Fate/American Dream   作:おみかんみ

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聖杯戦争-1

 半壊した俺の家は相当ダメージがあったらしく、電気が通らなくなっていたところがいくつかあった。

 取り敢えずリビングの電気は付くから、良しとしよう。

 

 と言うわけで俺とセイバーはリビングに移る。

 

 リビングに行くと、セイバーは物珍しそうに部屋を見渡す。

 魔術的なものは何もないし、あっても宝石が入ってる箱とかそんなのしかない。

 

 つまり珍しいものなんて何もないのだが、それでもセイバーは初めて見るような目つきでキョロキョロと見渡していた。

 俺はそのことが気になって、聞いてみることに。

 

 

「そんなに珍しいのか?」

「はいっ。聖杯には知識として伝えられているのですが、こうして目にすると、やっぱり珍しいものでして……」

「聖杯──?」

 

 

 恥ずかしそうに答えるセイバーに対し、俺はその言葉だけが気になっていた。

 昔、父の遺品にそれに関するものが書かれている本があった。

 

 どんな本だったか、今となってはもう思い出せもしない。

 まぁ、そんな不確定的な情報は一先ず片隅にしまっておくとしよう。

 

 今はとにかく情報が欲しかった俺は、スマホから姉に向けて電話を掛ける。

 

 電話を掛けて一秒も経たないうちにコールは止んで、電話が繋がった。

 

 相変わらず電話を取る速度が早い。

 

 

『はーい、裕二(ゆうじ)。アンタから掛けてくるなんて珍しいじゃない。どうしたのよ』

「はーい、じゃねぇ。と言いたいとこだが、聞きたいことが山ほどある」

 

 

 と言うわけで、今までの事情を説明。

 

 ランサーと名乗る男に殺されかけたこと。

 セイバーと名乗る少女が現れて命を救われたこと。

 

 サーヴァントだの、令呪など、聖杯など、俺が聞いた言葉を全て伝えた。

 

 その結果、まず返ってきたのは大きなため息だった。

 

 

『アンタ……随分と厄介なことに巻き込まれたわねぇ』

「厄介?」

『聖杯戦争。アンタはそれに巻き込まれたのよ』

 

 

 そう言うと語り始める。

 

 聖杯戦争。

 それは魔術師によって行われる聖杯を掛けた争い。

 

 歴史に焼き付いた記憶から呼び覚まされる七騎の英霊と、それを従える七人のマスター。

 

 それらが最後の一組になるまで取りおこわなれ、最後まで残った一人と一騎は聖杯を手にし、ありとあらゆる願い事を叶える権利を得る。

 

 とのことだ。

 

 その他にも細かいことは色々聞いたが、基本的なところはこれらしい。

 

 ちなみに、元々は日本の冬木ってところで開催していたらしいが、それはもう解体されて存在しないらしい。

 

 

「じゃあなんだ。俺はその聖杯戦争ってのに巻き込まれたってことか?」

『そー言う事。だから厄介って言ったのよ。そもそも何で聖杯戦争が起きてんのよ、冬木の聖杯は解体されたはずよ』

「俺に聞くなよ。こっちは巻き込まれた側だぞ」

『わかってるわよ──そうね。一先ず身の安全の確保を急ぎなさい。最優のセイバー召喚できたとは言え、アンタは素人。いつ命を狙われるか分からないわ』

「あ、ああ、わかった」

 

 

 そのためには取り敢えず、教会に向かえとのことだった。

 聖杯戦争が行われているのならば、監督役として取り仕切る人がいるはず、とのこと。

 

 その後でどうするか決めると良い、とのことでもあった。

 

 

『ああ──、それと』

「まだなんかあるのか?」

『英霊はサーヴァントとはいえ、過去に生きていた人。ちゃんとした人間的な感覚を持ち合わせてるわ。対話はしとくことね』

 

 

 そう言えばまだ自己紹介の一つもしていなかったことを思い出す。

 

 てんてこ舞いだったからな、それが思いつかなかったとは言え、自己紹介の一つもないのは宜しくない。

 

 

『取り敢えず、明日の朝にはそっちに着くから、それまではしっかり身を守ることね』

「えっ。帰ってくんの?」

『帰るわよ。流石にアンタがそんな方に巻き込まれてんのなら』

 

 

 それまでは生きていなさいよね。と言って一方的に切られてしまった。

 あ、おい! と声を荒げるも時既に遅し。

 完全に通話は切れてしまう。

 

 

「ったく。いつも一方的だな、姉貴は」

 

 

 仕方なくスマホをしまって、物珍しそうに部屋中を見て回っているセイバーに声を掛ける。

 

 

「セイバー」

「ひゃい!」

 

 

 ビクッと驚いたように声を張り上げる。

 こういう反応を見ると、彼女も人間なのだと思い知らされてしまう。

 

 

「改めて言わせてくれ、さっきはありがとう。君が来なかったら俺は死んでいた」

「い、いえいえ。私はマスターに召喚された身ですので、守るのは当然のことです」

「取り敢えず、これからは一緒に行動することになるみたいだし、自己紹介だ。俺の名前は裕二・アルヴァス。歴史も何も無い魔術師の息子だ」

「私は……」

 

 

 セイバーは少し考え込む。

 姉貴曰く、サーヴァントと言うのは過去に生きた英霊。

 即ち、その生き様が今に現れる。

 

 サーヴァントは七クラス、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーに分けられるが、それぞれが当時の名を持つ。

 

 真名と呼ばれるものだ。

 

 この真名がバレるということは、それはつまり弱点を晒すようなもの。

 これだけは避けたいと姉は言っていた。

 

 その反面、マスターは真名を知っていなければ、そのサーヴァントが持つ切り札、宝具が分からないとも言っていた。

 

 なかなかのジレンマだが、一先ずそれについて俺は知る必要がないだろう。

 タイミングはセイバーに委ねれば良い。

 

 もしものときは、令呪(これ)が使えるとも言っていたし。

 

 

「セイバー、一先ずはそう呼んでもいいか?」

「っ! 申し訳ありません、マスター」

「大丈夫だ、俺としても不要なリスクは避けたいし。取り敢えずこれからしばらく、よろしくな」

 

 

 セイバーと握手を交わす。

 

 ──大丈夫とは言ったが、なんとなしに予想はできてしまうんだよな。

 

 この十字が刻まれた外套に、騎士のような格好。

 恐らくだが十字軍。

 もしくはそれに類する組織に所属していたのだろう。

 

 とは言え、女性で十字軍ってなんだ……? 

 

 ──まぁ、予想大会はここまでにしておこう。

 それこそ答えにたどり着いてしまっては本末転倒と言うやつだ。

 

 俺は一先ずセイバーを椅子に座らせ、俺もその対面にある椅子に座る。

 

 

「と言うわけで、一旦は教会に行こう」

「教会、ですか?」

「ああ、監督役ってのがいるらしい。その人がルール説明とか諸々してくれるってさ」

「成る程、わかりました。でもマスター、外に出るときは必ず私から離れないでくださいね? 何処で命を狙われるか分かりませんから」

「わかった。何もできないのが悔しいが、護衛は任せたぜ、セイバー」

「はいっ! お任せください!」

 

 

 目先の目標は決まった。

 一先ずは生き延びることを最優先に、教会へと向かうだけだ。

 

 俺はセイバーとともに立ち上がると半壊した家を出て、近くにある教会へと向かうことにするのだった。

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