ダンまちTACTICS【第一部完】   作:Leni

84 / 87
84.魔界

【ロキ・ファミリア】が『遠征』を行なう。その事実が、オラリオで大々的に報じられた。

 結果、出発当日には多くの市民が、中央広場(セントラルパーク)へと見送りのために詰めかけることとなった。

 

 そんな見送りの市民に交じって、拠点(ホーム)に居残りとなる【ロキ・ファミリア】の眷族も集まっている。『遠征』には参加できずとも、せめてダンジョンへと向かう彼らに声援を送りたい。そんな理由での集結であった。

 他にも、ダンジョンへの入場を禁じられている存在(かみ)であるロキ神とヘスティア神、そして地上に滞在中の『異端児(ゼノス)』であるウィリュジーネとカールの姿もあった。

 

【ロキ・ファミリア】に所属するサンジョウノ・春姫も、居残り組だ。彼女は同じく階位(レベル)の低いアマゾネスの元戦闘娼婦(バーベラ)に囲まれながら、『遠征』の装備に身を包んだ団員たちを心配そうな目で見送った。

 

 春姫の強力無比な『妖術』は『遠征』でも切り札と成り得る。だが、彼女は未だに『Lv.1』のまま。

 さらに、彼女の『妖術』は他の派閥に秘するべきものでもある。

 よって、複数の派閥が集まった『遠征部隊』である『派閥連合』に、春姫は不参加となった。

 

 そうして、多くのオラリオ市民と、選外となった各派閥の冒険者たちに見送られながら、【ロキ・ファミリア】率いる『派閥連合』が摩天楼施設(バベル)へと入場していく。

 

『派閥連合』に参加している派閥は、【ロキ・ファミリア】以外にも多数いる。

 

【ヘファイストス・ファミリア】の上級鍛冶師(ハイ・スミス)に、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療師(ヒーラー)たち。『学区』のレオンという『Lv.7』の大戦力と、【ヘスティア・ファミリア】の三人。

 さらに他にもいくつかの派閥から有力な上級冒険者が参加しており、先頭を進む【ロキ・ファミリア】を追うようにして摩天楼施設へと入場した。

 

 ちなみに、【フレイヤ・ファミリア】のオッタルは先んじてダンジョンに向かっており、『派閥連合』には加わっていない。

 協力はするが、馴れ合わないということなのだろう。『派閥連合』の集団に同行しているレオンは、昔なじみの相も変わらずな気質に、苦笑せずにいられなかった。

 

 その後、全員無事にダンジョンの『初層』へと進入した『派閥連合』。ここからは隊を複数に分けて、休息地帯(レストエリア)である18階層まで進むことになる。

『上層』や『中層』では数多くの冒険者が活動している。『派閥連合』が大人数で移動すると、その冒険者たちと鉢合わせて迷惑をかけてしまうかもしれない。そのための隊分けだ。簡単に言うと、通路の混雑回避である。

 

 そうして各々が事前に決めていた組み合わせ通り分散し、18階層で合流して一夜を明かす。

 18階層から先は狩りを行なう他の冒険者の数もグッと減るため、大集団での移動となる。ただし、『深層』以降で主力となるメンバーの体力を極力消耗させないために、二軍以下のメンバーが戦闘で活躍することになった。

 ただし、都市最大派閥の【ロキ・ファミリア】でいう二軍は、『Lv.4』の猛者を意味する。

 

『中層』のモンスターなどものともせず、『下層』に入ってからも彼らの歩みを止めるものはない。

 さらに、『深層』に入っても進軍速度は変わらず、やがて40階層からは主力となる一軍も参戦したため、むしろ進行速度は加速する始末であった。

 

 やがて、数日かけて彼らは難所である49階層に到達した。

 

 モンスターの群れが次々と襲いかかってくる広大な領域『大荒野(モイトラ)』。

 だが、そこに広がっていたのは一面の灰だ。

 

 おそらくは、オッタルがこの階層にいる『迷宮の孤王(バロール)』との戦うための準備運動として、モンスターを薙ぎ倒したのだろう。モンスターのいない『大荒野』を進む中で、多くの者がそう思った。

 

 最終的に彼らは、オッタルの姿を一度も見つけることなく、最後の『安全階層(セーフティポイント)』である50階層へと到着した。

 

