ニートになって1年が経ったので、初投稿です。
燦々と照らす光。生い茂るターフに佇む美しい存在。仄かに感じるのはアンモニアやトリメチルアミンの匂いだろうか?ポトポトと落ちる運の塊は、地面に落ちてバラバラに崩れて、それらは時折踏み潰されていく。その光景が俺には、まるで数多の傑物がボロボロに砕け散っていくかのような残酷な一面にも見えていた。推定させるリグニンの摂取量は、一体全体どれほどのものなのだろうか…それをこの場で知る由はない。
そこで、ふと我に返った。
この期に及んで、俺が不安になっているのか…と?
「まさか…そんな巫山戯たこと、ある訳がないだろう」
──容赦などしない。突き放してやる。置き去りにしてやる。
否、心配する要素は微塵もなかった。何故ならそれは、この場にいる誰よりも1番に多いと自負していたからだ。
「それはこの子も同じか」
ハッと鼻で笑ったのはお互い様だろう。
「これなら本気でやれる」
──それで終わりか?吠えかかってこい、意地を示せ、追いついてみろ。
日本近代競馬の結晶と呼ばれたであろう深い衝撃、それを遥かに超えるべくして新時代の到来を告げた黄金に輝く絶対王者。その後に続いた最後の軌跡、それを払拭させるような天才の一撃、そして…その彼に争い続けた最高とも称されるべき逆襲の末脚。黄金の旅路にも似たその足跡は、血や意思となって脈々と次世代へ引き継がれた。
物語の手綱は、今この瞬間に解かれたのだ。
偶然か必然か、歴史とは過去と似た形となって繰り返されていくものである。
「勘違いしてるみたいだから言っとくけど」
──できないのなら下がれ。光を超えていく私の背中を、そこで見ているがいい。
刹那、轟音からの静寂、圧巻される周囲を纏っていた空気。人々の脳内に漏れ出た溢れんばかりの興奮物質…わかりやすく述べればドパミンによる脳内刺激か。その臨界点は、とうの昔に味わった快楽を遥かに超えていた。
高揚、或いは歓喜か。否、そんな生易しい言葉で表せるものではない。
そこにあるのは、ただの現実だった。
「そっちが挑戦者だから」
──超えてやる。
武者震いの訪れ…パドックから現れたその姿は、正に怪物と言わんばかりの覇気を放っていた。
俺の脳内に響くは、我先に往かんと言わんばかりに放たれた咆哮である。
目の前に居たのは、見間違いをする筈もない相棒。
日本では敵なし、海外でも見事な戦績を残した紛うことなき最強の馬。その再来と謳われた仔の戦場となるレース…晴れ舞台であるG1。
そこに、俺は居た筈だった。
『ウマ娘』
それは、別世界に存在する名馬の名と魂を受け継ぐ少女達。彼女達には耳があり、尾があり、超人的な脚がある。時に数奇で、時に輝かしい運命を巡る神秘的な存在。
そんな彼女達を、俺こと『安藤豊』は画面越しに知る存在だった。
苗字は偶々ではあるが、それ故に愛着がある。前世にて授かった俺の好きな名前は、運が良いことに今世においても同じだった。偉大かつ最先端を往く5Gのような力のある名である。
「いやはや、何と言うべきか…まさかとは思いますが、みたいな体験はしないと思っていたんだけど…こればっかりはどうしようもないよなぁ。それこそ、またしても何も知らないグランアレグリアさん、みたいな展開は味わいたくはなかったというか、勘弁して欲しいと叫ぶべきか。しかも、よりにもよって地方のダートに戻されるとは…『まわり道にはまわり道にしか咲いてない石垣島の花がある』とはいえ、最早カオス理論並の理不尽さだ。これこそダートだとーってか?HAHAHA!………そんなことよりも、このレース…ダービーにしては何か変…?」
俺は、中継越しに映る彼女達をパドックが映されていた時から再び画面を通して見ていた。
『スタートしました!綺麗に一線に揃いました!』
「流石は中央、スタートのレベルは高くて当たり前だよなぁ(すっとぼけ)」
『さぁ、先行争いであります!おお、メリービューティーが出て参ります』
「あぁ?メリービューティーだぁ?…メリービューティーねぇ。………ああ、そうか。あのゴールドシチーが出ているってことは、このレースこそが1987年の東京優駿をベースとしてモチーフにしていることに繋がる訳で…成程。……………んー………枠順から見ても展開的に見ても妥当だよなぁ。…ってことは、あの子がメリーナイスで、そのトレーナーが根本騎手で確定ってことで良いんだよな?未だに破られることもなかった6馬身差を付けたあれが…って、お前はメリーナイスじゃないんかいっ!!奇跡の血量もジンクスもあったもんじゃないな…」
アメリカにて良血馬として知られていた父を持つコリムスキー、地方にて優秀な成績を残した母ツキメリーの魂を持つであろう引き立て役の少女の名は、あろうことか別の名前となっていた。
この世界では、何故か特定の競走馬の名を除いて別の名前となり、あろうことかウマ娘の姿となって走っている。それも頑なに著名すぎる競走馬との史実にも合わせて、だ。
「まっ、そんなことはお構いなしに起こるだろうなぁとは思ったけどさ。ここまで露骨だと逆に目を疑いたくなるような、それこそ背けたくなるような思いを持つ訳でして」
油断もなければ隙もないこの世界の理不尽さ。
あまりにも条件が細かく、そして完結することがない世界の真理とも呼ぶべき史実。文字通り、全ての情報となった事実と前世での記憶を追うことは到底不可能だった。
