ハリー・ポッターとマンキュニアンの少年   作:キラキラ武士

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彼らの出会いは捏造です。ちょっと中途半端なところで終わっていますが、これ以上書くと10000字超えそうなので、断腸の思いで切り上げました。


The Fu××ing Station at 9¾

ダイアゴン横丁から帰ってきてから、既に3週間が経とうとしていた。

デイヴは、特になんの感慨もなく、毎日をだらだらと過ごしている。マンチェスターの夏は曇りなことが多く、にわか雨も多い。夏特有のじめっとした風が顔を撫で、思わず顔をしかめる。デイヴは夏が嫌いだった。

珍しく机に座って読んでいた「基本呪文集」を適当に閉じて、ベッドの上に置いたままにしていたタバコとライターを手に取った。

 

「Oi, Dave!」

外へ出て一服しようと紙巻を口にくわえた時、デイヴは誰かに声をかけられた。

声がした方を見ると、二人の見知った姿が彼のほうに向かって歩いてくる。一人は坊主で背が小さく前歯が欠けている白人の少年で、もう一人はデイヴより背が高く、少し肉付きのいい黒人の少年だ。

 

「なんだよ、ライアン。万引きでもしたのか?」

「そんなチャチなことしねぇよ。やるならもっとでっかくだ。だろ?Big’Un*1

 

ライアンと呼ばれた少年は、隣にいる背が高い少年の腕を叩きながら言った。Big’Unと呼ばれた彼は、黙ってちょっと悪戯っぽく笑うだけだ。

 

「どうでもいいけど、俺を巻き込むなよ。テメェらのお小遣い稼ぎのせいでパクられたら、恥ずかしくって死ぬしかなくなるからな」

 

デイヴは皮肉気な笑みを浮かべながら、手で風を遮るように丸を作ってライターに火をつけた。

二回ほど短く吸って、完全に火が付いたことを確かめた後、深く煙を吸い込み吐き出した。

 

「おいSnaps。お前もこの前のシノギにいっちょ噛みしたの、忘れたか?」

「黙れよ、Gappy*2。テメェがどうしてもって言うから付き合っただけだ。文句垂れんなら最初から誘うな。それに、シノギだなんて格好つけてっけど、ありゃただの窃盗だ。ギャング気取りすんならgear*3でも売っとけ」

 

不服そうに坊主頭を掻くライアンを見て、デイヴは鼻で笑った。心の中で「金玉みてぇだな」と吐き捨てようとも思ったが、別に面白くもないので、黙ってもう一口吸った。

Big ’Unはしばらく黙っていたが、やがて顎をしゃくり、低い声で言った。

 

「Snaps、お前、ほんとなのか?」

 

「何がだよ、ゲイリー。俺がイケメンだってことか?」

「違う。お前、寄宿学校に行くんだろ?ライアンのお母さんが、お前のお母さんから聞いたらしいぞ」

 

田舎はうわさが回るのが早いというのは、どうやら万国共通らしい。

デイヴは鋭く舌打ちを一つついて、まだ長さのあるタバコを地面で揉み消した。

 

「そうだ、ゲイリー。なんか文句あっか?」

 

デイヴは鋭い目で二人を睨みながら言った。

 

「あと、Snapsって呼ぶな。ぶっ飛ばすぞ」

 

ゲイリーというらしい黒人の少年は、薄く笑いながら皮肉を返す。

 

「おいおい、優等生のふりか?やめとけよ。お前がキレたらすぐ殴るのはどこ行ったって変わんねぇだろ、Snaps」

「そうだそうだ。お前のせいで折れた歯、まだ治ってねぇんだぞ!」

 

デイヴはポケットに両手を突っ込んで、少しだけ顔を右に傾けた。

 

「そりゃお前がヤクに手ぇだそうとすっからだ。俺が嫌いなの知ってんだろ?」

「ライアン、あれはお前が悪い。こいつの薬嫌いと理由知ってんのに、目の前でそんなこと言ったら殴られるに決まってんだろ」

 