「ここまでは順調だ。問題は、ここからだ」

 

 50階層に築いたベースキャンプにて、フィンが見張り以外の全員を集めた上で、そう言った。

 そして、彼は告げる。

 

進攻部隊(アタックメンバー)の最終発表を行なう」

 

 明日に迫る、60階層への進攻。

 だが、60階層にはこの場にいる全員が向かうわけではない。

 

 このベースキャンプは、目標の60階層へアタックするための足掛かりとして、維持し続けなければならない重要な拠点だ。無事に『遠征』を完遂するためには、絶対に失うわけにはいかない。したがって、『安全階層』といえども防衛のための人員を多く残さないといけなかった。

 

 さらにここから先、特に52階層から始まる領域は、とても厳しい場所だ。

 天下の【ロキ・ファミリア】といえども、二軍以下のメンバーでは付いていくことすら困難を極める。

 よって、進攻部隊として『派閥連合』の主力を向かわせ、他の全員でこのベースキャンプを死守するという手はずになっていた。

 

「【ロキ・ファミリア】からは、僕、リヴェリア、ガレス。アイズ、ティオネ、ティオナ、ベート……」

 

 フィンの口から、【ロキ・ファミリア】に所属する幹部の名前が挙げられていく。

 他にも、ラウル、アナキティ、クルス、アリシア、ナルヴィ、レフィーヤといった幹部候補の名前が挙げられた。

 

「【ヘスティア・ファミリア】からは、リューとベル。武具の整備役として【ヘファイストス・ファミリア】の椿、治療師として【ディアンケヒト・ファミリア】のアミッド。防御の要として『学区』のレオン」

 

『派閥連合』からも、次々名前を挙げていく。

 進攻部隊は、総勢で十八名。厳選したとはいえ、少数精鋭とは言いがたい人数となった。

 

「進攻部隊は以上だ。ここ、ベースキャンプの防衛については、指揮官(リーダー)はシャロン。補佐官(サブリーダー)として【ヘスティア・ファミリア】のリリルカを置く。二人とも、協力してここを守り切ってくれ。『穢れた精霊』の配下による襲撃は、絶対に起きると想定しておいてくれ」

 

「了解しました! ……リリちゃん、指揮は任せるよー」

 

「シャロン様……指揮官はあなたですよ?」

 

 ベースキャンプ防衛の(かなめ)とされたのは、最高幹部のガレスに指導を受けている前衛壁役(ウォール)。『Lv.4』のヒューマンの女性であり、【ロキ・ファミリア】の幹部候補であるシャロンだった。

 

 そこに『Lv.2』で傘下派閥の団長リリルカを補佐に置く。本来ならば【ロキ・ファミリア】ではないリリルカをそこに配置することは、指揮系統の乱れを生むためありえない選択だった。しかし、リリルカの存在は今や、【ロキ・ファミリア】のほぼ全ての団員に受け入れられている。そして、その指揮能力の高さもフィンの弟子たり得ると、しっかりと認められていた。

 

「半日の休息(レスト)の後、進攻部隊は51階層へ侵入、一息に60階層まで向かう。万全の体制を整えるように。では、解散!」

 

 そうして、各々がそれぞれできる準備を始めた。

 リリルカは早速とばかりにシャロンに捕まり、ベースキャンプ防衛の計画を練ることになった。

 ベルとリューは、『遠征』に同行しているヴェルフのもとへと行き、装備の再確認を行なう。

 

「リューには『魔銃(マガン)』と《ソイル》を渡しておく。前回は腐食液を持つモンスターが出たらしいからな。『魔銃』の砲撃で消し飛ばすのも効果的なはずだ」

 

「感謝します」

 

 ヴェルフから、新作の『魔銃』と《ソイル》の詰まったガンベルトを受け取るリュー。

 すると、今度はベルがヴェルフに一本の刀を渡す。

 

「これ、ここまでなんとか折れなかったから、預かっておいてよ。進攻には持っていかないから、ヴェルフ用の予備武装(サブウェポン)としてベースキャンプにでも置いておいて」

 

「ああ……刀魂を『引き出す』だったか? 大活躍だったな」

 