流石はウマ娘というジャンル…一癖も二癖もあるのはいつものことか。コンテンツ界隈にて天下を取っただけのことはあるな、と感心を持ちつつ、俺は俺なりの手段と目的を持ってこの世界に挑む決心をする。
「そも、入学式がそろそろな時点で察していたからねぇ」
溢れんばかりの笑みは漏れる勢いとなって口元に現れるが、こればっかりは仕方がない。勝利の渇望に酔うならば、そこに似合うは山中塗りか、もしくは会津塗りが1番だろう。自分自身に酔ってしまうその性は、側から見れば中毒患者のような面をしているに違いない。
「いよいよって感じだよねぇ。…それはそれとして、悲劇の世代だけは本当に勘弁してクレメンス。いや、ホッッッッッッッッッンマに笑えないので。せめて、RRCを含めたドリームトロフィーリーグとかに出てください。お願いだから有マには出ないで春の天皇賞とかに行ってください。世界よ、どうか私のささやかな祈りをお許しくださいお願いします何でもしますから」
悲劇の世代。前世にて1984年に誕生し、1987年に現3歳を迎えたタマモクロスやイナリワン、マックスビューティ、ペイザバトラーなどを代表とした世代。
年度代表馬を受賞した馬が3頭もいる非常に珍しい世代として、そしてその3頭が1度も同じレースで走ったことがない唯一の世代として有名となっている。
「『スターオーが直るためなら、自分の身体が壊れたっていいんだ。スターオーに良い思い出をたくさんもらったんだから、つらい時は助けてあげたい』…正直に言って、あのガラスかつ奇形の脚で無理をしてまで走ってほしくはないんだよなぁ。でも、走れなくなったら走れなくなったで文字通りスマイルが消えそうだし。大体、最大時速70km/h以上のスピードでターフを駆け抜けなければならない時点で、常に死の危険と隣り合わせなんだからさ。願わくば、もう少し優しくプリティーな世界にして欲しかった」
バサっと広げた新聞記事には、都心部のものだけでなく地元のものも含まれている。他にもスポーツ雑誌やネットの記事に至るまで、ありとあらゆる情報が机や床にびっしりと散りばめられている。さながら教授顔負けといったその光景は、実質足場の踏み用がない状態となっていた。
目の前に積まれている書物の中に、マーチトウショウの名や姿は何処にも存在しない。その代わりと言っては何だが、フジマサマーチという名前があることは既に確認出来ている。他にも、ツインビーをモチーフとしたであろうベルノライトは勿論のこと、
そうして俺は確信へと至るのだ。
やっぱりビッグなレースほど展開が読みやすいんだな、と。
冗談はさておき、レースを見ながら物思いに耽る。
それは隣人の娘さんについてだ。
何処かぬぼーっとした、芦毛のウマ娘…その子は、俺が小さい時から家庭の都合上でお世話になっているからか、既に家族同然の存在となっていた。
いや、もしかしたら逆なのかもしれない。それこそ淡々と「君こそ私の家族だろう」みたいなことを言われそうだ。
こと、彼女のライバルとなる存在もプリティーな世界では例に漏れることなくトレウマ勢だった。芦毛という性質も含めて、恐らくは似たもの同士なのだろう。何せ、『上ばっか見とったら、大事なもん忘れてまう。自分の気持ちもちゃんと大切にせなあかんよな』や『いやぁ〜、ホンマ頼もしい相方やで、アンタ!』といったセリフは日常茶飯事である。
『なんでやねんっ!いや、いやいやいやいや。そもそもプリティーダービーなんやから、それくらいは普通のことやろ!!何や、やっすい挑発やな。安過ぎて質の悪さが見え見えやぞ』
どの口がほざいているのやら、『さあ!!ウチとやろーや!!』とか『おっ胸貸したるわ!』は序の口。
『ちょちょちょーい!!邪魔するで~、邪魔するんやったら帰って~並の鉄板ネタやんけ。アンタ、さてはシロウトやな?良いか?こういうネタ振りっちゅうもんはダンスレッスンの時みたいにワンツー!さんしっ!ごーろくでなしッ!!的なノリを1発かましてからボケに入るのが鉄則や!!相方とは言わずとも、せめて人との会話のテンポくらいは考えてくれへんと困るでー?ホンマ…お笑いってものがわかってない半端者が語ると碌なことが起きへんなぁ!!』
さらには『いやだぁああああここに住みたいいぃー!!』や『寂しんぼやなぁ…ちょっとの間だけやから』『ウチは今から赤ちゃんにされる』などと述べて甘える始末。
『ちょっ…それはプリティーちゃう。最後に至っては最早恐怖映像や。しかも、何や…引用元が結構なシリアス場面やんけ。色々と恥ずかしいわ』
極め付けは『ウチじゃ大したもんはあげられへん…けど!時間やったらある!今日は何時間でも付き合ったるで!』といった爆弾発言から、仕舞いには『コイツはなー、ウチの家族や!お父ちゃんも、お母ちゃんも、チビ達も知っとんねん!』と口にするくらいにはイカれているのだ。
『があああ!!ちゃうわ!!そういうことやない!!アレは!!いや…それはその…アレやで!その、アレや…アレ!』
挙げ句の果てには『見てみいあのバカップルどもを』と言いながらダーリンと仲睦まじい様子を見せつけるというあるまじき行為を周囲へと晒す確信犯へと至ってしまう。これには驚嘆する他ないだろう。散々『トレセン学園は婚活会場ちゃうで!』と口を酸っぱく述べていた癖して、たったの3年でこのザマである。何が白い稲妻や!!こんなんただの白い新妻やんけー!!