ゲイリーまでデイヴの味方をするので、ライアンは顎の裏を掻きながらバツの悪そうな顔をする。

 

「それで、本当なんだな?」

「ああ。明日ロンドンへ行って、そっからまた乗り継ぎだ」

「ノアは知ってんのかよ」

「いや……、言ってない。この夏休みも会ってないしな。まあ、クリスマスには戻ってくるつもりだし、そのころにはあいつも知ってんだろ」

 

ライアンは一瞬だけ口をへの字に曲げると、「まあ、お前がそういうならいいけどよ」とだけ言って黙った。

 

三人は誰が言ったわけでもないが、自然に近くに寄って、地べたに座った。デイヴが二本目のタバコを吸おうと一本取りだして口にくわえた時、両隣から腕が伸びて、箱から一本ずつ抜き取られる。

デイヴは呆れつつも、少し楽しそうに笑って、二人の紙巻に火をつけてやった。そして最後に、自身の分に火をつけた。

湿った風が、吐き出した煙を遠くへと運んでいく。

夏は相変わらず嫌いだが、こんな時間は好きだな__

そんなことをふと思うデイヴであった。

 

やがて太陽が沈み、空が濃い青に変わっていく。

3人は他愛もない話、例えば同級生の誰と誰が付き合ったとか、誰かの兄弟が警察のお世話になっただとか。そんなことを話すだけ話して、立ち上がった。

 

「じゃあな。また冬に会おうぜ」

 

軽く手を上げてライアンはニッと笑い、ゲイリーは肩を竦めた。デイヴは一人、路地を抜けて家へ向かう。

街灯のオレンジ色の下、ポケットの中でトランクの鍵が小さく鳴った。

 

夜。

ベッドの上には制服や呪文書が散らばり、トランクは口を開けたまま。

ジャックが窓枠にとまり、くちばしで硝子を軽く叩く。

 

「明日は早ぇんだよな……」

 

小さく呟き、残りの荷物をまとめて放り込む。

時計の針はすでに日付を跨ごうとしていた。

 

そして翌朝。

母エルサにより、朝早く叩き起こされたデイヴは、手早く支度を済ませた。

洗面所の鏡で髪形を整えて、鼻毛が出ていないか確認。

そのあと、小さなジップ袋を取り出した。まるでドラッグの入った小袋か、証拠品を持つようにつまんだその中には、シンプルな銀のフープが入っている。

慣れた手つきでそれを左耳に着けると、玄関に置いたトランクやら鳥籠をもって、家を出ていこうとした。

 

「待ちな!」

 

ドアノブに手をかけた時、キッチンからエルサの声が聞こえる。

 

「私もいっしょに行くから」

 

デイヴはちょっぴりうれしくなって、それを隠すように「早くしろよ!」と大声で悪態をついた。

エルサは「生意気ね!」と笑い、ジャケットを羽織って彼の後に続いた。

 

キングスクロス駅の構内は、朝の人混みと列車の汽笛でざわめいていた。

赤いレンガの壁を背に、エルサがトランクを支えながらデイヴの顔を覗き込む。

 

「じゃあ、楽しんでおいで。ケンカはほどほどにね」

「うるせぇよ」

 

口ではそう言いながらも、デイヴはほんの少しだけ笑った。

エルサは彼の肩をぽんと叩き、ジャックの籠をちらりと見てから手を振る。

 

「じゃ、行ってらっしゃい、坊や」

 

デイヴは坊やという言葉に少しムカついたが、それよりもうれしさが勝った。

 

「ああ、行ってきます。……母さん」

 

エルサは優しそうに微笑み、彼の頭を撫でて去っていった。

 

