ダンまちTACTICS   作:Leni

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第六章後半『アエデス・ウェスタ』編、始まります。
本来の『アエデス・ウェスタ』は追うだけで小説を一本書ける大長編シナリオなので、超ダイジェスト展開になります。


62.妖精の帰還

 ベルは、激しい動悸に見舞われていた。

 彼の目の前にいる女性が、あまりにも彼の心臓を刺激する存在だったからだ。

 

「リューさん、どうしたんですか、それ……!」

 

【ヘスティア・ファミリア】の本拠。そこに、旅から戻ったリュー・リオンが訪ねてきていた。

 ヘスティア神により、旅装のまま居間へと通されたリュー。

 だが、そのリューは、ベルの見覚えのある姿ではなかった。

 

「こちらが地毛です。以前は賞金首だったので、変装目的で髪色を変えさせられていました」

 

 そう。リューの髪色が、変わっていたのだ。

 以前のリューは、薄緑色の髪をしていた。だが、長旅から帰ってきたリューの髪は、美しいブロンドへと変わっていた。

 

「そ、そうですか。リューさんって、金髪だったんですね……」

 

「ええ。そうか、言っていませんでしたか」

 

 ベルは子供の頃から、エルフが好きだ。

 特に、金髪年上お姉さんエルフが大好きだ。

 イヴァリースに飛ばされる以前は、育ての親代わりだった祖父(ゼウス)と、夜な夜な金髪エルフの良さを語ったものだった。ちなみにゼウス神のイチオシは金髪ではなく黒髪だった。

 ゼウス神が育てただけあって、当時のベルは、ませガキだった。今も、そこまで本質は変わらないのだが。

 

 そんなベルの思春期を刺激するサプライズを引っさげて『竈火(かまど)の家』へとやってきたリュー。

 しかし一人での来訪でなく、彼女は他にも客を連れていた。彼女の主神である女神アストレアである。

 

 天界以来の再会となったヘスティア神は、そのアストレア神と抱擁を交わしていた。

 黒髪の幼女神と、長い胡桃(くるみ)色の髪を持つ美貌の女神が、再会を喜び合っている。

 

「アストレア、もしかしてオラリオで活動再開するのかい? リュー君は旅立つ前にボクの派閥へ『改宗(コンバージョン)』するって言っていたけど、キミがこちらへ帰ってきたなら『改宗』はなしかな?」

 

「いえ、今のところはそのつもりはないわ。オラリオに来たのは、リューの『改宗』をこの目で見届けるためと、もう一つ……」

 

 アストレア神は、正面のヘスティア神から目線を外し、ベルとリリルカの二人と話し込んでいるリューを見る。

 

「あなたの神血(イコル)を受けたリューが、どうなるかを見届けるため」

 

「リュー君が、ボクの眷族になってしまってもいいのかい?」

 

「ええ、わたしはまだ、オラリオに戻るつもりがないから。そして、リューはあなたの神血を背に受ける必要がある」

 

「一体どういうことだい?」

 

「詳しくは『改宗』した後にね」

 

 話を露骨にぼかされて怪訝(けげん)な顔をしながらも、ヘスティア神はリューの『改宗』を受け入れる。そして、『改宗』のためヘスティア神とリューは共に神室(しんしつ)へと移動する。

 だが、その移動に、どういうわけかアストレア神も付いてきた。

 彼女の『改宗』を見届けるという先ほどの言葉は、どうやら目の前で『改宗』の工程を確認するという意味であったようだ。

 

 神室で二柱の女神に見守られながら、上着を脱ぎ去り、背中を露出するリュー。

 そこで、まずはアストレア神が、リューの背中に施していた『神の恩恵(ファルナ)』の(ロック)を外す。

 

 すると、彼女の白い肌に隠されていた【神聖文字(ヒエログリフ)】が浮かび上がってくる。

 それをアストレア神の横から、ヘスティア神がマジマジと眺めた。

 

