あとこんな感じで音楽聞いてるシーン書いてみようという実験でもあるのだ
あとジージェネおもろい
お前らピックアップ全部出た?俺は出たwwwwwwwwwwww
ニョニョニョwwwwwwwww
マダム・フーチが戻ってくると、スリザリンとグリフィンドールの双方で始まった言い争いは、結局「告げ口合戦」となって収拾した。判定は素っ気なく、両寮から十点ずつ減点。ため息まじりのブーイングが風にほどけ、初めての飛行訓練はそれでも滞りなく幕を閉じた。
グラウンドに降り立ったデイヴは、掌に残る箒のざらつきと腕の軽い痺れを確かめる。空を裂く感覚は悪くない――胸の中に小さな高鳴りが残っている。だが同時に、足裏で土の硬さを感じる安堵もあった。やっぱり自分は地面の方が性に合う、と彼は思う。とはいえ、魔法使いとして一度は体験すべき「空」を味わえた満足感が、口元の笑みを消させない。
隣ではディーンが、目を輝かせて早口にまくしたてている。
「最初にキュッて上がってさ、それでビューッと――で、風がバサァッ!」
擬音が半分以上を占める実況に、シェーマスが「うんうん」と大きく頷きながら相槌を打つ。ディーンが「クィディッチ選手になれたらさ!」と夢を口にした瞬間、シェーマスは待ってましたとばかりに胸を張った。
「じゃあ僕も! 同じチームで、同じ試合に出ようよ!」
その言い方があまりに真っ直ぐで、デイヴは小さく吹き出しそうになる。二人のはしゃぎようは、見ているこちらの頬までゆるませる類のものだ。
「まあ、夢はデカいに越したことないな」
心の中でそう呟いて、デイヴは箒の柄を指で弾く。たった一時間ばかりの授業なのに、耳にはまだ風の唸りが残響のようにこびりついていた。空は広くて癖になる――けれど、地に足をつけて歩く帰り道の確かさも悪くない。そういう好みの偏りが自分にはあるのだと、彼は少し可笑しくなる。
遠くでは、減点に不満げなスリザリンの一団がまだぶつぶつ言っている。グリフィンドール側でも何人かが悔しそうに肩をすくめていたが、ディーンとシェーマスの笑い声がそれを薄めていく。微笑ましい光景だ、とデイヴは思う。彼らの夢見がちで真っ直ぐな熱は、風に揺れる赤金の旗みたいに眩しくて、ちょっとだけ羨ましい。
「さ、戻るか」
肩に箒を担ぎ直しながら、彼は二人の後ろ姿を目で追う。ディーンが空の話を続け、シェーマスがそれを膨らませ、会話はまた擬音で弾む。デイヴは歩幅を合わせ、足裏に伝わる土の感触を確かめながら、今日の空の手触りを胸の内側に静かに畳んだ。
その日の夕食中、デイヴはディーンに頼みごとをされていた。
「絵のモデルになって欲しいんだけどさ」
「嫌だね。俺は拘束されんのが嫌いなんだ」
「そう言わずにさぁ、ね? 頼む!!」
かれこれ十分、二人は同じ場所をぐるぐる回っている。
発端は夕食前、グリフィンドールの談話室でのことだった。デイヴがふと視界の端で紙の白さを捉え、ディーンの膝上に広がるスケッチ帳を覗き込んだのが始まりだ。そこには斜め上を見上げる人物の横顔や、椅子に片肘を置いた手の構図、布の襞まで生きているコートの陰影――線は軽やかで、形は確かな自信を持っていた。思わず、デイヴは「他のも見せろよ」と言ってしまった。めくるたびに出てくる鉛筆の呼吸に、彼は素直に舌を巻く。
その「舌を巻いた」の一瞬を、ディーンは逃さなかった。
夕食が始まる頃には、グリフィンドール卓の端で小競り合いが本番を迎えている。皿の音と笑い声を背景に、ディーンは身を乗り出し、デイヴは盛りだくさんのチキンをフォークで突いている。
「飛んでる姿じゃなくてさ、落ち着いたやつ。静止画。ここ――」ディーンは空気に線を引くみたいに、人差し指でデイヴの輪郭をなぞる。「耳のリングと、首筋から鎖骨のライン。それと手。お前、手の骨格が綺麗なんだよ。あれを描きたい」
「…………お前、ゲイなの?」
「殺すぞ」
横でパイをかじっていたシェーマスが、面白がって合いの手を入れる。
「いいじゃん、デイヴ。仲直りの記念品としてさ」
「そんなもんいらねぇよ」