とりあえず駅の窓口でカートを借りたデイヴは、トランクや鳥籠を乱暴に載せ、駅構内へと入った。

ジャックが抗議するように短く鳴いたが、すぐに人の多さに気圧されたのか黙り込み、顔を翼の中へうずめて眠ってしまった。

 

腕時計を見れば、出発までまだ三十分以上ある。

それでも心の中は落ち着かない。

九と四分の三番線──そんなふざけた場所を探すために、この人混みの中を、大きなカートを押して動き回らなくてはならないのだ。

 

あの老魔女が口にしていた言葉を必死に思い出しながら、とりあえずホームの奥にある柱のあたりを注意深く観察する。

 

そして──気づいた。

多くある柱のひとつに、やけに奇妙な格好をした人々が、自分と同じようにカートを引いて近づき、そして姿を消していくのを。

 

(ためらわず歩く……だったか?)

 

先ほどまで観察していた一団が全員消えたのを見計らい、デイヴは件の柱の前に立った。

彼らが柱にぶつかる瞬間は一度も見えなかった。

そのたびに、背の高い高級スーツ姿のサラリーマンや、スコットランド訛りの観光客の一団が横切り、視界を遮ったのだ。

 

「……Fuck」

 

思わず口からこぼれる。

自ら柱に突っ込んで怪我をする趣味はないし、こんな大勢の前で不様をさらすつもりもない。

デイヴは深く息を吸い、意を決して柱に向かって走り出した。

気分は、フライパスを受けてカウンターに突っ込むときのカントナ。

 

足音がホームに乾いたリズムを刻み、段々とスピードが乗ってくる。

柱が迫るにつれ、周囲のざわめきが遠のき、視界の端で人影が流れていった。

 

……気づけば、そこはホームだった。

 

だが、先ほどまでいたロンドンのキングスクロス駅ではない。

頭上には「9¾」と洒落た書体で描かれた番線票が吊り下がり、縁には蔦の模様が金色に縁取られている。

高いガラス屋根から差し込む日の光が、駅構内を暖かい金色に染めていた。

 

周囲には、自分と同じくらいの年頃の子どもたちや、少し年上に見える生徒、その保護者らしき大人たちが行き交っている。

深紅の蒸気機関車が吐き出す白煙は、頭上を漂いながらゆっくりと消えていった。

 

足元を、様々な種類の猫が忙しなく通り抜けていく。時折、逃げ出したらしいカエルがぴょこんと跳ね、子どもたちの笑い声が上がる。

 

しばらくその様子に見入っていたデイヴは、自分の足元に座ってこちらを見上げている猫に気づいた。

 

「どうしたんだ。おやつは持ってないぞ」

 

しゃがみ込み、そっと両前足を持ち上げると、猫は驚くでもなく、無防備に身を委ねてきた。

大きなあくびをひとつしてから、デイヴの手の匂いを確かめるように鼻を動かす。

 

「すいませーん!」

 

鋭く通る声に振り返る。

 

「ごめんなさい、その子、私の猫なんです」

 

声の主は、どう見ても女の子にしか見えないのに、男物のTシャツと短パンを着ている。多分魔法使いの子だろうな、とデイヴは辺りをつけた。

両腕を伸ばして猫を受け取ろうとする彼女に、彼はそっと渡した。

そして、何となく首を右に傾け、少し見下ろすような形で目を合わせる。

 

「ちゃんと見てないとダメだぞ。猫はすぐどっか行くからな」

 

女の子はわずかに目を伏せ、「はい……すみません」と小さく答えた。

そしてすぐに踵を返し、人混みの中へと走り去っていく。

 

その背中を目で追いながら、デイヴは心の中で舌打ちをひとつした。

 

(……怖がらせちまったか。ミスったな)

 

肩を竦め、歩き出す。

前方はすでに人で溢れ、そこかしこで子どもたちが話し込み、窓から身を乗り出して家族と話している。

デイヴはふと、先ほど別れたエルサのことを思い出しながら、ホームを進んだ。

 

 