『あああ〜もうっ、あかーんッ!!こんなん我慢でけへんわ…!!実馬やったら噛んでるで!!そのセリフだけは断じて言ってへんっ!!ウチは絶対言ってへんからなぁっ!!』
このことから見てもわかるように、ウマ娘というのは良くも悪くも競走馬と同じく頭の中身も姿形もぶっ飛んでいるのだ。
『はぁ…はぁ…とはいえ、誰もツッコんどらんとこを見ると、これ、ウチがおかしいんか…?』
よって、余程のニブニブトレーナーでもない限りウマ娘に目を付けられた人間は、何れはそうなる運命を辿るのが常である。
『知らん…何それ…怖…』
正に、ハッピーライフハッピーホームだ。何処からかツッコミが入りそうだが、コレらに関しても抜かりはないと言うべきか…。やはりウマ娘と言えど、真にブレないのは十八番である。電光石火、疾風迅雷とはこのこと、流石タマモ苦労スだ。トレセン学園にツッコミ役が少ない事を良いことに、こうした事情に対しては敢えて気にしないほうが吉であることすらをも織り込み済みなのだろう。この変わり様には、流石に感服せざるを得ない。
『人の心とかないんか?…え、なんやこの空気。お見合いか?』
『お約束はやっておかないとマズイからね、仕方ないね』
『何でまだ登場すらしていないのに、食い気味を超えた酷い言われ様をされなければならないんや!!』
『(イジるのが)嬉しくて、つい』
『素直かっ!!!!!!』
気にしたら負けである。負けなのである。
「普段の佇まいからして何を考えているのかよく分からないってことは未だに多々あるし、正直に言って今もよく分からないことが多いけれど…大丈夫。何だかんだ言って賢いし、力も十二分にあるし、レースに対しての勘も冴えている。トレーニングも原作よりかはこなしているから…きっと何とかなる。それに、頭が良い上で少しバカなくらいが丁度いいって
いつだって歴史を作る競走馬は、頑張っていることに加えてちょっとだけ狂っているのだ。酷い言い方ではあるが、それで丁度良いのだ。世の中、完璧な人間など存在しないように、ウマ娘もまた馬と同様に少し抜けていたりズレているくらいが安心出来るというものだ。
「何だかんだ言ってレースを愛しているものにこそ、勝利の女神は微笑むってものよ」
此の馬にして此の子あり。そも、彼女の力を疑うようものならば、それこそ元ネタである馬に対して失礼に値するだろう。キチンと魂を受け継いでいるのであれば、問題はない筈だ。
『外を回ってヤマノピアーチェ、好位に上がって800mを切りました。注目のクラウドアースは、先頭までは15.6バ身…外目に回っています。今、600mの標識を通過しました』
「マヤわかっちゃった。あれがマヤノオリンピアちゃんで、あれがマティリアルちゃん!!ってジーニアスでもわかるかぁ!!これもうわかんねぇな。ガッキーごめんよ(サニースワロー)予想出来なくて…いや、今の彼女はダービージョッキールナスワローだったか。とはいえ、仮にチャクラ感知とか出来たとしても流石に無理ゲーだよなぁ。…頭にきますよ!!因みに俺は赤坂美聡さんより泉本奈々さんの方が好きです」
やめたくなりますよ~特定〜…ぬわあああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん!!馬主に罪はないけれど、自分… TADOKORO&U出しちゃっていいっスか?となりかけるが、野獣はあなただからね、しょうがないね…と、心の中にいる先輩が告げて来た。さらには手綱を引いて暴れんなよ…暴れんなよ…と、語りかけて来て制止するよう促してくる。俺はそれにおかのした、と返事をした。
モチーフとなる競走馬のファンの皆様や馬主の皆様、および関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを損なう表現は行わないよう心がけるのがファンだってこと、はっきりわかんだね。†悔い改めて†
…改めて思うけど、シェケナベイベーの対抗がシャケな!なの非常に《Fantastek!》だけど訳が分からん。あれ絶対薬(サーッ!(迫真))やってるでしょ。
『さぁ、第4コーナーのカーブに入ったウマ娘が、第4コーナーのカーブから直線へと向かって行きます。日本ダービー最後の直線だ!先頭はルナスワロー、ルナスワローが先頭です』
「髪直線、折り目も直線、やる気はもちろん一直線!って感じ、正に1.5マイルだね。…それに、良い視点を持っている。いやはや、いつ見ても本当に凄いよなぁ。可能性の塊…正に、走るために生まれてきた存在ってヤツか。とりわけ、ウマムスコンドリアの有無のみであそこまで到達出来るか普通?まさか、人間の姿のままであんな走りが出来るなんてよぉ。…俺も漢方をベースにアーユルヴェーダの理論を取り入れてピーをパーすることでポーがペーする薬でも飲んで走ってみようかな」
