ハリー・ポッターとマンキュニアンの少年   作:キラキラ武士

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エタりませんよええ。
ただ時間が取れないだけでして、えへ。


ダイアゴン横丁へ行こう

何故だかずっと眠れなかったデイヴは、朝早くにベッドから抜け出して、誰もいない公園で一人タバコをふかしている。

前世での思い出は、もうほとんど残っていない。ふとした瞬間に思い出すこともあるが、そのどれもが穴だらけでデイヴにとっては今では価値のないものと考えている。しかし精神的な面で、周りの子どもたちより老成していたデイヴは、周りに馴染めず自然と孤立し、やがていじめの標的になっていた。

それでも親に余計な心配はかけたくなかった。そんな彼がある日、いじめっ子の一人を殴り飛ばしたことをきっかけに、気づけば「不良少年」としての肩書きがついていた。

母が心を痛めているのは察している。自分を愛しているがゆえの心配だということも。でも、だからといって、あいつらと笑い合えるほど自分は器用じゃないし、寛容でもなかった。

学校外で気が合うやつらと出会えたのは、デイヴにとって幸運だった。彼らからロックやフットボールを知り、そして同じようにタバコを知った。

壊れたギターでビートルズを鳴らしながら、どこからかくすねたビール片手にくだらない話をし、サッカーの試合中のテレビにフーリガンまがいの罵声を飛ばした夜もあった。

 

けれど、あと一か月もすれば、デイヴは“ホグワーツ”という得体の知れない場所に通うことになるらしい。最初に「君は魔法使いだ」と告げられたときは、ふざけた悪戯かと思った。あの封書が本物だったなんて、今でもどこか信じがたい。

それでも、日に日に手紙が押し寄せてきたり、目の前でネコが人間になったり、逆に人が一瞬で煙のように消えたり……現実の理屈じゃ説明できないことが、次々と起こった。そうして彼も、とうとう腹をくくるしかなくなったのだ。どうやら本当に、魔法は存在する。

 

デイヴは指でタバコを弾いた。白い灰と一緒に火種が宙を舞う。マンチェスターはいつだって曇り空だった。いじめられて泣いて帰ってきたときも、いじめっ子をボコボコにしたのに心は晴れずむしゃくしゃしてた時も、ユナイテッドが優勝して歓声を上げた時も。

 

デイヴは不安だった。

これから向かう場所で、果たして友だちができるのか。杖やローブにはお金もかかる。家は貧しいから、好き勝手に支度ができるわけでもない。

母はきっと「気にするな、そんなの子どもが考えることじゃない」と笑うだろう。でも、そう言われて素直に納得できるほど、彼は幼くはなかった。

 

デイヴは柄にもなくワクワクしていた。

自分が魔法使いだなんて!自分もあんな風に動物に変身したり、空を飛んだりできるのだろうか。魔法使いが行く学校なんて、どんな学校なんだろう。少なくともあのクソみたいなプライマリーよりは、マシなとこだろう。

 

しかし、こんな俺が通ってもいいところなのだろうか。きっとすぐに退学になる。

けれど、もしかしたらーー、魔法の才能がある優秀な人間なのかもしれない。

 

不安と期待をないまぜにして、タバコを最後に一口吸った。

 

「ま、ケセラセラ、ってな」

 

タバコを地面に落とし、ぐりりと踏みつける。

見上げた空の隙間から、わずかに顔を覗かせた太陽が、彼の行く先をほんの少しだけ照らしていた。

 

ほんの少しだけ気分がマシになったあと、デイヴはようやく家にたどり着いた。

台所では、エルサが何も言わずにパンを焼いていて、彼の顔を見るなり、静かに皿を差し出した。

 

「食べなさい」

 

それだけ言って、彼の額に唇をそっと押しあてたあと、いつものように鞄を肩にかけ、玄関の扉を静かに閉めていった。

デイヴは、焼きたてのパンから立ちのぼるバターの匂いをただじっと見つめていた。パンから立ちのぼるバターの匂いは、どこか懐かしくて、安心する匂いだった。

 

デイヴは朝食を食べ終わったあと、ゆっくりとした足取りで部屋に戻っていった。満腹になって眠くなったからか、再びベッドに入り眠ろうとしている。

仰向けになって寝そべりながら、ぼんやりと眠気に支配されつつある頭で、デイヴはこれからのことを考えていた。

マクゴナガルと名乗った魔女が言っていた、ダイアゴン横丁なる場所。魔法使いにしか知られないようになっているとのことだったが、果たして自分にも見えるのだろうか?