車両の中ほどまで来ると、人影はぽつぽつとまばらになっていた。

適当に人の少ない区画を見つけると、まず鳥籠を先に押し込み、トランクを軽く蹴り上げるようにして中へ滑り込ませる。

 

人の気配のないコンパートメントを見つけ、ドサッと背中から座席に体を預けた。

ふぅ、と短く息を吐きながらポケットを探り、手の中に馴染む金属とプラスチックの感触を確かめる。

取り出したのは、カセット式のウォークマン。10歳の誕生日に母から贈られた、ほとんど唯一と言っていいプレゼントだ。絡まったイヤホンを解きなおしながら、デイヴは外の喧騒に耳を傾ける。

そこらで家族が話しているらしく、特に声が似ていて、息の合った言葉遣いの男の声が聞こえる。

彼は特に興味を持たないまま、解き終わったイヤホンのイヤピースを耳に入れた。

 

デイヴは視線を左に着けた腕時計に向ける。十時五十五分ぴったりを指す針を見て、そこからまた動き始めた秒針を眺める。それと同時に、列車が汽笛を鳴らした。イヤホンを貫通する甲高い女子の声や、廊下を駆ける音がドン、ドンと響く。

デイヴは小さく息を吐き、再生ボタンを押す。入ってるカセットが何なのかは忘れていた。彼はその日の気分で聞く曲を変える。それに替えのカセットなら、トランクに入れた。気分に会わなければ変えればいい。

 

シーっとテープが走る音がして――

続いて聞きなれた、歯切れのいいギターのイントロが彼を満たした。

「Rock "N" Roll star」。

当たりだ。

デイヴのテンションが、曲の盛り上がりと一緒に急激に上がっていく。

 

あの兄弟は、マンチェスターが嫌いだったのだろうか。それとも誇りに思っていたのだろうか。

 

少なくとも、デイヴはあの街を好きにはなれなかった。

嫌な思い出は数えきれず、住んでいる人間の大半は tosser ばかり。

天気は悪く、空気も悪い。

チンピラかジャンキーか──そのどちらにもなりきれない腰抜けどもが、そこらをうろついている。

 

彼にとって宝物だった日々も、いつの間にか胸の奥で痛みに変わっていた。

 

もちろん、好きなものもある。

ユナイテッドはずっと応援しているし、ザ・スミスやストーン・ローゼズは彼が最も尊敬するバンドだ。

言うまでもなく、Oasis だって。

 

それでも――

きっとクリスマスや夏休みには帰らなければならないだろうが、少なくともこれから先、数か月はあのクソッタレな街に戻らずに済む。

 

そう思った瞬間、デイヴの胸の内にふつふつと嬉しさがこみ上げてきた。

 

曲がサビへと駆け上がっていく。

弟の、鼻にかかったような声――単語の端をわずかに引き延ばす、あの癖のある歌い方。

デイヴはそれがたまらなく好きだった。

 

その声がイヤホンを通じて耳の奥に響き、胸の奥まで振動が伝わってくる。

 

「Tonight I'm Rock"N"Roll Star」

 

(ロックスターじゃなくて、魔法使いだけどな!)

そんなクサいことを考えながら、デイヴは背もたれに体を預け天井を見上げた。

あそこから抜け出すには、どうにかしてビッグにならなきゃいけない。だから二人は音楽を始めたのだろうか……。

 

いつの間にか二番が終わり、曲も最後の盛り上がりに差し掛かっている。

ゆがんだような兄のギターと、リバーブのかかった、浮遊感のある歌声が、デイヴの思考を現実に引き戻した。

 

「It's just rock n roll」

「It's just rock n roll」

「It's just rock n roll」

「It's just rock n roll」

「It's just rock n roll」

「It's just rock n roll……」

 