巷でちまちまな神様と呼ばれていた料理が上手な隣人が作るおやつ『特製おにぎり』を頬張り、レースで走っている彼女達を見守る。
死と隣り合わせとはいえ、いや…だからこそか。やはり馬が、ウマ娘が走る姿は何度見ても実に美しく感動してしまう。これは性分とはいえ仕方がないものなのだ。
あと、
『外に向かった各バ、400を切りました!その後、クラウドアースは、クラウドアースは、クラウドアースはその後のグループでちょっともがいている!ちょっともがいている!青い髪のクラウドアースは後方から4人目だ!おおっと!ここで、金の髪を靡かせゴールドシチー一気に来たァアー!!ここから届くか!?』
「…マジレスすると、マティリアルならシンボリ関係で来ると思ったんやけどな。こんなところにまで優れた素材にならんでええって。しかしながら、苦しそうにしているシチーさんは美しいべ…。ハッ!消えるべ!闇のわだす!!」
曰く、『戦う勇気ではなく、辞める勇気』という言葉がある。ブレーキをかけることがアクセルを踏み込むことよりも勇気が求められるケースは少なくない。そしてその勇気が持てるかどうかが本当に重要な意味を持っている。そうしたことをマティリアルに教えられた人物が居たのだ。
いや、本当なら教えられる状況はなるべく避けたいのだが、いかんせん現実は資本主義の遊び場である競馬という競技な故に、そこは割り切らなければならない。
正に純黒の悪夢そのものと言ったところか…それこそ『優駿』の教訓が心に刺さるだろう。今やオラシオンといったら、某ポケットなモンスターにて盛大に流れていた大いなる怒りを鎮める為の曲であるように…。その実、かの映画はいつの間にやら忘れ去られ風化された時代の産物となってしまった。
そう…所謂、またしても誰も何も知らない状態なのである。
正直に言って、こんなことを考えてしまう俺は本当に悪い子なのかもしれない。しかし、それらはいつの間にか心に纏っていた鎧の巨人とも呼ぶべきウォールマリアと共に薄氷のようにポロポロと砕け散っていた。
『さあ坂を上がって残り200!!ゴールドシチー苦しいか!!ゴールドシチー叫ぶ!!ゴールドシチー叫ぶ!!あぁっと!!ここで突如として1人抜き出して来た!!メリービューティー、メリービューティーが先頭に立ったぁあ!!何という剛脚!!何という末脚!!3バ身4バ身!!ぐんぐん引き離す!!これは決まったか!!これは決まってしまうのかぁっ!!2番手には内のルナスワロー!!外から突いてくるゴールドシチー!!しかし、2着はルナスワローか!!勝ったのはメリービューティー!!メリービューティーですっ!!」
「うっひょお!!四白!!流星!!6バ身!!マジで強いなメリービューティー!!強いっ!!それは何故か!!それはこの子の魂がメリーナイスだからです!!いや、元からメリーでナイスな魂に負けないくらいに本人が頑張ったからなんですけどね!!メリービューティーの力がとてつもなく強いからこそ為し得ることが出来た偉業よ!!やっぱりレースは良い!!今の気持ちを言うならば、それこそメリービューティーに抱きついて『ひゃっほう!!』と踊り出したい!!俺も越えるっ!越える!!越えてみせる!!全てを、超越してみせる!!」
現地との声の共鳴は、立ち上がった瞬間に足元から崩れ去る。
「グアアアアッッ!!痛い痛い!!だ、誰だぁ!?こんなところに資料の山を置いたのはぁ!!ワタシダーッ!!はぁぁぁぁぁぁぁ、っ、!?ぐはぁ!!脚が、もつれたぁぁぁっ!!」
「ど、どどどどうしたの!?豊君大丈夫!?何かあった!?怪我とかしてないよねっ!?」
激しいツッコミを入れる俺を他所にして、恐らく洗濯物を畳んでいたであろうウマ耳を持った女性1人が俺の側に慌てて駆け寄ってくる。年齢的に見れば20歳前後にしか見えない彼女は、一児の母でもあり、俺の身元引受人でもあり、また俺に関しての全面的な生活の補助、及びそれらの行動における文字通り全ての責任、即ち『管理』が仕事の一環でもあった。
「い、いや何でもないです。ちょっとタンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦並に愛を確かめていたら、タコさんウインナーを落としてしまって…その衝撃で頭をぶつけただけですから。」
「ウインナーを探して頭をぶつけたァァァァァァッ!?本当に大丈夫なのおおおお!?一体