「うん、刀の効果が補助系だったおかげだね。純粋な火力用途ならともかく、補助は替えが利かないよね」

 

「うちの派閥の刀が、守りの効果を発揮するとはなぁ……」

 

 ヘファイストス神の眷族一門が作る刀は『侍』の『引き出す』という技を使用することで、刀魂【祈祷神羅の風】が解放される。これは、『白魔法』の【ウォール】に似た効果で、物理・魔法双方の防御力を上げる防護の膜を味方に付与する。

 ベルはここまでの道中で多くの者たちにこの補助を掛け、その身をモンスターの脅威から守ったのだ。

 

 だが、刀の魂を引き出し続けると、一定確率で刀は砕け散ってしまう。

 だというのに今、刀が無事なのには、一つの理由があった。

 それは、ベルの『発展アビリティ』である『天秤』の効果だ。確率に干渉する『聖石』の力が、刀魂の霧散を防いでいた。

 

 そして、『発展アビリティ』は使用すれば使用するほど成長する。

 ベルは、確率という不確かな要素をいずれの日か、支配するようになるのかもしれない。

 

「その守りの効果すら、ここから下の階層では使用する候補には挙がらない、か……。どれだけの地獄なんだかな」

 

 ヴェルフがそうぼやくと、ベルが言った。

 

「フィンさんは、『穢れた精霊』が支配する『魔界』だとか冗談めかして言っていたね」

 

「『魔界』、な……。ベル、リュー。生きて帰れよ」

 

「うん、『精霊』を倒して、帰ってくるよ」

 

「私はもとより、誰も死なせるつもりもありません」

 

 そうして、ベルとリューはベースキャンプで最後の準備を終えた。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「出発」

 

 フィンのその言葉で、進攻部隊が一斉にベースキャンプを出る。

 ベースキャンプの守りには、残された『派閥連合』だけでなく、先ほど合流を果たした【ウラノス・ファミリア】こと『異端児』の集団も交じっていた。人とモンスター、その両方に見送られて、進攻部隊は『穢れた精霊』の『魔界』を目指した。

 

 それまでの道のりは、フィンたち【ロキ・ファミリア】にとって、なんら障害とならなかった。

 51階層から59階層まで、瞬く間に通り過ぎてしまったのだ。

 

【ロキ・ファミリア】は過去の『遠征』で、59階層まで一度やってきたことがある。それはつまり、彼らにとってここはすでに『未知』ではなく『既知』の領域である。

 冒険者にとって『未知』と『既知』の違いは、非常に大きい。『既知』でさえあれば、対策を練り、事前に準備をして、万全な体勢でそれに挑めるのだ。

 

 ここまでは、全てが『既知』だったゆえに問題なく攻略することができた。

 だが、ここから先は『未知』が広がる。

 

 彼らが進んだ59階層。本来ならば『氷河の領域』と名付けられた、極寒の環境が広がっているはずの場所。

 そこが不気味な植物の群生する熱帯の密林と化していたのは、前回の『遠征』でも知るところ。

 

 しかし、その密林よりも異常な光景が、彼らの目の前に広がっている。

 60階層へと降りるための大亀裂(クレバス)。その亀裂が、青白い肉壁に侵食されているのだ。

 これこそが、彼らが今回の『遠征』で初めて目にする『未知』であった。

 

 肉の領域は、以前『人造迷宮(クノッソス)』を覆った緑色の肉壁を想起させる。

『人造迷宮』が『魔城』と化したのと同じように、ダンジョン60階層はフィンの言うとおり『魔界』へと変わっていた。

 

「あそこに進むのかぁ……」

 

 と、進攻部隊の獣人の一人が、嫌そうな声でそう言った。

 肉の壁は臭気を放っており、触手が蠢いている。今にも肉壁が大きく動き出して、足を踏み入れた冒険者を呑み込みそうな雰囲気がそこにはあった。

 

 しかし、フィンの見解では、『穢れた精霊』はあの青白い肉に覆われた60階層に潜伏している可能性が非常に高い。

 どれだけ不気味であろうとも、ここで引き返すことは絶対にできない。

 

 ゆえに、フィンは突入準備を終えた面々へ、冷徹に指示を出す

 

「進攻、開始」

 

