ダンまちTACTICS   作:Leni

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まだソシャゲ版シナリオの履修が途中ですが、第六章の導入を載せておきます。
ちなみに原作14巻まで物語が進行しましたが、実際の時系列はラキア王国との戦争終結後。つまり、まだ原作8巻が終わったあたりです。よって、第六章は原作9巻頃のお話となります。


第六章『神の偶像』編:この先に待つ幾万の輝き
56.神会


『戦争』と『魔城』という二つの山場を乗り越えたオラリオの冒険者たち。

 ダンジョン攻略とはまた違う質の【経験値(エクセリア)】を経た彼らの中から、【ランクアップ】した者がそれなりの数、出た。

 それを受けたオラリオの神々は、『神会(デナトゥス)』を開くことにした。前回、臨時で開いた『神会』からそろそろ三ヶ月が経とうとしている。二つの戦いを乗り越えた冒険者たちの【ランクアップ】を祝して、『神会』の恒例行事である命名式で称号(ふたつな)を授けようという趣旨である。

 

 称号を神々から授けられることは、冒険者にとってこの上ない名誉だ。

 しかしその一方で、冒険者の主神にとっては、眷族の称号というものはこの上ない不名誉な代物であった。

 

 それは、神々と冒険者の間に大きくまたがる、価値観の違いが生んだ悲劇。

 

「絶対に【†癒やしの聖天使犬姫☆ミ†】!」

 

「いや、【キュア・サンシャイン】だ!」

 

「うーん、間を取って【†癒やしの太陽犬姫†(キュア・サンシャイン)】でどうだ!」

 

「それいい!」

 

「決定や!」

 

「ぎゃあああ! すまない、本当にすまない、愛しの眷族()よおおお!」

 

「うーん、アポロンの悲鳴で、今夜のメシも美味くなりそうだ」

 

「野戦病院で自分の眷族(こども)がお世話になったかもしれないのに、この仕打ちよ……」

 

「この()の回復魔法にお世話にはなったかもしれないけど、アポロンにはお世話になってないからいいんだよ!」

 

 神々の提案する称号は、神々の基準ではどれも『イタい』とされる名であった。

 神にとっての『イタい』称号は、冒険者だけでなく一般市民もうらやましがる格好良い二つ名として扱われるのだが。

 

 今まさに称号が決められた【アポロン・ファミリア】の治療師(ヒーラー)も、自身の二つ名を誇らしく思うことだろう。

 いや、本人だけではなく、ラキア王国との戦争で活躍した治療師という立場も合わさって、今後も活躍を続ければオラリオの内外でその名は広まっていく可能性すらあった。

 

『王国』との戦争と、オラリオ市民の知るところになった『魔城』の攻略。その二つの戦いを経た【ランクアップ】は、神々の注目度がいつもより高い。ゆえに、今回の『神会』は特に盛り上がっていた。

 一方で、『神会』の初心者である一柱の女神ヘスティアは、目の前で繰り広げられる惨状にガクブルとしていた。

 

 前回、彼女が参加した『神会』は、あくまで臨時のもの。

 本格的なものは今回が初めてであり、その熱気と、次々挙がる『イタい』称号に、ヘスティア神は恐れおののくしかない。しかも、またもやその『イタい』称号が自分の眷族に与えられることが、恐ろしくてならなかった。

 

「では、次いくでー」

 

 そんなヘスティア神の隣の席に座るロキ神が、心底楽しいと言いたげな表情で司会役を務めている。

 ロキ神は、称号が決まるたびに大笑いして、(なげ)く主神たちに向けて指を指しながら煽っていた。

 最近、ロキ神はヘスティア神に突っかかることはめっきりなくなっていた。だが、今回ばかりはロキ神の態度の軟化には期待できない。ヘスティア神は、この命名式で称号を付けられる予定のリリルカに、心の中で平謝りした。

 

「次の子はー、お、ファイたんのとこやな。ヴェルフ・クロッゾ、『Lv.2』や!」

 

『神会』の会場である摩天楼施設(バベル)地上三十階。

 その三十階丸々一つを使った大広間の中央にある、大円卓。それを囲んで座る神々が、次なる生贄という名の冒険者の名前に、目を輝かせた。

 