 リュー・リオン

 Lv.5

 力:I4 耐久:I2 器用:F312 敏捷:D505 魔力:G272

 狩人:G 耐異常:G 魔防:I 魔導:I

 

「おいおい、『敏捷』Dって……」

 

『Lv.4』だったリューが、『Lv.5』に【ランクアップ】している。

 そこまではヘスティア神も事前に予測できていたことだ。

 だが、『基本アビリティ』の『敏捷』が、もう次の【ランクアップ】に必要な最低値に届いている。さすがのヘスティア神も、こればかりは予想できていなかった。

 そのヘスティア神の反応を見て、アストレア神が笑って返す。

 

「ふふっ、この五年間でたくさんの『冒険』を繰り広げたみたい。【経験値(エクセリア)】があふれていたから、『Lv.5』へ【経験値】の『持ち越し』をしたのよ。『敏捷』だけが突出して高いのは、いつでも【ランクアップ】できるように『Lv.4』の段階で調整したの」

 

「『Lv.6』に【ランクアップ】は、しなかったのかい?」

 

 ヘスティア神の当然の問いに、アストレア神は微笑んで答えた。

 

「上位の【経験値】は足りなかったから、『LV.6』へのランクアップはできなかったわ。この子は、あと一つほど『試練』を乗り越える必要がある」

 

 その言葉にヘスティア神は、なるほどと納得した。

 リューはアストレア神と別れてから、濃厚な五年間を過ごしてきたかもしれない。だが、冒険者は引退していた。よって、偉業と判定されるような強敵との戦いを経験する機会が、そうそう巡ってこなかったわけだ。

 

「それよりも、魔法の欄を確認してみて?」

 

 アストレア神にそう促され、ヘスティア神は、『発展アビリティ』の先の項目を目で追った。

 

《魔法》

【ルミノス・ウィンド】

 ・広域攻撃魔法。

 ・風・光属性。

 ・詠唱式【今は遠き森の空。無窮の夜天に(ちりば)む無限の星々。愚かな我が声に応じ、今一度星火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、何物よりも()く走れ。星屑の光を宿し敵を討て】

【ノア・ヒール】

 ・回復魔法。

 ・地形効果。森林地帯における効力補正。

 ・詠唱式【今は遠き森の歌。懐かしき生命(いのち)の調べ。汝を求めし者に、どうか癒しの慈悲を】

【ファミリア・レコード】

 ・神血(イコル)継承。

 ・付与魔法(エンチャント)

 ・詠唱式【天秤は正され、聖火は受け継がれる。正義は巡り、勇気は地に満ちる。願いは托され、(いのち)は未来を拓く。今こそ天秤よ、聖火よ。正義よ、勇気よ。星々の煌めきとなりて、我が手に宿れ】

《スキル》

妖精星唱(フェアリー・セレナード)

 ・魔法効果増幅。

 ・夜間、強化補正増幅。

精神装塡(マインド・ロード)

 ・攻撃時、精神力を消費することで『力』を上昇させる。

 ・精神力消費量含め、任意発動。

疾風奮迅(エアロ・マナ)

 ・疾走時、速度が上昇すればするほど攻撃力に補正。

正義継灯(アストラエ・フローガ)

器力共鳴(ファルナ・エフェクト)

・発現者の一定範囲内に存在する同神血(イコル)の眷族への魅了に対する高抵抗(レジスト)付与。

・発現者の一定範囲内に存在する同神血の眷族への精神汚染に対する中抵抗(レジスト)付与。

・発現者の一定範囲内に存在する同神血の眷族への耐異常加算。

常時発動(パッシブ・オン)

・付与率及び加算値及び効果範囲は階位(レベル)反映。

 

「お、おう……」

 

『魔法』と『スキル』が、すごいことになっていた。

 おそらくは、同じ『Lv.5』の冒険者でも、ここまで豊富な能力を持つ者は少ないだろう。ヘスティア神は冒険者事情に詳しくないながらもそう思った。

 そして、その豊富な能力の中でも、特に極めつけの『魔法』があった。

 