魔法使いだと言われたとき、デイヴは柄にもなく未知の世界への好奇心と喜びに心を躍らせていた。それが恥ずかしくて、マクゴナガルにはバレているのかもしれない。

しかし、冷静になってみると、心の中の捻くれた自分が首をもたげて、ささやいてくる。

 

ーーもしかしたらこれまでの出来事は全部夢で、次目が覚めた時にはいつも通りの日常に戻っているのかもしれない。

 

どこか不安な気持ちを隠し切れないまま、デイヴはその意識をゆっくりと手放した。

 

 

 

 

デイヴはドアを叩く音で目を覚ました。

寝ぼけ眼で目覚まし時計を確認すれば、時刻は12時を5分ほど過ぎている。慌ててベッドから飛び起き、一張羅であるマンチェスターユナイテッドの真っ赤なユニフォームに着替えて、急いで玄関まで向かった。

 

二度目のノックが聞こえる途中で、デイヴは玄関のドアを開けた。

 

ドアの向こうには、想像通り彼女が立っていた。

しかし前回と違ったのは、彼女が来ているのが黒いローブととんがり帽子ではなく、よくいる年配の先生のような恰好で立っていたことだった。

淡いベージュのコートに、足元は控えめなローファー。肩にかけたカバンも、どこか公立学校の教師めいた風情がある。

 

「……おや」

 

マクゴナガルは軽く目を細めた。彼女の視線がデイヴの跳ねた髪と、マンチェスターユナイテッドの赤いユニフォーム、そして片方だけ色の違う靴下へと順番に降りていくのを、デイヴはただ黙って見ていた。

 

「その格好で、私を迎えるとはね」

「寝起きなんで……すみません。あと、意外と普通の格好で来るんですね。魔女っぽいの、勝手に期待してました」

「ご近所の目というものがあるでしょう。さすがに真昼間から、帽子を風に飛ばされては困りますから」

 

彼女はそう言って、わずかに口角を上げた。マクゴナガルが笑うのを見たのは、これが二度目だ。

 

「それにしても、五分遅刻です。もう少し時間に気を配りなさい、ジョンソン君。ホグワーツでは鐘が鳴ったら走っても間に合いませんよ」

「じゃあ、鳴る前に走ればいいんですか?」

「ふふ。口だけは達者なようね。では、少しお時間をいただけますか?」

「どうぞ。部屋は片付いてないんで、玄関でも?」

「玄関でも、ベッドでも、屋根の上でも結構。ただし——集中して聞くこと」

「わかりました」

 

デイヴは軽く敬礼してみせた。マクゴナガルは目を細め、彼のその軽口に対して何か言いかけたが、結局何も言わなかった。ただ、カバンの中から厚みのある羊皮紙の封筒を取り出し、彼の目の前に差し出した。

 

「では、改めて。ホグワーツ魔法魔術学校からの正式な入学許可証です。あなたには魔法使いとしての素質があり、それを学ぶ権利があります」

 

デイヴはそれを受け取りながら、小さく息を吐いた。

いよいよだ。あの日、あの時の不思議な体験が現実になる——そういう予感が、胸の奥にじわりと広がっていく。

 

「ちなみにこれ拒否したやついるんスか?」

 

デイヴは早速敬語を崩しながら、冗談めかしてマクゴナガルに尋ねた。

 

「ええ。もちろんいますとも。なにせホグワーツは1000年以上の歴史がある学校ですからね」

 

デイヴはわずかに驚いたあと、言葉をつづけた。

 

「ま、急にこんな手紙が来ても、困るやつらも多いっすよね」

「ええ。特に非魔法族の子は戸惑いますし、中には家庭教師を雇ってホームスクーリングを選ぶご家庭もあります」

 

デイヴが「へー」とだけ呟くと、マクゴナガルはドアを開けた。

 

「さあ、時間は限られてます。早速向かいましょうか」

「おっす」

 

どうやらダイアゴン横丁へ行くには、ロンドンにある「漏れ鍋」というパブを通る必要があるらしい。しかもロンドンまでは、まさかの地下鉄移動だという。

 

「え、あの“シュンッ”ってやつは使わないんすか?」

横を歩くマクゴナガルに、デイヴが不満げに尋ねた。

 