「嘘つけ。喧嘩した後、ずっと黙って落ち込んでたくせに」
ディーンは攻めの姿勢を崩さない。
「そんな時間取らないから! 本当に!」
「なんでそんな必死なんだよ。ポッターとか頼めば? あいつ看板だろ」
「そういう問題じゃない。欲しいのは“有名さ”じゃなくて“線になる骨格”。で、それはお前が持ってる」
ディーンはそこからほめ殺し作戦に移行した。顎のライン、鼻筋の影、座ってるだけでできる肩の落ち方――。
野郎に褒められても一円の得にもならない、とデイヴは聞こえないふりをして、肉とパンを交互にもりもりやり始める。
「いやぁ、うまいな。ここの飯は信じられないくらいうまい」
シェーマスは「面白そうだから」という理由だけでディーンの援護に回り、あれこれ条件を勝手に整え始めた。
「場所は談話室の暖炉前。時間は夕食後から二十分。報酬は……スナックボックス一個ぶん? あと宿題チェック一回」
「おい、誰が出すって言った」
「ほら、デイヴが出すって」
やがて二人はヒートアップし、最終的にデイヴが音を上げた。
「あー! もうわかったよ! やりゃあいんだろ、やりゃあ!」
「ほらね、話せばわかると思ってた」
少し離れたところでは、シーカーに抜擢されたことを妬んだマルフォイと口論になったポッターとロンに、ハーマイオニーが食ってかかっていたのだが――それはまた別のお話。
デイヴは最後の抵抗とばかりに、デザートのトリークルタルトを六ピースも平らげ、ひと口ごとにやけに丁寧に味わって時間を稼いだ。だが結局、ディーンとシェーマスに両腕をがっちり組まれ、ずるずると談話室へ連行される羽目になる。足をじたばたさせて「嫌だー!」と声を張り上げるデイヴだったが、その顔は――隠しきれない笑みに綻んでいた。
談話室の扉がばたんと開き、三人は勢いのまま中へなだれ込んだ。暖炉は橙に息を吐き、壁の肖像画たちは夜支度のあくびをしている。ディーンは真っ先に暖炉前の一角を見定め、テーブルを半歩ずらし、背の低い肘掛け椅子を引き寄せた。シェーマスは「大道具係」を気取り、クッションをぽんぽん叩いて埃を払い、余計に散らかした。
「はい、主役はそこ」
「主役は帰る」
「はい、主役はそこ」
デイヴはドア枠に指をかけて粘ったが、二人が腕を組んだままするりと外し、結局は椅子に座らされた。肘掛けに片肘を乗せると、ディーンがすぐさま首を振る。
「今日の欲しいのは“鎖骨”。襟、指二本分開けて。左耳のリングは見せたいから、髪は耳にかけて。右肩は落としすぎない」
「鎖骨フェチなのか?キモイな」
「黙って格好つけとけ、Snaps」とシェーマスが背後から肩を揉む。余計なお世話だが、少しだけ心地いい。
ディーンはスケッチ帳を膝に、鉛筆を軽く回してから、短く息を吐いた。
「目線は僕の肩の向こう。誰もいないとこをぼんやり見て。右手は膝に、左手は肘掛け。指は――そう、少し開く」
デイヴは言われるままに形を作る。動き出したい神経が脚の奥でうずいたが、背後で走り出した鉛筆の乾いた音が、それをゆっくり鎮めていく。火のはぜる音とまざって、妙にいいリズムだ。
「顎、半歩だけ上。……止めて」
「止めっぱは拷問だぞ」
「五秒で赦す。五、四、三――はい、息して」
階段の方から本の山が揺れて、ハーマイオニーが現れた。
「またあなたたち、騒いで――」と言いかけ、デイヴの姿勢を見て言葉を切る。「……何をしてるの」
「芸術だよ」とシェーマスが即答する。
「静かにして」とディーン。視線は紙から外れない。
ハーマイオニーは一拍だけ考え、近づいてデイヴの襟元を見た。
「そのボタン、開けすぎ。……一つだけ閉めて」
「注文多いのはこっちもか?」
「均衡の問題よ」とだけ言って、彼女は鼻を鳴らす。去り際、左耳の髪がまた落ちそうなのを指で払っていった。リングが火をひと舐めして、きらりと光る。デイヴはむず痒いのをごまかすため、目だけで笑ってまた真顔に戻った。
「今の、いい。顎の線、拾える」
ディーンの鉛筆が速度を上げ、紙の上に細い影が絡まっていく。耳の輪、喉の窪み、鎖骨への落差。肘掛けに預けた左手は、指骨一本ずつが呼吸しているみたいに立ち上がる。
