ダンまちTACTICS   作:Leni

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67.最後の希望~ファイナルファンタジー~

『穢れた炎』だけを燃やし、本来の『天の炎』は燃やすことがないはずの『悠久の聖火』。しかし、大地の窪み(クレーター)に溜まっていた『天の炎』は、わずかな種火すら残すことなく全て燃え尽きた。

 もはや『天の炎』には穢れていないところなど残っておらず、その全てが汚染されきっていたのだろう。

 

 窪みを眺めてそれを確認し終えたベルは次に、朽ち果てたエピメテウスの遺骸を見た。ボロボロになった服と欠けた炎剣を残して、灰へと変わっている。

 その遺灰の一部をベルは、まるで火葬場にでもいるかのように残された服で丁寧に包む。

 

 たとえ世界を滅ぼそうとした造反者だとしても、彼はここオリンピアの地を三千年の時に渡り守り続けてきた存在。

 ならば、この地に墓を作ってやるのが、礼儀だろうと考えてのことだった。

 

 服で遺灰を丁寧に包んだベルは、次にエピメテウスが残した炎剣(つるぎ)を見た。そして、【聖魔抜剣(ラグナロク)】で高めた『剛剣』でわずかに刃がこぼれたそれの扱いに、ベルは困り果てた。

『神の権能』を制御し、神殺しすら可能とする『神創(しんぞう)武器』。

 明らかに、人の身には過ぎた代物。たとえ名剣中の名剣であっても、ベルは欲しいなどとはまったく思わなかった。

 

「えっと……これをエピメテウスに与えたのは、プロメテウス様なんですよね? ということは、所有権はプロメテウス様に?」

 

 ベルが遺灰を包んでいる間に、彼の近くにやってきた一同。その中にいるプロメテウス神へ、ベルはそう尋ねた。

 すると、プロメテウス神からは、こんな言葉が返ってきる。

 

「『天の炎』を失ったオリンピアには、もはや必要のない物だ。持っていって構わん。オラリオの冒険者とは、倒した敵から戦利品を得る者なのだろう?」

 

「いやいや、それはモンスターを倒したときの話であってですね……」

 

 人を殺して武器を奪うのは、どちらかというと盗賊や山賊の仕事である。

 イヴァリースでは、盗賊を討伐して戦利品を漁るということもベルはやってきた。だが、今のベルは冒険者であり、戦利品を得る相手はモンスターだ。

 

 すると、興味深そうに地面に転がる炎剣を眺めていたヴェルフが、炎剣から目を逸らさぬままにベルへ向けて言った。

 

「神を殺せる物騒な代物なんだから、叩き折った方がいいんじゃねえか?」

 

「うーん、本気でやっても少し欠けただけだから、僕の今の力量で折るのは難しいかな」

 

「なら、ヘファイストス様に渡して、破壊できないか試してもらうのはどうだ?」

 

「そうだね。その方針で検討してみようか」

 

 そういう話となり、この炎剣はオラリオに持ち帰ることが決まった。

 プロメテウス神が言うには、刃が欠けたことで『神の権能』を制御する機能は故障しており、神殺しにしか使えそうにない武器に成り下がっているとのこと。あまりにも物騒すぎるので、オラリオへ帰還次第、速やかにヘファイストス神に渡すこととなった。

 

 そうして、地下での用事を全て終えたベルたちは、来た道を戻って地上へと向かう。

『大神殿』を出て地上に出たときには、空はすっかり暗くなっていた。太陽は沈み、月が出ている。

 瓦礫の街を焼いていた炎は、全て消失している。『悠久の聖火』が地上まで燃え広がり、穢れたそれを全て焼き尽くしたのだろう。

 

 それから一同は、わずかな魔石灯と月明かりで廃墟の街を進み、やがて船へと帰ってきた。

 船では、【ヘルメス・ファミリア】の待機要員と、オリンピアの巫女たちがグッタリとしていた。なんでも、ベルたちが地下へ突入している間、『炎獣』の襲撃が何度もあったらしい。

