Fate/American Dream 作:おみかんみ
半壊した俺の家は相当ダメージがあったらしく、電気が通らなくなっていたところがいくつかあった。
取り敢えずリビングの電気は付くから、良しとしよう。
と言うわけで俺とセイバーはリビングに移る。
リビングに行くと、セイバーは物珍しそうに部屋を見渡す。
魔術的なものは何もないし、あっても宝石が入ってる箱とかそんなのしかない。
つまり珍しいものなんて何もないのだが、それでもセイバーは初めて見るような目つきでキョロキョロと見渡していた。
俺はそのことが気になって、聞いてみることに。
「そんなに珍しいのか?」
「はいっ。聖杯には知識として伝えられているのですが、こうして目にすると、やっぱり珍しいものでして……」
「聖杯──?」
恥ずかしそうに答えるセイバーに対し、俺はその言葉だけが気になっていた。
昔、父の遺品にそれに関するものが書かれている本があった。
どんな本だったか、今となってはもう思い出せもしない。
まぁ、そんな不確定的な情報は一先ず片隅にしまっておくとしよう。
今はとにかく情報が欲しかった俺は、スマホから姉に向けて電話を掛ける。
電話を掛けて一秒も経たないうちにコールは止んで、電話が繋がった。
相変わらず電話を取る速度が早い。
『はーい、
「はーい、じゃねぇ。と言いたいとこだが、聞きたいことが山ほどある」
と言うわけで、今までの事情を説明。
ランサーと名乗る男に殺されかけたこと。
セイバーと名乗る少女が現れて命を救われたこと。
サーヴァントだの、令呪など、聖杯など、俺が聞いた言葉を全て伝えた。
その結果、まず返ってきたのは大きなため息だった。
『アンタ……随分と厄介なことに巻き込まれたわねぇ』
「厄介?」
『聖杯戦争。アンタはそれに巻き込まれたのよ』
そう言うと語り始める。
聖杯戦争。
それは魔術師によって行われる聖杯を掛けた争い。
歴史に焼き付いた記憶から呼び覚まされる七騎の英霊と、それを従える七人のマスター。
それらが最後の一組になるまで取りおこわなれ、最後まで残った一人と一騎は聖杯を手にし、ありとあらゆる願い事を叶える権利を得る。
とのことだ。
その他にも細かいことは色々聞いたが、基本的なところはこれらしい。
ちなみに、元々は日本の冬木ってところで開催していたらしいが、それはもう解体されて存在しないらしい。
「じゃあなんだ。俺はその聖杯戦争ってのに巻き込まれたってことか?」
『そー言う事。だから厄介って言ったのよ。そもそも何で聖杯戦争が起きてんのよ、冬木の聖杯は解体されたはずよ』
「俺に聞くなよ。こっちは巻き込まれた側だぞ」
『わかってるわよ──そうね。一先ず身の安全の確保を急ぎなさい。最優のセイバー召喚できたとは言え、アンタは素人。いつ命を狙われるか分からないわ』
「あ、ああ、わかった」
そのためには取り敢えず、教会に向かえとのことだった。
聖杯戦争が行われているのならば、監督役として取り仕切る人がいるはず、とのこと。
その後でどうするか決めると良い、とのことでもあった。
『ああ──、それと』
「まだなんかあるのか?」
『英霊はサーヴァントとはいえ、過去に生きていた人。ちゃんとした人間的な感覚を持ち合わせてるわ。対話はしとくことね』
そう言えばまだ自己紹介の一つもしていなかったことを思い出す。
てんてこ舞いだったからな、それが思いつかなかったとは言え、自己紹介の一つもないのは宜しくない。
『取り敢えず、明日の朝にはそっちに着くから、それまではしっかり身を守ることね』
「えっ。帰ってくんの?」
『帰るわよ。流石にアンタがそんな方に巻き込まれてんのなら』
それまでは生きていなさいよね。と言って一方的に切られてしまった。
あ、おい! と声を荒げるも時既に遅し。
完全に通話は切れてしまう。
「ったく。いつも一方的だな、姉貴は」
仕方なくスマホをしまって、物珍しそうに部屋中を見て回っているセイバーに声を掛ける。
「セイバー」
「ひゃい!」
ビクッと驚いたように声を張り上げる。
こういう反応を見ると、彼女も人間なのだと思い知らされてしまう。
「改めて言わせてくれ、さっきはありがとう。君が来なかったら俺は死んでいた」
「い、いえいえ。私はマスターに召喚された身ですので、守るのは当然のことです」
「取り敢えず、これからは一緒に行動することになるみたいだし、自己紹介だ。俺の名前は裕二・アルヴァス。歴史も何も無い魔術師の息子だ」
「私は……」
セイバーは少し考え込む。
姉貴曰く、サーヴァントと言うのは過去に生きた英霊。
即ち、その生き様が今に現れる。
サーヴァントは七クラス、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーに分けられるが、それぞれが当時の名を持つ。
真名と呼ばれるものだ。
この真名がバレるということは、それはつまり弱点を晒すようなもの。
これだけは避けたいと姉は言っていた。
その反面、マスターは真名を知っていなければ、そのサーヴァントが持つ切り札、宝具が分からないとも言っていた。
なかなかのジレンマだが、一先ずそれについて俺は知る必要がないだろう。
タイミングはセイバーに委ねれば良い。
もしものときは、
「セイバー、一先ずはそう呼んでもいいか?」
「っ! 申し訳ありません、マスター」
「大丈夫だ、俺としても不要なリスクは避けたいし。取り敢えずこれからしばらく、よろしくな」
セイバーと握手を交わす。
──大丈夫とは言ったが、なんとなしに予想はできてしまうんだよな。
この十字が刻まれた外套に、騎士のような格好。
恐らくだが十字軍。
もしくはそれに類する組織に所属していたのだろう。
とは言え、女性で十字軍ってなんだ……?
──まぁ、予想大会はここまでにしておこう。
それこそ答えにたどり着いてしまっては本末転倒と言うやつだ。
俺は一先ずセイバーを椅子に座らせ、俺もその対面にある椅子に座る。
「と言うわけで、一旦は教会に行こう」
「教会、ですか?」
「ああ、監督役ってのがいるらしい。その人がルール説明とか諸々してくれるってさ」
「成る程、わかりました。でもマスター、外に出るときは必ず私から離れないでくださいね? 何処で命を狙われるか分かりませんから」
「わかった。何もできないのが悔しいが、護衛は任せたぜ、セイバー」
「はいっ! お任せください!」
目先の目標は決まった。
一先ずは生き延びることを最優先に、教会へと向かうだけだ。
俺はセイバーとともに立ち上がると半壊した家を出て、近くにある教会へと向かうことにするのだった。