「『発展アビリティ』に『鍛冶』を発現させた、新たな上級鍛冶師(ハイ・スミス)やな。出身は『王国』で、あのクロッゾの末裔。そして、『クロッゾの魔剣』を現在唯一打てる、精霊の血を受け継ぐ者でもある、と。ちなみに、【ヘスティア・ファミリア】の専属鍛冶師やから、『クロッゾの魔剣』は注文できへんことに注意や!」

 

 そのロキ神の説明を聞いて、ヘスティア神は幾度か顔を合わせたことのある鍛冶師の顔を思い浮かべる。

 リリルカとベルの専属鍛冶師で、二人のパーティメンバーでもある。

 そして、神々に対してホットな話題を提供している注目の人物でもあった。

 

「あのアツい青年()かー」

 

「安易に『クロッゾの魔剣』を量産する鍛冶師にならなかったのが、もうアツいよな」

 

「おー、アツいアツい」

 

「アツすぎて、ファイたんの心も融かしたくらいやからな!」

 

 そう、件のヴェルフ・クロッゾは、今回『神会』に参加している女神の一柱である、ヘファイストス神の新しい恋人であった。

 そのヘファイストス神は周囲の好奇のまなざしに晒されているが、恥ずかしがるでもなく逆に誇らしげな表情を浮かべていた。

 

「で、その子が発表した『ガンブレード』やったか? うちもドチビの眷族から見せてもろうたけど、おもろい武器やったな」

 

「厨二心がくすぐられる武器だよなー」

 

「一回使ってみたいなー」

 

「やめておけ。武神でもないと、指が折れるぞ」

 

「なにそれ怖い」

 

 ロキ神がヴェルフの新発明である『ガンブレード』を話題に出すと、主に男神たちからコメントが挙がってくる。

 神なる身であろうとも、ベルと同じく少年心を持った男には変わりないようであり、ギミックのあるガジェットに興味津々であった。

 そんな男神たちの反応に気を良くしたのか、ヘファイストス神は珍しく笑顔を浮かべながら、さらなる情報を落とした。

 

「ふふっ、彼の発明はそれだけじゃないわ。パーティメンバーが参加する【ロキ・ファミリア】の遠征に着いていくために、切り札の開発も成功させたのよ」

 

「なんや。初耳やで? 詳しく詳しく!」

 

 ロキ神が、ギルドから提出された書類にあるプロフィールを再確認しながら、ヘファイストス神の話の先を促そうとした。

 だが、次に言葉を発したのは、ヘファイストス神ではなく、ロキ神の隣に座るヘスティア神であった。

 

「ふふーん、ボクは聞いているよ。ダンジョン攻略の役に立つ新兵器さ!」

 

「いや、そういう派閥の重要情報は、ちゃんと報告挙げとけや! 情報共有ッ!」

 

 そう言って、隣に座るヘスティアの頭をドツくロキ神。

 当然、ヘスティア神はそのドツきをもろに受け、「ギャア!」と叫び声を挙げた。

 

「うーん、パワハラ上司」

 

 そんな声が神々から漏れる。

 だが、ヘファイストス神は漫才じみたロキ神とヘスティア神のやり取りがまともに目に入っていなかったのか、自慢げに告げる。

 

「彼の作り出した切り札は、すでにうちの派閥で共有されて試験販売を開始しているわ。だから、ここで改めて公表させてもらうわね」

 

「公表というか、ただの彼氏自慢よね、この場合」

 

 周囲にいる女神からそんな突っ込みが入るが、無視して言葉を続けるヘファイストス神。

 

「『ガンブレード』から近距離攻撃能力を削って、遠距離砲撃に特化させていたわ。『魔銃(マガン)』っていうのだけど」

 

「マジか? もしかして、銃から『魔法』が飛び出すんか?」

 

「ええ。特殊な『魔弾』……彼は《ソイル》と名付けていたけど、それを複数掛け合わせて強力な一撃を放つ『魔法の銃』よ」

 

 ロキ神の合いの手に、すぐさま詳細を口にするヘファイストス神。

 その内容に、大円卓の周囲を囲む神々からざわりとした声があがった。

 

「それも『ガンブレード』に負けないくらい良さげな武器だな!」

 