 

 帰還のための船が燃やされていたら、陸路でオラリオまで帰る羽目となっていたので、ホッとするベルたちであった。

 

 船の近くにベースキャンプを作り、一夜明かした後。

 ベルたちは、オリンピアの巫女とプロメテウス神を残して、オラリオへと帰還することになった。

 巫女とプロメテウス神は、オリンピアの復興をこれから行なうつもりらしい。メレンの港町にまだ残っている使節団の残りを受け入れる準備も進めるとのこと。

 

 都市の外に住んでいたオリンピアの民たちが、【アフロディーテ・ファミリア】の手で半島の外へと逃がされているらしく、彼らが戻ってくるつもりなら受け入れるという話を巫女たちがしていた。

 そんな彼女たち巫女にベルは、エピメテウスの遺灰を託し、墓を建ててもらうよう頼んだ。立派な墓を作ってみせると、巫女たちは意気込んでいた。エピメテウスは造反してもなお、巫女たちにとっては偉大な『英雄』のままであるようだった。

 

「これで、オレからの冒険者依頼(クエスト)は無事に成功だね」

 

 帰還する全員が船に乗りこんだところで、ヘルメス神が【ヘスティア・ファミリア】の面々に向かってそう言った。

 

「あのー、ところでヘルメス様。依頼の報酬はあるんですか? いえ、物騒な『神創武器』以外でですよ」

 

 派閥を預かる団長であるリリルカが、そんなことを尋ねる。

 すると、ヘルメス神は笑顔で言葉を返した。

 

「もう手に入っただろ? 下界の滅亡が免れたんだ。束の間の世界平和ってやつが報酬さ」

 

「はぁー? それでリリたちが納得すると思っています?」

 

「強欲だなぁ。じゃあ、これでどうだい? この『試練』を突破したことで、ベル君とリューちゃんが【ランクアップ】に大きく近づいたんじゃないかな? キミは……『基本アビリティ』がいくらか伸びたくらいだろうけど」

 

「そういうのではなく!」

 

 憤るリリルカに、ヘスティア神が「まあまあ」となだめすかしに走る。

 そして、彼女は言った。

 

「ベル君とリュー君が偉業を達成したことは確かだろう。これからまた何日も船旅をするんだ。三人とも、船の上ですまないけど後で【ステイタス】更新して成長を喜ぼうぜ!」

 

「もう、ヘスティア様は派閥(ファミリア)の運営にもちょっとは興味を持ってくださいよ。リュー様の加入で、絶対に派閥の等級(ランク)が上がって税金が増えるんですからね!」

 

 そんなやり取りを船上で繰り広げながら、高速船はオリンピアを発ち、迷宮都市(オラリオ)へと向けて進み始めた。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 船室での【ステイタス】更新。まずは団長のリリルカから行なったが、こちらはそこまで大きい数値の変動はなかった。

 

「『炎獣』は、そこまで強くなかったですからね。こんなものでしょう」

 

 そんなリリルカのコメントだが、『炎獣』と戦ってこの船を護っていた船員が聞いたら、「本気で言っているのか?」と驚いていただろう。

 それだけ《ヘスティア・スピア》が効果的だったということもあるが、そもそも『炎獣』は炎の塊。近接戦闘を行なうこと自体が、かなり無茶な行為であった。リリルカの【ステイタス】も、今回は『耐久』の数値が一番伸びていた。

 

 次に、リュー。

 すでに『敏捷』がD500に達し【ランクアップ】水準まで届いていた彼女だが、偉業の達成が成されていない状態だった。

 それが、今回の『穢れた炎』の浄化でどうなるかという話であったが……。

 

「おめでとう! 今回の戦いで、上位の【経験値(エクセリア)】がたんまりと溜まっていたよ。いつでも【ランクアップ】が可能だ!」

 

「【ランクアップ】は保留でお願いします。こんな船上で『Lv.6』となっても、身体のズレの修正がままならない」

 

