X国の元幹部だけどなんか質問ある? 作:逢瀬
行き当たりばったりですが目標はエグゼ3までです
ウェルカム日本
ちらほらと雪が降り始めてくる。
傘を差す者、足早に目的地に向かう者、はしゃぎ遊び回る者……
そんな日本の民達だが、その視線がちくりちくりと私に向かっているのを感じている。まあ、それはそうだろう。
黒のコートに黒のトップス……胸元には勲章付き。そして下もまた黒と正しく黒の擬人化とも言える格好だ。
……着の身着のままに勢いで出て来てしまったのでこの不審者丸出しのスタイルだが、誓って私は不審者では無いと周りの者達に伝えたい。
だが、目を合わせようとすれば逸らすその奥ゆかしい国民性により私は弁明の機会を与えて貰えなかったのだ……
西暦200X年、人類の叡智はインターネット技術の発展により飛躍的に高まっていた。
personal terminal、通称PETと呼ばれる電子端末が広く普及した事もあり
だが、そんなインターネット社会に逆行するようにウチの国はインターネットは国民に対して制限若しくは禁止されている。それでも国民達は幸せだと自分達自身で言い切るだろう……産まれた時から死ぬ時までインターネットに触れていなければ存在が無くても不便と感じないのだから。
まあつまるところ、そんなインターネット最後進国とも言える国からやって来た私は世間一般的なPETを持っていないのだ。
持っていないならば買えばいいが……簡単な身分証明書を見せれば子供でも少しゼニーを貯めれば買えてしまえる値段ではあるし、私の懐事情は
だが、PETが無ければ……この日本での人権は無きに等しいものとなる。
というわけで、目標としてはPETの入手……それも身分証明書無しでとなるならば非合法の手段でとなる。
「……ま、何とかなるだろ」
ポツリと呟きながら、懐の
濃い紫と明るい橙を基調にし、白のラインが刻まれた金属片……私の研究の集大成であり未来とも言える物をを手の中で弄り回しながら足を進める。
先ずは……手土産を用意しなければいけないな。
ーーーーー
その日、日本が誇る宇宙開発局通称NAXAはハッキングを受けていた。様々な先端テクノロジーのデータが蓄積されているNAXAは科学省に負けずとも劣らないセキュリティを誇っている……しかし、そんなNAXAが誇る防衛プログラム達が一体の
「第一エリア突破されました!!」
「第二、第三エリアも陥落!!」
「仕方ない……プラネットマンを出せ!!!」
てんやわんやの現実世界とは異なり、電脳世界は静かなものであった……正確には、その存在の周りだけが静かなのだが。
白を基調に明るい橙色のラインが四肢に走っており、目元を隠すように付けられているバイザー、そして指先と足先は濃い紫の水晶のような質感をしている。標準的な人型のボディと白いマントも相まって、科学者のような出で立ちにも取れるその存在は気分が良いのか鼻歌を歌いながら真っ直ぐに電脳世界を歩き続けている。
時折、その行く手を遮ろうと現れる防衛プログラム──サテラタイプやジェリータイプのウイルスが姿を見せるもソレの指先から放たれた光弾に撃ち抜かれてデリート……またはノイズが走ったかと思うと同種に向けて攻撃を始めたりと阿鼻叫喚の地獄と化している。
不意にソレが足を止める。
「そこまでです。これ以上先には進ませる訳には行きません」
ソレに対峙するのは奇しくも同じく白を基調としているがその外見は異形。球体を繋げたような見ようによれば愛嬌あるシルエットと対照的に無機質な光を目らしき部位に灯すそのネットナビの名はプラネットマン。
NAXAが宇宙から飛来した謎のデータを解析して作り上げたネットナビだ。
既に戦闘態勢を取っているプラネットマンの周りに浮遊しているのは三種の星を模したビットと戦闘機を模したビット……対するソレは肩を竦めて彼に指先を向ける。