「【ファミリア・レコード】……。これは……」

 

「神血を共有する絆を結んだ仲間たちから、力を継承する魔法だそうよ。簡単に言うと、仲間の『魔法』や『スキル』を一人一つずつ受け継いで、武器や身体にエンチャントするの」

 

「『召喚魔法』……一例しか確認されていない『レア魔法』じゃないか!」

 

「ええ。そして……リューがヘルメスから受けた、冒険者依頼(クエスト)を達成する為に必要な魔法でもある」

 

「うへえ、なんだい、リュー君。ヘルメスからの冒険者依頼なんて、また厄介な仕事を受けたものだね?」

 

 背中を晒し続けるリューに、ヘスティア神が問いかける。

 すると、リューは振り返らぬまま、淡々と答えた。

 

「ええ……アストレア様の居場所を教えていただくことと引き換えに、アンドロメダからヘスティア様にまつわる依頼への協力を要請されました」

 

 アンドロメダ。【ヘルメス・ファミリア】の団長アスフィ・アル・アンドロメダのことである。

 

「なんだい、ボクにまつわる冒険者依頼って。心当たりは特にはないんだけど。……でも、派閥全体で協力できるかもしれないから、話してみてくれたまえ」

 

「いえ、その前に、『改宗』をお願いいたします」

 

「……本当にいいのかい? アストレアのところに戻りたくなっても、一年間は絶対に無理だよ」

 

「ええ。問題ありません。私はここで、アーデさんの、冒険者の、世界の行く末を見てみたい」

 

 そのリューの言葉に、ヘスティア神ではなくアストレア神が、嬉しそうに反応する。

 

「今、リューの心に灯っている火は『正義』だけではない。『勇気』という新しい心の火を、ヘスティア、あなたの眷族(こども)から受け取ったみたい」

 

「なるほど。リュー君は、リリ君と特に仲がいいからね。見事に感化されたわけだ」

 

「『正義』と『勇気』。()(どころ)を増やしたリューの心の火が消えることは、もうないでしょう。だから、安心して送り出せるわ」

 

 背後でそんな言葉を交わす女神二柱のやり取りを聞き、リューは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 そうして、アストレア神が見守る中、ヘスティア神は『改宗』を行なうことにした。

 リューの背に己の神血を触れさせ、『神の恩恵(ファルナ)』を上書きしていく。だが、リューの背からアストレアの神血が完全になくなるわけではない。表面をヘスティア神の神血が(おお)っただけで、彼女の背の中には、アストレア神の神血が確かに残り続けていた。

 

「これで、リュー君は正式に、ボクの眷族(かぞく)となった」

 

「はい。これから、よろしくお願いします」

 

「ギルドへの手続きだの引っ越しだのがあるだろうけど……それよりも、さっき言っていたヘルメスからの冒険者依頼とやら、キリキリ吐いてもらおうじゃないか」

 

 上半身に服を着直し、ヘスティア神たちに振り返ったリュー。

 彼女は、ヘスティア神に問われた言葉を素直に受け入れ、オラリオの何でも屋である【ヘルメス・ファミリア】から受けた冒険者依頼の説明を始めた。

 

「行き先は、オラリオの外。未開拓領域……神域『オリンピア』。そこにある『原初の火』の浄化。それが、アンドロメダから提示された依頼です」

 

「『オリンピア』! いや、それよりも『原初の火』って、それは……」

 

 思わぬ内容に、ヘスティア神は驚愕の表情を顔に浮かべた。

 アストレア神は、事前に話を聞いていたのか、こちらは驚く様子を見せていない。

 そしてリューは、己の背に受け入れた二柱目の神血を意識し、さらに言った。

 

「詳しくは、アーデさんとクラネルさんを交えて話しましょう。ただ、ヘスティア様の神血を背に受けて、ハッキリと理解しました」

 