「反応するのそこなんだ。完全にリーガルハイの伝説の回のノリじゃん。『成人女性から醸し出される芳醇な高級アワビを生で見たのは初めてですか?』並のセリフじゃん。ってか、全部男性器じゃん。金魂どころかまんたまのノリじゃん。あのさ、そんなことを言っていると本当に心が惹かれちゃうよ?DAN DAN心が惹かれちゃうよ?挙げ句の果てに金色の戦士になっちゃうよ?果てない暗闇から飛び出しちゃうよ?良いの?それでも良いの?」
「了承!!ふしだらな母と笑いなさい!!早速ジャムを作るわよ!!」
「麻婆カレーかオムライスでお願いします」
「麻婆カレーとオムライス…略して魔羅ということね。マーマン頑張っちゃう。マーラだけに」
「我れ昔より造る所の諸の悪業は、皆な無始の頓・瞋・痴に由る、身・口・意従り生ずる所なり、一切、我れ今皆な懺悔したてまつる。…いや普通逆では?」
「掛かっているかもしれません。冷静さを取り戻せると良いのですが」
「その言葉、そっくりそのまま返しますよ。ってか、色々と落ち着いてください。あなた何歳ですか!」
「37歳(鬼滅)」
「頭を垂れてつくばえ。平伏せよ」
「そんなこと私に言われても〜…」
「21年ぶり〜とか言って、『ぼっち・ざ・ろっく』に出てくる後藤美智代みたいに制服とか着ないでくださいよ?」
「あなた呼びも良いけれど、やっぱりお母さんって呼ばれるのも悪くはないわね」
「義理を付けなさい義理を。その文字だと完全にインブリードになるでしょうが!」
「なら、彼女にしたいですか?」
「いやー、キツイでしょ。振り回されっぱなしになると思いますよ」
「では、奇跡の血量と言われる4×3=18.75%で手打ちにしましょう」
「『掛かっていると焦って持久力を失います。賢さを上げると発生しにくくなりますよ』ってあのトキノミノルが言ってましたよ。ってか、もうこの領域にまで行くとゲノハラになると思うんですけどそれは…」
「ジェネティック・セクシュアル・アトラクションなどの現象を含めた近親相姦は、我が国日本のみならず世界でも起きている事柄ではあるわ。しかしながら、そうした遺伝子の働きは完全ではないし限界もあるのよ。例えば相手の匂い…とりわけ体臭に関して良いか悪いかを判断するにも全てが上手くいくとは限らない訳で色々とセンシティブだわ。一説には、それらの動きは遺伝的な相性というより遺伝的多様性を確保するための進化適応であると考えられていること、また女性が妊娠、或いは経口避妊薬を摂取した場合など、状況によってはその嗜好が逆転し、より近いHLAやMHCを好むことだって…」
「貴方の話はいつもわかりにくい。もっと簡潔に言え!」
「子宮が恋に落ちた」
「一児の母親だからこそ生々しいンゴねぇ…流石に勘弁してクレメンス」
「結論から述べれば、いつかあなたのホワイトなルビーでロマンスな小説を書きたいわ」
「不倫ネタもバツイチネタも扱うの難しいんだからヤメレ。主人に申し訳なくなるんやから」
「その主人っての辞めたら?」
「…え?」
「だって、君が物語の主人公でしょ?」
「何だ…この気持ち。下腹の辺りがキュンとするってばよ…って、なるわけないやろがっ!!味噌汁で顔洗って出直してきな」
「え?『俺の味噌汁を毎朝作ってくれ』って?なんですかその表現。きゅん」
「それはなんでしょうか。面白いですか?おいしいですか?」
「まあ私のほうが速いですが」
「そーなんだぁ。じゃあこのやりとりもむだぼねだねー」
「ねえ、本当にダメなの?ちちんぷいぷい、いたいのいたいのゲームセット!とかいらない?それとも、私が丹精込めて作り上げた
「何処ぞの作品と同じく押しが強すぎるな。全く、誰に似たのやら…却下」
「大丈夫?おっぱい揉む?私が食べてたパン一緒に食べる?大事なことだから2回も言うけど、やっぱりジャムる?愛の架け橋を作ってラヴでオンリーなユーする?ってか、真面目に未知の洞窟にテイクオフ?ときめきスクランブル?新時代の扉、こじ開けちゃう?」
「開けろ!うまぴょい警察だ!案件になっても良いなら、どうぞお構いなく…」
「………………………ところで、鼻血大丈夫?」
「そんなに葛藤するところかなぁ!?何だかんだ言っていつものことだから大丈夫だって…」
「せーのっ!はいちーん!」
「…ずびびっ」
「可愛い僕ちゃん♡それじゃあママ特製嗜好のふきふきで絶え間なく溢れ出る液体を洗ってあげるからね♡」
「わあい!ママだいすき!僕だけの美人なママ!何者にも代えがたいママ!御託は済んだかよマゾメス」
「…2人とも、何をしているんだ?」
大量の汗が熱気となって蒸発をし、形を露わにする。それは怪物と呼ぶに相応しい、文字通りの異分子。彼女が表す表情は、ぬいぐるみにも嫉妬を覚える怒りそのものである。脅迫と信頼を兼ね備えた殺気は瞬く間にプリティーを置き去りにし、この空間を完全に支配した。