小さな声で合わせて歌いながら、デイヴは次の曲は飛ばそうかなんて考えことをしていた。

このアルバムの曲は全部好きだが、唯一あの曲だけは好きになれない。

あのハイになって、酩酊しているような感じがデイヴは気に入らなかった。

 

曲がフェードアウトし始めて、次は飛ばそうとウォークマンを取り出したとき、コンパートメントのドアが無造作に開かれた。

デイヴは右側の眉をあげて、そちらを見る。

ひょろっとした黒人の子どもと、頬の赤い背の低い子が、二人そろって気まずそうに立っていた。

 

左耳のイヤホンを外す。そのイヤピースがフープに当たり、窓から差し込む光をかすかに反射した。

 

デイヴは右に頭を傾けて

 

「……何?」

 

とぶっきらぼうに尋ねた。

 

 

ディーン・トーマスが家族と一緒に、九と四分の三番線の入り口を探していたときだった。

横で「ためらわず歩くんだよ」と母親に背中を押されているのが、シェーマス・フィネガン。

 

「あ、君も新入生?」

「うん!僕、シェーマス。君は?」

「ディーン。──これ、すごいな」

 

二人はすぐに打ち解け、あっという間に家族同士も笑い合っていた。

気づけば、発車までずっとホームで立ち話。家族が魔法使いなの?と聞かれたり、魔法使いはフットボールみるのか?なんて聞いてみたり。

そのせいで、いざ列車に乗り込んだときには、空いているコンパートメントを探して車両をうろつく羽目になっていた。

 

重いトランクを引きずりながら、二人はしばらく車両を歩き回った。

だが、どこもかしこもすでに人で埋まっている。

時おり、一人か二人だけのコンパートメントを見つけても、

「友達が来るから」と言われ、結局は追い返されてしまった。

ため息をつきながら進んでいくと、列車の中央付近に並んだコンパートメントの一つに行き当たる。

そこには、一人だけが座っていた。

 

摺りガラスのせいでどんな人物がいるのかわからなくて、ディーンは引き戸を開けるのを少し躊躇してしまう。

そんな彼とは対照的に、シェーマスは楽観的な態度で取っ手に手をかけた。

 

「ねえ、また断られるんじゃない?」

「そん時はそん時だ!また違うところを探せばいいだろ?」

「確かに……。だけど――」

 

ディーンが言いかけた瞬間、シェーマスが痺れを切らしたように力いっぱいスライドさせた。

 

ドアを開けた途端、二人の目に飛び込んできたのは、足を組んで軽くうつむいている少年だった。

無造作に伸ばした黒髪が顔を覆い、表情はほとんど見えない。

 

脛の半分までだぶつくオーバーサイズのデニムに、足元は汚れた赤いコンバース。

胸には「SHARP」の文字が大きく入った真っ赤なユナイテッドのユニフォーム。

だが、胸元のUMBROのロゴは平べったく、刺繍もどこか雑だ。

サポーターなら一目で偽物とわかる、安物のシャツ。

 

やがて彼は、こちらに気づいたのか左耳のイヤホンを外した。どうやら左耳にピアスをつけているようで、外した際に窓から入ってくる光を反射してキラリと輝いた。

顔を左右に振って、その顔があらわになる。

つまらなそうに細められた目は、値踏みをするようにこちらを見ていて、口はすこし気を抜いたように空いている。

 

「……何?」

 

ぶっきらぼうに吐き出された一言に、二人は思わず顔を見合わせた。

 

「あの……他が空いてなくて。ここに座ってもいいかな?」

 

意外にも声をかけたのはディーンだった。

ウェストハムを応援している彼は、ユナイテッドのユニを着たこの少年に、どこか興味を惹かれたのかもしれない。

 

少年は二人の重そうなトランクを一瞥すると、鼻でフッと笑った。

「いいぜ。入れよ」

短くそう言うと、またイヤホンを耳に戻す。

 

二人は再び顔を見合わせ、今度は少しうれしそうに笑いながらコンパートメントへ足を踏み入れた。

 

