【強き剣】
幸彦は旅を続けていた。
途中様々な人と出会う。
その中にはもちろん武の道を進むものもいた。
その一人平太から話を聞いた。曰く、彼は太平流体術を使うという。その技は海のように朗らかに優しくときに雷のように荒々しいという。その話だけでは幸彦は「ああそうか」と流していただろう。しかし、平太の肉体は優しく見えなかった。その筋肉は豪傑の如しと肉体がしゃべりかけてきそうなもので覇気を感じた。
そこで数手指南してもらうことにした。
平太は幸彦と向かい合った。
平太は体を開き力士の仕切りの型のように構えた。
幸彦の剣には体術はないだが剣の道の一環で体術にも得手であった。左手を前に開き右手は腰辺りに握り置く、正しく獅子を彷彿とさせる構えであった。
幸彦は詰めた!縮地を使い一気に間合いを詰める。
間合いに入った瞬間に打ち込めるように彼の腰と肋骨は回転を始めていた。右拳で確実に打ち込むための回転。その一撃は一般人であれば打撃箇所骨折は免れぬ程であった。
たが、平太もそうやすやすと負けを認める男ではなかった。向かってくる拳を左でいなした!
がら空きになった幸彦の胴体に一閃
「沸像、金剛力士!」
右手で掌打を打ち込んだ。
「!!」
幸彦は流水の型を応用し左手で相手の掌打を右にいなした。その勢いを利用して一回りし平太の右こめかみに手刀を叩き込んだ。
平太はそれを防ぎ右手をつかみ肘を極めようとした。
そこで幸彦は咄嗟にその流れに体を合わせ難を逃れた。だがまだ右手は掴まれたまま、難を逃れようと動かした身体は不安定であった。そこを平太が狙わないはずもなく左手でまだ掌打を打とうとしていた。その瞬間。幸彦は右手を自分に引き寄せ平太の手首に打撃した。たまらずその手を離した平太は幸彦を猫のようだと比喩した。
そのままジリジリと向かい合っていく。
先にしびれを切らしたのは幸彦であった。
連続跳び蹴りを浴びせようとするも初撃!平太は軽々と受け止め二撃目は出せなかった。
咄嗟に引いた幸彦はさらに詰める。
「螺旋拳弾!」
相手に打撃を打ち当たる瞬間に腕を回し体の奥へと打撃を入れる技である。打たれた後に相手の打撃箇所が渦を描く妙技である。それを平太は受け止める構えをした。幸彦は心のなかでもらった!と叫んだことだろう。しかし、
「佛像、不動明王!」
不動明王の名を冠するこの型は受けにおいて最強であった。平太は不動明王が如くその弾を受け止めた。
「ウォォォ!」幸彦は連打した。あまりにも硬い平太の肉体はすべて受け止め続けた。
本来であればこんな連撃を食らえば身体中の骨という骨が砕け散るだろう。だがそうならない、幸彦の拳に焦りが出始めたとき。
「待て」
その声に一瞬で飛び退いた幸彦を平太は
(やはり猫だ。)
そう感じていた。
平太は軽く咳払いをしながら言った。
「貴殿は剣客だろう?次は木剣でやろうではないか。」
その言葉を受け取った幸彦はさっと木刀を構えた。
平太も荷物の中から小太刀の木刀を抜いた。
幸彦は最初、男の大きさで刀が小さく見えているのだと考えていた。しかし、実際には本当に小太刀である。
燕飛の型を構えた幸彦に対し、徒手のときとほとんど変わらない構えを取る平太。
2人はジリジリと互いの間合いを探っていた。
先に動いたのは幸彦であった。燕飛の型の連撃を始める初撃、
「佛像、素戔嗚尊!」
平太は空を飛ぶように跳び、連撃させなかった。
そしてその羽根を切り落とさんと刀を返す幸彦。
「返し燕!」
空を跳んでいる平太は回避行動を取れない
はずだった。
刃が当たる紙一重、人とは思えぬ体のひねらせにより回避したのだ。あの重厚な体からは想像も出来ない所業である。
そして、着地とともに剣を振った。
「穫る!天羽々斬!」
目にも留まらぬ速さで8連撃が幸彦に飛ぶ
「ぬぅっ!」
初撃を何とか受け、飛び退きながら残りの7撃を避けた。
だが、平太は体勢を崩した幸彦にそれ以上の追撃をしなかった。
幸彦には信じられなかった。
(空を舞っただと…)
燕飛の型の二撃目を跳んで躱したところまではまだ理解できる。たがそこからの回し燕を平太に向けた際、確実に避けられない剣撃を避けたのだ。
「さぁっ!続きだっ!」
平太は再度構えた。
幸彦は攻略の糸口を探していた。
(徒手の時も木剣の時も常にあの男のか前は変わっていない。あの構えからしか佛像を使えないのではないだろうか)
平太は一向に詰めようとしない、燕飛の型の構えでジリジリと距離を詰める幸彦
ガツン!
幸彦が小石を平太に蹴っ飛ばした!
平太はびっくりし顔を伏せた。構えが崩れた!
清彦、そこを詰める!
平太はバランスを崩しながら何とか避ける!
(今っ!)
ガーン!
平太の金的にクリティカルした。
「す、すまぬ…」
悶える平太に流石に申し訳なくなった幸彦は言った。
「うぅ、あ、ああ、良いってことよ」
少し経ち、
「いやはやなんともエグい一撃であった。」
平太はカラッと笑いながら言った。
「おぬしがゆくのは尾張だったな。ともに行かせてくれ。私自身の修行にもなるのだ。」
幸彦は快諾し、ともに進むことになった。
尾張のとある町にて、
「我々は天下剣統である!」
その町にあった道場の看板を持つ兵どもを従えた男が言う。
「天下剣統 第13部隊及び剣客特別隊!ここを支配する!」
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