ダンまちTACTICS   作:Leni

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48.剣聖は謳われる

 ベルとリリルカが、『Lv.2』への道筋をヘスティア神に示されてから、一晩が過ぎた。

 その日も二人は、ダンジョンでの狩りを休止することに決めた。

 

 二人がダンジョンで遭難していた十日ほどの期間、この本拠(ホーム)竈火(かまど)の家』には誰も住んでいなかった。ヘスティア神は、ベルたちが遭難している間、【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)へ入り浸っていたらしい。

 フィン率いる救助隊は、ギルドから貸与されたままだった『眼晶(オクルス)』をダンジョンに持ち込んでいた。それを使って救助の状況が地上では把握されており、その情報をいち早く聞くために【ロキ・ファミリア】のもとへ滞在していたのだ。

 そのせいか、不在期間の続いた家は掃除が(とどこお)ってしまい、床に埃がうっすらとたまっていた。

 

 その汚れ具合を見たベルとリリルカは、仕方なしに丸一日を家の掃除で費やすことにした。

 ヘスティア神はというと、本日も《ヘスティア・スピア》で負った借金を返済するためのアルバイトに向かっている。眷族が稼いだ資金は借金返済に充てないと言い続けている、頑固な女神さまであった。

 

 そうして、二人がかりで家の中をピカピカにした、夕刻。

 夕食は本拠で取らずに、皆で外へ出ることになっていた。ヘスティア神が二人の無事の帰還を祝うため、店に予約を取ったのだ。

 

 そのヘスティア神はバイト先から帰って来るなり、ベルとリリルカのことを呼んだ。

 

「おおい、大ニュースだよ、大ニュース!」

 

 大騒ぎするヘスティア神に、リリルカは何か嫌そうな顔をしながら、自らの主神に尋ねる。

 

「なんですか、また何か厄介事でも拾ってきましたか? リリは付き合いませんよ」

 

「違うよ、吉事だよ、吉事! 良いニュースの方だ! これを見てくれたまえ!」

 

 リリルカがよく見ると、ヘスティア神の手には、一冊の情報誌が握られていた。

 オラリオで発行されている、最新の街中の情報を載せた広報用の冊子である。

 ヘスティア神は、居間のテーブルにその冊子を広げ、リリルカとベルに記事を見るようにと促した。

 

 そこに書かれていた文字を見て、眷族の二人は自らの主神がここまで騒いでいる理由を即座に理解した。

 

『ロキ・ファミリアの最高幹部三名、同時にランクアップ! Lv.7へ』

 

 そんな見出しが、情報誌にデカデカと載っていたのだ。

 そして、ベルとリリルカが記事を見ていくと、いろいろな事情が見えてきた。

 

 なんでも、ここ最近の騒ぎでオラリオ市民が『闇派閥(イヴィルス)の残党』の存在を知ってしまい、市中に不安が広がっていたらしい。

 オラリオにて六年前まで続いた『暗黒期』の爪痕は未だ深く、市民たちは当時を思い出して、またそんな時代が訪れるのではと噂していたのだとか。

 

 だが、先日の『魔城』攻略で、『闇派閥の残党』の根城を封鎖することに成功した。

 さらに、その攻略の過程で、オラリオの主戦力を集めた【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】率いる派閥連合は、『魔城』の中でそれぞれ強敵を打倒した。

 その結果、偉業を達成したと見なされたメンバーが続出。【ロキ・ファミリア】の最高幹部である、フィン・ディムナ、リヴェリア・リヨス・アールヴ、ガレスの三名も、それぞれ『Lv.7』にランクアップすることに成功した。

 

『暗黒期』の再来に恐怖していたオラリオ市民へ、【ロキ・ファミリア】が明るい話題をもたらしたことになる。

 オラリオの未来は、希望に満ちている。

 

 おおよそ、そんな感じの記事であった。

 

「うわあ、お師匠様、とうとう『Lv.7』ですか……」

 

 リリルカが、自分の師匠であるフィンの到達した高みを知り、逆に引いたような声でそう言った。

 一方、ベルはと言うと、ほとんど言及されていない【フレイヤ・ファミリア】について、疑問を持った。

【ロキ・ファミリア】が『魔城』攻略の成果として三人とも偉業を達成したのならば、【フレイヤ・ファミリア】の幹部たちも同じく偉業を達成したのではないかと。

 だが、これにはリリルカが否定の言葉を口にした。

 

「【フレイヤ・ファミリア】は、全員が美の女神様の(とりこ)だそうです。よって、団員の方々にとって他の団員は仲間ではなく、主神の寵愛を奪い合う敵なのだとか。そのせいか、他の団員が偉業を達成しようとすると、率先して邪魔をしようとするそうです」

 

「うわあ……なんというか……うわあ……」

 

 まさかの派閥事情に、ベルはドン引きした。

 