一瞬の静寂が訪れた後、彼女は俺たちを無視してカボチャ頭の仮面とジャージを手に取り無理矢理にでも着ろと言わんばかりの無言の圧を放ってせがんでくる。その訴えに秒で負けた俺は直様早着替えを行い、そうしてまたもや彼女に何も言われることなく問答無用で連れて行かれるのだった。
夕焼けと重なるようにして顔を赤らめた彼女の真意がどちらに傾いているのかはわからない。が、少なくとも私に付き合わない限り許すことは到底不可能だと言わんばかりの熱気が彼女自身にこもっているように感じているように見えてしまう。
俺は、星の引力のように導かれるようにしてアレよアレよとその熱に惹かれる。彼女と共に軌道に乗った今を写した瞳には、この星の輝きを消し去りはしないという願いが成就したかのような、美しくも確かな眩しさがあったのだ。そこに怖いものはなかった。
「流石に夜間に響くのは互いに危険だからな。程程にしとけよ?」
「あ、あああんな巫山戯たやり取りをしていて、今更何を惚けているんだ!一回本当に痛い目を見ろ!いや見るな!それよりも私を見ろ!」
「はいはい、ちゃんと見ているから」
「あと、私の方がお母さんより速いし若い」
「あのネタは義母さんが、それこそノリノリで」
「…ノリノリだった。豊も悪気はなさそうだった」
「俺が悪かったって…本当にごめんなさい(というか、漫画やアニメの冒頭で彼女が全力で走っていた理由がこの世界になるとこんな感じに変化するのか…。いや、もしかしなくてもこれが原因か?まさかな…)」
数あるスマホアプリのゲーム枠の内、名を轟かせた【ウマ娘プリティーダービー】という神作品。その中に、派生として存在していた青年コミック作品がある。
昭和末期から平成にかけての3年間、1頭の芦毛馬がターフを沸かせ続けた名馬、その名をオグリキャップと言う。日本の競馬史上、最も多くのファンに愛された馬の名前だ。
そして、その彼をモチーフとした物語が存在する。
それを人々は【ウマ娘シンデレラグレイ】と称し、彼ら彼女らを再び愛した。
5月31日、日曜日。カサマツ町サイクリングロード。
ガタゴトとゴーという地響きにも似た音が鳴り響く。17時35分に出発する名鉄岐阜行きの金魚鉢。そして17時37分発、名鉄名古屋線の特急が時速約65knのスピードを保ち木曽川に架せられた昭和の象徴に進入する。橋梁、正式名称を木曽川橋梁と名称されるそれは、曲弦ワーレントラス桁7連を主体とした赤が目立つ鉄橋であり、橋長の長さは名鉄線内最長である481.76mを誇る。この長さは、これでもこの地域で木曽川の川幅が最も狭い箇所であることで有名だ。
工事が開始されたのは昭和6年10月、昭和恐慌の真っ只中にて鴻池組の請負で着手された。幾千もの出水に苦しめられながらも昭和9年11月に竣工をしたことで、本橋は開通することとなり、かつ本橋の完成によって、名古屋から一宮市の名鉄一宮駅までを開通としていた既設線と、美濃電気軌道が建設した岐阜〜笠松間の線路が接続され今日に至る。
そうした由緒正しき象徴とも呼べるものが、この町【カサマツ】にも堂々と存在している。
笠松とカサマツ、何故カタカナ表記となっているのかは作中の都合及びCygamesの影響として処理されているが故に、どうやらこの世界においてもそうなるように都合が回っているらしい。
この為、今世においては既にスマホ他含めた最新機器が登場しているのだ。
現に公式より『シンデレラグレイの劇中では時代設定的な部分をあえてファジーにしています』と、当初から既に述べられていることからも伺えることだろう。
だからこそ、ある意味では行動しやすいという難点が発生している。それはそれで面白い要素なので利用するに限るに越したことはない。が、いかんせん
余談はさておき、俺は彼女と共に今世においてもほぼズレることなく時刻表通りに動くであろう電車のタイミングを利用して高架下を通過し、カサマツみなと公園へと向かった。
ATOがあるのかどうかは不明だが…時刻表通りに動くと言っても、所詮は人が作り出した世の中で運用されている、偏に人の手で動かす鉄の塊だ。秒数によるズレは機械であろうと補うことは不可能である。加えて、彼女達ウマ娘にとっての戦場はレース場である。故に、周囲の風景に紛れることなく体内時計を鍛えるにはもってこいの代物なのだ。
「時間にして約2秒の遅れだね」
「ペース配分が甘かった…修正する」
「理由は明白だよ…乱れすぎ」
息を乱しながらこちらの様子を探る彼女は、いつ何時でも真剣な面持ちである。俺はそれに対して滾る想いが漲っていた。
「…しかし、この状況は何度体験しても恥ずかしいんだが」