「そうだね。ま、オラリオへ帰るまでの間に、【ランクアップ】するか、このまま『基本アビリティ』を上げ続けるか、考えておいてくれたまえ」

 

「また船旅の間、悩み続けなければならないのですか……」

 

 行きの航海では《ソイル》の組み合わせに頭を悩まされていたリュー。

 帰りでは、【ランクアップ】するかどうかで頭を悩まされることが決まった。

 

 そして最後に、エピメテウスとの大激戦を繰り広げたベル。

 こちらはリューとは逆で、偉業は達成済みだが【ランクアップ】には『基本アビリティ』が不足している状態にあった。

 

 だが、圧倒的格上であるエピメテウスとの戦いで全身を酷使した結果、ベルの『基本アビリティ』は大きく伸びていた。

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 力:E441 耐久:D520 器用:E488 敏捷:F350 魔力:G297

《魔法》

【 】

《スキル》

幻想残滓(ファイナルファンタジー)

 ・『魂の結晶(クリスタル)』の力を『神の恩恵(ファルナ)』に適合させる。

 ・【経験値(エクセリア)】獲得時、戦闘行動時、生物・モンスター撃破時に『魂の結晶(クリスタル)』の力を獲得。

 ・『魂の結晶(クリスタル)』の力を編集可能。

聖魔抜剣(ラグナロク)

 ・全剣技をチャージする。

 ・チャージした全剣技の威力上昇。

 ・チャージした聖剣技の状態異常発生率上昇。

 ・チャージした剛剣の物質破壊能力上昇。

 ・チャージした暗黒剣の範囲拡大、仲間への効果還元。

 

「『耐久』が……!」

 

「うん、【ランクアップ】可能だ! おめでとう! それともう一つ」

 

 ベルに羊皮紙のメモを渡しながら、ヘスティア神が笑みを浮かべて告げる。

 

「【ランクアップ】してキミの器が今より広がれば、『魔法』を発現させられる」

 

「!?」

 

「おそらく、今回の戦いでキミは、逆転の一手を望んだのではないかな? その想いが、『魔法』という形で結実しようとしている」

 

「戦闘用の『魔法』ということですね!」

 

「そうだね。きっと、今のキミに一番必要な『魔法』が発現するよ」

 

「うわあ、じゃあ、今すぐ【ランクアップ】しましょう!」

 

「待つんだ。船上で初めて使う『魔法』の試し撃ちをするつもりかい? 危険すぎるよ。【ランクアップ】は、オラリオに帰るまでお預けだ」

 

「ええー、待てませんよ!」

 

「ダメだよ。これは主神(ボク)からの厳命さ」

 

「くっ……!」

 

「フフッ、普段は頼もしいけど、こうしてみると年相応で可愛い子だねえ、ベル君は」

 

「うっ……そう言われると、恥ずかしくなってきました……」

 

「行きと同じなら、船旅は四日も続くんだ。それまで、本当に【ランクアップ】すべきかも、よく考えておくんだよ」

 

「そこはもう、【ランクアップ】するとハッキリ決めてます」

 

「よく考えようね!?」

 

 そうして、絶好調となったベルは、率先して船の上でのモンスター戦をこなしながら、オラリオへの到着を今か今かと待ち続けることになった。

 ヘルメス神が、船旅二日目の夜にベルとヴェルフの船室を訪ねてくるまでは。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「エピメテウスの正しい歩みと、今回の戦いを物語として残したい」

 

 ヘルメス神は、ベルとヴェルフに向けてそんなことを言った。

 その神様の言葉に、ベルは首を傾げて問う。

 

「『邪竜殺しの(ドラゴンスレイヤー)英雄伝説』のときは、僕の話なんて聞かずに作ってましたよね? 今回はなんでまた、僕のところへ?」

 

「ベル君の見解を聞きたいからさ」

 

「見解、ですか?」

 

「エピメテウスの、本当の狙い」

 

「!?」

 