トランクを置いて、少年の目の前の席に座った二人は、ちょっとした緊張感に包まれていた。

汽車はすでに走り始めていたが、彼は音楽を聴いたまま外を見続けている。大音量で聴いているのか、ギターやドラムの音がイヤホンから漏れている。

最初は声をかけようとしたものの、膝の上に両手を置いたまま微動だにしない姿に、言葉が出なかった。

 

それでも、ちらりと見えた横顔に、二人は思わず息を呑む。

長い前髪の下からのぞく青い目は鋭く、それでいてどこか影を帯びている。

鼻筋は通っていて、頬の線も綺麗だ。少なくとも、同い年にしては少しハンサムが過ぎる。

 

やがて少年は二人の方へちらりと視線を投げ、観念したようにイヤホンを外すと、組んでいた足を解いた。

 

「Wot, summat on me face or what?」

(なんだよ、俺の顔になんかついてるか?)

 

ゴリゴリのマンチェスター訛りだ。

シェーマスは今まで聞いたことのないそれに目を白黒させ、ディーンは、昔行った試合のスタジアムの中で聞いたのと同じだと思い、テンションが上がった。

 

「僕、ディーン。ディーン・トーマス。ディーンって呼んで」

「俺はデイヴィッド・ジョンソン。デイヴでいいぞ」

「よろしく、デイヴ」

 

ディーンが差し出した手を、デイヴは見た後、少し笑って握り返した。

 

「出会って握手なんて、ロンドン坊やらしい紳士的な対応だな?」

「君こそ、これから友人になる相手にするにしては、少し強く握りすぎじゃない?」

 

二人はちょっとだけ挑発的に笑って、それから手を離した。

 

「それで、そっちのやつは?まさか従者なんて言わないよな?」

 

デイヴはシェーマスを顎でしゃくりながら言った。

 

「従者じゃないよ!シェーマスだ。苗字はフィネガン。どっちでもいいよ、呼びやすいほうで」

「そうかよ、じゃあシェーマスだな。フィネガンって感じじゃない」

 

「握手しとくか?」とデイヴが聞くと、シェーマスは、笑いながら「いいよ」と答えた。

 

デイヴはわざと少し手を汚れているふりをしてから、がっしりと握る。

 

「爆発しねぇだろな?お前、そういう顔してんぞ」

「は?どういうことだよ!」

 

シェーマスがムッとするのを見て、ディーンとデイヴは同時に吹き出した。

 

列車の走行音に混じって、三人の笑い声が小さく響いた。

最初のぎこちなさは、もうどこかへ消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
デカブツ

*2
すきっ歯のスラング

*3
麻薬のスラング




ワイはウイイレからフットボールにハマったので、ユナイテッドで好きな選手はアンディコールです。一番好きなサッカー選手はメッシです。CR7も同じくらい。どっちが上とか不毛じゃないですか?どっちも同じくらいすごいでしょ。
皆さんはオアシスの曲で何が好きですか?僕はlisten upとlive foreverです。wonder wallとdon't look back in angerはもう好きとか通り越して殿堂入りですね。というかみんなオアシスなんて聞くのかな?
僕はハリポタからイギリスが凄い気になって、以来ずっとUKロックとか聞くようになったり、親が聞いてた影響でアデルとかも聞くんですけど、みなさん洋楽は聞きますか?
邦ロック(?)もいいですよね。邦ロックと言ってもアジカンとかラッドとかミッシェルはあれ邦ロックって言うのかな?語感で適当に言ってるだけなんですけど。
歌が好きなのに、そういう曲のジャンルとかあんまわかんなくて、ニルヴァーナがグランジって言うことくらいしか確固たる自信をもって言えるのはないですね。ストロークスはポストパンクって言うんですかね。俺は何も知らない。

曲の解説いるけ?

  • いる
  • いらん
  • ニョニョニョwwwwwwwww
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