「フレイヤも、何を考えているんだかねぇ」

 

 その美の女神と知り合いなのだろう、ヘスティア神が呆れたようにそう言って、情報誌のページをめくった。

 そこには、オラリオ市民に提供された別の明るい話題が載っていた。

 

 今回の、【ロキ・ファミリア】が関わった一連の事件。それを一つの物語として出版する動きがあるそうだ。

 物語のタイトルは、『狂乱の戦譚(オルギアス・サガ)』。

 

『人造迷宮クノッソス』を巡った、多くの戦いが収められるという。

 それの記事を見て、ふとベルは思った。もしかすると、自分もその物語の登場人物の一人として、登場できるのではないかと。彼の心臓は高鳴った。

 

「物語の編纂(へんさん)は、あのヘルメスが担当しているらしいよ」

 

「えっ、ヘルメス様が本を書くんですか?」

 

 まさかの知り合いの神の名前をヘスティア神の口から聞いて、ベルは驚き声を上げた。

 

「そうみたいだねえ。ヘルメスなら良い物語を書くだろうさ。おっと、二人とも見なよ。次の記事も面白いよ」

 

 ヘスティア神が情報誌のペーシをめくり、また別の記事を二人に見せる。

 そこには、なんとヘルメス神が編纂した物語がすでに、酒場で公演されていると書かれてあった。

 

「酒場で公演、ですか?」

 

「すごいよね。ヘルメスはこの現代に、吟遊詩人(ぎんゆうしじん)を蘇らせたんだ」

 

「吟遊詩人……古代の語り部ですね!」

 

 まさかのワードに、昔話や英雄譚が大好きなベルは、テンションを上げた。

 吟遊詩人。はるか昔に存在したという、世界を巡り各地の人々に音楽と共に物語を聞かせて楽しませる職業だ。

 

 記事によると、繁華街の舞台役者が古代の語り部や吟遊詩人に(ふん)して、オラリオの各地にある酒場や飲食店で、(うた)の公演を行なっているのだとか。

 

「公演場所も載っているけれど、リュー君が勤めていた酒場でもやっているのさ。今日の晩ご飯はその店で予約しているし、ついでに公演を楽しもうじゃないか!」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ヘスティア神が予約を入れていた酒場は、オラリオの西のメインストリート沿いに存在した。

 

「やあやあ、シル君、さっきぶりだね! 約束した通り、みんなで食べにきたよ!」

 

「はい、ヘスティア様、いらっしゃいませ。【ファミリア】総出でありがとうございます」

 

「団員は二人だけしかいないけどね!」

 

「でも、少数精鋭なのでしょう? 聞きましたよ? 『Lv.1』の団員が、リューと一緒にダンジョンの奥地から生還したそうですね」

 

「そうだね! で、そのリュー君は、オラリオにまだいるのかい?」

 

「はい。本人は今にも旅立ちたがっていましたけど、オラリオから出るにあたって、ギルドでの手続きが多いらしくて。今も、ギルド本部に行っています」

 

「勝手に店員をスカウトして、悪かったね」

 

「いいんです。あの子が幸せになれるなら、居場所は別にこの酒場でなくても」

 

 ヘスティア神が酒場の店員と話しながら入店し、奥の席へと移動していく。

 それを後から追いつつ店の内装を見て、ベルは少々驚いた。街の酒場というには、どことなく上品な店構えなのだ。

 店員を務める給仕たちも、いずれも綺麗な制服を着た美しい女性たちばかり。

 だが、リューが勤めている店だという事実を思い出すと、ベルは一転、深く納得した。

 

 あの気高いエルフのお姉さんが場末の安酒場で給仕をしているイメージは、ベルには持てなかったのだ。

 

 そして、二人と一柱は、店の一番奥にある席に座る。

 ベルは手慣れた様子のリリルカにメニュー表を渡されるが、そのメニュー表の値段はなかなかのものであった。

 ただ、ベルとリリルカは『Lv.1』にしては破格の稼ぎを誇っている。高級そうな店構えと言えども、一応は大衆酒場に分類されるこの店で、支払い能力の限界を迎える懸念はなかった。

 

 そうして、メニュー表を見ながら、自分用の飲み物と、三名で一緒に食べる料理を決めていくベル。

 すると、ふと彼は、シルと呼ばれた給仕の少女にジッと見られていることに気付いた。

 

「えっと……」

 

「ふふっ、こうして間近で見ると、やはりまぶしい方ですね」

 

「うん……? どこかでお会いしたことがありましたか?」

 

「いいえ、ベル・クラネルさんは、有名人ですから」

 

「なるほど……確かに、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』で目立っていたんですよね」

 

 確かに自分は、オラリオ全体に顔が割れていたな、とベルは今更ながらに自覚した。

 そんなベルと給仕のシルのやりとりを楽しげに見守っていたヘスティア神。彼女は二人の会話が収まった頃に料理の注文を告げ、そして締めに言った。

 

