X国の元幹部だけどなんか質問ある? 作:逢瀬
Dr.ワイリー、機械工学の天才にして悪の組織
まあ、PETの中身は基本的なツールしか入っておらずネットナビすらインストールされていないが……私にとっては十分過ぎる。
気分が良くて鼻歌が漏れてしまう。
そんなご機嫌な私と対照的に案内役だったアジーナ人(本人曰くナマステー人らしいが違いが分からん)……マハ・ジャラマはこちらに敵意丸出しだ。
「〜♪……マハ・ジャラマだったか?そんなこっちを睨むなよ、私の身柄はアンタの所のボスが保証してくれているんだ。そのボスの側近であるアンタが私を害したら彼の顔に泥を塗る事になると思わないか?」
「私は……あなたを信用出来ません。ワイリー様は何故あなたのような者を手元に置こうとするのか」
「話が合いそうだからじゃないか?アンタらは機械工学そんなに詳しく無さそうだし、私の専門は車両系だが無茶ぶりのお陰で守備範囲広いしな」
「私はワイリー様の一番弟子です」
「
流石にからかい過ぎたのか今にもこちらを殺さんばかりのマハ・ジャラマに両手を上げてみせる。
「悪い悪い、流石に言い過ぎた。プログラミング技術は間違いなくアンタのが私より上だ。うちの国はインターネットが普及してないからな……これから色々教えてくださいよ、ジャラマ
「……先達として敬う気があるならば先ずはその軽薄な口調を改めなさい」
「へーい」
改めて通されたのはそこそこ広めの応接室のような部屋だ。先に室内にいたのは三名の男女……WWWの幹部連中と言った所か?
「もう、いきなり呼び出して待っておけって何よ……ってそいつ誰よ」
「どーも、しばらくここでお世話になりますバイラスくんでーす。今後ともよろしく、キレイなお嬢さんにパイセン方」
「!ふーん……見る目あるじゃないアンタ」
マハ・ジャラマに突っかかる化粧の濃いピンク髪の日本人女性に軽く世辞を飛ばせばツンとした態度を向けては来るが言葉からは明らかに機嫌が良さそうなのが伺える。
そんなチョロい女性と入れ替わりにこちらに来るのは赤毛の男性だ。
「おう、バイラスよろしくな。オレは火野ケンイチだ」
「ヒノパイセン、これからよろしくお願いしまーす」
背後からのチクチクとした視線の主はマハ・ジャラマだろう。明らかに猫を被っている私への非難の色が感じ取れる……最後の一人、そこそこ大柄なアメロッパ人と思わしき男性はこちらを観察するように視線を向けてくる。
「エレキ伯爵、どうしたよ?いつものアンタらしくねぇじゃねぇか」
エレキ伯爵、彼をアメロッパ人と仮定して伯爵つまりは爵位持ちの貴族でエレキ……となればアメロッパの名門であるエレキテル家が脳裏に浮かぶ。
電気系統においてのトップクラスの技術者を輩出または懐に取り込んできたエレキテル家とは軍用車両の電気制御器具のアレコレで何度かやり合った経験がある。
顔はもちろん晒してはいないが名前はどっかから漏れていても不思議ではない……過去のいざこざを蒸し返されてしまうのも面倒だ。
「へー、伯爵って言うとお貴族様です?いやー、幅広い人材を取り揃えているんすねぇこの組織は。もしかしてヒノパイセンもなんかすごいスペシャリストだったりします?」
「おうとも!オレ様は火のスペシャリストだぜ!火属性の事なら何でも任せろ!!」
「おおーじゃあ早速色々聞かせてくださいよ」
チョロい奴二号が見つかったおかげでこの場は切り抜けられそうだ。
私の肩に腕を回し、そのまま別室へと向かう私たち。
エレキ伯爵と視線がかち合い、口パクで『今は味方だ』と伝えれば露骨に顔を顰めてくる……やはりバレているか。向こうもバカじゃない、少なくとも私に裏切りの兆候が無ければ自分から口を開く事も無いだろう。
ーーーーー
「って事だ、火属性は奥が深いんだぜ?」
「へ、へーすごいなー……」
失敗したな……いつまで話すんだコイツは。私の体内時計によるともうすぐ二時間は経つぞ。
話の内容は分かりやすいし、中々興味深い内容ではあるが長すぎる。私が明らかに話を打ち切りたがっているのにいつまでも話し続けて……コイツじゃなくて女の方がマシだったか?いや、アチラも癖が強そうだったな。
「そういえばお前のナビはどんな奴だ?ちょっと見せてみろよ」
そう言って私のPETを覗き込んだヒノは怪訝そうに顔を顰める。
「って、ナビいねぇじゃねぇか!?お前、ナビ無しで今まで生きてたのかよ!!?」
「ナビどころかろくにインターネットも繋がってない国出身なんで……まあ、普通に生きてこられましたよ」
「どんな国だよ……」
実際、インターネットが無くてもウチの国の人々は普通に暮らしていた……新聞やラジオを情報源に、電化製品も存在していたので現代的な生活は行えていた。
まあ、インターネットにどっぷりな彼らにはきっと原始時代のような生活をしているとでも思われているのだろう……そこまで苦のある生活ではなかったが、外の世界を知っていた私にはあの国は窮屈であった。
だから逃げ出したのだが……