「数えとく」とシェーマスが腕を組む。「二十息で一区切りな」
「息で数えるの初めて聞いたぞ」
「芸術界隈の新基準だ」
「勝手に作るな」
デイヴは左耳に触れたい癖を、肘掛けの布を指先でくすぐって誤魔化した。視線の先の壁には何もない。けれど、何もないのが案外悪くない。火と鉛筆が刻む不規則な拍に、身体が少しずつ同調していく。
「……はい、一旦オーケー。力抜いて」
椅子にもたれ直すと、凝り固まっていた肩がさっと流れた。シェーマスが「ほら、モデルの顔だ」と菓子を一個ほうる。反射で受け取って口に放り込みながら、デイヴは半眼でディーンの膝上を覗き込んだ。
紙の中にいたのは、予想より“自分”だった。目は遠くを見て、左耳の点の光が生きている。喉の窪みから鎖骨へ渡る陰は、ほんの少し生意気で、でも妙に品がある。肘掛けにのせた左手は、動く前の一瞬を掴まれたみたいに、静かな勢いをまとっていた。
「……へぇ」
無意識に漏れた息に、ディーンが眉尻だけで笑う。
「仕上げは、手をもう少し。握る形、開く形、ポケットに入れる直前。動きから拾いたい」
「注文、終わる気がしねぇな」
「いい線は、だいたい注文の先にある」
ハーマイオニーが踊り場から顔だけ出した。
「うるさくはしてない?」
「してない」と三人同時に返す。
「なら、続けなさい。ただし、宿題は――」
「後でやる」とデイヴが先に言い、彼女は不本意そうに満足して引っ込んだ。
「報酬は蛙チョコ十個」とデイヴ。
「三個」とディーン。
「五で手を打て」とシェーマスが仲裁する。
「四。うち一個はミント味」
「ミント味ィ?まあいいや。じゃあそれで」
ディーンは新しいページを開いた。
「じゃ、次は手だけ。肘掛けから指を離して――そう、指先に空気を一枚挟むみたいに。……止めて」
「注文が多いな」
火がぱち、と弾ける。デイヴは止めた指先の向こうに、昼間のピッチの眩しさをなぜか思い出した。走るかわりに止まるのは、嫌いじゃない――と、その時だけは思った。左耳のリングが小さく揺れ、鉛筆がそれを追いかける。
「はい、ラフはここまで。……見てみる?」
差し出された紙を受け取る指が、さっきより少しだけ慎重になる。紙の中の自分が、ほんのわずか“よそゆき”の顔をしているのが、どこか可笑しかった。
「――もう一回だけだぞ」
「二回」
「一回半」
「じゃ、一回と“ちょっと”」
「小癪な野郎だ」
笑い声が重なり、暖炉が低く唸る。窓の外の風は塔を撫で、肖像画の誰かが毛布を引き上げた。デイヴは紙を膝に戻し、椅子に深く座り直す。次はもう少しだけ長く座ってもいい――その気持ちが、指先に残ったままだった。
その後、しばらく――といっても一時間以上経ってから、ようやくデイヴは解放された。
シェーマスはいつの間にかソファで沈むように眠り込み、口をわずかに開けたまま規則正しい寝息を立てている。デイヴは苦笑して、彼をひょいと背負い上げた。廊下を進む背中越しに、シェーマスの頭がこつんと肩口に当たり、温度と重みがじわりと移る。後ろからついてきたディーンは、その肩にべったり残るよだれを見つけ、驚きつつも吹き出しそうになるのをこらえた。
寝室に入ると、デイヴはわりと乱暴にシェーマスをベッドへ下ろした。だが相手は起きない。むにゃむにゃと寝言を漏らしながら、枕に顔をうずめて体を丸めるだけだ。
デイヴは備え付けの棚のカセットの山をざっと目で追い、目当ての一本を抜いた。ポケットから取り出したウォークマンの蓋をカチ、と開ける。中身を替えて押し込むと、テープが回り始める小さな唸りが耳の内側に灯った。眠気はまだ遠い。それに明日の一限は闇の魔術に対する防衛術――部屋に立ちこめるニンニク臭と、クィレルの舌足らずな喋りがどうにも苛立つ“クソ授業”である。彼は「まだ起きてる」とだけディーンに言い置き、寝室を出た。
久しぶりに、夜を一人で過ごしている気がする――と彼は思った。