「ベル君はボクの眷族(かぞく)だから、盗っちゃダメだぜ?」

 

「いえいえ。そもそも私、ここまでキラキラした人はそこまで好みじゃないですよ」

 

「そうかい? なら安心だ」

 

「はい、安心ですよー」

 

 なんだか、美少女に目の前で一方的にフラれた気がする。ベルはそんな事実に気づき、ショックを受けた。

 それから、リリルカも飲み物と料理を注文し、ベルもそれに倣うようにシルへ注文を伝えた。

 

「では、少々お待ちくださいね。今日は吟遊詩人の方が物語の最終章を唄うので、客入りが多いんですよねー」

 

 シルが手もとの注文票にメモを取りながらそう言うと、ヘスティア神が楽しげに言った。

 

「そうそう、今日はその吟遊詩人の(うた)も聴きにきたのさ。でも、最終章かい? ついているのかいないのか、分からないなぁ」

 

「章ごとに独立した盛り上がり所があるので、問題なく楽しめると思いますよ。私も最終章は初めて聴きますけど」

 

 そうして料理の到着を待つうちに、店内の席はドンドン埋まっていき、満席近くになった。

 すると、店の混雑状況を見ていたのか、ようやく店内に用意されたステージへ一人の男が進み出てくる。

 

 それは、いかにもな格好をしていた。

 古代のモンスターあふれる危険な世界を旅して、英雄たちの活躍を語り継いだという吟遊詩人。その彼らが扱った典型的な楽器の一つと言われるリュートを携えた、マント姿の美丈夫。頭には羽根突き帽子を被っており、いかにもな雰囲気が出ているとベルは思った。

 

 その彼がステージに上がったのを見届けた客たちが、まだ何も演奏されていないというのに割れんばかりの拍手をした。

 口笛ではやし立てる者もおり、さらには店内を行き交う店員に向けて「曲が始まる前に酒を」と催促する声も上がる。

 

 そして、吟遊詩人に扮した舞台役者が、その細く長い指でリュートを奏で始めた。

 

「今宵、語るのは……一人の少年剣士が、邪竜に挑む物語」

 

 おや、とベルは思った。

 少年剣士、邪竜。そのワードに、まさかという気持ちが湧く。

 

「『狂乱の戦譚(オルギアス・サガ)』最終章『邪竜殺しの(ドラゴンスレイヤー)英雄伝説』」

 

 タイトルをそう宣言して、吟遊詩人の語りが始まった。

 

 オラリオから遠い、はるか遠い国。その国に、剣聖と謳われるとある剣士がいた。

 その剣聖には、弟子がいた。弟子の名は、ベル・クラネル。かの【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の眷族が残した、遺児であった。

 

 そんな始まりに、ベルはシルから渡された飲み物を吹き出しそうになった。

 やっぱり僕の話だ! しかも、自分の経歴が、完全に漏れている! 最近知ったばかりの生まれの秘密まで!

 ベルの顔は、嬉しさと恥ずかしさで、真っ赤になった。

 その赤ら顔をヘスティア神とリリルカ、そしてちゃっかりベルたちのいるテーブル席に座ったシルが、ニヤニヤと笑いながら眺めた

 

 今まさに語っている物語の主人公が近くで恥ずかしがっているなどとは、予想だにしていないのだろう。

 吟遊詩人に扮した役者はリュートを爪弾き、緩急を付けながら語りを続けた。

 

 剣聖の弟子ベル・クラネルは、長く続いた戦争を生き抜いた末、若い身の上ながらも騎士に任命される。だが、内戦で敵の奸計に陥った師を救い出すために、騎士の位を捨てる決意をする。

 そして、師の名を世界に轟かすため、自らも剣聖の高みに登るため、国を出て迷宮都市オラリオを目指した。

 

 道中では、時には女神アルテミスと共に古代に封印されたモンスターを倒し、時には『竜の谷』からこぼれおちたドラゴンに襲われた村を救い、時には大神ゼウスや男神ヘルメスと出会い夜通し語り合った。

 

 そんな旅路の末、彼は世界の中心オラリオに辿り着く。

 街の片隅にあった古教会で夜を明かそうとすると、今まさに派閥消滅の危機にあった女神ヘスティアと彼は出会う。

 太陽神アポロンに見初められた女神の眷族である少女を救い出すため、剣聖の弟子は『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に挑み、圧倒的劣勢にも関わらず勝利した。

 

 女神ヘスティアの眷族となった剣聖の弟子は、さらに剣の腕を高めるため、オラリオ最強の剣士である【剣姫】に挑む。

 互角の戦いを繰り広げた二人は、互いを認め合う剣の友となる。

 