『魔界』に【勇者(ブレイバー)】率いる冒険者たちが挑む。

 

 大亀裂を越えて、肉壁と触手を足蹴にして進んだ彼らを待ち受けていたのは、極彩色の『魔石』を持つモンスター。『穢れた精霊』の配下たちであった。

 

 これまで幾度となく【ロキ・ファミリア】の前に姿を見せてきた『食人花(ヴィオラス)』の群れ。

 しかもそれだけでなく、この場にいる全員が初めて見る『蜘蛛の異形』が、フィンたちを襲った。

 

 この『蜘蛛』は数いるモンスターの中で、冒険者にもっとも嫌われる能力を備えていた。『寄生』である。

 小さな『蜘蛛』の飛来により、数名が『寄生』を受ける被害を出した。しかし、この程度で敗れ去るような進攻部隊ではない。

 

「【ファミリア・レコード】――【ヘスティア】!」

 

「――【ディア・フラーテル】!」

 

 リューの『継承魔法』による浄化の炎、そしてオラリオ最高の治療師(ヒーラー)アミッドの『魔法』が、『寄生』された者たちを危機から救った。

 

 しかし、『魔界』の脅威はそれだけでは終わらなかった。

 上空から『魅了』の効果を持つ光粉が舞い散り、冒険者たちを惑わそうとしてくる。

『耐異常』の『発展アビリティ』が低ければ同士討ちが発生し、そこから瓦解して全滅していた危険性を持っていた『魅了』の光粉。

 

 ただし、こちらも対抗策が存在していた。オラリオには、『美の女神』の魅了すら弾く道具が数ヶ月前から限定販売されているのだ。光粉の効果が判明するとともに、フィンは幹部候補たちに持ち込ませていたその道具を全員に装備させた。

 

 搦め手は通用しない。それを『穢れた精霊』側も察したのか、さらなる戦力が彼らを襲った。

『寄生』の力で60階層よりも下の強力無比なモンスターを操り、『食人花』や『蜘蛛』に交えて向かわせてきたのだ。

 

 それでもフィンたちの歩みは止まらない。

 

『寄生』を警戒しながら彼らは戦い、少しずつ敵を削り、極彩色の『魔石』を破壊して灰に変える。

 魔導士が敵の群れを焼き払い、治療師が傷付いた仲間を癒やす。

 当然、体力(スタミナ)精神力(マインド)が少しずつ失われていく。

 

 だが、進攻部隊の中に、ベル・クラネルという反則的な存在がいた。

 

「魔導士と治療師は集まってください! ――【チャクラ】!」

 

 ベルの【チャクラ】は、代償なしに周囲の者たちの体力と精神力を癒やす。

 これにより、フィン率いる進攻部隊は無限に湧き出る力で、『穢れた精霊』の手札を着実に消費させつつあった。

 

 やがて、敵は『精霊の分身(デミ・スピリット)』という切り札を出すに至った。

 場は、『精霊』の力を宿した『大魔法』が飛び交う、死の空間へと切り変わる。

 しかし、それにすらフィンは対策を用意していた。こちらも、ベルが要となって、大活躍することになる。

 

「【紅石(こうせき)に眠りし瞳、精霊の声に目覚めん――我が聖戦に光を!】――【カーバンクル】!」

 

 ベルの『召喚魔法』が、遠い異世界である『幻界』から、一匹の『召喚獣』を呼び出す。

 それは、ダンジョンにも存在するモンスターと同名の存在。しかし、額の紅石に宿る力は、モンスターのそれを超えていた。

 

【カーバンクル】がもたらす【ルビーの光】。その効果は、『魔力反射(マジック・リフレクション)』。

 それにより、四方から飛び交う『大魔法』はことごとく跳ね返り、その威力のまま敵を貫いた。

 

『魔力反射』は、仲間の『回復魔法』すら受け付けなくなる欠点がある。だが、フィンは幹部候補たちをサポーターとして運用しており、回復薬(ポーション)や万能薬を大量に持ち込んでいた。

 さらに、『魔力反射』役を少数に絞り、残りのメンバーには『精霊旗』という魔法効果を減衰する道具を使わせることで、被害を最小限に抑えていた。

 