談話室は暖炉の火が低く残り、赤い絨毯の上に橙の明滅が揺れている。肖像画は毛布を引き上げ、あくび混じりに目だけをころりと動かした。デイヴは、いつも空いていれば陣取る窓辺の椅子に腰を下ろす。背もたれに片肩を預け、足を投げすぎない程度に崩す。鉛格子の向こう、夜の校庭が冷たく広がっている。
遠くに、クィディッチの三つのゴールが黒い輪郭で立っていた。輪の中に月の白さがはまり、風が来るたびに、禁じられた森の梢がざわりと肩を寄せる。湖面は見えないが、どこかで水鳥が短く鳴いた気配がする。遅いフクロウが一羽、窓の端を横切り、瞬きほどの影を落として消えた。
テープの細いサーという砂音が耳の奥に薄く流れ、火のはぜる音と混じって、拍の弱い音楽のようになる。さっきまで身体を固めていた「止まる」時間の余韻が、まだ筋のどこかに残っていて、けれどそれが今は不思議と心地いい。
デイヴはそっと左耳のフープに触れた。冷えた輪の感触が、指先から神経をなぞる。夜は、いいことも嫌なことも持ち上げてくる。去年は、とくに散々だった――そう思うだけで、胸の奥のどこかが鈍く重くなる。
彼は上着の内ポケットに指をすべらせ、布地越しにラッキーストライクの箱を撫でた。取り出しはしない。ただ、四角いかたちを確かめる。そこにあること、ここにいること。まるで、それだけは失わないように、と小さな祈りを込めるみたいに。
窓の外で風がまた強くなり、ゴールの輪が夜の空気に小さく震えた。デイヴは背もたれに深く沈み、イヤホンの音量を指先で半歩だけ上げる。誰もいない夜が、ようやく自分の重さに馴染んできた。
テープの砂音が耳に残るうち、デイヴは早送りボタンを数回、親指で小気味よく弾いた。カチ、カチ、と短い間を開けてから再生。
流れ出したのは、Slowdiveの「Sing」。ここではないどこか、薄い霧の向こうから滲んでくるようなイントロが、鼓膜の内側へ静かに染み込む。
椅子から立ち上がり、太った婦人の肖像の方へ歩き出したとき、背後のソファで布の擦れる音がした。足を止めたデイヴは、片耳だけイヤホンを外して振り返る。ソファの背に近づいて覗き込むと、栗色のふわふわした髪が月光みたいに散っていて、その真ん中でハーマイオニーが小さく身を丸めて眠っていた。開きっぱなしの本が胸元で上下し、指先はまだ栞の位置を保とうとしている。
(真面目ちゃん、だな)
口の端が自然とゆるむ。デイヴは内ポケットに手を入れて、マッチ箱とタバコだけを指先でつまみ出すと、自分のローブをそっと肩から掛けた。滑り落ちないように襟元を整え、額にかかった前髪を人差し指でやさしく払う。彼女の呼吸は穏やかで、鼻先がほんの少しだけ冷たい。
満足げに短く鼻を鳴らし、デイヴはイヤホンを元に戻す。「Sing」の低い波が再び世界を薄く包む。彼は肖像へ向き直り、談話室の外へ。開いたローブの片側がふわりと揺れ、置き土産のように彼女の体温の上に落ち着いた。
夜のホグワーツは、昼間とは打って変わって非常に不気味だ。
動く肖像画は昼はアトラクションのようで面白いが、真夜中に見ればほとんど心霊現象。甲高い金属音を立ててときどき身じろぎする甲冑、ふわふわと漂い廊下を横切るゴースト――これを恐ろしいと言わずに何と言うのか。
そんな中を、デイヴはゆったりとした足取りで進んでいく。夜は彼の時間だ。
さきほど彼女にローブを掛けてきたせいで、上半身にひやりと風が刺さる。わざとらしく身を震わせて笑い、最近はすっかり覚えた塔への道筋を辿り始める。
ときどき、ウォークマンは何かに干渉されるみたいにふっと黙る。
デイヴは眉ひとつ動かさず、テープを労わるみたいに停止ボタンを押し、電源をそっと落とした。
階段をいくつも抜け、風の強い方へ、強い方へ。西の塔に続く冷たい吹き抜けに差しかかると、空気が一段澄み、どこかで梟の羽音がぱさりと鳴る。石段は夜露でしっとり、手すりは氷みたいに冷たい。最後の踊り場を曲がると、開け放たれたアーチの向こうに夜気が立ちこめ、塔の上では梟たちが頭を回してこちらを一瞥した。