 その後、【剣姫】の主神である女神ロキとの知己を得た彼は、かの道化神が挑む『魔城』攻略戦に参戦することになった。

 

『魔城』の奥には強大な邪竜が眠っており、その竜の吐息(ドラゴンブレス)でオラリオを破壊せんとしている。

 それを打ち砕くため、剣聖の弟子ベル・クラネルは、女神ヘスティアから授かった力、鐘の音を鳴らし魔を討つ技を行使する。

 鐘の音が高らかに響き、聖なる剣が彼の手の中で光輝く。そして、たった一太刀で剣聖の弟子は邪竜を討つのであった。

 

 一人の少年を主人公とした英雄譚が、メインストリート沿いの酒場にて、高らかに唄われた。

 酒場は大盛況。店の外にも、席に座れずにあぶれた客が、酒場の店員に酒を頼んで立ち飲みしていた。

 

 曲が終わり、万雷の拍手が酒場を埋め尽くす。

 舞台におひねりが飛び、酒の追加注文が次々と飛び交う。

 

 それを見ながら、物語の主役に抜擢されたベルは、ひたすらに顔を真っ赤にしていた。

 酒場の盛り上がりは本当にすごかった。

 特に、最後の邪竜を討つために鐘の音を響かせるシーンは、大盛り上がりであった。

 

 それもそうだ。あの日、あの時、実際にオラリオに住むの全ての人々は聞いていたのだ。黄昏を告げる鐘の音を。

 

「いやー、すごい(うた)だったね、ベル君」

 

 ヘスティア神が、ご機嫌な調子で料理を平らげながら、ベルに向けてそう微笑みかけた。

 対するベルは、恥ずかしがればいいのか、得意げにすればいいのか、今まで味わったことのない複雑な感情で奇妙な表情になる。

 

 それをヘスティア神とリリルカがはやし立て始め、給仕のシルも調子に乗ってベルのお酌を始めた。

 すると……。

 

「おい……あそこにいるのって……」

 

「剣聖の弟子だ!」

 

「本人が聴いていたとか、超ウケるー」

 

 酒場にいた客がベルの存在にようやく気付いた。

 彼の顔は、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の時に全市民が目撃している。他人の空似という言い訳も、通用しないであろう。

 瞬間、酒場はさらなる騒ぎに包まれた。

 ベルは酒場全体にはやし立てられ、ヘスティア神とリリルカと一緒に、吟遊詩人のいる舞台まで押し上げられてしまった。

 

「いやはや、大騒ぎだね」

 

 そんな状況でも、ヘスティア神は楽しそうにしていた。自分の眷族が褒めたたえられるのが、純粋に嬉しいのだろう。

 一方、自分もステージ上に移動させられたリリルカは困惑しており、ベルと一緒にステージの上で硬直した。

 だが、そんな状況でもさすが舞台役者と言うべきか、吟遊詩人に扮した美丈夫は、場を見事なトークショーに変えてしまった。

 

 ベルの過去を無闇に暴き立てようとすることはせず、主にさきほどの物語の振り返りを客と一緒に行なった。

 

 ヘスティア神も、その美丈夫の態度を気に入ったのか、二人でトークをガンガン進めていった。

 

「しかし、ヘルメスも、ベル君を最終章の主役に据えたのはお目が高いけどさ。真の狙いはなんなのだろうね。怪しいことを考えていないといいけど」

 

「さて、わたくしには、神のご意志を推し量ることなど、とてもとても。ただ、神ヘルメスは、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を詳細に語る(うた)も創っている最中だそうですよ」

 

 その言葉にリリルカがギョッとして、吟遊詩人に尋ねた。

 

「『戦争遊戯』とは、まさか……」

 

「先ほどの詩にもあった、【ヘスティア・ファミリア】と【アポロン・ファミリア】の戦いです。試作を少々耳にしましたが、さすが神の創る(うた)……これも素晴らしいものでした」

 

「リリの出番、増えるのでしょうね……」

 

 ヒロイン扱いされたくないのか、リリルカがうんざりとした顔になる。

 一方、ヘスティア神は、眷族たちが主役の新しい詩に興味があるのか、満面の笑みで言った。

 

「へえ! それもぜひ聞いてみたいね!」

 

「ええ、完成しましたら、わたくしもヘルメス様に教えを請うて、また唄うつもりです。いずれは、劇場でも役者として演じてみたいですね」

 

「どんな詩になるんだろうねぇ……気になるなあ」

 

「では、公開してよいと言われたタイトルを。『愛の叙事詩(ロマンシング・サガ)』だそうです」

 

「聞いたかい、リリ君、ベル君。ロマンスだそうだよ!」

 

「勘弁してください……」

 

「表を歩けなくなりそう……」

 

 そんなリリルカとベルの泣き言に、酒場に響いていたざわめき声は次第に大爆笑へと変わった。

 

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