『穢れた精霊』の位置特定から今回の『遠征』まで、数ヶ月の猶予があった。

 その長い期間は、『穢れた精霊』に力を蓄えさせる結果に繋がってしまった。

 

 だがしかし、力を蓄えていたのはフィンたちも同じ。

 フィンは、手もとに舞い込んだ鬼札(ジョーカー)であるベル・クラネルを主軸に、様々な対策をこの日のために用意してきていた。

 

『ウウウウウウゥ──! 【ファイアーストーム】!』

 

 追い詰められた『精霊の分身』が、これまでで最大の『魔法』を放つ。

 炎の嵐が巻き起こり、フィンたちに迫る。炎が蹂躙を開始する……そのはずが、フィンの采配により『魔力反射』を付与された前衛壁役(ウォール)のガレスが炎の渦へと真っ先に突入。燃え盛る熱風はその進行方向を変え、『魔法』の発生源である『精霊の分身』を焼き焦がした。

 

「うわ、これも『反射』できるんだ……」

 

『魔力反射』は万能に見えて、一部の『魔法』は反射不可能である。ベルがいずれ使えるようになる隕石落下(メテオ)の『魔法』などが代表格だ。それを知っているがゆえに、ベルは大規模な炎の嵐すらも跳ね返した【カーバンクル】の効果に戦慄した。

 

「決戦の前に『反射』を試せてよかった。ガレスなら、万が一の場合でも耐えるだろうから試金石になってもらったよ」

 

 フィンがベルにさらりとそう言って、周囲に次なる指示を出し始めた。

 やがて、60階層を覆い尽くしていた敵勢力は全滅し、『魔界』が沈黙する。

 激しい攻防で肉壁は吹き飛び、本来のダンジョンの床面が一部露出している。それほどの戦いを制したのは、フィンたち進攻部隊であった。

 

 そうして、進攻部隊は息つく間もなく沈黙した『魔界』を奥へと進む。

 青白い肉壁は少しずつ色を変え、蒼く変わり、やがて紫色に変わった。それと同時、彼らは拓けた空間に辿り着いた。

 広大な空間。紫色の肉に覆われた、おぞましい『魔界』の終点。

 

 そこに、『穢れた精霊』は待っていた。

 肉の天井からぶらさがる、丸い物体。巨大な『肉塊』に見えるそれ。だが、その正体は、そんなものではなかった。

 

「あれが、『穢れた精霊』……?」

 

 震えるような誰かのつぶやきが、大空間にハッキリと響いた。

 それは、あまりにも巨大で醜悪な物体。紫紺の『脳』が剥き出しになって存在していた。

 

 さらに、天井に吊されたその『脳』の底部からは、まるで脊髄(せきずい)のようにも蛇の尾にも見える長い(くだ)が伸びている。管の終端には、人間にも見える紫肌の『精霊』の上半身が生えていた。

 これこそが、『穢れた精霊』の全容。その醜悪な『脳』と美しい『精霊』の上半身を見て、フィンは思う。

 

 ――なるほど、この肉で覆われた領域は、『穢れた精霊』の体内だったわけだ。

 

 紫の肉壁に包まれた大広間にて。『穢れた精霊』は、天井から彼らを見下ろす。巨大な『脳』の中央に()まる単眼と、『精霊』の顔と額にある三つの眼。計四つの瞳をギョロリと動かす。

 そして、『穢れた精霊』は、彼女が焦がれてならなかった『標的』を見つけ、叫んだ。

 

『アリアァァァァァッ!』

 

 四つの瞳が見下ろす先。

 そこには、金髪金眼の少女アイズが両手で剣の柄を握り、油断なく構えを取っている姿があった。

 




・引き出す
『引き出す』の効果として、ヘファイストス一門の刀《ヘファイストス》は、FFTにおける《清盛》互換の効果を持ちます。
一方で、クロッゾの魔剣の力を持つ刀《クロッゾ》は、《塵地螺鈿飾剣》互換として爆炎を発します。
鍛冶神ヘファイストスが下界で打つ《ヘファイストス真打》は、きっとヤバい効果を持つのでしょうが、今のところ何も設定していません。
天界で打たれた神創武器《ヘファイストス神打》なんてものがもし存在した場合は、ベルくんの力で刀魂を解放できるのかも不明です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。