外気へ一歩踏み出す。月は雲に隠れたり現れたりを繰り返し、クィディッチの三つのゴールが黒い輪郭で空に据わっている。風が来るたび、禁じられた森の梢がざわりと寄せては離れる。
デイヴは内ポケットに指を滑らせ、四角い箱の角を確かめてから一本抜いた。マッチを親指で擦る。硫黄の匂いが瞬く間に立ち、火が紙巻の先で小さく丸くなる。吸い込むと、胸の内側に重さが落ち、ゆっくり広がった。吐き出した白は風にほどけ、糸のように千切れて夜空へ溶ける。
左耳のフープにそっと触れる。冷たい輪が、さっきよりはっきり指先をなぞる。
夜は、いいことも嫌なことも持ち上げてくる。ふいに、誰かの笑い声の温度がよみがえる。名前も、姿も、ここでは呼ばない。彼の中ではただ「あのひと」として在る。肩越しに落ちる声の調子、歩幅を合わせるときの気配、煙にまぎれた柔らかな匂い――そんな断片だけが、風に乗って戻ってくる。
彼はそれに応えるみたいに、もう一度煙を吸い、細く吐いた。輪っかになりかけた白はすぐ崩れ、はるか下の闇に消える。
再びウォークマンを取り出す。大した意味はない。ただ、壊したくないという気配に従って、ゆっくりと再生ボタンを押す。
「Sing」のベースが石壁を伝い、足首のあたりで低く揺れた。火のはぜる音の代わりに、風が拍を刻む。デイヴは顎を少し上げ、目を半分閉じる。ここではないどこか――音が連れていく遠さに身を委ねながら、左耳の輪をもう一度だけ確かめた。
このフープを送ってくれた人――送ってくれたあの
そうしてなぜ、彼女が……。
デイヴは壁に背を預け、天井を仰いで、思考が鈍くなるのをニコチンに任せた。
やがて、どれだけ時間が過ぎたのか分からない。
何本目かを静かに吸い終えると、一つ咳を落として、火を丁寧に揉み消した。城のどこかで、ピーブズが悪戯でもしているのか、軽い金属がガラガラと落ちる音がした。夜風を避けるようにして、彼は早々に塔を降りた。
ゆっくりと廊下を歩いて、太った婦人の前までやってきた。
「あら、あなたもどこかに行ってらしたの?」
「まあね。眠れないときは眠くなるまで風にあたるのがルーティーンなんだ」
「そう。風邪をひかないようにね」
「ありがとう、麗しきレディ」
二人は少しくすくすと笑い合い、やがて彼女が首をかしげて問う。
「合言葉は?」
デイヴは軽く会釈し、扇子越しの淑女に失礼のないよう、指先で口元を添えて声を落とし、合言葉をそっと囁いた。
婦人は扇子で口元を覆ってウフフと笑い、ぱっと扉が開いた。
談話室では、三人の同級生が顔を上気させ、濡れた前髪を頬に貼りつかせたまま、言い合いともつかない低い声での“話し合い”を続けていた。暖炉は小さく息を吐き、赤い明滅が彼らの影を揺らす。
ポッターと目が合う。
デイヴは首を右に傾け、悪戯っぽく口角を上げてみせた。「よぉ」
「こんな夜中に冒険か? 好奇心旺盛でいいことだ」
ロンは露骨に仰け反り、「ギャッ」と妙な声を上げてポッターの背に隠れる。相当な目に遭ったのだろう。デイヴが歩み寄ると、汗と緊張が乾いたような、少し酸っぱい匂いがした。
ハーマイオニーが一歩前に出る。手には、さっき彼女に掛けてきたデイヴのローブ。
「どこ行ってたの? こんな夜中に。見つかったら減点ものよ」
デイヴは肩をすくめ、目だけで笑う。
「俺は見つかんねぇよ」
そう言いながらロンへ視線を流す。肩口がやけに濡れている。訊けば長くなる――面倒は嫌いだ。
「早く寝ろよ、研究生ども。朝は早いぞ」
それだけ告げて、踵を返す。暗がりへ溶ける横顔の青い目が、火の尾をひと筋引いた。
ハーマイオニーはローブを返す間もなく立ち尽くし、ハリーとロンは去り際に残った彼の視線の残光に、言葉を失う。しばし耳に残るのは、暖炉のぱち、という小さな破裂音と、彼が通り過ぎたあとに漂う、甘く焦げたような香りだけだった。
Gガン見てみようかなって思ったわ
今回薄味なのは次の回とかで日常会を挟みたいのでイベントをスキップしたかったからですね
追記:あと感想ください!!面白かったら!
曲の解説いるけ?
-
いる
-
いらん
-
ニョニョニョwwwwwwwww