 ヘルメス神の言葉に、ベルは驚きの表情を浮かべてしまった。

 ベル自身、頭の片隅に引っかかり続けていた話だったからだ。

 そして、ベルはあの戦いで一番気になっていたことをヘルメス神に尋ねた。

 

「……エピメテウスが言っていた、『穢れた炎』で『黒竜』を討伐するという言葉に、嘘はありましたか?」

 

「嘘はなかった」

 

「そうですか……」

 

「でも、嘘がなかっただけだ。真実を包み隠さず話していたとは限らない。オレたち神が見破れるのは、あくまで(こども)の嘘だけだ。(こども)が隠している事の真相までは見通せない」

 

「……エピメテウスには別の目的があったと?」

 

「たとえばそう、『穢れた炎』での『黒竜』討伐は、本来の目的が失敗したときに実行する保険(サブプラン)だったとかどうかな?」

 

 ヘルメス神がそう言いうと、横で話を聞いていたヴェルフが不思議そうな顔をする。だが、ベルは眉を寄せて渋い顔をしていた。

 だが、子供たちの露骨な表情の変化に気付かぬ神ではない。

 

「思い当たる節がありそうだね」

 

 ヘルメス神は「話してごらん」とベルの言葉を(うなが)した。

 ベルは少し逡巡(しゅんじゅん)した後、これまで誰にも話していなかった真実の一端を口にした。

 

「実は、エピメテウスが事切れる前に、小さな声である言葉をつぶやいていたんです」

 

「へえ、遺言かい?」

 

「そんなたいそうなものじゃありません。いえ、もしかしたら『半熟の英雄』へと向けた遺言とも言っていいかもしれませんが」

 

 一拍置いて、ベルはエピメテウスの最期の言葉をヘルメス神に告げた。

 

「『俺を越えて『最後の英雄』へと至れ』……僕に向けて、そう言っていました」

 

「やはり、そういうことか」

 

 ベルとヘルメス神はそう言葉を交わし、互いに納得し合う。

 だが、横で話を聞いていたヴェルフは、エピメテウスの最期の言葉が今一つ理解できなかったようで……。

 

「一体どういう意味なんです? 全く話が見えてこない」

 

 すると、ベルがヴェルフに対して説明する。

 

「最後に残された世界三大冒険者依頼(クエスト)の達成。『黒竜』の討伐。エピメテウスは、その役割を僕に託したんだ」

 

「より正確に言うと、エピメテウスはベル君の乗り越えるべき『試練』となって、ベル君の成長を促して『黒竜』を討伐できるような『最後の英雄』に仕立て上げようとしたわけさ」

 

 その二人の見解に、ヴェルフは驚愕する。

 

「そんな……!? 自分をベルの踏み台にしたっていうのか!」

 

 そのヴェルフの言葉をベルは肯定し、説明を始めた。

 

「エピメテウスが『天の炎』を使う限り『黒竜』に勝てないことは、行きの船で神様たちが話していたよね。『穢れた炎』を使えば勝てるかもしれないけど、代償として世界が滅びてしまう。じゃあ、神様たちに『穢れた炎』を消してもらって『天の炎』の呪縛から逃れて、あらためて『黒竜』に自分の力で挑めるかというと……」

 

「三千年も生きたエピメテウスは、もう『天の炎』なしには生きられない身体になっていたから叶わない、ってわけか。詰んでいるじゃねえか」

 

 ヴェルフは、ようやく合点がいったとばかりにそう言った。

 

 エピメテウスが自力で『黒竜』を討伐するには『穢れた炎』を使う方法しか残されていなかった。

 だが、それには世界滅亡という代償が伴う。

 ゆえに、エピメテウスは『最後の英雄』の役割を他人に託したのだ。

 

「でも、なんでベルなんです? これまで二人に面識はなかったはず……」

 

「『秘境の蠍(アンタレス)』の討伐が全ての始まりだ」

 

 ヴェルフのさらなる疑問に、今度はヘルメス神が答える。

 