 リューはヘスティア神の目を正面から見すえ、告げる。

 

「この冒険者依頼は、私でなければ達成できない」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 居間へ場所を移し、冒険者依頼(クエスト)の説明を始めようとしたリュー。

 すると、まるでタイミングを計ったように『竈火(かまど)の家』へ、ヘルメス神と彼の眷族であるアスフィが訪ねてきた。

 

 そして、あらためて『竈火の家』の居間にて、ヘルメス神から冒険者依頼の詳細が語られることとなった。

 

「さて、順序立てて説明しようか」

 

 ヘルメス神が、そう言って今回の『大事件』の概要を話し始める。

 

 始まりは、オラリオ方面に向かう見慣れない形状の船を【ヘルメス・ファミリア】が発見したことだった。

 その船は、神時代にあってなお未知の領域といわれてきた、神域『オリンピア』と呼ばれる場所からの使節団が乗りこんでいた。

 使節団は、オラリオにいるとある神を自分たちの神域へと招くために、はるばる『オリンピア』を出て海を旅してきたのだという。

 

「そのころは、ちょうどラキア王国との戦争が始まったばかりでね。オラリオには招けず、港町(メレン)でしばらく待機してもらっていたんだ」

 

 その後、戦争が終わり、『魔城』攻略が無事に終わった。オラリオ――この場合はギルドと言った方が正確――が落ち着いたあたりで、ようやく正式に使節団を都市内へ迎え入れようとした。

 だが、ここでとある問題が起きた。

『オリンピア』からさらなる船がメレンへと辿り着いたのだ。しかし、それは追加の使節団などではなかった。

 

「オリンピアからの、緊急の救援要請だった。神域で、異常事態が発生したんだ」

 

 もともと使節団は、火にまつわるオラリオの神……ヘスティア神とヘファイストス神を『オリンピア』へと招く目的で、海を越えてやってきていた。

 理由は、古代から『オリンピア』を守り続けてきた『原初の火』を神に浄化してもらうためだ。

 

『オリンピア』を守る『原初の火』……はるか古代に天界から下界に落とされた『天の炎』は、取り返しがつかないほど穢れてしまったらしい。

 それを浄化するため、使節団をオラリオに派遣して『火』を司る神を招こうというのが、『オリンピア』側の意図であった。

 しかし、『オリンピア』の内部には、『原初の火』の浄化を阻止せんとする存在が隠れていた。

 

「その存在をどうやら、()()アフロディーテが刺激してしまったらしくてね」

 

「……アフロディーテって、()()美の女神かい?」

 

 まさかの神の名に、ヘスティア神がヘルメス神に問うた。

 女神アフロディーテは、天界でも有名な神物(じんぶつ)だ。人の価値観での邪神というわけではなく、むしろ善神寄りではある。だが、小物感があふれる存在で、やられ役や雑魚キャラなどと呼ばれて神々からぞんざいに扱われていた。

 

「そうだね。オレの派閥からも先遣隊を送っていたんだけど、『都市の破壊者(エニュオ)』だの『魔城』だのがあったから主力を送れなくてね。事態を丸く収めることはできなかった」

 

 面目ない、と本当に申し訳なさそうにヘルメス神が言った。

 

「で、『オリンピア』で浄化を反対する存在による造反が起きた。遠い海の向こうの出来事だから、追加戦力も簡単には送れない。そして今に至る、だ」

 

 お手上げだね、と肩をすくめてヘルメス神が告げると、彼の言葉を引き継ぐようにしてアスフィが言う。

 

「そこで、『オリンピア』へ向かわせる援軍として、【ヘスティア・ファミリア】へと協力を要請させていただきました。……リオンを連れていくことは、すでに決まっています。神アストレアの居場所へと彼女を導いた見返りです」

 

【ヘスティア・ファミリア】の面々の視線が、リューへと集まる。

 すると、リューはただ無言で首を軽く縦に振り、アスフィの言葉を肯定した。

 そんなリューを横目で見ながら、ヘルメス神が言う。

 