「今更恥ずかしがることはないでしょ。それこそ、小さい頃からずっとやってきたことじゃん」
「だからこそだろ!…よ、よりにもよってこの年になってまでおんぶをするだなんて!」
俺達が子供の頃、とりわけ彼女は生まれた時から立てないほどに足が弱かった。
【ハツラツ】という似合わない名前を受け継いだ、彼女の弱々しい姿が見るに堪えなかった。無理をしたような顔で笑う表情が心底苦手だった。涙を流しながらプルプルと震え立つ姿が嫌いだった。
何を考えているのかよく分からない面が大嫌いだった。
だから俺はこの世界の常識やルールに囚われることなく、世間の目などを関係なしに彼女を背負って外へと連れ出した。
満足に動けない癖してお腹を空かせる彼女がウザくて、人参を思いっきり大量に購入して困らせた。
ついでに皮肉たっぷりに「期待してる」とでも言ってやった。
不器用なことを利用して、下手くそな料理も作った。
痛めた足に鞭を打つ真似もした。
正に『事実は小説よりも奇なり』である。まさか、嘘偽ることなく捻りもないままに本当にオグリキャップであるとは思いもしなかったが…。
…とはいえ、生憎と負けず嫌いな俺がここで折れる訳には行かなかった。代わりと言っては何だが、そのお返しに彼女が自立して歩けるようになった際に嫌がらせとしておんぶをせがんだことがきっかけとなり、今に至る訳である。
現に、こうして似合わない形で恥ずかしがる姿は至高の領域だ。ザマァ味噌漬け。
「そのおんぶをずっとしていたからこそ、低姿勢を維持しやすいんじゃないの?」
油断をすることもなく、かかさずに正論パンチを下す俺が居る。この発言は、時折畜生なことを言う先輩から直々に学んだものである。ありがとう先輩、次は来世でアウォーディー。
「そ、それは…豊が毎日かかさず一生懸命にマッサージをしてくれたからであって…」
何を言っているんだこの娘は…全く。馬並びにウマ娘に対しては、超えてはならない一線というものがあるのがわかっていないのか。はぁ…熟思うことではあるが、これだから天然素材で作られたモノホンの天然は言うことが違いますわ。いやはや、流石と言うべきか…。あの兄弟が如く、
「やれやれ。キャップ…つまるところ頂点の名を受け持ったにしては、君はえらく動揺するよね。本当に悪い癖だよ?」
「だったら、もう少し安全面を効かしてちゃんと乗ってくれ!足は少ししか乗せてないし、手に限ってはほぼほぼ肩に触れるか触れないか程度。これでは乗っているかどうかもわからないじゃないか!」
「仕方がないでしょ。これに至っては癖というか、リスペクト精神満載の姿勢そのものなんだよ」
「…豊は時折変なことを言うんだ。そういう時は決まって私を見ていないんだ。よくよく聞けば答えになってないし」
「それでも…『
「このゲス野郎が!」
「い〜いねぇ…実に良い!実に素晴らしい!他者と競い合う事により生じる走りの変化…興味深いものだねぇ!」
それに伴った反骨心もまた…非常に可愛いものですねぇ、と俺は思わず素の感情を表に出す。
「さてさて、その実本題に移ろうと思うのだが…」
「ぐっ…」
実に唆るものだ。この景色を北原にも届けたい一心である。
「まさかのオグリキャップともあろうものが、この程度の障害でへこたれるのか?こんなことすら乗り越えられなければ中央なんてまだまだ、それこそ頂点に立つなんて夢物語だね」
「ぐぬぬぅ…ぐうの音も出ない…」
「はい、そういう時は決まって何を言うんだったかな?」
──暫し、沈黙。
「ちょちょちょちょちょーてん!」
「素直にやるなんて太っ腹すぎだろ。ダイエットしろ、器のデカさの」
「君が毎回やれって言うからやっているんだが!?」
もう我慢出来ない…友よ、君は何故そこまでして揶揄いたくなるまでに面白いのだ。こんなことをされてしまっては心がピョンピョンして、文字通りジャンピング覇王祭りになるに決まっているじゃないか。
「まあ冗談は小惑星の多さ並みにさておき」
「良くないが?それこそ、故意に『
「こと勝負事において、こういうちょっかいってのは上に行けば行くほど時として洗礼といった形の名前を借りて受けることがあるんだ。ここまで過剰かどうかはさておき、息の乱れ…とりわけ動揺に気を取られてしまっては致命的となりやすい。知らんけど」
「いや、知らないのかい。まあ…豊がそう言うんなら、きっとそうなんだろうな」
「特に、いや…ここから先、G1を目指すともなれば尚更だ。かの名高い有馬記念は2500m、春の天皇賞や菊花賞に至っては3000mを超す。それに、有馬記念には文学があるんだよ」
「文学」