「『魔銃(マガン)』というネーミングは、独創的だが……」

 

「うちの派閥に回してくれよー。頼むよー」

 

 そんな神々の声に、ヘファイストス神はさらに気を良くして応える。

 

「彼は【ヘスティア・ファミリア】の専属鍛冶師だから『ヴェルフ・クロッゾの魔銃』は他所には渡せないけれど、団員たちがカスタマイズした『【ヘファイストス・ファミリア】の魔銃』なら、少しずつ市場に開放していく予定よ」

 

「ヒュー」

 

「ヤベえ品が下界に解き放たれちまったぜ!」

 

「魔剣の時点で十分ヤバい定期」

 

 そして、それらの情報をもとにしてヴェルフの称号考案が行なわれた。

 

「んじゃ、ヴェルフ・クロッゾの二つ名は【女神の凶弾(ハートブレイカー)】で決まりや!」

 

 女神ヘファイストスの心を射止めた男という、ある種の名誉にあやかった称号。

 その決定した名に、ヘファイストス神は恥ずかしがるでもなく嘆くでもなく、満足そうに微笑んでいた。

 

「んじゃ、次ー。おっ、来たで! リリたんや! 【ヘスティア・ファミリア】所属、『Lv.2』、リリルカ・アーデ。小人族(パルゥム)の女の子、十五歳や!」

 

 ロキ神が告げた名に、神々が再び盛り上がる。

 

「うちのフィンが『魔城』攻略で忙しくて、ピンチヒッターとして『戦争』に投入した()や。最終的にはオラリオ軍全体の総指揮まで務めた、戦勝の立役者やな。ちなみに、フィンの弟子な。その辺も加味して、最高の二つ名を付けるんやで!」

 

 そのロキ神の煽りに、神々のテンションは上がりに上がる。

 

 だが、そのリリルカ・アーデは、この場を支配しているロキ神の傘下となっている派閥の団長だ。

 ロキ神の恨みを無駄に買わないようにと、『イタい』方向の案は少な目。代わりに、神々からしても『イタい』と思わないような名付けが多く挙がる。

 だが、それでもそこに揶揄(やゆ)を含ませるのが、神という存在であり……。

 

「リリたんの二つ名は、【姫騎士(ブレイブ・プリンセス)】に決定な。うーん、帰ったらティオネにぶん殴られそうやなあ……」

 

姫騎士(ブレイブ・プリンセス)】という称号が、ロキ神以外の神々の賛成多数で決まった。

 表向きは、【勇者(ブレイバー)】という称号を持つフィンの弟子であることからの命名となっている。だが、(プリンセス)という部分に、小人族の期待の星であるフィンの嫁候補ではないかという、神々の揶揄が大いに含まれている。

 

 勇者が巨悪を倒して姫を娶る英雄譚は、民の間にも広く伝わっている。

 当然、フィンの嫁候補を自称する女戦士(アマゾネス)のティオネが耳にしたら、激怒すること必至である。

 

 なお、無難な称号に収まったことで、リリルカの主神であるヘスティア神はホッと息を吐いている。

 そんなヘスティア神の様子を見ていたのか、神々の一柱が、彼女に尋ねた。

 

「ベル・クラネルは、まだ【ランクアップ】しないのか?」

 

 そんなことを言われて、ヘスティア神は内心わずかに動揺しながらなんとか答える。

 

「何を言っているんだい、ありえないよ。ベル君が冒険者になって、まだ三ヶ月だぜ? 全く、キミも気が早いなぁ」

 

「でも、偉業は溜まっているんだろう?」

 

「さてさて、どうかな?」

 

「いやいや、邪竜を討伐して、37階層から生還したのに偉業が達成されていないとか、逆に大事だろ。もう、50階層とかに突っ込むしかないだろ?」

 

「やめてくれないか!? さすがのベル君も、そんな深くに行ったら死んでしまうよ!」

 

 神の発言がベルの試練発生のきっかけ(フラグ)になりそうで、ヘスティア神はとっさにそんな言葉を叫んでいた。

 だが、そのヘスティア神の言葉を神々は「またまたー」と笑って流す。

 