「やっとお出ましか、喜ぶといい。私はこれ以上進むつもりは無い」
「そうですか、ならばそのまま大人しく拘束されて下さい。あなたとそのオペレーターには逮捕状が出ています」
「ハハハ、冗談。進むつもりは無いって言ったのは目的がお前だからだよプラネットマン」
想定外の言葉に瞬きをするかのように目の光を点滅させるプラネットマンに男は笑いながら言葉を続ける。
「外宇宙のテクノロジー、そしてお前を解析構築する為に使われている
「!」
「おいおい、素直に反応し過ぎじゃないか?ま、産まれたてのネットナビなら仕方ないか」
「あなたには色々と聞かねばならない事が増えましたね。何故、ウッドプログラムについて知っているのか……洗いざらい吐いてもらいましょう」
バトルオペレーションプログラムが起動し、プラネットマンの周りを浮遊しているだけであったビット達が一斉に男へと襲い掛かる。
赤い惑星から放たれる炎の合間に隠れるようにして黄の惑星からラビリングが飛ぶ。男の指先から放たれる光弾が的確にラビリングだけを撃ち落とし、体捌きだけで炎を避けていく……プラネットマンの予想通りに。
「行きなさい!」
号令と共に戦闘機型のビットから機銃が斉射されて体勢を崩した男に迫る。
「チッ、【エリアスチール】!!」
高速移動を可能にさせるチップの副次効果である情報演算能力の向上、それにより機銃の正確な弾道を計算した男がわざと体勢の崩れる速度を上げたことにより、間一髪ながらも機銃を回避する事には成功する。だが……
「足元がお留守ですよ」
「っ!?」
第三の惑星、青色の惑星のアクアタワーが男を打ち上げる。
きりもみ回転から地面に落ちた男は大の字に倒れたまま微動だにしない。
訝しげに様子を伺いながらも、各ビットを手元に戻して油断なく攻撃の準備を整えているプラネットマン。
「あー……クソ、流石はNAXAが開発した最先端ナビだ。少なくともそこら辺のナビよりも一世代は上の性能だなこりゃ」
「褒め言葉は受け取りましょう……そのまま大人しくしていて下さい。拘束します」
「ハハハ、そっちが一世代上ならこっちは
ーーーーー
覚束無い足取りで私は地下通路を進んでいく。
案内役らしき男は多分アジーナ人だろう、それっぽい民族衣装を着ているし日本人にしては肌色が濃い、何よりも香辛料の香りが鼻につく。
「かれこれ長い時間歩いてるがまだ着かないのか?わざと遠回りしてるんじゃないんだろうな?」
案内役の答えは無し……溜め息を吐き、手持ち無沙汰に金属片を弄ぶ。
チラリと視線を向けてくる案内役、視線の先は私の手の中だ。
向こうの組織が探しているデータと副事物がこの中に入っているのだ、喉から手が出る程に欲しいだろう……まあ、簡単にはくれてやらんが。
「!」
いつの間にか重々しい雰囲気の扉の前に私たちは着く。その扉が開いていき、金属同士が擦れ合う嫌な音に顔を思わず顰める。
その部屋は沢山のコードが壁の内外を伝っているようでサーバーの冷却をされているのだろうか酷く冷えている。
巨大なモニターに映し出されているのはよく分からない何かのデータ……多分、製作の進歩を表しているのだろうか?
そして、そのモニターの前に杖を突きながらも立ってこちらを睥睨している眼光の鋭い白髪の老人……裏世界に名を轟かせている機械工学の天才が口を開く。
「見覚えがある顔じゃ」
「アンタの息子さんを一時的に部下にしてた顔だからな。自己紹介させてもらう。私の名前はバイラス、バイラス=A・ヴァーン」
手の中の金属片をくるりと回転させてから老人──Dr.ワイリーに向かって突き出す。
「Dr.ワイリー、アンタの欲しがってるデータをくれてやるから私を保護してくれ」
微妙に自分でも情けないと思う言葉に、一触即発だった空気がどこか間の抜けた物に変わっていった。