「色々と御託を述べたけど、要するに様々な観点から言っても持久力は付けるに越したことはないってことだよ。そこには身体も精神も関係ない。時として、非情な選択を迫られることもあるだろうし…それこそ、全盛期として走れなくなった苦しい時こその一歩が大事になってくるかもしれない。こと、レースにおいて真っ先に戦うのは誰でもない己自身なんだ。そこには、でももクソもありはしないんだ」
「…ああ、そうだな」
「理由がはっきりとしているからこそ、どんな時でも…それこそ戦場では常に戦局に左右されがちとなる。つまるところ、腹を括らなければ意味はないんだぞ。これは謂わば必要悪。仕方のないことなのさ」
「なら、今までのこのやり取りはちゃんと意味があることなんだな?」
「そうだ」
「なら我慢する」
チョロかわ。
「で、肝心の体力はどれくらい回復したのかな?」
「君のちょっかいが無ければ、もう少し早く回復していたぞ」
「そうなのか?それは災難だったね」
「………腹が立ちすぎて言葉が出なかったのはこれで何度目だろうか。まあいつものことだし良いか…もう一本、走っても良いか?」
「走り過ぎにも限度有り、しかしそのスタミナ誉れ高い。あと3本はイケる。それ以上は明日があるから無し…という条件付きで可能だと思うぞ」
「…因みにだが、根拠は?」
「今更何を言っているんだ…いつものやつだよ。所謂、勘だよ勘。俺の勘は外れたことがないんだ」
「ん。豊がそう言うんだ。…それで行こう」
「…で、何でお母さんはお母さんでおんぶの態勢になっているんだ?」
「私だって豊君に乗ってもらいたい!」
「素直か」
「素直だね」
宣告通り、3本走り終えた後に俺は彼女に向けてある言葉を述べることにした。これは、ある意味では先取りの意味も兼ねてのことである。つまるところ、彼女にとっての闘い方を変える必要が生まれてしまったことによる弊害を一時的に矯正するということだ。まあ、彼女にとっては余計なお世話でもあるだろうが、やっておいて損はないだろう。
「入学直前で悪いんだが、ひとつだけ言っておきたいことがあるんだ。確証があると言えば嘘にはなるが、義母さんの主観による発言を聞いていた分だけ確信めいて言えることではある。無論、勘ありきでの発言にはなるけど…」
「何?」
「あ、それ私も聞きたい」
「明日からはいよいよカサマツで走ることになる。だから…」
「………だから?」
「ワクワククライマックス!」
「ダートだからダーッと走れ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「わかった」
「わかったの!?」
「初めてのバ場。感触を確かめることは忘れずに気楽に力を抜いて、最初はスパートとかはなしに一気に走り抜けろ…でしょ?耳にタコが出来るくらい豊が言いたいことはわかるから。…で、合ってる?」
流石だ。お前が居ると日本のロックがまだ死んでないという事を確信できる…と、いつもながらに感心する。とりわけ、レースのことになるといつにも増して頭の回転が速い…これぞ一級品だ。
「………正解だ」
「すっご。流石私の娘」
「これこそ一心同体ってやつだな」
「よーしよし良い子だよしよしオーグリグリグリグリ」
「もっと頭を撫でてくれても良いんだぞ豊」
「あまり甘やかさないでよ?寧ろ私にもやってちょうだい」
「くそ…なんだその上目遣い…どこで覚えてきた!?かわいいね♡」
「マズイな…このままだと外だというのにバブリキャップにされてしまいそうだ」
「パパぁ!バブみに差が出ないよう均等に甘やかしてほしいでちゅー!!」
「はーいよしよし。やっぱり赤ちゃんだけあって思想も赤いのねぇ」
「やはり豊の手は温かいな」
「ン゛オ゛ォ゛オ゛ェ゛オ゛!!」
「こんな弱点だらけで今までよく生きてこられたな、草食動物恥知らず」
ある意味で時代を作った覇者の王が浮いている構図には涙を隠すことが出来ないが、総じてこの瞬間に怖いものはなくなった。躊躇うことはなく、ましてや戸惑うことなどあり得ない。運命が呼んだbig bangは、神話となって輝きを増すものである。
「つまりお祭りということか」
「マツリダワッショイ」
昼と夜の長さがほぼ等しくなる時…我々の生きた証が、まもなく悲願の第一歩を踏み出すことになる。我々の時代、黄金の永世一強が蘇るのだ。準備は既に整っているので、明日から忙しくなると思う。モーレツにな。
「お祭りだな」
「お祭りねー」
諸君の、高度経済成長的頑張りを期待している。
「お母さんアレ何ー?」
「しっ!見ちゃいけません!!」
バケモンの宴とも呼ぶべき新時代の扉が、ゼロから始まるNew storyとなって今幕を開けた。
まだまだ俺のウマ娘への愛は終わらないのだよ!