「だが、彼女一人では、待ち受けている敵の相手は荷が重いかもしれない。そこで、ベル君。キミを『オリンピア』への援軍の主力として据えたい」

 

 神に直接そう言われ、ベルは動揺しながら言葉を返す。

 

「リューさんって『Lv.5』になったんですよね? それで荷が重いって……」

 

「敵が、古代の英雄エピメテウスだと言っても?」

 

「!?」

 

 ヘルメス神から告げられた言葉に、ベルは驚愕の表情を見せる。

 

「そんなまさか! エピメテウスは、何千年前も昔の人間ですよ!?」

 

「ああ、その何千年も昔の人間が、今も生きていた。ビックリだよね」

 

「ビックリで済ませていい話ですか……?」

 

「それを可能とするのが『原初の火』なのさ」

 

 そして、ヘルメス神がベルにあらためて問う。

 

 ――さあ、どうする? ベル君。

 

 その問いに、ベルは複雑な思いを抱きながら、答える。

 

「行きます」

 

 そんなベルを見て、団長のリリルカは、ため息を吐きながら自分も付いていくことを決めた。

 リュー一人で都市外の冒険者依頼に向かわせるわけにもいかない。

 剣聖を目指すベルだって、古代の英雄と戦える機会をみすみす逃すような大人しい性格はしていない。

 

 ならば、自分が付いていって、暴走の可能性がある二人を制御しなければ。そんな諦めの境地にリリルカはいた。

 そうして、リューが受けた冒険者依頼は、【ヘスティア・ファミリア】全体で受けることが決まった。

 

「ボクも行くよ! いいよね、ヘルメス!」

 

 眷族三人が『オリンピア』まで向かうとなって、ヘスティア神もそんなことを主張する。だが、ヘルメス神は渋い顔をして彼女に言った。

 

「現地で、『神創武器(しんぞうぶき)』の存在が確認された」

 

「うっ、それは……」

 

「だから、行くのはいいが、万が一もありえる。覚悟しなよ?」

 

「そ、それでも行ってやるさ!」

 

 そんな二柱のやり取りに、リリルカは不思議そうに首を傾げた。

 

「『神創武器』って、その名の通り神様が創った武器、ですよね? それが何かあるんですか?」

 

 その問いに答えたのは、事態をジッと見守っていたアストレア神だ。

 

「神が鍛造した武器は、神を殺せるの」

 

「……神様を天界に送還するには、神様が創った武器が必要ということですか?」

 

「いいえ。神が地上で大きく傷付いた場合、『神の力(アルカナム)』によってその死は(くつがえ)る。だからこそ天界に帰ってしまうのだけれど……『神創武器』は、真なる意味で神を殺せてしまうの。天界にも帰れず、神の肉体は滅びる」

 

「!? リリ、ヘファイストス様の創った槍を持っているんですけど!?」

 

「ふふっ、それで間違って神を深く突き刺したら、たとえ武神であっても死んでしまうわね」

 

「ええーっ!」

 

 神殺し。それは、下界最大の禁忌。

 だが、広く知られている事実として、下界の人間は、神を害することに強い忌避感を覚える。

 軽く殴る蹴るをする程度なら問題ないが、天界に送還されてしまうほどの大怪我は負わせることができないのだ。

 

 ただし、神を狙わずに投げた武器が、偶然神に命中してしまうなどの事故はありえる。

 よって、リリルカが迂闊(うかつ)にダンジョンの外で自分の槍を使うと、神を本当の意味で殺してしまう可能性がありえるのだ。

 だからこそ、ヘルメス神は『神創武器』が確認された『オリンピア』で、万が一がありえるとヘスティア神に警告したわけである。

『オリンピア』行きを決めた【ヘスティア・ファミリア】一行。

 その先には、暗雲が垂れ込めていた。

 

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