マジかよ。
これを狙ってたとはいえ、いきなり殺る方向かよ。
バンダナ取ったら蛇髪というのは予想はしていたが…………面倒だな。
“最悪”よりは危険度が下がったがそれでも神格持ちの相手を枷が付いた状態でやるのは無謀に近い。
此処は素直に殺られておくのが吉か。
とは言っても“魔眼”使われたらさすがにヤバイが。
そんなこんな考えてる内に相手の蛇髪が俺に襲い掛かる。
「ごばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
割りとマジで悲鳴をあげておく。
ヤベェな毒持ちかよ。
◆◆◆◆◆
男は無惨に悲鳴をあげながら肉塊へと変わっていく。
それに特に何も感じる事は無い。
こんな光景は最早見慣れた。
見慣れてしまった。
忌々しいこの力のせいでだ。
「呆気ないのね」
本当に呆気ない。
もっと抵抗するかと思った。
面倒が起きないだけよかったけど。
けれども、これで心置き無く仕度を進められる。
人払いをさせていた眷族を回収し、この場を離れる。
◆◆◆◆◆
行ったか。
やっと行ったか。
正直死んだ振りも苦労するんだよ。
痛覚はそのままなわけだからな。
カプセルを噛み砕き、血を吸収して再生力を引き上げる。
裂けた肉がくっついてく音や砕けた骨がくっつく音が響きながら体は再生していく。
勿体無いので血も回収したい所だが毒が混ざってるのでやめておく。
不幸中の幸いとも言うべきか体液すら周囲に撒き散らすレベルで殺ってくれたおかげで毒は多少抜けていた。
あくまで多少だが。
まだ少し体に残っていて再生を阻害する。
「多重展開、同調から相乗に移行…………移行完了」
複数の魔法陣を展開する。
それらはすぐに同調する様に設定させてある。
同調から相生によって互いに高め合う形に術式を移行させる。
陣の展開はこれで完了だ。
「術式起動、五重陣で“解毒”を、二重陣で“再生加速”を」
幾つか設定していたプログラムを起動させる。
陣の数で強さを変える。
神格持ちの毒なのでそれなりに力を入れる。
五分程度で動ける程度には回復する。
「術式停止」
魔術を停止させて陣を消す。
さて、人払いも解かれてその内人が来そうなので俺もさっさと退散するとしますか。
◆◆◆◆◆
住処の前では楓が待っていた。
血塗れの黒白を見て酷く驚いた顔をする。
「あr……先輩!?何ですか、それ!?」
「えーと……とりあえず怪我はねぇから心配はするな」
「その格好を見てそれが出来るわけが無いでしょうが!!」
直ぐ様駆け寄ってくる楓。
対して黒白は何か違和感があった。
会ってそこまで長く無い男をここまで心配するか、疑問に思ったのだ。
とはいえ、楓が表寄りと考えればそこまで不自然では無いか、と適当に結論を付けるのだった。
◆◆◆◆◆
黒白は一先ず血塗れでボロボロな服をどうにかする事にし、シャワーを浴びてから着替えるのだった。
シャワーから出た後、何故かボロボロの方の服が減ってた気がするが特に気にする事も無かった。
「そんじゃあ、説明してくとするか」
何はともあれ分かれてからの一連の出来事を説明する黒白。
話を進める度に楓が頬をひきつらせるが気にせず進めるのだった。
「何を一人で突っ走ってるんですか、貴方は!!相手が先輩の事を知らないから良かった物の!!もし、顔を知られてたらどうするつもりだったんですか!!それに何で無抵抗で殺られてるんですか!!先輩の再生能力でどうにかならない相手だったらどうするつもりだったんですか!!そもそも枷で万全に力を振るえないのに敵といきなり接触するとか頭おかしいんじゃないですか!?」
「……………悪かったから一先ず話を聞いてくれ」
語り終えた直後に爆発した後輩を宥める。
黒白としても此処まで騒ぐとは予想していなかった。
完全に予想外の反応であった。
とはいえ、基本的に青葉達としか親密に話す事が無いのでこれはこれで新鮮だったりするのだが。
「一人で接触して無抵抗で殺られたのには理由がある」
「どんな?」
「まず、複数で行くより一人の方が油断を誘える。無抵抗で殺られたのは相手の状態から判断した事だ。あの状況で俺から何も情報を得ずに即消そうとする程度には焦るか錯乱していた。そこが付け入る隙になる。俺が殺られて死んだという事にしておけば相手は一種の安心感を得る。その安心感から派手に動いてくれる可能性もあるし、“仕込み”に気付かずにいてくれる可能性も上がる」
何より瞳を見て、何か追い詰められた様な色をしていたのが黒白にとっては決め手だった。
そんな状態なら正常な判断もしにくいはずだ。
「そういう狙いがあったわけですね」
「元々殺されるパターンも想定していたからな。俺はともかくお前にそういうのをやらせるのには抵抗があるからな」
「つまり、私の為と………」
「?」
一瞬、ほんの一瞬だけ楓の表情が緩み、頬がほんのり紅くなる。
だが、すぐに戻ってしまう。
「でも、それは殺される無いと確信したわけにはなりませんよね?」
「そこらへんは後で話すが……相手の神格に大体検討が付いたからな。殺られるかどうかの判断は付く」
「そうですか。まぁそれで一応納得しておきます」
一先ず落ち着く楓。
それに密かにホッとする黒白。
「それはそれとして、先輩が死んだ事にして油断を誘うのはいいですがそれなら私は物陰に隠れて尾行する等の選択肢もあったのでは?」
「それは万が一があるからな。奴は眷族放ってたし、見付かったら俺は殺され損になる」
「そういう事ですか。でも、どうするんです?そのまま逃がして来たんでしょう?」
「“仕込み”をしてきたと言ったろ?奴の眷族に位置情報を此方に逐一発信する術式を仕込んだ。眷族は常に近くにいる様だからな」
「よく殺られながらそんなことを気付かれずにやれましたね」
「そこは運も強かったけどな。何はともあれ、これで居場所は掴んでる。此方も準備を整え次第、奴と決着をつけに行く」
「また置いてくなんて事は無いですよね?」
「大丈夫だ。俺の勘が正しければ、数は必要になる。だから手伝ってくれ」
「喜んで!!」
頼ってくれた事が嬉しそうに答える楓。
が、黒白は何かが脈打つのを感じていた。
それが何か分からず首を傾げる。
とはいえ、分からない事を考えても仕方無いと思考を放棄する。
「とりあえず姉御に会いに行くか」
「経過報告ですか?」
「それもあるが、幾つか聞いておく事があるからな」
そう言って立ち上がり、青葉に連絡をするのだった。
仕込みは終え、後は準備を進めるだけであった。
死んだ振りとはいえ、絵面的には骨が出てたり内臓散ってたりグロくなってたりします。
そこらへんは吸血鬼の生命力という事で。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。