 ベル・クラネルが『Lv.6』のアイズ・ヴァレンシュタインと対等に渡り合う力量を持つことは、巷で拡散されている吟遊詩人の(うた)によって、神々の知るところになっている。ゆえに、この場にいる神々の誰も、ベルという新たな『未知』がそこらの新米冒険者のようにコロッと死んでしまうとは、全く思っていない。

 

「ま、いずれはうちの派閥の遠征に同行して、最低でも50階層まで行くことはもう確定しているんやけどな」

 

 と、そこでロキ神が、ヘスティア神の慌てぶりを見て笑いながら、そんなことを言う。

 対するヘスティア神はというと、苦い声でつぶやいた。

 

「そうなんだよなぁ……」

 

「ベルきゅんには、遠征までに『Lv.2』になっといてほしいところやな」

 

「…………」

 

「おっ、無茶言うなとは言わんかいな?」

 

「ベル君次第かな」

 

 と、ヘスティア神のその発言に、周囲の神々はある種の余裕を感じ取った。

 ゆえに、場は一瞬で盛り上がる。

 

「ヒュー!」

 

「これは公式記録更新来るな!」

 

「記録更新できるか賭けよう!」

 

「【剣姫】涙目!」

 

 現在の『Lv.2』への【ランクアップ】期間記録は、【剣姫】ことアイズの約一年だ。【ランクアップ】までに通常三年かかるとギルドが示していることを考えると、相当短い記録である。

 もしここで、ベルの【ランクアップ】要件は割とすぐに満たせそうと、ヘスティア神が追加で漏らしてしまったとしたら……。場は、収拾が付かなくなるほどの大騒ぎになるだろう。

 ゆえに、ヘスティア神はこれ以上の発言を自粛(じしゅく)し、沈黙を貫くことにした。

 

 そして、神々は次の命名に移ることも忘れ、各々好き勝手言葉を交わした。

 

「そうそう、ロキ。その【剣姫】ちゃんが『魔城』戦で怪我をしたっていうけど、調子はどうなの?」

 

「スッカリ元気になったで。今頃、ダンジョンで試運転(リハビリ)しとるやろ」

 

 大円卓の大騒ぎが収まるまで、ロキ神は周囲の神々の言葉に軽い調子で答えながら、無事に治療院から退院した眷族のことを思う。

 黒い風による後遺症は完全に抜け、早速ダンジョンへと潜りたがったアイズ。

 彼女は特に仲の良いティオネを連れて、朝からギルド本部まで出かけて、一つの冒険者依頼(クエスト)を受けてきた。

 

 今日はちょうど【ヘスティア・ファミリア】が、訓練のために『黄昏の館』を訪れていた日であった。

 そこでアイズはベルをその冒険者依頼へと誘い、リリルカも巻き込んでダンジョン中層にアタックすることを決めていた。

 ロキ神とヘスティア神は、そんな彼女たちの出発を見送ってから『神会』のためにバベルへとやってきたわけだが……当然、ロキ神は、今さらアイズたちが『中層』でヘマをするとは思っていない。

 

 アイズが受けた冒険者依頼自体、彼女たちの力量からすればそこまで難しいものではない。

 内容は、19階層で大量発生した『炎鳥(ファイアーバード)』の駆除だ。

 

 第一級冒険者である『Lv.6』がこなすには、あまりにも簡単すぎるその依頼。

 だが、地上に降りて零能となった神であるロキ神は、知るよしもない。

 アイズたちは現在、その依頼の現場で、とある異端の存在との出会いを迎えていた。

 




・【アポロン・ファミリア】の治療師
ネームドではないオリキャラの犬人です。原作の【アポロン・ファミリア】には魔法を使える眷族が複数いた描写があるため、その一人が【戦争遊戯】の苦い経験で回復魔法を新たに発現したというオリジナル設定。原作の治療師であるカサンドラは本編の描写外でちゃっかり【アポロン・ファミリア】を脱退しているので、人員の減った新生【アポロン・ファミリア】で期待の星になると思われます。本人が作中に登場することはありません。

・『魔銃』
相応しいソイルを決めても、さすがに召喚獣は飛び出しません。本作品での召喚獣の呼び出しは、『召喚士』にジョブチェンジできるベルくんが担当します。
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