「“姿くらまし”のことですね。あれは免許が必要ですし、未成年には禁じられています。あなたはまだ訓練すら受けていないでしょう?」

 

「へいへい、わかってますって」

デイヴは肩をすくめて、ポケットに手を突っ込んだ。

 

「魔法使いの秘密の町に行くってのに、地下鉄使うなんて、なんか夢ないっすね」

「魔法使いも社会の一員ですからね」

 

そう言うとマクゴナガルは、「少し急ぎますよ、乗るはずの電車にこのままだと遅れてしまいます」といい、さっきよりも速足で歩き始めた。

デイヴは一つため息をつくと、「まあ寝坊した俺が悪いしな」、と小さく呟いて、渋々後ろをついていった。

 

地下鉄に揺られている間、デイヴはマクゴナガルによる“ちょっとした講義”を受ける羽目になった。

たとえば、魔法を使えない人間のことを「マグル」と呼ぶこと。ホグワーツでは四つの寮に分かれて生活すること。そして、それぞれの寮には異なる特色があること――などなど。

 

デイヴはほとんどの話を右から左へ聞き流していたが、「マグル」という言葉と寮の名前くらいはなんとか頭に入った。

マクゴナガルは少し不満そうな顔をしていたが、なんとか許してもらえたようだ。

 

そしてロンドンについた後、マクゴナガルと少々歩いた。駅の雑踏を抜けて大通りにたどり着くと、マグル達がたくさんいる道の途中で、ふと彼女は足を止めた。

 

「ここです」

 

マクゴナガルの視線の先には、ちっぽけな薄汚れたパブがあった。周りのマグル達はまるでその存在が見えていないようだった。デイヴは南のほうに住む奴ら*1があまり好きではないので、こんなボロっちいパブに顔をしかめず素通りしていることに驚いていた。

 

「……ここって、ただのボロいパブじゃないんすか?」

「ここは漏れ鍋といいます。多くの魔法使いや魔女はマグルに紛れて暮らしているので、ダイアゴン横丁へ向かう際は必ずここを通るのです」

 

二人は縫うように人の間をすり抜けながら漏れ鍋へとたどり着き、その誰も寄り付かなさそうなパブへと入店した。

 

中は外の今にもつぶれそうな雰囲気と打って変わって、とても繁盛しているように見えた。四人掛けテーブル席がごまんと並び、どの席も埋まっていた。体中に包帯を巻いたミイラのようなやつ、深くフードを被っているが、曲がった鼻がフードの陰から飛び出している老婆、魔女と言ったらこれ!というような、カラフルなとんがり帽子をかぶっている、年老いた夫婦に見える人間。他の客より四倍くらい背丈のある人間と、使い古されたダッサいシャツを着て眼鏡をかけている少年もいた。

 

どこを見渡しても、個性的な人?で溢れかえっている。

 

「すげぇー……」

 

デイヴは興奮していた。

まさかこんなに不思議な世界が広がっているとは思わなかった。不思議な香りが店中に立ち込めていて、赤や緑の煙を出した食べ物を口にしている客もいる(どう考えても人間には見えなかったが)。近くのテーブルに座る魔女と魔法使いは、グリンゴッツのゴブリンは未だに態度が悪いだとか、ガリオンだのクヌートだの聞きなれない言葉を使いながらしゃべっていた。

 

ひと際目を引く、もじゃもじゃの男が、その男より何倍も小さい男の子と一緒に立ち上がると、彼らは出入り口のほうへと向かっていった。

少年の腕には、鳥籠が抱えられている。中には、真っ白で見事な羽を持つフクロウ――そいつが、首をくるりと回しながら、ずっとこちらを見ていた。

 

雰囲気はどこにでもあるようなパブと同じで、皆思い思いのことをして騒いでいた。目に映るすべてが、楽しく、おかしく、不思議で怖い。でもそれ以上に、興味深い。

 

マクゴナガルはそんなデイヴを優しい目で見つめると、彼に声をかけた。

 

「さ、ジョンソン。こんなところで驚いていたら、横丁に着いたときは失神してしまいますよ」

 

デイヴはマクゴナガルのその言葉を聞いて、恥ずかしそうにしながら唇を尖らせて言った。

 

「こんな場所見たことないっすもん。みんな魔法使いって感じで……。ちょっと怪しい雰囲気だしてるやつもいるけど」

「ここには人以外にもいろんな者が来ますからね」

 