「エピメテウスは、かつて自分が敗走した『漆黒の魔物』の一体である『秘境の蠍』を倒したベル君に、『黒竜』の討伐を任せようとしたんだろうね」

 

「ああ……あの男、オリンピアまでベルの雷名が轟いているとかなんとか言っていましたね……」

 

「そうだね。オレもベル君の活躍を物語や(うた)にしたし、【アルテミス・ファミリア】も方々で噂を巻いていたようだ。それを耳にしたエピメテウスは、『穢れた炎』の浄化をしにやってくるであろう『最新の英雄』に『希望』を託したってわけだ」

 

 そこまで説明されて、ヴェルフはようやく全て理解をしたといった様子でベルを見た。

 ベルは少し照れつつも、自身が背負うことになった『古代の英雄』の『希望』に重圧を感じた。まさに三千年の歴史の重み。名誉ではあるが、過剰すぎるとも言っていい期待だ。

 思いを巡らせるベルに、ヘルメス神はあらためて問う。

 

「この見解、物語にしていいと思うかい?」

 

 ヘルメス神のその言葉に、ベルは少し考えを巡らせて目を上に向けた後、言った。

 

「それはつまり、僕がエピメテウスに『希望』を託されたことが、世界に広まるということですね」

 

「嫌かい?」

 

「それは……いいえ、嫌ではありません。もとより僕は『剣聖』となって『隻眼の黒竜』を倒すと、過去の『英雄』たちに誓っていますから。その誓いが多くの人々に知られても、別に構いません」

 

「そうか……!」

 

 自称『半熟英雄』の想いを聞いてヘルメス神は笑顔になり、二人の肩を軽く叩いてから船室を後にしようとした。

 すると、去ろうとするヘルメス神の背中に向けて、ベルが言った。

 

「ヘルメス様。新しい叙事詩(ものがたり)では、どうか、エピメテウスを思いきり称えてあげてください」

 

「もちろんさ!」

 

 そして、今度こそ船室を後にして、船内の廊下を歩きながらヘルメス神は思う。

 

 ――世界は『英雄』を欲している。

 

 世界を救う『英雄』が、『古代の英雄』の『試練』を乗り越えて今まさに誕生しようとしていた。

『英雄』とは、人々の『希望(エルピス)』を背負う者。

 その人々の中には、ベルに『試練』を課したエピメテウスも含まれている。そう、ヘルメス神は思った。

 

 やがて、床に椅子と机が固定された船室に、彼は戻った。

 

 その部屋で、ヘルメス神はあらためて思う。

 今回は自ら踏み台になった者の想いを隠さずに済んで、本当によかった、と。

 

 七年前にオラリオで巻き起こった『闇派閥(イヴィルス)』と冒険者の『大抗争』。

 その戦いの中で、オラリオの冒険者に『試練』を課し成長を促すため邪悪に徹した者たちがいた。

 

 彼らは最後までその真意と神意を隠し通したが、その思惑に気付いていた者は少数ながらも存在していた。

 だが、気付いていた者たちは皆、口をつぐんでいたため、今日までその隠された真実が世間に伝わることはなかった。

 

 ヘルメス神は、そのことを歯がゆく思っていた。そして、今回はその繰り返しにならずに済んだと、ホッとしていた。

 なにせ、エピメテウス本人が、最期にベルへ向けて本心を隠さずに語ったのだ。これはもう、広めていいということと同義。ヘルメス神は勝手にそう解釈した。もし解釈が違ったとしても、死人に口なし。本人の魂は、すでに天界に昇っているだろう。

 

 ゆえにヘルメス神は、下界が上手く回るかどうかを優先して、エピメテウスの真実を暴き立てることに決めた。

 

「さて、また執筆作業か。多芸神は辛いね、まったく」

 

 そう言って、ヘルメス神は世界に新しい『希望』を届けるための仕事に取りかかるのであった。

 




以上で第六章『神の偶像』編は終了です。休載期間を挟んでから、第七章『二大祭』編に続きます。
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