マクゴナガルはどこか嬉しそうな声色でそう言うと、手招きしながらデイヴを店の奥へと連れて行った。

 

店の奥には、これまた表のパブの様子にそっくりな、今にも壊れそうな扉があった。その扉を開けた先には、煉瓦で作られた壁が間近に迫っていた。

 

「ここがダイアゴン横丁へと続く魔法の扉です」

 

デイヴはちょっとがっかりした。

もう少し不思議な仕掛けがあるものだと思っていたが、これは単なる壁だ。多分そう見せかけているだけで、実は通り抜けられるみたいなオチだと思っていた。

 

「これからどうするんです?開けゴマ(Open Sesame)とでも言うんですか?」

 

マクゴナガルはまた嬉しそうに笑うと、デイヴの質問に答えた。

 

「ジョンソン、オープンセサミは実は本当に鍵を開く魔法なのですが、ここでは使いません」

 

デイヴは開けゴマがまさか本当に使われる呪文だということに驚いた。

マクゴナガルはポケットから、持ち手の最後に綺麗な装飾が施された、細長い美しい黒色をした棒を取り出すと、何気なく一振りした。

 

デイヴは再び驚いた。

教師然とした服装が杖を振った一瞬で、この間見た深いエメラルド色のローブに変わっていたのだ!

 

「すげぇ!」

 

デイヴは再びそう言った。

そしてマクゴナガルは壁を構成している煉瓦に、その棒を何回か不思議なリズムで軽く叩いた。

するとどうだろう。煉瓦の壁はまるで生き物のように動き始め、目の前に素敵な光景が見えてきたではないか。

 

煉瓦の壁の向こう側に表れた通りに、デイヴは一瞬で心を奪われた。

 

まず目に飛び込んでくるのは、ロンドンでもマンチェスターでも見たことのない、カラフルな建物の数々だった。どれもこれも看板は古びていて、年季の入った石畳の上に、まるで押し合いへし合いしているかのように並んでいる。屋根の上には色とりどりのフクロウや猫がいて、まるで幼い頃、母に読んでもらった絵本の中に入り込んだようだった。

 

「マジで、クソスゲェとこだな……」

 

空気の質まで、少し違う気がする。

 

匂いがまず鼻を打つ。甘ったるい香辛料の香りと、鉄とインクと煙草が混ざったような、何とも言えないにおい。誰かが笑っている。誰かが叫んでいる。頭上をフクロウが横切り、どこかで何かが爆ぜる音がして、煙の中から笑い声が響いてきた。

 

現実じゃない。だけど、夢でもない。

 

これが「魔法界」。自分が、足を踏み入れてしまった世界。

 

手にした手紙の重みが、急に現実味を帯びてきた。これは、選ばれたやつが来る場所なんかじゃない。自分みたいなやつも――来て、いい場所だったんだ。

 

「うわぁ……」

 

デイヴの脳みそは、あまりのワクワクと、飛び込んでくる情報量にパンク寸前だった。

 

マクゴナガルはデイヴのもとへゆっくりと歩み寄り、彼の肩に手を置いた。

 

「ようこそ、ダイアゴン横丁へ。そして、ようこそ、魔法界へ。ミスター・ジョンソン」

 

 

 

*1
Southern Softies マンキュニアンたちがロンドンに住む人間を揶揄する言い方




どうでしたか?
自分的には、前半のデイヴの内面描写と後半のダイアゴン横丁まで行くシーンはふたつにわけたかったんですけど、それだと確実にめんどくさくなってエタるからっていう自己中心的な理由でこういう形になりました。
時間が取れなかったとは言ったんですが、はっきり言って、例えば他のハリポタの二次創作を読んだり、ワンピとかBLEACHとかNARUTOとかガンダムのを読んでいると、どうしても自分の文章に自信が持てなかったり、気に食わなくて何回も書いては消してを繰り返して、それで結局時間がかかってしまうんですよね……。
実は一話だけ、ワンピとサムライチャンプルーのクロスオーバーを書こうとしてたんですけど、上記の理由で書くのやめちゃったっていう歴史があります。

できればここがダメとかここをもう少し書けばもっと良くなるとかアドバイスもらえると嬉しいです。初心者なので笑。

読んでくれてありがとうございました!次は1週間以内に投稿したいな。
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